特集 2014年6月27日

「鉄ラ」を求めて全国へ

造成中の住宅街に謎の物体が(国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より・MTO713X・コース番号:C7/写真番号:10/撮影年月日:1971/05/18(昭46)に加筆)
造成中の住宅街に謎の物体が(国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より・MTO713X・コース番号:C7/写真番号:10/撮影年月日:1971/05/18(昭46)に加筆)
以前「鉄塔が御神木みたいになってる」という記事を書いた。一部の好事家にとても好評だった。

いち好事家として、調子に乗ってさらに「鉄ラ」を巡ってみたのでそれをご覧いただきたい。いやほんと、いろいろ発見があるんですよ、鉄ラ見てると。
もっぱら工場とか団地とかジャンクションを愛でています。著書に「工場萌え」「団地の見究」「ジャンクション」など。(動画インタビュー

前の記事:理想の「線路沿いの道が終わる場所」を求めて

> 個人サイト 住宅都市整理公団

命名:「鉄ラ」

一部の好事家に絶大な支持を受けた記事です。
一部の好事家に絶大な支持を受けた記事です。
前回のその記事、どういう内容かというと、ええと、説明するのがすごく難しいんですが、比較的最近(といっても70年代以降とか)に宅地開発された場所には、もともと鉄塔が立っていたところがある。で、開発に当たってそういう鉄塔がどけられるかというと、なかなかそうはいかない。お金かかるし。

結果的にでんとそこから動かなかった鉄塔の存在感がまるで御神木のようではないか、という話でした。

って、改めて説明すると「だからなんだ」って感じだなこれ。
どけられなかった「先住民」である鉄塔。道路も鉄塔を避けてぐるっと迂回。御神木なみに大事にされている雰囲気。横浜市。場所はここ</a>。
どけられなかった「先住民」である鉄塔。道路も鉄塔を避けてぐるっと迂回。御神木なみに大事にされている雰囲気。横浜市。場所はここ
でもこれ、ときに極端な形となって御神木風情をただよわせているものがあって、それが楽しいのですよ。

そのひとつが「鉄ラ」。これは「鉄塔ラウンドアバウト」の省略語である。上の写真のような状態を指す。鉄塔を避けて道路がそのまわりをぐるりと回っちゃってなんだかかわいらしいことになっている事例だ。
これも「鉄ラ」。鉄塔がダイナミック!宝塚市。場所はここ</a>。
これも「鉄ラ」。鉄塔がダイナミック!宝塚市。場所はここ
まるで「ラウンドアバウト」のようなのでこのように呼ばれる。
世界で一番有名なラウンドアバウトはたぶんこれだ。凱旋門(大きな地図で表示
呼ばれる、っていうかぼくが呼んでいるだけなんですが。
「鉄ラ」発生のメカニズム。稚拙な絵ですまん。
「鉄ラ」発生のメカニズム。稚拙な絵ですまん。
これを面白いと思うのはぼくだけではなかったようで、前回の記事以降、多くの「鉄ラ」事例報告をいただいた。
>みなさんからお寄せいただいた「鉄ラ」情報と面白い鉄塔・送電線事例(大きな地図で表示
せっかく教えてもらった情報なので、いずれ全部回りたいと思っているのだが、ご覧の通り全国に散らばっていてなかなかたいへん。ぼくがデイリーポータルZの記事を書く以外は何もやらなくていい遊んで暮らせる身分の人間だったらすぐにでも巡るのだが。

しょうがないので「ついで」の用事をまちかまえていたのだが、先日大阪に行く機会があったので、よしきた!とばかりに用事の翌日は当地の「鉄ラ」へ出かけた。

せっかくなので同好の士と。
「明日『鉄ラ』見に行くけど誰か行きませんか?」と呼びかけたら集まってくれた!
「明日『鉄ラ』見に行くけど誰か行きませんか?」と呼びかけたら集まってくれた!

クールジャパン

駅前の道がセオリー通りに真っ直ぐ鉄塔に向かっている。
駅前の道がセオリー通りに真っ直ぐ鉄塔に向かっている。
場所は南海高野線「白鷺駅」からすぐ。なんと駅から100mという駅近物件だ。経験上「鉄ラ」は「まさかここが開発されるとは思わなかった」っていう郊外の奥のほうにあるケースが多いので、この事例は貴重だ。さすが堺市。なにがさすがなんだか分からないけど、さすが。
クールジャパン!
クールジャパン!
せっかくなので、twitterで「明日誰か一緒に行きませんか」と呼びかけたのだが、正直さすがにこれに乗ってくる人いないだろう、と思った。工場や団地ならともかく「鉄ラ」はその魅力が分かりづらい(比較対象が間違ってますか)。

前日の呼びかけにもかかわらず、蓋を開けてみれば8名の方が同道。鉄塔見に行きませんか、というと人が集まる。これをクールジャパンというのだと思う。
ぐるんとなっている!そして足元に描かれた山並みのイラストがほほえましい。
ぐるんとなっている!そして足元に描かれた山並みのイラストがほほえましい。
そばに立ってるポールには「ありがとうございます」のメッセージ。いえいえ、こちらこそありがとうございます。
そばに立ってるポールには「ありがとうございます」のメッセージ。いえいえ、こちらこそありがとうございます。
じつはここ、すばらしいことに2連の「鉄ラ」で、この隣も同じようにぐるんとなっているのだ。さすが堺市。
こちらがもうひとつの「鉄ラ」
こちらがもうひとつの「鉄ラ」
このように2連続してるのだ!( 大きな地図で表示
駅近で2連続とは素晴らしい。しかもこんな都心に。いや都心じゃないか。

えー、でも大阪の方々にとってはここはじゅうぶん郊外なのかもしれないが、難波から20分足らずって、ぼくの感覚だとじゅうぶん都心である。そんな場所にこんなすばらしい鉄ラがあるとは。

だって20分っていったら、ほら東京だったら渋谷から20分で鷺沼あたりだ。

あれ?うん、なんだかそういわれると郊外な気もする。ちょうど同じ「鷺」だから比較としていいと思ったんだけど。

やっぱり鉄塔が先

なんでこんなに「都心かどうか」にこだわるかというと、前ページのイラストで解説したように、もともと市街地ではなく鉄塔だけが立っていたところが、あとから宅地化される、というプロセスで発生するのが「鉄ラ」だからだ。つまり、比較的都心でかつ駅も近いのに鉄塔しかなかった、というケースがまれだと思うのだ。

試しに過去の白鷺の様子を見てみよう。
1956年の白鷺駅前。上のマップと同じ範囲(国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より・USA-M342-2・コース番号:M342-2/写真番号:88/撮影年月日:	1956/03/15(昭31)に加筆)
1956年の白鷺駅前。上のマップと同じ範囲(国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より・USA-M342-2・コース番号:M342-2/写真番号:88/撮影年月日: 1956/03/15(昭31)に加筆)
ご覧のように、田畑が広がっていたところに点々と現在と同じように鉄塔が立っているのが分かる。

というか、北にある球場に目が行っちゃうな。ここ、現在は「中百舌鳥公園団地」っていうちょうかっこいい団地がある場所隣なんだけど(この団地の魅力を語りたいところだがぐっとこらえる)、その前身は球場だったとは知らなかった。

「中百舌鳥球場」という球場でWikipediaによれば旧南海ホークスのもので1939年に完成、2001年まであったそうだ。読むと「しかし大阪市中心部から遠く」とあるので、やっぱりここは都心じゃないか。残念。

あと、泉北高速鉄道がこのエリアだけ地下にもぐるのはこの球場を避けるためだったんだなきっと。

たぶん愛されてる

さて、この白鷺2連鉄ラの近所に住んでいたという方がいた。その人の話がすごくよかった。

「自転車に乗って駅に向かうとき、2回交差点でぐるんと鉄塔のまわりを回るのがちょっとめんどくさかった」
「おもしろいなー、と思ってた気がする。そんなに意識したことなかったけど」

やはり地元の人にとってはあたりまえになっちゃうんだな、こんなにおもしろいものでも。それでいうと、駅前の看板にもしれっと2連鉄ラが描かれてて、すごく日常の雰囲気だ。
駅前の看板に描かれていたイラスト。ちゃんと鉄ラが描かれてる。
駅前の看板に描かれていたイラスト。ちゃんと鉄ラが描かれてる。
あと、すごーく面白かったのは、前出のマップ見ると分かるんだけど、駅前のロータリーがまるで3つめの鉄ラのように見えること。これ、実際たぶん鉄ラを意識してこうしたんだと思うんだよなー(鉄ラ好きの希望的観測)。たぶんなんだかんだで地元の愛着ある風景として、この鉄塔たちは愛されてると思う。
駅前ロータリー。ぜったいこれ鉄ラを意識したと思う。
駅前ロータリー。ぜったいこれ鉄ラを意識したと思う。
さて次は仙台だ!

鉄ラ情操教育

「ついで」を狙って、でいうと仙台で仕事ができたときは小躍りした(ちなみに東北大学で工場とか団地とか共食いキャラとかの講義をしたのだ。だいじょうぶか東北大学)。仙台にもぜひ行きたい鉄ラがあったから。
ほら!これすごくない?(大きな地図で表示
仙台の地下鉄に乗って終点「泉中央」まで行き、そこからバスで10分ぐらい。ほら、鉄ラっていうのはこれぐらい郊外なのがふつうだよ。

で、泉中央駅降りたら、駅前になんだかすごいものがあるじゃないですか!
なんだこれ!
なんだこれ!
意欲的な歩道橋でした!
意欲的な歩道橋でした!
こういう地元の人が何とも思ってないものが一番おもしろいよねー。

さてこのように駅前ですでに高揚した期待。それにこたえてくれるすばらしい鉄ラっぷりでした。
見事にラウンド!(パノラマで撮ったのでよけいぐるんとなっていますが、実際に充分ラウンドしてます)
見事にラウンド!(パノラマで撮ったのでよけいぐるんとなっていますが、実際に充分ラウンドしてます)
閑静な住宅街の中に鉄ラ。
閑静な住宅街の中に鉄ラ。
鉄ラで遊ぶ小学生。すばらしい情操教育!
鉄ラで遊ぶ小学生。すばらしい情操教育!
いいなー、と思ったのは上のように通学路が鉄ラだということ。きっとこの子たちは大人になってから「そういえばよく丸くなった鉄塔のところで遊んだなあ」と思い出すのだ。将来が楽しみだ。

砂場に棒立ててまわり削っていくあの遊び!

地面が斜めだとよけい「鉄塔ってまっすぐ立ってるなー」と思う。
地面が斜めだとよけい「鉄塔ってまっすぐ立ってるなー」と思う。
あと興味深いのは、鉄塔の足元に温存されている元の地形だ。

上にずらっとあげた鉄ラ写真で分かるように、その足元が盛られている。これ、盛られてるんじゃなくて、たぶん逆なんだよね。元の丘陵地の稜線がここに残ってる。
まわりが造成されて、鉄塔のまわりだけが残る。
まわりが造成されて、鉄塔のまわりだけが残る。
大阪と同様、ここが住宅街になる以前の航空写真を見てみよう。
1968年の様子。東の方は良く判別できませんが、鉄塔がすでに立ってます。それにしても山だなあ。(国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より・MTO687X・コース番号:	C7A/写真番号:10/撮影年月日:1968/05/01(昭43)に加筆)
1968年の様子。東の方は良く判別できませんが、鉄塔がすでに立ってます。それにしても山だなあ。(国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より・MTO687X・コース番号: C7A/写真番号:10/撮影年月日:1968/05/01(昭43)に加筆)
山だ。そして鉄塔だけが点々と。よく立てたよなあ。

で、同じ範囲の1971年を見てみると、これがびっくり!
上の写真と全く同じ範囲。鉄塔が残されてる様子がくっきりと!(国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より・MTO713X・コース番号:	C7/写真番号:10/撮影年月日:1971/05/18(昭46)に加筆)
上の写真と全く同じ範囲。鉄塔が残されてる様子がくっきりと!(国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より・MTO713X・コース番号: C7/写真番号:10/撮影年月日:1971/05/18(昭46)に加筆)
なんとちょうど造成中のタイミングで撮られている。ナイス国土地理院!そして鉄塔がまさに御神木のように残されて、まわりが平らにされている。こうして見ると、この街の道路の方向を決めているのは送電線だということがよく分かる。

この鉄塔の残され具合、あれだ、まるで子供の頃やった、砂場に棒立ててまわりを削っていくあの遊びみたい。すごい。

さらに「ついで」を狙ってます

またみんなで見に行きたいです。
またみんなで見に行きたいです。
現在分かっているだけでもまだまだ全国にたくさんある。全部見てみたい。「ついで」の用事はないかな!北九州に特に見たいのがあるんだけど!

【告知】2014/7/12(土)・13(日)「ART OSAKA」に工場・ジャンクション写真出品・そして記念トークイベント!

↑こういう写真を出品しますよ!
↑こういう写真を出品しますよ!
きたる7月12・13日に、ホテルグランヴィア大阪で行われるアートフェア「ART OSAKA」にぼくの工場写真とジャンクション写真が出品されます。アートだぜ!詳しくは→こちら

これを記念して11日(金)の20:30から心斎橋の「digmeout ART & DINER」でトークイベントやります。「工場萌えから団地妻まで」デイリーポータルZで書いてきたネタ含めてあらいざらいネタをしゃべりますよ!みなさんぜひお越しください。イベントについて詳しくは→こちら
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