特集 2014年6月23日

見たら絶対欲しくなる、インテリア仏像の世界

金箔仕上げの千手観音。美しい
金箔仕上げの千手観音。美しい
東京・表参道に仏像の専門店があるという。ん? ちょっと待った。仏像ってお店で買えるものなのか?

と思ったら、そこで取り扱っているのはインテリアとしての仏像なのだそうだ。普通の家に飾って楽しむ、有難くもカッコいい仏像たちを拝んできました。
1980年生まれ埼玉育ち。東京の「やじろべえ」という会社で編集者、ライターをしています。ニューヨーク出身という冗談みたいな経歴の持ち主ですが、英語は全く話せません。

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スタイリッシュ阿修羅がお出迎え

やってきたのはインテリア仏像の専門店「イSム(イスム)」。ブランドショップが立ち並ぶ表参道の路地裏にある。立地が立地だけに、高級ジュエリーショップを思わせるスタイリッシュな外観である。しかし、表の看板に写っているいるのはジュエリーではなく阿修羅像だ。オシャレ阿修羅。
阿修羅が目印
阿修羅が目印
心なしか荘厳な雰囲気の店構え。扉を開けると、菩薩のように穏やかな笑顔の松川政輝さん(イSム・ブランドマネージャー)が出迎えてくれた。
ブランドマネージャーの松川さん
ブランドマネージャーの松川さん

仏像の美術館のような店内

「イSム」は3年前にインテリア仏像の専門ブランドとして誕生。昨年11月には、ここ表参道に初の直営店をオープンさせた。

照明をやや落とした店内。一般の住宅に近いコンディションで仏像を陳列しているため、自宅に飾った時のイメージがつきやすい。
1階では「イSム」オリジナルの仏像たちを
1階では「イSム」オリジナルの仏像たちを
2階では仏師や作家が彫った一点ものを展示
2階では仏師や作家が彫った一点ものを展示
とくに厚い信仰をもっているわけではない僕でも、厳かにたたずむ仏像を眺めているとなんとなく心が和む。また、単純に造形物として見ても、引きこまれるような美しさがある。細部のフォルムや質感に至るまで、思った以上に本格的なつくりだ。

不思議な魅力をもつインテリア仏像。松川さんにいろいろ聞いてみよう。

──これ、どうやって作っているんですか?

「仏像ごとに原型師が専用の型を作っています。型を使って成型したものをツルツルになるまで磨き、ひとつひとつ職人が色を塗っていくという行程です。たとえば阿修羅像だと、小さなものでも色塗りだけで1体40時間はかかりますね」
仏像界のスーパースター「阿修羅像」
仏像界のスーパースター「阿修羅像」
──形をどう再現しているんでしょう?

「お寺に安置されている本物の仏像を、色んなアングルから写した写真をもとに作ります。仏像は展覧会などで全国を回ることがあるので、その機会に図録を入手したり、国会図書館でひたすら資料写真を探したりですね。

ただ、細部のディティールは写真だけでは分からない部分もあるので、実際に職人さんとお寺に実物を見に行くこともあります。仏像は写真撮影NGの場合が多いので、目に焼き付けるしかないんですけどね」
こだわりの果てに生まれるこの完成度。写真は愛染明王。原型製作に10カ月を要した力作
こだわりの果てに生まれるこの完成度。写真は愛染明王。原型製作に10カ月を要した力作
筋肉の筋まで忠実に再現した金剛力士。彩色にもそれぞれ10時間ずつを費やしているという
筋肉の筋まで忠実に再現した金剛力士。彩色にもそれぞれ10時間ずつを費やしているという
──特に手間のかかった仏像は何ですか?

「千手観音ですね」
千手観音。神々しい
千手観音。神々しい
「装飾が多いものは、パーツひとつひとつの型を起こしながら組みあげていくので時間がかかるんです。千手観音は原型師2人がかりで半年かけて作りました」
色や塗装の剥げ具合にもこだわりが。一度金箔を貼り、専用の薬剤で少しずつ剥がしながら本物の質感に近づけた
色や塗装の剥げ具合にもこだわりが。一度金箔を貼り、専用の薬剤で少しずつ剥がしながら本物の質感に近づけた
手もちゃんと1000本あり、全てに指がついている。まさに職人技! なお、価格は25万円。高額だが、これまでに100体くらい売れているそう
手もちゃんと1000本あり、全てに指がついている。まさに職人技! なお、価格は25万円。高額だが、これまでに100体くらい売れているそう

仏像とフィギュアの違い

──ところで、フィギュアと仏像の違いって何なのでしょうか?

「素材自体はポリストーンといってフィギュアと同じものを使っているのですが、素材や作り方というよりはそこに対する思いみたいなものが仏像とフィギュアの違いだと思います」

──というと?

「フィギュアはどちらかというと、おもちゃとして楽しむものだと思うのですが、仏像となるとそれとは少し向き合い方が変わってくるのかなと。たとえば仏像には『守護神』だったり、『勝負の神様』だったり、ひとつひとつに意味合いがあります。そうしたご利益という要素もそうですし、あとは仏像自体がもつ歴史的背景みたいなものを合わせて知ることでより楽しみが深くなるのではないかと思います」
たとえば、こちらの仏頭。長きにわたり他の仏像の台座に埋め込まれていたものだそう。それが昭和になって発見されたところ、じつは凄い名宝だったことが判明した。遥かなる時代を経てようやく日の目を見た仏像。そんな背景を知ると、仏像への愛着がより湧いてくる
たとえば、こちらの仏頭。長きにわたり他の仏像の台座に埋め込まれていたものだそう。それが昭和になって発見されたところ、じつは凄い名宝だったことが判明した。遥かなる時代を経てようやく日の目を見た仏像。そんな背景を知ると、仏像への愛着がより湧いてくる
頭の欠け具合なども正確に再現
頭の欠け具合なども正確に再現

人気ナンバーワンは阿修羅

──人気の仏像はどれですか?

「阿修羅像ですね。特に女性にはダントツの人気です。2009年に阿修羅像が上野の東京国立博物館にやってきた時に、すごく盛り上がって社会現象になりましたよね。アシュラーとか、仏女(ブツジョ)なんて言葉も生まれたりして」

──アシュラー、ありましたね

「そのブームが下火になったというより、定着した感じですね。女性には阿修羅のほか、弥勒菩薩なんかも人気です。どこか切なげな表情が母性本能をくすぐるのかもしれません」
いわれてみればアンニュイなご尊顔
いわれてみればアンニュイなご尊顔
痩せマッチョな体型もモテ要素か
痩せマッチョな体型もモテ要素か
なお、最上位モデルは21万円
なお、最上位モデルは21万円
こちらは如意輪観音。どこか妖艶なたたずまい
こちらは如意輪観音。どこか妖艶なたたずまい
一方、猛々しい毘沙門天や風神・雷神など、男性には力強い仏像が人気だという。
風神
風神
雷神
雷神
「天燈鬼」。もともと悪い鬼だったが改心。燈籠で仏堂を照らす鬼になった。「お尻がプリっとしていてかわいいんです」(松川さん)
「天燈鬼」。もともと悪い鬼だったが改心。燈籠で仏堂を照らす鬼になった。「お尻がプリっとしていてかわいいんです」(松川さん)
個人的に気になったのは彼。だらしない体に親近感を覚える
個人的に気になったのは彼。だらしない体に親近感を覚える
──ちなみに、松川さんの好きな仏像は?

「(食い気味に)蔵王権現です。無邪気な表情と派手な色彩、ポージングの躍動感、全てがパーフェクトに美しいと思います。あまり有名な仏像ではないんですが、じつはこれは私のワガママで作ってしまいました。正直あまり売れていないんですけど、これを作れただけでここで働いていてよかったなと」
松川さんの推し仏、「蔵王権現」
松川さんの推し仏、「蔵王権現」
好きすぎて、蔵王権現のふるさとを巡るフェアを企画してしまうほど
好きすぎて、蔵王権現のふるさとを巡るフェアを企画してしまうほど
「まずは、自分のフェイバリット仏像を見つけてみてはどうでしょう? 最初は単純に造形物としての美しさで選ぶのもアリだと思います」と松川さんは言う。まずは見た目のカッコよさから入って、そこから仏像の奥深い世界にハマっていく人も多いそうだ。

カッコイイ飾り方は?

──家に飾る時のコツはありますか?

「仏像ごとにハマるシチュエーションがあると思うんですよ。たとえば、やさしいたたずまいの仏像だったら和室に置きたいですね。空間がしっとりとセクシーな雰囲気になります。力強い毘沙門天や金剛力士なんかは硬質な男らしい書斎に置いたり、オーディオなんかと一緒に並べるのもカッコいいですね。黒いオーディオに黄金の千手観音を指し色として並べるとか、色の組み合わせで楽しむのもオススメです」
和室に阿修羅はいかがですか?
和室に阿修羅はいかがですか?
デスクに愛染明王。厳しい眼差しに仕事もはかどりそう
デスクに愛染明王。厳しい眼差しに仕事もはかどりそう
金剛力士を愛でながら好きな酒と音楽に浸る。そんな贅沢な時間
金剛力士を愛でながら好きな酒と音楽に浸る。そんな贅沢な時間
リビングにいつも毘沙門天
リビングにいつも毘沙門天
和室だけでなく洋室にも意外とマッチするんですね、仏像。というわけで僕の日常にも俄然仏像をとり入れたくなってきたぞ。
こちらが我が家。殺風景な部屋に仏像でアクセントを加えたい
こちらが我が家。殺風景な部屋に仏像でアクセントを加えたい
どんな仏像を置いたらいいか、松川さんにアドバイスを仰いだ
どんな仏像を置いたらいいか、松川さんにアドバイスを仰いだ
「この部屋だったら弥勒菩薩がいいんじゃないでしょうか。やさしい雰囲気がシンプルな空間にマッチすると思います。テレビ台の横に置きたいですね」
シンプルな部屋にオススメ、「弥勒菩薩」
シンプルな部屋にオススメ、「弥勒菩薩」
ちなみに「イSム」の仏像のグレードはサイズによって3種類に分かれていて、最も小さいクラスの「掌」シリーズは1万9000円と比較的リーズナブル。ちょっと買ってみてもいいかなと思える、なんとも絶妙な価格設定ではないか。
一方、2階にはゼロのケタが2つくらい多い商品が並ぶ
一方、2階にはゼロのケタが2つくらい多い商品が並ぶ
一方で仏師や作家が木から彫り出した1点ものを扱う2階は、カジュアルな1階とはまた違う雰囲気。なかには新車1台買えるくらいの仏像もあり、歩くだけで緊張が走る。

「倒しても買いとっていただければ大丈夫ですよ」と松川さん。笑顔だが目がマジだった。
仏師が彫った1点ものの阿修羅。なんとなく気品が違う。阿修羅の品格
仏師が彫った1点ものの阿修羅。なんとなく気品が違う。阿修羅の品格
36万円也
36万円也
実在する仏像だけでなくオリジナルの作品もある
実在する仏像だけでなくオリジナルの作品もある
220万円!
220万円!
ちなみにこちらが同店で最高額の仏像
ちなみにこちらが同店で最高額の仏像
360万円! ひゃ~
360万円! ひゃ~
ひとつ壊すだけで、うちの会社が傾くくらいの金額である。恐ろし過ぎるのでひと通り見て、そそくさと立ち去る。

最後に気になっていたことを聞いてみた。

──そもそも仏像って気軽に飾っていいものなんでしょうか?

「もちろん信仰心も大事ですが、それと同時に古来から日本に受け継がれてきた伝統美術としての美しさが仏像にはあると思います。たとえば有田焼の壺を床の間に飾るように、文化財を楽しむという感覚でとらえていただけるといいのではないでしょうか」

見たら絶対欲しくなる

「イSム」では仏像の売り上げの一部を、各社寺にお布施として納めているそうだ。仏像の素晴らしさを一般に広めるだけでなく、文化財の保護にも努めている。

なお、ここの仏像はお寺と違って撮影OKとのことなので、写真を撮りに来るだけでも楽しいかもしれない。とはいえ、見たら絶対に欲しくなるので、財布に余裕がある時の訪問をおすすめします。
僕の推し仏は「千手観音」です
僕の推し仏は「千手観音」です

【取材協力】
■イSム表参道店
http://www.isumu.jp/
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