ヘヴィメタル好きの料理勉強家が発案
「メタルめし」の発案者は料理勉強家のヤスナリオさん。このほど日本初のメタル+料理のコラボ本『メタルめし!』を上梓した。
ヤスナリオさん
もっといかつい風貌の人物を想像していたが、意外にもさわやかな好青年だ。トゲトゲのついた服とか着てる人だったらどうしようと思っていたのでちょっと安心だ。
料理研究家ではなく「料理勉強家」と名乗っているところにも謙虚な人柄がにじみ出ている。
普段はぜんぜんメタルっぽくないヤスナリオさんだが、調理中は飢えたメタラーに変身するという。
やさしいヤスナリオさんだが、調理中はメタラーに変身
調理中。バックミュージックはもちろんメタル
そもそも「メタルめし」ってなんなんだ。ヤスナリオさんに聞いてみた。
「メタルめしはヘヴィメタルやハードロックのバンド名、曲名などをモチーフにした料理ですね。たとえばチキンナゲットと十字架ポテトでメタリカの『MUSTER OF PUPPETS』のジャケを完全再現した「マスター・オブ・ナゲッツ」などがあります」
―― ダジャレですね
「レシピをつくる時は、まず好きなバンド名や曲名からもじれそうな食材を考えます。たとえば『ブラック・サバス』だったら「サバス」=「サバ・酢」ということで、サバと酢を使った料理がひらめきました。『エアロスミス』という言葉も何度か口に出しているうちに、エアロスミス、アエロスミス、アエロスミソ、和えろ酢みそ! に変換され、メタルめしに仲間入りしました。好きなバンドでもダジャレが思いつかなくて断念したものもあります」
すべてはダジャレありき
メタルめしの代表格「マスター・オブ・ナゲッツ」
今ではレシピは60以上あり、全てネーミングにこだわっているという。それはメタルめしではなくてダジャレめしではないのか? そんな疑問をぐっと飲み込み、さらに踏み込んでみる。
―― そもそもなぜ、ヘヴィメタルと料理の融合を思い立ったのでしょうか?
「もともと趣味でメタルっぽいご飯とかを作ってたんですよね。それをブログとかにアップしてたら一部のメタルファンの方が面白がってくれて。それで『メタルめし』として本格的にやってみようかなと」
―― 「メタルっぽいご飯」ってなんですか?
「とにかくガッツリ。胃にもたれてナンボみたいなところがメタルっぽさですね。色味は基本赤と黒。味付けはピリ辛系で刺激がほしいですね」
パンテラの出身地テキサス州にちなんだ“ご当地メタルバーガー”「俗悪テキサスバーガー」
「あと、定義としてはやはり曲名かバンド名にかかっていないといけない。そして、ちょっと笑えないといけない。失笑でもいいんです。メタラーってちょっと自虐的なノリをおもしろがるところもあるので」
―― 洒落が通じる人たちなんですね
「メタラーの人ってバンド名ギャグが好きみたいで、けっこう日本にも何軒かメタル居酒屋とかあるんですよ。だからこういうのを面白がる土壌っていうのはあるんだと思います」
―― メタラーって怖いイメージだったので意外です
「ぜんぜん怖くないですよ。意外と気も弱いし。クラスのはじっこのモテないグループのほうだし」
モテないグループだったというヤスナリオさん
―― メタル好きはいつから?
「もう30年になりますね。途中モテようとしてUKロックに走ったりもしたんですけど、ずっとメタルは聞き続けています」
―― メタルはモテませんか?
「モテませんね。どのシチュエーションにも合わないですからね。でも唯一ガッツリめしを食べる時には合うんです。メタルを聞きながら作り、聞きながら食べる。それがメタルめしです」
かつてはメタルバンドを組んでいたことも
―― メタルめしを作る時によく使う食材ってありますか?
「とりあえず黒い食材は重宝しますね。イカスミのパウダーなんかは使い勝手がいいです。あとは『とがってる系』の食材も、オクラとかヤングコーンなんかもよく使います。突起物がたくさんあるとメタルっぽくなりますね。それと、メタルっぽいキッチングッズも東急ハンズとかに売っているので、そういうアイテムを使うと効果的です」
――ハンズで仕入れるところがメタルっぽくなくていいですね。
「ハロウィンの時期だと、特にいいアイテムが手に入りますよ。『ハロウィン』っていうバンドをもじったメタルめしを作る時は、東急ハンズで大量にハロウィングッズを買い込みました。リアルが充実しているように見せかけて、じつはメタルが充実しているっていう」
皿は銀か黒。とりあえず串刺しにするとメタルっぽいという。だんだんわかってきた
数あるメタルめしの中でも最強のビジュアルインパクトを誇る「肉球ジグソーパズル」
こんなの作ってますが、とても穏やかな人でした。好きな飲み物はオレンジジュース
メタルを日本の食卓へ
メタルめしを通じてメタルをこっそりお茶の間に広めたい。それがヤスナリオさんの野望だという。終始おだやかなヤスナリオさんだったが、去り際にこんなことを言っていた。
「記事を書く時は『ヘヴィメタ』とは書かないでくださいね。メタラーはヘヴィメタと略されることを嫌うので」
ゆるいようでいて、じつは深いこだわりがある。メタラーとしての矜持が垣間見えた瞬間だった。
料理勉強家ヤスナリオのブログ
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