専用スタンドの魅力
話は変わるが、1ヶ月ほど前にAndroidタブレットを買った。
箱を開けると、専用スタンドが同梱されていた。
ビシッと立つ
「専用」を手に入れたタブレットは、心なしか誇らしげだ。うらやましい。
「俺専用」で僕が嬉しいように、物にとっても「専用」の存在は誇らしいのだろう。
持つ者と持たざる者
考えてみると、世の中に専用スタンドを持っている物はけっこうある。
メニューは専用スタンドをもっている
八百屋の陳列棚も専用スタンドがある
一体化してるけどこれもスタンドですよね
家にあったこれは
本を開いたまま立てる専用スタンド
買ったタブレットについてきた専用スタンドはこれだけど
いっぽう、100均で買ったタブレット専用スタンド。
専用を2つも持っている場合もあるのだ
専用スタンドに立てかけられた物たちは、みな一様に堂々としている。
持つ者の余裕というやつなのだろう。
しかし、その陰には専用スタンドを持たない者たちの存在があることを忘れてはならない。
持つ者と持たざる者。格差社会の構図だ。
そんな持たざる者に、専用スタンドを作ってあげたい。
たとえば、……ポテトチップスの専用スタンドはどうだろうか。
持たざる者:ポテトチップス
袋入りのポテトチップスはコンビニやスーパーで陳列されて注目を浴びる機会がある。あの陳列棚はある意味スタンドと呼べなくもないだろう。スタンドに載るということは、ショービジネスでいえばステージに上がること。
ただしその中身、一枚一枚のチップスに関していえば、ステージどころか人の目に触れる時間すら恐ろしく少ないのが現実だ。
彼らが人目に触れるのは、袋から出して口に入れるまでの瞬間。その時間は、計ったことはないので憶測だが約0.2秒くらいではないだろうか。人生の晴れ舞台を謳歌するには、あまりに短い。
※パーティー開けを除く
おまえに
翼をあげよう
不遇なポテトチップスに、スタンドを作ってあげたい。
プロトタイプ制作
さあここからめくるめく善行が始まるのだ。泣く用意をしてから読み進めてほしい。(もう泣いている人もいるかもしれない。)
まずは試作品ということで、材料はボール紙で作ってみる。
適当にフリーハンドで書く
切った
パーツが3つ揃ったところ。何か言いたげな顔になった
組立てると一瞬にしてポテトチップス専用スタンドの完成
君にこのドレスをあげよう
いかがだろうか。
ポテトチップスをこんな風に飾って、じっくり眺めたことがある?
一つに一つの波々の質感から、小さな焦げ。膨らんでから割れてクレーターのようになった部分。
すべて、この専用スタンドがなかったら誰にも注目されることなく、あっという間に咀嚼(そしゃく)され食道に流れ込んでいた部分。
斜めから見たところ
逆から見てみると、チップスのエレガントな反り具合がよくわかる
美だ。初めての晴れ舞台。ポテトチップスの初ステージは大盛況。この晩、スラム街育ちの彼女が、一躍スターダムに上り詰めた。
ショービズの世界で生き残るために
ボール紙製の質素なドレスで登場した彼女は、その初々しい演技から注目を集めた。しかし今後ショービズの世界でキャリアを積んでいくうえで、いつまでもボール紙のままではいられない。世間が散々もてはやした彼女の初々しさも、5年10年たってもこのままの芸風では「成長していない」「いつまでも下手なまま」などと批判の対象になってしまうだろう。大衆とは勝手なものだ。
だからポテトチップスは歌唱力を磨いて踊りも覚え、演技の訓練もする。専用スタンドもちゃんとした素材のものに履き替えるのだ。
こんどはフリーハンドで書かずに、ちゃんとさっきの試作品を型紙にして作った
糸鋸で切ったら恐ろしくゆがんだ形に
ヤスリで削ってごまかす
完成。さあ、今日のステージはこのガラスの靴を履いておゆき
いいぞ
おまえならやれる
自分を信じろ
さあ、ブロードウェイへ!
新たな専用スタンドとともにステージに立った彼女の姿に、誰しもが驚いた。
これがあの初々しかったポテトチップスの姿か。しかしその戸惑いは、彼女がマイクの前で口を開くと同時に消え去りった。観客は一人残らず、一瞬にして彼女の歌声に魅了されたのだ。
そして客席の熱狂も最高潮に達したそのとき、悲劇が起きた。
妖刀村正
一本の日本刀が、彼女の身体を貫いた。
彼女の活躍をねたむライバルの仕業か、熱狂的すぎたファンの仕業か、それとも妖刀の呪いか。
なんにしろ、彼女は命を落とした。
伝説の女優
あまりに大勢の人が彼女の死を悲しんだので、彼女は銅像にされることになった。
銅像となったポテトチップス
夜はライトアップされます
ライトアップ?
この記事、ふと我に返るともはや専用スタンドの範疇を逸脱している気がするが、もう遅い。
ここまでについた筆の勢いはもう止まらないし、我に返るのもこの段落が最後である。
キリッとした気持ちになる
「観覧料を取ったほうがいいのでは?」
彼女の銅像はあまりに美しく多くの観光客が押し寄せたので、銅像を所有するブロードウェイ市は、彼らから観覧料を取ることにした。観光収入に目がくらんだブロードウェイ市。これは最悪のターニングポイントとなった。ポテトチップス像の急激な商業化が始まるのである。
金が全てを狂わせた
少しでも銅像を目立たせたいと考えたブロードウェイ市長は、より華やかなライトアップを議会に提案した。可決した。
いっぱい電飾がついた
ど派手なライトアップは刺激的であり、観光客のウケは悪くなかった。
しかし生前の彼女をよく知るファンからは不評であった。極彩色の照明は、彼女の清楚で上品な魅力に似つかわしい物では全くなかったからだ。
高速で点滅するところを撮るとオーラが見えると噂に
しかしファンたちの反対にブロードウェイ市が耳を貸すことはなかった。
そしてついに、さらなる工事が始まった。
この工事には多額の税金が投入された
「できるだけおめでたい感じにしよう」というのが市長の提案
結果、これ以上ない感じになった
なんとなく音楽もつけてみました(YOUTUBEのBGM素材より)
このとき、新しく取り付けられたキラキラに乱反射した光がたまたま通りがかった攻撃的な宇宙人を呼び寄せてしまい、それがきっかけで太古に存在したといわれるポテトチップスの文明は一夜にして滅びたそうです。おしまい。(写真が尽きたので)
崇めます
ポテトチップスに注目してほしいという気持ちが強すぎて、なんだかよくわからないことになった。
ベトナムに行った時に見た仏壇がこんな感じだったような気もする。
仏性の有無はともかく、無性におめでたい感じがするので、部屋の隅に置いて毎日拝もうと思う。
新たな原始宗教の始まりである。
余談ですがブロードウェイは市の名前ではないそうです。ご注意ください。