族でも服でもない真の意味の「レディース」とは
局所的な文化かもしれないが、ここ10年くらいでぐっと、ある男性の集団をひとくくりにまとめるのに「メンズ」を使うようになった。
おそらくそれはイケメン(イケてるメンズ)という言葉の定着化によるところが大きい。女性をひとくくりにまとめて「レディース」とは、あまりいわない。
「レディース」といえば、やっぱりこういうのが先に思い浮かぶ
私は女であるが、レディースという言葉にあまり当事者性を感じたことがない。そういう女性はきっと多いと思う。
それでいいのか。ここらで今一度、レディースって何なのか考えてみるべきではないのか。
「レディース」を見つめなおしてみてください
と、このように急にレディースとは、などと言い出したのにはわけがあるのだ。実は本稿はライフネット生命からの依頼を受けて書いている。
「新じぶんへの保険レディース」という女性専用の終身医療保険の販売にあたって、ライフネット生命が
「レディースってなんなのか、改めて見つめなおしたい」
というのだ。ほとんど自分探しではないか。どうした、ライフネット生命。
と、風にあおられながら向かったのは池袋のサンシャインシティである
ヒントを求めて「レディースデー」を巡ります
急展開となりますが、やってきたのは池袋のサンシャインシティ。
ここは水曜日を「レディースデー」として、各店舗が女性に向けた独自のサービスを行っているのだ。レディースデーといえば映画館を想像するが、それだけではないらしい。
ポスターも
サンシャインシティ以外にも水曜をレディースデーとしている商業施設はぽつぽつ見つかった。このレディース向けサービスをめぐればレディースのヒントが見えてくるのではないかと考えたのだ。
たとえば、ここまででまずレディースについて分かったことが一つあるだろう。
レディースは、水曜日に現れるということだ。レディースデーは基本的にどこも水曜日限定なのだ。
「レディース」について分かったこと
レディースは水曜日に現れる
こんな感じで勝手にレディース像をあぶり出して行こうと思いますよ。
レディースは雨でも水曜にやってくる
シャツを買うと洗濯網がもらえる
サンシャインシティにはたくさんのテナントがあり(専門店街に「アルパ」と「アルタ」があって、アルパが10時オープン、アルタが11時オープンなどややこしいのもまた一つの魅力である)、その多くがレディースデーの対象になっていた。
サービスはさまざまだったが、まず注目したのはシャツのお店。買物をすると洗濯ネットをくれるという。
本当にくれた。しかも、お店のオリジナルの洗濯ネット
これがレディース向けサービスか。なるほど、という思いである。
シャツを買うと洗濯ネットが出てくる。経済的な面から見ても、洗濯への気配りにしてもレディースは思った以上にしっかり者だ。
「レディース」について分かったこと
大変なしっかり者
東池袋駅からサンシャインシティに入る通路にかっこいいエスカレーターもあったよ
服を買うとスカーフがもらえる
もう一店、古着のお店へも行ってみた。買物をするとスカーフをくれるんだそうである。
スカーフ! 衣料品の中でも着こなしに気を使う人が使う部類のグッズではないか。
ある程度は想像していたが、レディースとはかなりおしゃれな人のようだ。
服の方は何を買ってもサービスは受けられる。普通のスカートにしておいた
特典のスカーフはレジでお店の方がごそっと出してくれた。色とりどり、種類もいろいろ。古着の店なのでスカーフもユーズド品なのだ。
どれでも選んで良いということだったので個人的に一番レディースっぽいのではないかというものを選んだ。
そしてさきほどのシャツとあわせたところ、全日空っぽくなった
「レディース」について分かったこと
やはりスカーフを身に着ける
「レディース」について分かったこと
そしてどことなく全日空っぽい
続いては東京ドームシティへ
雨の降り続くなか、続いては東京ドームシティへ。
ラクーア、東京ドーム周辺のテナント、アトラクションズなどなど、一帯で大掛かりにレディースデーを実施しているようだ。レディース、もてなされてる。
まずはラクーア
パンを買ったらお菓子もくれる
ラクーアではムーミンをテーマにしたカフェへ行ってみた。カフェにベーカリーが併設されており、買物をすると焼き菓子をくれるという。
こちらのベーカリーは初めて訪れたのだが、フィンランドのパンがたくさん並んでいてうっかり興奮してしまった。
フィンランドの伝統的な黒パンを購入、おまけはスナフキン型のパイのお菓子。か、かわいい…
パンを売ってお菓子もくれる。とんだ逆マリー・アントワネットだが、そんなサービスがレディースの望みなのだ。
「レディース」について分かったこと
パンがあってもお菓子も欲しい
カフェではパンの食べ放題つきランチが行われているらしく大雨の平日にもかかわらず行列ができていた。
ムーミンのカフェがあるという話は聞いたことがあったが、そこでフィンランドのパンの食べ放題ができるとは知らなかった! 今度改めていくか…。
と、今回のレディースサービスめぐりで思った以上に見聞を広げていることに気づいた。
「あの人っていろんな場所についてよく知ってるのよねえ」なんていわれる女性はよくいるが、彼女はレディースだったのかもしれない。
「レディース」について分かったこと
各地のお店情報に詳しい
レディースデーは東京ドームシティー内のあちらこちらでプッシュされていた
続いても私にとっては完全に未踏の地。こんなところにも「東京ドームシティ」の一部があったのか、とその広大さを知らされた、ミーツポートである。
地下鉄の水道橋駅のすぐ前という立地ではある
ぬかりなくランチのレディースセットも体験
レディース向けのサービスといえば、「レディースセット」というのも脈々とある文化だ。ランチなんかでよくみかける。
大抵は少ない量で品目をたくさん食べられるようにしてあったり、デザートがついてきたりする。
これはまた豪華なパターンのレディースセットですよ
少量をたくさん。レディースセットの基本をしっかり守り、
炊き込みご飯はごぼうとホタテと生姜。全部女子が好きなやつや
こちらのお店のランチ価格帯は1000円~1500円くらいだったが、レディース御膳は1950円。
そういうお店だったといってしまえばそれまでだが、レディース、いいもん食べてる。
「レディース」について分かったこと
いいもん食べてる
コーヒーとアイスクリームまででてきて、自腹だというのになんだこの申し訳なさは
どれもしっかりおいしかったが、何か緊張してい胸がつかえ、そこを強引詰め込むように食べてしまった。レディース慣れしていないがためにもったいないことをした。
さて、すっかりレディースをもてあますなか、こちらのお店では畳み掛けてプレゼントのレディースサービスもある。
おしゃれな野菜ももらえるぞ
プレゼントというのは、野菜だそうだ。水曜に来た女性客には野菜をくれるという。
チコリフリーゼ、という野菜をくれた
そうきたか!
実は行きつけの「やる気茶屋」が帰りにこれは男女問わず野菜をくれることがあるのだが、中身は大抵ニンジン、玉ねぎ、じゃがいものカレートリオである。
今回もそれくらいの感じを想像していたので驚いた。ここまでやるか、レディースよ。
「レディース」について分かったこと
野菜もおしゃれでなくちゃね、が口ぐせ
最後はイクスピアリへ
見出したレディース像の女性としてのレベルの高さになかなかに圧倒されてしまっているが、レディースを見直す旅は終わらない。
続いて向かったのは、舞浜のイクスピアリだ。デフォルトでレディースっぽさをかもし出しているようにも感じる場所である。
平日の雨にもかかわらず人出があった
ここまでサンシャインシティも東京ドームシティもレディースデーをポスターなどでアピールしていたが、イクスピアリは大きくはプッシュはしていないようだった。
なんでだ、名前に「シティ」がつかないからか。
パンフレットには出てた。ひと安心
ジェラートの幻のトリプル盛りが食べられる
こちらで目をつけたのはジェラートの店。通常ダブルまでしか取り扱いのないところ、水曜日のレディースデーだけトリプルが注文できるのだ。
レディースの想いはジェラートの盛りすらも変えていく。
カシス、アプリコット、辛口ジンジャーレモンを選びましたよ
つい写真写りを気にしてカラフルになるように注文してしまったが、食べていると「食べたいもん頼んだら3種類とも白になっちゃった~~」という声が聞こえてきた。感覚でしかないが、そっちの方がレディースっぽいなと思った。
「レディース」について分かったこと
「ちょっとの量でたくさんの種類を食べたい」という想いはジェラートにも届くほど
イクスピアリにある餃子の店とは
さて、ここイクスピアリはディズニーランドに隣接しているとあって、施設のレジャー度合いが強い。内装もファンタジックにしてあって非日常の浮かれが存分に楽しめるようになっている。
しかしパンフレットで見て最後に選んだのは餃子のお店だ。しかもイートインではなく持ち帰り専門店らしい。そんな店、このイクスピアリにあるんだろうか。
看板には確かにロゴが。あれ、おにぎり屋さんやたこ焼き屋もあるのか
餃子18個買うと2個くれる
行ってみると確かに餃子の店はあった。観光地っぽさのない、デパ地下のような一角だ。こんな落ち着く場所があったとは。
サービス内容は、「餃子18個買うと2個くれる」。
レディースの能力範ちゅうもいよいよ餃子の量を増やすところまできた。
サービス部分は別包装で分かりやすい
「レディース」について分かったこと
餃子の量を増やす能力を持つ
最後の最後になかなか意外なレディース像がみえたのではないか。
充実感とともに餃子18個+2個を手にぶらさげてそのまま外へ出ると、舞浜ではない普通の駅のロータリーのような場所に出た。あれ。
普通の駅ロータリーが
ここ、どこだ。
ばかされたのかと一瞬とまどったが、見回すと駅のすぐ下であった。改札のあのわくわくした空気が一切ないので気づかなかった。
そうだ、舞浜で下車するのはディズニーランドやイクスピアリに行く人だけじゃないだろう。住んでいる方もたくさんいるのだ。
レディースは、夢の国近くにあっても冷静な生活観を持っていた。
「レディース」について分かったこと
根底にあるのは生活である
ちょっとのぼると、夢の国の入り口、ご存知舞浜駅
根底にあるのは生活。なんだか急に政党名みたいなことを言いだしてしまったが、これでレディースをめぐる旅は終わりである。
甘いものやおしゃれが好きで、ミーハーなところがあるかと思えば、きちんとしていて生活感もある、餃子を余計にもらう能力のある水曜日だけに現れる謎の女。
雨の日の1日あるきまわって、そんなレディース像が私の前に現れたのだった。
ミッション、まさかのクリア
翌日、本ミッションのクライアントであるライフネット生命の担当、肥田さんに調べてきたレディース像について報告を行った。
「(前略)……餃子が2個、余計にもらえる。それがレディースです」
肥田さんは大いに納得してくれたようである。そしてはっとしてパンフレットをめくった。
「きちんとして、生活感がある」のがレディースなんですね!! まさに、そんな方が万が一に備える保険として開発したのが「
新じぶんへの保険レディース」です! 例えば、家族を支える女性に万が一のことがあったら、家計の負担が増えてしまう。そんな不安をしっかり保障してですね……(以下略)
なんと、「水を得た魚」という表現はこういうときに使うのでは、という勢いで解説が爆発したではないか。
レディース向け保険を売る会社として「レディースってなんなのか、改めて見つめなおしたい」。そのヒントを拾うというのが今回のミッションだったわけだが、クリアした…と思っていいだろうか。
さらにトークは止まらない。
「パンがあってもお菓子も欲しい」という方には「おすすめコース」がぴったりです。 女性入院給付金に加えて「がん治療給付金」と「先進医療給付金」、更には「3大生活習慣病による入院保障」も付いているので、保障内容を充実させたいという方にはぜひ……(以下略
この後もオンステージは小一時間続いた。喜んでいただいてよかった。私としてはむしろ一層「レディース」が分からなくなった気もする。
気のせいである。