特集 2014年4月29日

オオグソクムシはカニとかシャコに近い味

行列ができるオオグソクムシ試食会

オオグソクムシの試食会が行われたのは、横浜中華街にあるヨコハマおもしろ水族館。試食会の予告ツイートが話題を呼び、Yahoo!ニュースなどにも取り上げられたので、気にはなった方も多いだろう。

オオグソクムシといえば、静岡県焼津市の深海魚専門漁師の長谷川さんの船に興味本位で乗せていただいた際に、じっくりと見たことがあるのだが(こちらの記事)、今回の企画は水族館の名誉館長に就任した長谷川さんが主役のイベントだった。やはり。

どんな味なのかは気にはなるけれど、わざわざ食べなくてもいいのではと思われがちな深海生物の試食会に、一体どれだけの人が集まるのだろうか。
強引な甘栗の販売に注意だそうです。中華街怖ーい。
強引な甘栗の販売に注意だそうです。中華街怖ーい。
試食会の定員は一日100人。そんなに集まるのかという気もするのだが、念のためにと朝早く家を出て、9時半に現地へと到着すると、なんとすでに行列ができていた。イベントは11時からなのに。

ちなみに長谷川さんの息子の一孝さんにこの行列をメールで伝えたら、渋滞にはまっていて、まだ到着していなかった。

この日試食できるのは、深海鮫とオオグソクムシの2種類。別にバツゲームではない。どちらか食べたい方を選ばなければいけないのだが、どうやら前の方に並んでいる人のほとんどは、オオグソクムシ狙いのようだ。
開館以来最大の来園者数だったそうです。行列はまだまだ伸びました。
開館以来最大の来園者数だったそうです。行列はまだまだ伸びました。
1番乗りは、埼玉からやってきた女性2人組。朝7時半から並んでいるそうです。もちろんオオグソクムシ狙いで、「甲殻類だからエビっぽい味では?」とのこと。
1番乗りは、埼玉からやってきた女性2人組。朝7時半から並んでいるそうです。もちろんオオグソクムシ狙いで、「甲殻類だからエビっぽい味では?」とのこと。
二番手グループは知り合いだった。「丸くて美味しそう!」「見た目からエビっぽいのでは?」「いや形からマダガスカルゴキブリに近い味と予想しています」だそうだ。その味知らない。
二番手グループは知り合いだった。「丸くて美味しそう!」「見た目からエビっぽいのでは?」「いや形からマダガスカルゴキブリに近い味と予想しています」だそうだ。その味知らない。
さすがは中華街、待ちながら食べた肉まんがおいしかったです。
さすがは中華街、待ちながら食べた肉まんがおいしかったです。

深海鮫 or オオグソクムシ

ようやく開園の時間となると、飛行機の機内食を「Fish or Meat?」と聞かれるような感じで、「深海鮫ですか?オオグソクムシですか?」と質問された。「Shark or Bug」である。

今後の人生で決してされることはないであろう質問だ。どんな二択だ。深海鮫は自分で料理して食べたことがあるので(おいしい)、私はオオグソクムシを選択。
オオグソクムシばかりが注文されていく。
オオグソクムシばかりが注文されていく。
イベント開始の時刻まで、しばらく水族館の中を見学。長谷川さんが名誉館長をやっているだけあって、深海生物コーナーが充実しており、オオグソクムシのタッチプールが常設されていた。これからこれを試食するのかと思うと感慨深い展示である。

ちなみに鳥羽水族館で6年に渡って断食をしていたのは海外に住むダイオウグソクムシという種類で、今日試食するのは駿河湾のオオグソクムシ。ラグビーボールとゴルフボールくらい大きさが違う。
タコ焼きと一緒に展示されていたタコ。全体的にこういうノリの水族館です。
タコ焼きと一緒に展示されていたタコ。全体的にこういうノリの水族館です。
でた、オオグソクムシ。
でた、オオグソクムシ。
水槽の中から見られて迫力満点。
水槽の中から見られて迫力満点。
やはりダンゴムシやフナムシの仲間だそうだ。ウソでもいいからエビやシャコの仲間だといってくれ。危険が迫ると口から臭いにおいを出すとか書いてあるぞ。
やはりダンゴムシやフナムシの仲間だそうだ。ウソでもいいからエビやシャコの仲間だといってくれ。危険が迫ると口から臭いにおいを出すとか書いてあるぞ。
生きたオオグソクムシと触れ合えるタッチプール。
生きたオオグソクムシと触れ合えるタッチプール。
殻がものすごく硬い。グソクムシは漢字だと愚息虫ではなく具足虫。甲冑のことである。
殻がものすごく硬い。グソクムシは漢字だと愚息虫ではなく具足虫。甲冑のことである。
独特の張りがある腹側。シャコっぽいと言えなくもない
独特の張りがある腹側。シャコっぽいと言えなくもない
興味がある人だけ動画でどうぞ。

大盛り上がりの深海鮫解体ショー

試食会は長谷川さん親子による「深海鮫の解体ショー&トークショー」の一環として行われる。マグロではなく深海鮫の解体ショーが、果たしてショーとして成立するのか、他人事ながら若干心配である。

ちょっと早めに会場へと入ると、渋滞を抜けてどうにか到着した一孝さんが、居残り勉強をする小学生のように、机の上でパソコンと格闘していた。がんばって!
小学校をモチーフにした水族館らしいです。
小学校をモチーフにした水族館らしいです。
試食会の効果もあってか、イベントは立ち見はもちろん、通路にも人が溢れるほどの盛況っぷりだった。世の中が深海魚ブームというのは、どうやら本当の事らしい。

勝手に心配していた深海鮫の解体ショーも、営業慣れしている感がすごい長谷川さんのトーク力もあって、大盛り上がりをみせた。本当は漁師じゃなくて実演販売の人なのかもしれない。

若干暴走気味の長谷川さんと、それを冷静に抑える一孝さんのコントラストが素敵だった。
さかなクンが来るわけでもないのに超満員となった会場。
さかなクンが来るわけでもないのに超満員となった会場。
白いハチマキの長谷川さんと、白いメガネの一孝さん。
白いハチマキの長谷川さんと、白いメガネの一孝さん。
まばたきをすることでおなじみの深海鮫、ユメザメ。
まばたきをすることでおなじみの深海鮫、ユメザメ。
半解凍状態なので、本物の深海鮫なのに解体用模型みたいでかっこいい。
半解凍状態なので、本物の深海鮫なのに解体用模型みたいでかっこいい。
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まずは深海鮫の試食から

試食用として先に用意されたのは、深海鮫である。深海鮫は普通の鮫と違って、体内にアンモニアを貯め込まないので、身が臭くならないのが特徴。意外なほどにきれいな白身である。

深海鮫といえば、ニフティが運営するカルチャーカルチャーというライブハウスができたばかりの頃、デイリーポータルZのイベントで、深海鮫のフライを試食用に出したときの、関係者の不安そうな顔が忘れられない。

それが今や深海鮫だけではなくオオグソクムシの試食会である。時代は変わったんだなと勝手に思った。
試食のメニューがけっこうな本気モード。
試食のメニューがけっこうな本気モード。
深海鮫は乃木坂にあるイタリアンレストランで調理されたものらしい。本気だ。
深海鮫は乃木坂にあるイタリアンレストランで調理されたものらしい。本気だ。
この場に集まっている人たちだけあって、我先にと深海鮫に集まってくる。
この場に集まっている人たちだけあって、我先にと深海鮫に集まってくる。
深海鮫のバジルソテー。
深海鮫のバジルソテー。
深海鮫のフリット。
深海鮫のフリット。
深海鮫を試食していた人に味の感想を聞いてみたら、「さっぱりして淡白!」「臭みは全然ないですね」「弾力がすごいですね」「サメといわれなければわからない」とのこと。乃木坂から運んできたので、料理が冷たくなっているのが残念なところかな。

私が過去に何度か食べた経験からお伝えすれば、タイとかヒラメのような白身魚を、深海の水圧で加圧トレーニングしたような、モチモチした弾力のある肉質だと思ってもらえば、だいたいあっていると思う。こちらの記事参照
こういうイベントにわざわざ来る人だけに、深海鮫も食べ物として違和感がないようです。
こういうイベントにわざわざ来る人だけに、深海鮫も食べ物として違和感がないようです。

さあオオグソクムシを試食してみよう

イベント後半戦の深海鮫トークショーの後は、お待ちかねのオオグソクムシ試食会である。調理方法は香味揚げ。

あのカブトムシよりも硬い殻でがっちりと武装したオオグソクムシは、一体どんな姿で登場するのだろうか。
トークショーでスライドを披露する一孝さん。「とうちゃん、この問題わからないよー」「ばっきゃろう、俺だってわかんないよ!」と、宿題をやっている訳ではない。
トークショーでスライドを披露する一孝さん。「とうちゃん、この問題わからないよー」「ばっきゃろう、俺だってわかんないよ!」と、宿題をやっている訳ではない。
深海鮫の時よりも熱気があるオオグソクムシの試食会。
深海鮫の時よりも熱気があるオオグソクムシの試食会。
じゃーん。これがオオグソクムシの香味揚げである
じゃーん。これがオオグソクムシの香味揚げである
ええと、硬くて食えないっす。
ええと、硬くて食えないっす。
今のはウソだ。試食用に用意されたオオグソクムシは、内臓を抜かれた状態で冷凍されたものを、中華街にある某中華料理店(店名は諸事情で秘密!)で調理したもの。

オオグソクムシの甲羅は、煮ようが揚げようが硬くて食べられないので、二つに割って、そのわずかな身をほじくり出したものが、試食用に配られたのである。
イベント後に調理場を見学。丸のまま素揚げにしたものを、胡麻油とネギで香りよく炒め、塩と胡椒で味付け。火を通しても赤くならないクールガイ。
イベント後に調理場を見学。丸のまま素揚げにしたものを、胡麻油とネギで香りよく炒め、塩と胡椒で味付け。火を通しても赤くならないクールガイ。
中華街だけに中華包丁で真っ二つにして、身をほじくり出す。アーティーチョークくらい食べるところが少ない。
中華街だけに中華包丁で真っ二つにして、身をほじくり出す。アーティーチョークくらい食べるところが少ない。
試食の量が少ないという声もあったが、これでも一匹の半分の量なのだ。
試食の量が少ないという声もあったが、これでも一匹の半分の量なのだ。
さてその味だが、大方の予想通り、エビとかカニとかシャコとかの、甲殻類系の安全な味だった。珍味という感じではない。

個人的に一番近いと思うのは、ワタリガニの足の付け根の部分だろうか。甘みと旨みが強くて、かなりおいしい部類の虫である。食べ終わった後に口の中でその味がしばらく残っていた。

ただ、やはり食べられる量が少なすぎるので、食品として一般に流通することはないだろう。これを20匹分くらいをまとめて、具足炒飯にして食べたいところだ。
ちゃんとうまいですよ。
ちゃんとうまいですよ。
水族館の方にお話を伺ったところ、このイベントは来場者に学べる体験をしてもらうためのもので、以前から深海鮫の試食はおこなってきたのだが、今回おまけとしてオオグソクムシの試食をちょこっと用意してみようとツイッターに上げてみたところ、予想以上の大評判となったそうだ。一日100食の予定を、急遽300食まで増やしたものの、それでも足りなかったらしい。

ということで、こうしてオオグソクムシの味を知ることができたのだが、イベント終了後に長谷川さん親子と話したところ、やはり冷凍すると味が落ちるそうで、船の上で食べるのが一番だそうだ。

オオグソクムシにも、うまいとかうまくないとかの概念があるのか。そういわれるとどんな味なのか気になってしまうので、オオグソクムシの味を再評価すべく、船の上で食べさせてもらう約束をした。
これは中華街で食べたソフトシェルクラブのから揚げ。これの身を出されても、正直わからないと思う。
これは中華街で食べたソフトシェルクラブのから揚げ。これの身を出されても、正直わからないと思う。
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オオグソクムシを求めて静岡県焼津市へとやってきた

オオグソクムシの試食イベントから数日後、やってきたのは静岡県焼津市の小川港。長谷川さん親子の船、長兼丸が停泊している港だ。

獲れたてのオオグソクムシの味を確かめるために、焼津までやってきたのである。一緒にやってきた友人は、花見で振る舞うんだと張り切っている。どんな花見だ。
本当に焼津までやってきました。長谷川さんは焼津おさかな大使という肩書きがあるそうです。
本当に焼津までやってきました。長谷川さんは焼津おさかな大使という肩書きがあるそうです。
平日なのに参加希望者が多く、7人乗りの車に7人乗ってやってきた。仮に「チーム Yay's」とでも名付けよう。
平日なのに参加希望者が多く、7人乗りの車に7人乗ってやってきた。仮に「チーム Yay's」とでも名付けよう。
オオグソクムシは獲れそうですかと聞いたら、「任せなさい!神の手だぞ!」と、自信満々だ。
オオグソクムシは獲れそうですかと聞いたら、「任せなさい!神の手だぞ!」と、自信満々だ。
「オヤジは神の手とかいうけど、実際に操船をしているのは僕なんですけどね…」とつぶやく一孝さん。
「オヤジは神の手とかいうけど、実際に操船をしているのは僕なんですけどね…」とつぶやく一孝さん。
スーツで漁船の乗船した焼津市職員の方。駿河湾の深海生物を焼津の観光資源として期待しているそうです。
スーツで漁船の乗船した焼津市職員の方。駿河湾の深海生物を焼津の観光資源として期待しているそうです。
女性には長靴を貸す長谷川さん。
女性には長靴を貸す長谷川さん。

オオグソクムシはかわいいかもしれない

オオグソクムシは深海ならある程度の数が生息しているようだが、それを狙って獲っている漁師は、多分世界にも長谷川さん親子くらいだろう。

数日前から駿河湾の水深400メートル前後のポイントに沈めておいた筒状の仕掛けを、船のウインチで引き上げる。

エサは通常は焼津らしくカツオやサバのアラなどを使うそうだが、今日ははじめてホッケの切り身を試してみたそうだ。ホッケは焼津の海にいない魚なので、オオグソクムシが気に入るかちょっと心配らしいが、神の手だからきっと平気。
仕掛けた筒が上がってきた!
仕掛けた筒が上がってきた!
筒の中身はなんだろな~。
筒の中身はなんだろな~。
でた、オオグソクムシとヌタウナギ!
でた、オオグソクムシとヌタウナギ!
我々のために50本沈めたという仕掛けをあけると、かなりの確率でオオグソクムシが入っていた。なんだかイメージよりも大きい。そしてたまに混ざるのが、ぬめりがすごいヌタウナギである。

カゴにどんどんと溜まっていくオオグソクムシ。素人目には多いのか少ないのかよくわからない量だが、長谷川さんに言わせると、いつもの半分以下らしい。やはりホッケはダメなようだ。
漁船の上で見ると、食用のセミエビとかウチワエビの仲間に見えなくもないです。
漁船の上で見ると、食用のセミエビとかウチワエビの仲間に見えなくもないです。
「こんばんは、オオグソクムシのオグちゃんです。」
「こんばんは、オオグソクムシのオグちゃんです。」
「ホッケを食べすぎてお腹パンパンだよ。見て、この三段腹!」
「ホッケを食べすぎてお腹パンパンだよ。見て、この三段腹!」
「手乗りアルマジロだと思えば、相当かわいいでしょ?」
「手乗りアルマジロだと思えば、相当かわいいでしょ?」
かわいいかわいいと言いながら手に乗せて遊んでいると、急にセメント状の泥を吐いたりするところがツンデレ。
かわいいかわいいと言いながら手に乗せて遊んでいると、急にセメント状の泥を吐いたりするところがツンデレ。
フナムシサイズのオオグソクムシも、大物とはまた違った魅力があると思う。ある意味リアリティのある大きさなので、ダメな人は絶対ダメだろうが。
フナムシサイズのオオグソクムシも、大物とはまた違った魅力があると思う。ある意味リアリティのある大きさなので、ダメな人は絶対ダメだろうが。
陸上ではひっくり返ると戻れないらしい。かわいいといえばかわいい。
陸上ではひっくり返ると戻れないらしい。かわいいといえばかわいい。
宇宙人もびっくりのかわいらしさ。
宇宙人もびっくりのかわいらしさ。
かわいい要素がまったくないヌタウナギもある意味すごい。
かわいい要素がまったくないヌタウナギもある意味すごい。
私の大好物である大きなマアナゴが獲れたのだが、「こんなのいらねえだろ!」と、長谷川さんが海に逃がしてしまった。これが深海魚専門漁師の価値観か。
私の大好物である大きなマアナゴが獲れたのだが、「こんなのいらねえだろ!」と、長谷川さんが海に逃がしてしまった。これが深海魚専門漁師の価値観か。
海鳥たちのランデブー。
海鳥たちのランデブー。
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オオグソクムシの煙突焼き

見れば見るほどかわいいオオグソクムシだが、情が移る前に食べさせていただくことにしよう。

調理方法は、船上でしか食べられない煙突焼きだ。内臓をきれいに取り出したオオグソクムシを、そのまま船の煙突に突っ込み、高温で一気に焼くという豪快な調理法である。

前に船に乗せてもらった時は、ミルクガニ(本名エゾイバラガニ)という深海のカニを煙突焼きで食べさせてもらったが、まさかオオグソクムシの煙突焼きを食べる日が来るとは思わなかった。
内臓には食べたものがパンパンに詰まっているので、きれいに洗い流す。
内臓には食べたものがパンパンに詰まっているので、きれいに洗い流す。
内臓にあるウニみたいな部分がおいしそうだけれど、よくわからないから食べないそうだ。軍艦巻きで食べてみたいような気もする。
内臓にあるウニみたいな部分がおいしそうだけれど、よくわからないから食べないそうだ。軍艦巻きで食べてみたいような気もする。
下処理をしたオオグソクムシを網に詰める。鳥羽一郎と一緒に「兄弟船」を歌うのが夢。
下処理をしたオオグソクムシを網に詰める。鳥羽一郎と一緒に「兄弟船」を歌うのが夢。
これが調理道具となる船の煙突。
これが調理道具となる船の煙突。
煙突にオオグソクムシを突っ込んで焼く。お気に入りのアナウンサーはテレビ静岡の伊藤弘美さん。
煙突にオオグソクムシを突っ込んで焼く。お気に入りのアナウンサーはテレビ静岡の伊藤弘美さん。
煙突の中で一気に焼かれたオオグソクムシは、真っ黒になっていて、なんというかゴキブリっぽさがアップしていた。

よく言えば、宮崎名物の鶏の炭焼きのような黒さだ。あるいは松崎しげる。
この記事内ではゴキブリという単語は避けていたのだが、最後のページだからいいか。
この記事内ではゴキブリという単語は避けていたのだが、最後のページだからいいか。

確かにおいしい船上のオオグソクムシ

焼きたてのオオグソクムシからパキパキと殻を剥がし、わずかに見えるその身をいただく。

さすがは獲れたてを高温で一気に焼いただけあって、ふっくらとして甘みがあり、海水の塩気と相まって、今までに食べた甲殻類料理の中でも上位に入るであろうおいしさだ。味としてはシャコが一番近いかな。焼津まで来てよかった。

いくらでも食べられる美味しさなのだが、食べるところがいくらもないのが悲しいけどね。
こうやって殻を割れば、おいしそうな気もしませんか。
こうやって殻を割れば、おいしそうな気もしませんか。
イセエビのように見えなくもないでしょう。
イセエビのように見えなくもないでしょう。
これは煙突焼きにした深海のツブ貝。普通(でもないけど)の食べ物って食べやすい!
これは煙突焼きにした深海のツブ貝。普通(でもないけど)の食べ物って食べやすい!
これは小川港魚河岸食堂で食べた、オオグソクムシと同じく駿河湾の深海にすむ怪しいエビ。要するにサクラエビですね。
これは小川港魚河岸食堂で食べた、オオグソクムシと同じく駿河湾の深海にすむ怪しいエビ。要するにサクラエビですね。
オオグソクムシを食べるというのは、昔からある焼津の食文化という訳ではなく、つい最近、長谷川さんがはじめたことらしい。

きっかけは数年前のテレビロケで、乗船したタレントから「これ(オオグソクムシ)って食べられるんですか?」と聞かれて、「当たりめえだろ!こんなうめえもんないよ!カルシウムたっぷりだよ!」と長谷川さんが適当に答えたため、急遽お店に持ち込んで料理してもらったのが起源。

もちろん長谷川さんは、それまでオオグソクムシを食べたことなど一度もなかったそうだ。毒とかなくてよかったですね。
長谷川親子にとっては当たり前の存在だったオオグソクムシを食べるために、水族館に行列ができたり、焼津までくる人がいることに驚いているそうです。
長谷川親子にとっては当たり前の存在だったオオグソクムシを食べるために、水族館に行列ができたり、焼津までくる人がいることに驚いているそうです。
2009年の大地震以降、駿河湾の深海鮫は激減しまったそうで、新しい稼ぎ頭として資源量が豊富なオオグソクムシに期待しているとのこと。

一孝さんとしては、ミルクガニやヌタウナギ漁などと合わせて、獲って食べる体験型深海ツアーなど、この焼津の長兼丸でしかできない体験学習を、今後は計画していきたいそうだ。

余談としてのオオグソクムシ調理

ここから先は完全に余談だが、生きたオオグソクムシを長谷川さんから数匹買ってきたので、家で調理してみたいと思う。

残念ながら我が家には煙突がないので、一般家庭でもできる調理方法を研究してみたい。

まず一番の課題である内臓の取り出し方だが、数匹捌いているうちに、胃袋をきれいに取り出す方法を発見した。

これで他の内臓を残したまま、匂いの元となる胃袋を取り出すことができる。
胃袋が綺麗にとれました。
胃袋が綺麗にとれました。
胃袋さえとれてしまえば、あとは普通の食材である。見た目以外は。

半分に割ってみると、エビっぽい白い身が殻にギッシリと詰まっており、そして中央部分には黄色い謎の内臓が入っていた。

この写真を虫の専門家に見てもらったところ、中腸腺という消化にかかわかる器官ではないかとのこと。食べられるかどうかは別問題として、エビやカニでいうミソの部分だそうだ。若干不安だが、せっかくなので食べてみよう。
おいしそうに見えませんかね?
おいしそうに見えませんかね?
これを煮たのが、具足煮である。そう、オオグソクムシだけに具足煮だ。

説明しておくと、具足煮とはイセエビなどを煮た料理のことだ。手前にあるのは同じく駿河湾のヌタウナギ。
駿河湾深海のジビエ、オオグソクムシの具足煮。
駿河湾深海のジビエ、オオグソクムシの具足煮。
食べてみると甘い煮汁とオオグソクムシの身の相性がとてもよく、まだ食べたことのないイセエビの具足煮よりもおいしいのではないかと勝手に想像してしまう出来のよさだ。

トゲトゲした脚を事前に切っておけば、見た目の怖さも緩和されることだろう。
ミソもうまいよ。
ミソもうまいよ。
黄色いフワフワしたミソの部分も、甘みがあってとてもおいしい。できれば生で食べてみたいような気もするが、いろいろと不安だ。

オオグソクムシは火を通しても赤くならないので、結婚式のようなめでたい席には向かないけれど、法事の席にはいいかもしれない。
小型だった殻ごといけるのではという予測の元、フナムシサイズを唐揚げにしてみることにした。
小型だった殻ごといけるのではという予測の元、フナムシサイズを唐揚げにしてみることにした。
揚げても赤くならないので見た目は悪いが、川エビ程度の硬さで、問題なく殻ごと食べられた。
揚げても赤くならないので見た目は悪いが、川エビ程度の硬さで、問題なく殻ごと食べられた。
ヌタウナギのから揚げは、骨もなくて最高においしい。もっと評価されていい食材だと思う。
ヌタウナギのから揚げは、骨もなくて最高においしい。もっと評価されていい食材だと思う。

観光資源としてのオオグソクムシ

味はなかなかいいのだけれど、その独特過ぎる見た目と、可食部の少なさから、食料資源としてはほとんど使い道のないオオグソクムシだが、獲ったり触ったり食べたりできる観光資源としては、可能性があるような気がする。

今後は深海鮫、オオグソクムシ、ヌタウナギあたりを、駿河湾深海のジビエだと言い張っていただきたい。6次産業化の必要性なんていうのが叫ばれているが、もしかしたらこういうところにそのヒントはあるのかもしれない。

水族館でのオオグソクムシの試食会は今度の5月6日にも、またあるそうです。詳しくはこちら
焼津のお土産に、オオグソクムシ酒なんてどうでしょう。飲める標本。
焼津のお土産に、オオグソクムシ酒なんてどうでしょう。飲める標本。
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