見るからにおかしい山
大室山は木がほぼはえてない。空からみるとそれはとてもよくわかる。
より大きな地図で 大室山 を表示
真ん中にポコっと丸くなってるところが大室山だ。
航空写真で見るとマクドナルドのジュースの蓋についてるポコって出っ張ってるところみたいな、押すとペコッと向こう側に引っ込むような、そんな可愛らしさがある。(わかりにくい例えですみません)
しかし、近づくと木が生えてないので山の形がきわだって、デカくみえる。
草しかはえてないのでなんだか変な感じ
大室山は標高580メートルなので東京スカイツリーよりも低いが、目線の高さで比べるとスカイツリー(最も高い展望台で450メートル)なんかよりよっぽど高い。
そんな山が炎につつまれるというのだ。
実は1ヶ月延期されていた
本来、大室山の山焼きは、毎年2月の第2日曜日に行われているのだが、今年は2月の大雪の影響で、雪が解けるまで延期となり、3月9日にやっと行われた。
お預け状態で一ヶ月も待ったので、いよいよ山が焼けるぞという期待は膨らむばかり、犬ならしっぽが唸りをあげてブルンブルンふりまわしているところだ。
伊東駅からバスに乗って40分ほど、山の麓に到着するとすでに山焼きの点火に参加するための松明引換所に並んでいた。
「早く山を焼かせろ!」と一ヶ月待たされた民衆が大集結
大室山は小ぶりながらも立派な火山である。「スコリア丘」という種類の火山で、数年前国の天然記念物に指定されている。
山頂には「お鉢」とよばれる火口跡の大きなくぼみがあり、山焼きはまず「お鉢焼き」といって、山頂の火口部分を焼いてから、そのあと山肌を焼く山焼きを行なう。
そもそも山焼きは、茅(かや)を収穫して利用するため、山に木が生えないよう年に一度山焼きを行っていたのが伝統行事として残っているのだ。
観光地あるある
大室山は歩いての登山が禁止されており、山頂までリフトで登ることができる。
堂々と横着できるぞ!
山頂付近で急にスピーカーから女性の声が聞こえてきたので、何事かと振り向いたら、急にフラッシュが焚かれた。
あ、っと思うが時すでに遅し。うっかり顔をしっかり写真に撮られていた。
マヌケを絵に書いて額に入れたような写真
この写真、このまま買わないと破棄されるんだろうな……と考えるとなんだか忍びないので買った。1000円。
でも、せめてマスクをとるぐらいの準備はさせて欲しかった。
以上、観光地あるあるでした。
眺望は素晴らしい
山頂は火口の縁に沿って遊歩道が設けられており、歩いて一周することができる。
木が一切ないので、結構こわい
お鉢の部分は、真ん中に大きく凹んでいる
大室山のキャラクター、オームロくん。すでに真っ黒焦げ、ちなみに山焼きをしない時期はちゃんと緑色らしい
しかし、景色は良かった!
山頂付近からは富士山や伊東市内が一望できる。眺望は良く、富士山がきれいに見える。
ちなみにこの大室山の祭神と、富士山の祭神は姉妹だったけれど、大室山の祭神が、妹の美しさに嫉妬して以来、大室山と富士山はいつまでも睨み合ったままで居ることになった。という伝説があり、そのため「大室山に登って富士山を誉めてはいけない」と言われているらしい。
さっき買った1000円の写真の裏に書いてあったのだが、これだけ富士山がきれいに見えると、ついうっかり「富士山きれいだなー」などと言ってしまいがちなので、とんだブービートラップである。
山焼き開始
時刻になると、合図の花火とともに、消防隊員の人が火口の縁に火をつけはじめた。
火がつき始めたぞー
ファイヤー!
もっと近くで!
乾燥した草は簡単に火がつくのでどんどん燃える。火の色もあざやかだし、バチバチバチといい音がする。これはいい、見てて気持ちがいい。
あぢー!
盛んに燃え盛る火を見ていると、興奮してついつい近寄りがちになるけれど、火の熱さに「あぢー!」となり、ハッと我に返って逃げ出す。飛んで火に入ることでおなじみの「夏の虫」と同じレベルだ。
火口の縁を焼いていく
火口の縁を焼き終わったら、今度は火口の底から火をつけていく。
ジョッワ~
わー、これは山火事だ!
火口の底から火がつくともう一気に火は燃え広がって手がつけられない状態に。辺り一面煙に覆われて火の粉が飛び交い、牧歌的な山焼きの風景とかそういう雰囲気は一切ない。
地獄。火炎地獄だ。
音もメラメラパチパチみたいな生やさしいものではない。
「ズゾーッ」という、あえて言うなら耳元で天ぷらをずーっと揚げられてるような、ものすごい音がする。
しかし、時間にして10分程度で火はあっさり鎮火し、黒焦げになった火口がじょじょにその姿を現した。
BGMは「ツァラツゥストラはかく語りき」でお願いします
パパーン
ジャジャジャーン
多少くすぶっているものの、火口部分はすっかり黒焦げになってしまった。
Before
After
そして山肌をいっきに焼く
火口の「お鉢焼き」が終わったら今度は皆で山を取り囲み、山全体を燃え上がらせる。
山焼きを一ヶ月も待たせられた民衆の我慢は限界に達し、大室山は松明を手にとった人々に取り囲まれた
もう我慢できひん! はよ火付けたい!
あー、火ぃつけよった!
あぁ……燃えておる、山が燃えておる!
gifアニメで燃焼の様子を御覧ください
火は山肌を這うようにいっきに燃え広がる。やはり音がすごい「ズゾーッ」である。
ズゾー
煙で太陽が隠れて薄暗くなった
燃えさかる炎と煙は、山焼きというよりも、もう完全に火山のようだ。というか、もともと火山なのだから火山なのだが。
消防団のおじさんが「今年は雪で湿ってたのか、火の燃え広がり方が悪い」と言っていた。本来だと燃え残りなどはあまりないらしい。
山が燃える様子をインターバル撮影で撮影し、GIFアニメで記事に掲載しようと思ったけれど、作ってみたらサイズが大きくなってしまったので、動画に変換してYouTubeにアップした。
「わざわざYouTubeにアップするぐらいなら最初からビデオで動画を撮ればよかったじゃないか」とか、そういう事をいう人はろくな死に方しないと思う。
以上、大室山の想像を超える豪快な山焼きの雰囲気だけでも感じ取っていただけば幸いである。
来年は燻製を……
「大室山の山焼きを見に行って煙がすごかった」と知人に話したら「燻製できますかね?」と言っていたので、来年は釣り竿の先にソーセージをぶら下げて、山焼きの煙で燻製ができるか実験してみたいと思う。