ボラのおっちゃんから電話がかかってきた
ボラのおっちゃん。というのは先日、大洗町にボラが大量発生したというニュースを聞き、見に行った時(
こちらの記事)に知り合った茨城県常陸太田市在住のおっちゃんのことです。
左のおっちゃんがボラのおっちゃんです
ボラの取材の時、たまたま現場に居合わせ、あとで記事でも読んでもらえれば……と思って、名刺とデイリーポータルZのサイトカード(URLや簡単な紹介が書いてあるカード)を渡しておいた。
そして、記事が公開されて数日後、突然知らない電話番号から電話がかかってきた。
誰かなと思って出てみると「どうも、先日ボラのところでお会いした後藤(ボラのおっちゃん)です!」と、やたら元気な声。わざわざ「ボラの記事を読みましたよ!」と感想の電話をくれたのだ。
バンジージャンプの取材に来てください
――わざわざお電話ありがとうございます!
「ボラの記事おもしろかったです。ところで、家の近くに竜神大吊橋っていう橋があるんですけど、そこでバンジージャンプが始まるんですね、これぜひ取材に来てくださいよ」
――へー、バンジージャンプですか?
「そう、新しくできるんです。ぜひよろしくお願いします」
――そうですかー、では機会があればぜひ伺いますので、その時はよろしくお願いいたします。
「はい、よろしくお願いします」
取材しに行った
で、機会があったので、ほんとに行った。
ほんとに来ちゃった
社交辞令を社交辞令で済まさない「行けたら行くわ」でほんとに行く男。それが私です。
茨城県常陸太田市にある竜神大吊橋のバンジージャンプは3月1日から新しく営業を開始したのだが、その前日2月28日にマスコミ向けのオープンセレモニーが行われ、そこに取材という形で赴いた。
ちなみに竜神大吊橋はこんな感じ
竜神大吊橋は竜神ダムのダム湖に渡された人道橋の吊り橋で、長さが375メートルあり、人道吊り橋としては「本州一」である。
「日本一」ではなく「本州一」なのは、ちょっと前に九州のどこかの吊り橋に抜かれてしまったので、仕方なく本州一を名乗っている。
日本一物件の悲しい現実である。
その日本一の名誉を挽回すべく、かどうかは知らないけれど、今回竜神大吊橋でのバンジージャンプが始まれば、湖面から高さ100メートルの橋の上からのジャンプは日本一になるのだそうだ。
堂々と日本一を名乗れるぞ!
バンジージャンプ一度は体験しておきたい
ぼくは「芸者遊び」とか「献血」みたいに「機会があれば一度は体験しておかないとな」と思っているものがいくつかあってその中に「バンジージャンプ」があった。
だって、バンジージャンプつっても落ちてビヨ~ンってなるだけでしょう? ぼくべつに高いところそんなに怖くないし……機会があればぜひやってみたいよね。
ぐらいの気持ちでいた。
今回、マスコミ向けに各メディアから1名だけ無料でバンジージャンプができる体験バンジージャンプがあると聞いて、こんないい機会はないと喜び勇んで取材を申し込んだ。
それもこれも、ボラのおっちゃんの情報提供あってこその取材である、大変にありがたい。
ボラのおっちゃん、情報提供ありがとう!
市長臨席で安全祈願が行われた
当日は安全祈願をした地元の東金砂神社の神職の人や、ご当地ヒーローのイバライガーが、バンジージャンプを行なうということで、マスコミが詰めかけていた。
今日びバンジージャンプぐらいで取材にくるマスコミなんかいるかね……と思ったらTV局、新聞社がどっさり来た!
市長、役所の人、神主、ヒーロー、どこかの偉い人
お神酒をいただくイバライガー
安全祈願の神事も滞りなく終わり、いよいよ関係者によるバンジージャンプが開始される。
雲行きが怪しくなる
関係者のジャンプは、まずは神社のひとから行われる。取材のマスコミはそのジャンプのようすを取材するために橋の下のジャンプ台まで降りることが許された。
取材に同行してくれた編集部の安藤さんが、妙なことを言い出した。
あ…西村さん
これヤバイやつですよ
……。
……ですね
正直なめていた。
落ちてビヨ~ンってなるだけとかそれ以前に、むき出しの高所ってけっこう怖いのね。という当たり前のことが、今わかった。
今まで、「高いところけっこう平気」などと思っていたけれど、それは東京タワーでも都庁でも、ぶ厚いガラスに守られているから、絶対に安全だとわかっているから平気だったのだ。
あんまり動けなくなった
生物としての本能的な危機感を感じるなか、神社のひとのバンジージャンプがはじまった。
「はらいたまえ! きよめたまえ!」と叫んでジャンプ
ぶらーん
ぶら~り
ウィンチで引き上げ中
生還!
ジャンプしてからぶら~んとなるまで約3秒ほど。ウィンチで引き上げて3分ほど。あっという間である。戻ってきた神社の人はガッツポーズ。「意外と気持ちいい」と言い残してさっそうと帰っていった。なんなんだろう、この世界。
順番が来るまで時間を潰す
この日、関係者のバンジージャンプは昼過ぎまで続き、マスコミ関係者の体験ジャンプはその後という事になった。
順番が来るまでの待ち時間がけっこう長かった。
イバライガーが気に入ったボラのおっちゃん。何度もポーズをとらせて動画を撮っていた
「いいって言うまでポーズとって下さい」
「もう一回」(まだやらせるのか!)
一方そのころ、安藤さんとぼくは鮎の塩焼きを食べていた
待ち時間に遊んでいるうち、ジャンプの時間が刻一刻と近づいてきた。体験ジャンプをするマスコミ関係者が集められた。
最終点呼をとられた
体重測定
iPadで同意書にサイン
体重計で体重を計ったのは、ジャンプする人の重さによってロープを交換しなければいけないからだ。
体重測定の結果、マスコミ各社の記者の中で、ぼくが一番重かったため、本日のジャンプの一番最後、大トリを仰せつかることになった。
そんな中、係の人に安藤さんが呼ばれ、体重を計るように言われた。
マスコミの体験ジャンプは各メディア1名。そして実は余裕があればもう一人ジャンプできる。ということになっていた。
デイリーポータルZは申し込みが早かったので、その補欠枠に安藤さんをエントリーしておいたのだが、直前までジャンプできるかどうか分からなかったため安藤さんはすっかりジャンプしない気分でいた。
しかし、呼ばれた。 ジャンプできることになったのだ。
マスコミ枠9番目にジャンプします
「おれ、すっかり飛ばない気分でいたのに……」と戸惑いを隠せない安藤さん。
むかしアフリカのザンベジ川でバンジージャンプをしたことがあるという安藤さんは、「いやー、なんていうか、すこし人生観かわるぐらいのインパクトはあったね」と、さっきまでぼくにバンジージャンプ体験談を得意げにきかせてくれていたのだが、ジャンプの順番が決まると急に静かになってしまった。
待ち時間にたそがれる。目線の先には
他の人のジャンプ
ついに飛び降りた
マスコミ枠のバンジージャンプが次々と終わり、いよいよ安藤さんの番になった。
ハーネスをしっかりと装着
こんな目してる安藤さん初めてみた
ジャンプしている人を何人かみたけれど、ジャンプしたあとウィンチで戻ってきたあとは、みんな「気持ちよかった」とか「面白かった!」という。
安藤さんも今はこんな目をしているけれど、ジャンプして帰ってきたときはきっと「面白かった!」となると思う。
準備が整うと「5、4、3、2、1、バンジー」という、せわしないカウントダウンで送り出される。
いったー
ビュー
かっこいいジャンプの様子を御覧ください
バンジージャンプの人が教えてくれたのだけど、よくテレビとかで芸人がバンジージャンプをするとき、長めにグズったりするのをよく見かけるけれど、あれは演出で、一般の人たちはカウントダウンするとあっさりジャンプする人のほうが多いらしい。
我らが安藤さんも、カウントダウンのあと、躊躇なく飛んだ。
ウィンチで回収中
笑顔
帰ってきたあとの安藤さんの第一声は「あのー、いいですね」だった。
見比べて欲しい、ジャンプする前と帰ってきたあとの笑顔。わかった、これは極度に緊張を高めたあとに開放感を味わう一種のプレイなのかもしれない。
なにか事をなし終えた人に「どうだった?」と感想を聞きたくなるのは小学校の予防注射の時以来かもしれない。
そして私が飛ぶ
そしていよいよ最後の大トリ、ぼくの番だ。
この椅子に座るとみんなこんな顔になるのか?
ガッツポーズをやれと言われたのでやった。握りこぶしに力は入ってない
ちなみに、この時点でのぼくの足元の景色はこんな感じになる。
参考画像
せわしないカウントダウンが聞こえてきた。 5、4、3、2、1、バンジー……。
行ったー
ぶら~ん
カウントダウンの前に「ちょっと待った」したのを除くと、概ねなんとかなった。人間、追い詰められるとものすごい勇気が出るものだなと、少し自信がついた。
ただ、ジャンプの格好が、ただ落ちてるだけみたいな情けない格好になってしまったのが心残りだ。
情けないジャンプをごらんください
歌舞伎役者みたいな表情になってた
たしかに気持ちはいい。ジャンプする前のストレスをがまんできれば、空を飛んでいるという爽快感はすごい。
人生観が変わったかどうかはよくわからないけれど。
初回1回14000円
書き忘れていたけれど、バンジージャンプ1回14000円だ。同じ日にもう一度飛ぶ場合は2回めからは6000円。別の日だと9000円になる。
海外では1回50000円のバンジージャンプがあることを考えるとそんなに高いというわけではない。
3月4月中はすでに予約で一杯なのだそうだ。
世の中がそんなにバンジージャンプを欲していたのかと知り、恐れ入ってしまった。
積極的に取材するボラのおっちゃん。ちなみに、ボラのおっちゃんの携帯電話に電話すると、呼び出し音がシューベルトの「鱒」である