名古屋のテレビ局に呼んでもらいました
先日、名古屋のエスカレーターはどうしてこんなに珍しいものが多いのか(わからない)という記事(参照)を書いたのだが、それをご覧になった名古屋のニュース番組のスタッフの方から、番組の1コーナーでエスカレーターを紹介してほしい、というご依頼をいただいた。
キャスターの方に名古屋の珍しいエスカレーターを案内。
あんなエスカレーターや、こんなエスカレーターを紹介させてもらった。
いやぁ、じつにおもしろかった。放送の内容はまだ詳しく書けないが、エスカレーターが来日してちょうど100周年の記念すべき日、3月8日のエスカレーターの日の近辺で東海地方でオンエアということで、東海地方の皆さんはもし見かけたらよろしくお願いします。
そして憧れの三菱電機稲沢製作所へ
この撮影で、私がエスカレーター100周年にかこつけてどうしても行きたかった場所に、一緒に行かせてもらえたのだ。人間、10年もがんばっていればいいことがあるものである。いや特にがんばっていたわけでもなく、ただ好き勝手に続けていただけだが。
それが、こちらである。三菱電機、稲沢製作所。つ、ついにきた!
門の目の前にものすごい高さのタワーがそびえ立っているのだが、これのことは後ほど紹介させてもらおう。
わあああああ!(拍手と歓声)
そう、稲沢製作所は、三菱電機のエレベーター・エスカレーターのマザー工場。エスカレーターも来日100周年だが、稲沢製作所も1964年の創業からちょうど今年が50周年だそうだ。敷地は東京ドーム4個分。ここで、世界中に送り出すエレベーター、エスカレーターが日夜製造されている。うおー。
しかし、エレベーター、エスカレーターの工場なら、関東にも他のメーカーのものがあるのに、なぜ愛知の稲沢なのか?(と、案内してくださった広報の方にも言われた)
単にたまたま声をかけてくださったのが名古屋のテレビ局だったからではない。
私にとって、稲沢製作所はものすごく特別な場所なのである。
しかし、エレベーター、エスカレーターの工場なら、関東にも他のメーカーのものがあるのに、なぜ愛知の稲沢なのか?(と、案内してくださった広報の方にも言われた)
単にたまたま声をかけてくださったのが名古屋のテレビ局だったからではない。
私にとって、稲沢製作所はものすごく特別な場所なのである。
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世界で唯一、スパイラルエスカレーターを製造しているすごい場所
稲沢製作所は、年に1度の夏祭りの際に一般の方も一部を見学することができるが、普段はエレベーターやエスカレーターを設置するビルなどの建設関係者の方々が訪れるそうだ。そのため敷地内には、工場だけでなく、ショールームや会議室も備えている。
こちらがオフィス棟の新館。お客様を迎える広い会議室があり、展望用のエレベーターなども備える。
そのロビーにあるエスカレーターは、そう、スパイラルエスカレーターである。
世界でも未だ三菱電機だけが作ることができる、この曲がるエスカレーター。これを作っている稲沢製作所は、私の中で常にナンバーワンの存在なのだ。
今回の撮影もそうだが、けっこういろいろな記事や番組でとりあげられる場所なので、SKE48のひとが乗ったり降りたりしているところなどを見ては、羨ましく思っていた。感無量。
スパイラルエスカレーターと私
曲がるエスカレーターは、べつに需要がないから三菱電機しか作っていないわけじゃないぞ。そもそも、その本来の構想は1900年のエスカレーターの発明当初からあったのだ。しかし、扇形になったステップを、水平を保ったまま回転させるには、想像を絶する苦労があった。さらに、手すりだって内側と外側で長さが違う。とても他社の追随を許さない、日本が誇る技術の結晶、それがスパイラルエスカレーターなのだ。
と、ぺらぺら喋っているこの内容も、数年前、後藤茂先生が国立科学博物館で講演をされたときにお聞きしたものである。エスカレーターの研究家といえば後藤先生なのだが、先生はもちろん、ここ稲沢製作所のご出身である。
と、ぺらぺら喋っているこの内容も、数年前、後藤茂先生が国立科学博物館で講演をされたときにお聞きしたものである。エスカレーターの研究家といえば後藤先生なのだが、先生はもちろん、ここ稲沢製作所のご出身である。
そもそも、横浜ランドマークプラザにある、シンメトリーのスパイラルを目撃したのが、エスカレーター偏愛の始まりであった。
スパイラルエスカレーターの納入実績一覧表。この表を、去年稲沢製作所夏祭りに参加した友人から個人的に入手し、スパイラルエスカレーター巡礼の旅がいま加速している最中である。
去年は、海を越えて香港・マカオ・広州へ(そのときの記事はこちら)
海外のスパイラルエスカレーターは、さすが超ゴージャス!なのだが、日本だと、「え、ここに?」と思うような意外な建物にも設置されているので気が抜けない。
江東区のとあるパチンコ店にも設置されているのだが、私はこのすぐ近くに住んで毎日前を通っている。スパイラルがあることは引っ越した後に知った。
スパイラル巡礼一覧はこちらに。
表を見せていただいた広報の方に、すごい勢いで「そうなんですよねー、去年は香港と広州と、あと大阪は全部行ったし、あと自宅の近くの駅前にもあって…」とぺらぺら喋っていたらけっこう絶句されていた。
いつか自宅につけるなら、スパイラルだと思っている。ちなみにスパイラルはふつうのエスカレーターの10倍くらいの値段がするのだそうだ。ということは、ふつうのエスカレーターが1基1千万円以上であるから、スパイラルは軽く億単位ということになる。「発注お待ちしています」とも言っていただいたので、設置する建物のことも考えると宝くじに3回くらい当たらなくてはいけない。夢は大きい方がいいよね。
表を見せていただいた広報の方に、すごい勢いで「そうなんですよねー、去年は香港と広州と、あと大阪は全部行ったし、あと自宅の近くの駅前にもあって…」とぺらぺら喋っていたらけっこう絶句されていた。
いつか自宅につけるなら、スパイラルだと思っている。ちなみにスパイラルはふつうのエスカレーターの10倍くらいの値段がするのだそうだ。ということは、ふつうのエスカレーターが1基1千万円以上であるから、スパイラルは軽く億単位ということになる。「発注お待ちしています」とも言っていただいたので、設置する建物のことも考えると宝くじに3回くらい当たらなくてはいけない。夢は大きい方がいいよね。
地元の金沢にも設置されていたことを、既に撤去されてから知った。今はその場所がそのまま階段になっている。
階段になってもスパイラルであったことが一目でわかる。なぜなら、スパイラルエスカレーターのカーブは、角度が常に一定だからだ。カーブの長さで高さは調節が可能で、6.6mが最大だそうである。ちなみにこれは今回教えてもらった情報。自宅にエスカレーターをつけるときには参考にしたい。
ロビー受付の後ろに素敵なアートがあったので、「これはスパイラルを表現してるんですよね!」と勢い込んでお聞きしたら「……そうかどうかはちょっとわかりませんが、もしかするとそうかも」とのことであった。すみません。
奥に描かれているのが稲沢製作所だな!と思ってよくよく見たがべつにそういうわけではなさそうだった。稲沢にラクダいないしな。
ロビーだけで既に興奮気味だが、つづいてショールームと工場見学が待っているぞ。
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世界最高レベルのエレベーター試験塔
稲沢製作所のことが気になって調べていたときに知ったのが、世界最高レベルのエレベーター試験塔、SOLAÉ(ソラエ)である。おしゃれな名前。
門を入ったところすぐにそびえ立つ、例のタワーである。圧巻。
私が調べたときには「世界最高」の173メートルだったのだが、その後に他社がそれを抜く213メートルの試験塔を建てたそうだ。それでも、名古屋のテレビ塔とほぼ同じ高さを持つこの塔、他に高い建物のない稲沢に建っていると、ものすごく目立つ。名古屋駅からでも余裕で見えるそうだ。ちなみに173.0メートルとは、もちろん「い・な・ざ・わ」にかけられている。
この塔をつかって、超高速、大容量のエレベーターを動かす試験が行われているそうだ。試験中のエレベーターとは別に、人も乗ることのできるエレベーターもつけられている。もちろん乗らせてもらった。
この塔をつかって、超高速、大容量のエレベーターを動かす試験が行われているそうだ。試験中のエレベーターとは別に、人も乗ることのできるエレベーターもつけられている。もちろん乗らせてもらった。
39階まで、分速240mの速さで音も無く到達する。立てた10円玉が倒れないほどの静かさ。この「10円玉が倒れない」くだりも、事前に見た記事で見ていた。感無量である。
エレベーターを乗り継いで着いたのは、展望台、じゃなくて制振装置室。これが動くことで、この地域特有の強い風の影響も打ち消している。
あくまで展望台じゃなくて制振装置室だという42階だが、めちゃくちゃに景色が良かった。
右上に見えているのが名古屋の駅前の高層ビル群。
稲沢製作所では屋上緑化が進められている。うん、これも知ってた。「ここには春になると……」「カルガモがくるんですよね!」といちいち広報さんの話を遮る私。
手前にぎりぎり見えているのが屋上緑化のされている工場で、中ではエスカレーターのトラスを作っているのだそうだ。
SOLAÉの1階はショールームになっていて、エレベーター、エスカレーターにまつわる様々な展示がある。
静々と動く展示用のエスカレーター。下部トラスの内側は中がよく見えるようになっている。
私も、エスカレーターの模型を作ったことがあって(この記事)、そのときにシースルーのエスカレーターがあるとは観察していたんですよ!」などとここでも勢い込んでお話ししていたら、「すごいですね……」とやはり絶句させてしまった。すみません。
三菱電機の一号機。1900年にエスカレーターを発明したオーチスの特許が切れる1930年代から、製造を開始している。
そして、手すりの色サンプル。のわー!こんなにたくさん色があるのか…!
ここにあるだけじゃなく、もっとあるそうだ。黄色や青は見たことがあるが、オレンジやグレー系にこんなに濃淡があると思わなかった。集めなければいけないものがまた増えた。
稲沢製作所の全体模型も。広さは東京ドーム4個分。
こちらの部分がエスカレーターの工場だ。
では次のページでいよいよ、工場内部をご紹介しようじゃないですか。
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つれてきていただいたのは、第9工場。
完成したエスカレーターを組み立てて点検する工程を見せていただけるという。
ではついに、いきますよ!
ではついに、いきますよ!
わー!!本当だ!!エスカレーターだ!!!
もっといわゆる工場的な、ベルトコンベアで流れていくひとつひとつの部品を点検する……というところを想像していたが、「エスカレーター」と一目で見てわかる状態で実際に動かして点検されているのは意外だった。「実際に出荷前に形にして動かしてみることができるのは、エスカレーターだけなんですよ」とのことである。たしかに、エレベーターではそれは難しいよねぇ。
真新しいステップ。クリート(溝)のラインが綺麗。
これを、いくつか並んだ点検装置にはめこんで、テストする。
ちなみに、点検装置は全てが稼働中であった。じつはいま、消費税増税前の出荷ラッシュなのだという。たしかに、1千万円以上の発注で3%はばかにならない。ちなみに、スパイラルエスカレーターは作られていないか伺ったが、平均しても年に2,3基しか発注がないので、社員の方でも作っているところを見られるのは稀だそうである。ここはやはり私が発注せねば……。
これはエスカレーターのステップについたタイヤを走らせる、レールだな!模型を作ったことがあるのでよくわかるぞ。
他にも、撮影NGではあったが見せていただいた工場内では、ランディングプレート(エスカレーターに乗る手前の銀色の部分)をプレスする機械だとか、すごく興味深いもので満ち満ちていた。私、ここで暮らしたいです。
点検の終わったエスカレーターは、トラスを3分割して出荷する。へえー!!
行き先には、納入される建物の名前が記されてあった。いつか、これに乗る日も、もしかしたらあるのかもしれない。
帰りがけに、広報の方と盛り上がった、新しい歌舞伎座のエスカレーター。ステップや、ランディングプレートに、建築家の隈研吾さんが「歌舞伎赤」として指定した色があしらわれている、特注品。これももちろん、ここで作られていたんだよなぁ。
夕日に染まるSOLAÉ
好きなものが生まれてくる場所を見る、というのは格別の体験だった。ずっと見たいと思っていた場所をすべて見せていただき、丁重におもてなしいただいて、今はただ感謝の気持ちでいっぱいである。尊敬する稲沢製作所の従業員の方々とお話できたのも、とても嬉しかった。エスカレーター来日100周年の今年を、まだまだ盛り上げていきたい。