

カツ丼エボリューション沖縄

カツ丼(580円)

丼物の定番のひとつであるカツ丼。卵でとじたトンカツとタマネギがご飯の上に乗ってるあれだ。
そうした定番スタイルの他、最近はご当地アレンジ版も知られるようになっただろう。ソースカツ丼あたりが有名だろうか。
それと比べると知られていないようだが、沖縄にも独自の進化を遂げたカツ丼があるらしい。現地に行って食べてみた。
そうした定番スタイルの他、最近はご当地アレンジ版も知られるようになっただろう。ソースカツ丼あたりが有名だろうか。
それと比べると知られていないようだが、沖縄にも独自の進化を遂げたカツ丼があるらしい。現地に行って食べてみた。

1973年東京生まれ。今は埼玉県暮らし。写真は勝手にキャベツ太郎になったときのもので、こういう髪型というわけではなく、脳がむき出しになってるわけでもありません。→「俺がキャベツ太郎だ!」
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新しいカツ丼エクスペリエンス
日本の中でも、他地域と比べると特徴的な食文化がある沖縄。例えば沖縄で「チャンポン」と言えば、さまざまな具の乗ったご飯ベースの丼物。沖縄の食堂で見かける「おかず」というメニューは野菜炒めのようなものが出てくる場合が多いようだ。


カツ丼食べに沖縄へ


スーパーの表示の意味も理解できない

県外の者からすると、これらのように言葉と実体がつながりづらい料理もある。しかし、カツ丼の場合は「カツが乗った丼物」という意味では、沖縄でもカツ丼。
名前としては他地域と同じ、という点ではわかりやすい。ただ、だからこそ虚を突かれることもある。
名前としては他地域と同じ、という点ではわかりやすい。ただ、だからこそ虚を突かれることもある。


ドライブインを名乗るのも沖縄らしい


水の代わりに紅茶というのも沖縄風

まずやってきたのは、沖縄市にある「ハイウェイドライブイン」という店。名前からすると意外だが、高速道路にある店ではない。
ドライブインという響きが懐かしいが、沖縄にはこの言葉のつく店は今でも点在。テーブルに着くと、お水ではなく紅茶が出てくるのも沖縄の食文化だ。
ドライブインという響きが懐かしいが、沖縄にはこの言葉のつく店は今でも点在。テーブルに着くと、お水ではなく紅茶が出てくるのも沖縄の食文化だ。


箸袋に「うめーし」とあるのが気になる

ドライブインや紅茶については、まずまず知られている話だと思う。沖縄に行ったことがあれば「そうそう!」となる人も多いのではないか。
今回調べてみるのはカツ丼。この店のは蓋付きでやってくるタイプだ。カツ丼との出会いの瞬間を演出しているようにも思える。では開けてみよう。
今回調べてみるのはカツ丼。この店のは蓋付きでやってくるタイプだ。カツ丼との出会いの瞬間を演出しているようにも思える。では開けてみよう。


そこにカツがいないカツ丼

これはなんだろう。
知らずに開けたら「あれ?」となるであろうビジュアル。カツ丼を注文したはずという自信を揺るがしてくるたたずまいだ。
知らずに開けたら「あれ?」となるであろうビジュアル。カツ丼を注文したはずという自信を揺るがしてくるたたずまいだ。


横からのこんもり感も独特


ほじると姿を見せてくれて安心

視界にあるのは卵入りの野菜炒めのみ。心配になって野菜をどかしてみると、やっと横たわるカツが登場する。
野菜ゾーンの厚みは結構なもので、相当な量の野菜が投入されていることがわかる。栄養バランスは今ひとつのイメージがあるカツ丼だが、これなら実家のお母さんも安心だろう。
野菜炒めとカツ。初めての組み合わせに戸惑って、味がなじんでいるかどうかよくわからないまま、うまいことはうまい。
野菜ゾーンの厚みは結構なもので、相当な量の野菜が投入されていることがわかる。栄養バランスは今ひとつのイメージがあるカツ丼だが、これなら実家のお母さんも安心だろう。
野菜炒めとカツ。初めての組み合わせに戸惑って、味がなじんでいるかどうかよくわからないまま、うまいことはうまい。

普通のあいつにも会える
強烈な異彩を放つ沖縄のカツ丼。しかし、この地の全てのカツ丼がこういうわけではないようだ。


同じくドライブインスタイルの別の店


いつもの君にも会えるんだね

別の日に訪れたのは、やはり沖縄風のドライブイン。しかし、こちらのメニューにあるカツ丼の写真はごく一般的なもの。多くの人にとっての「ザ・カツ丼」だろう。
沖縄滞在中、スタンダードなカツ丼もしばしば目にした。しかし、普通っぽくありながらも「気配」を感じさせるものもよく見かけた。
沖縄滞在中、スタンダードなカツ丼もしばしば目にした。しかし、普通っぽくありながらも「気配」を感じさせるものもよく見かけた。


かすかに漂う違和感

こちらはスーパーの総菜コーナーにあったカツ丼。基本的には普通に見えるのだが、よく見ると真ん中にニンジンがある。
…カツ丼にニンジンって入れたっけなあ……。はっきりとした違いではないが、ぼんやりと感じる疑問。基本的にはスタンダードでありつつ、こうした微妙なアレンジをしてくるカツ丼にもたびたび出会った。
…カツ丼にニンジンって入れたっけなあ……。はっきりとした違いではないが、ぼんやりと感じる疑問。基本的にはスタンダードでありつつ、こうした微妙なアレンジをしてくるカツ丼にもたびたび出会った。

そして再び野菜スパーク
沖縄には普通のカツ丼も普通に存在する。そう言ってよいだろうが、普通ではないカツ丼も一定の勢力をもっているのも間違いなさそう。


こういう雰囲気の店に意外なカツ丼が潜む


ポーク卵も好きだけど今日はカツ丼

続いては那覇市にある「お食事処 伸ちゃん」。壁のメニューにあるカツ丼は470円と安い。
逆にみそ汁400円は高く感じるが、これは沖縄独特。たくさんの具入りで、おかずとして立派にやっていけるタイプのものだからだ。ご飯などもセットになった定食スタイルなので、むしろ安いと言えるだろう。
今回はもちろんカツ丼を注文。やってきたのはこれだ。
逆にみそ汁400円は高く感じるが、これは沖縄独特。たくさんの具入りで、おかずとして立派にやっていけるタイプのものだからだ。ご飯などもセットになった定食スタイルなので、むしろ安いと言えるだろう。
今回はもちろんカツ丼を注文。やってきたのはこれだ。


やっぱりカツ丼には見えない

カツの姿なきカツ丼。その奥ゆかしさに、まだ慣れない。
おかみさんに「沖縄のカツ丼ってこんな感じなんですか?」と聞いたところ「そうなんです、ごめんなさいね」と謝られてしまった。いやいやいや、そんなことないですって。野菜が多いことで、カツ丼食べてる罪悪感が薄れるのはうれしい。
おかみさんに「沖縄のカツ丼ってこんな感じなんですか?」と聞いたところ「そうなんです、ごめんなさいね」と謝られてしまった。いやいやいや、そんなことないですって。野菜が多いことで、カツ丼食べてる罪悪感が薄れるのはうれしい。


野菜層の厚みはかなりのもの


やっと会えたね、トンカツ

野菜のボリュームはかなりのもので、食べるペースで言うと野菜・野菜・カツというリズムになる。一般的なカツ丼とは全く別の料理に思えてくる。

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カツ丼リバーサル
カツの上に野菜炒めが乗っているカツ丼を2つ食べてみたが、また別の展開を見せる沖縄のカツ丼を探してみよう。やってきたのは宜野湾市にある「みどり屋食堂」という店。


その名に合わせて緑の店名表記


別バージョンの「うめーし」

もちろんカツ丼を注文したのだが、一緒に頼んだカレーライスが先に来た。この食堂の名物メニューであるらしい。


「バブルスライムが あらわれた!」

独特の存在感。色合いが黄色い上に、ソースがライスをフルカバーするタイプ。子供の頃、家の食事がカレーだとこうやってかけてもらってたのを思い出した。
具として野菜がいろいろ見えるが、緑色のはピーマン。これもやや意外。
具として野菜がいろいろ見えるが、緑色のはピーマン。これもやや意外。


エッジの立ったソース


福神漬けをどかすときれいに跡が残る

食べ始めても特徴があるこのカレー。カレーソースがぷるぷるしていて、垂直にスプーンを入れても垂れてくる気配はない。
独自路線のカレーを食べているうちに、主たる目的であるカツ丼が到着した。
独自路線のカレーを食べているうちに、主たる目的であるカツ丼が到着した。


これまた見たことないタイプ(650円)

前ページで紹介したものとは異なり、カツがあからさまなタイプ。それゆえカツ丼であることは明確だが、にも関わらず「なんだろう…」と思わされる。また新しい角度から沖縄のカツ丼が攻めてきたのだ。


ソースが標準装備


うまそう度がアップした!

おぼんで一緒に運ばれてきたのはソース。よく見るとカツは揚げたあと味付け調理はされていないようだ。「ぜひソースをかけて食べてくれたまえ」ということなのだと思う。
意図を汲んでかけてみる。グッとうまそうに見えてきたと思うと同時に、普通のカツ丼とは違うなーという思いが改めてよぎる。
さてこのカツ丼、ここまでの写真でもチラチラ見えるが、前ページのカツ丼の逆転現象が起きている。
意図を汲んでかけてみる。グッとうまそうに見えてきたと思うと同時に、普通のカツ丼とは違うなーという思いが改めてよぎる。
さてこのカツ丼、ここまでの写真でもチラチラ見えるが、前ページのカツ丼の逆転現象が起きている。


順番が逆


それぞれが別々にうまい

沖縄の人はどうしてもカツと一緒に野菜を食べさせたいのか。カツの下には結構な量の野菜炒めが敷かれているのだ。
味はこれまで同様おいしい。ただし、カツと野菜炒めは別に調和しない。ひとつのどんぶりに盛りつけられつつ、それぞれが別の料理としてうまいのだ。
味はこれまで同様おいしい。ただし、カツと野菜炒めは別に調和しない。ひとつのどんぶりに盛りつけられつつ、それぞれが別の料理としてうまいのだ。

そして混沌へ
最後に紹介するのは、国頭村にある「波止場食堂」。その名の通り、海のすぐそばにある店だ。


シンプルな構えがかっこいい


海の男御用達っぽい

入口ドアに「ぜんざい」と書いてあるのも沖縄らしい。看板には「ボリユウムたっぷり」とある。「ボリューム」と書くよりずっとボリューム感を漂わせる表記ではないか。海で働く男達がモリモリ食べるイメージだ。
そしてそのイメージは、裏切られることはなかった。
そしてそのイメージは、裏切られることはなかった。


うなりを上げるカツ丼(600円)

カツ丼である。カツが露出しているからはっきりそうとわかる。それにしても想像を超えている。
何やら混乱しているようにも見えるカツ丼。「野菜炒め+カツ」というこれまでのフォーマットを守りつつも、予想外の盛りつけ方だ。
何やら混乱しているようにも見えるカツ丼。「野菜炒め+カツ」というこれまでのフォーマットを守りつつも、予想外の盛りつけ方だ。


来てしばらくの間、グルグル回転させてた


高さもかなりある

暴れん坊のカツ丼である。見る角度によってさまざまに表情を変える。
どこから食べていいかよくわからないようにも思えるが、まずはカツを食べてみる。甘辛いタレが衣にしみていておいしい。
どこから食べていいかよくわからないようにも思えるが、まずはカツを食べてみる。甘辛いタレが衣にしみていておいしい。


どうしてこうなったと言いたくなる見た目だが

食べて意外に思ったのは「調和」があることだ。
これまでのカツ丼は野菜炒めとカツとが別々においしいという印象だったのだが、このカツ丼には味の調和がある。カツと野菜が混ざっているため自然と一緒に口に運ばれ、それぞれの歯ごたえと味が合わさったうまさがあるのだ。
これまでのカツ丼は野菜炒めとカツとが別々においしいという印象だったのだが、このカツ丼には味の調和がある。カツと野菜が混ざっているため自然と一緒に口に運ばれ、それぞれの歯ごたえと味が合わさったうまさがあるのだ。


この店の箸袋にも「うめーし」

見た目はただただカオスだったカツ丼が見せるハーモニー。ビジュアルの謎は、食べてみると解けたように思えた。







泡盛の名前にも戸惑いを覚える沖縄



特有のアレンジがまぶしい沖縄のカツ丼たち。「野菜炒めが加わる」という要素を保ちつつ、店によって違った提示をしてくるのが楽しい。
そして、箸袋に書いてあった「うめーし」。謎めいた響きだが、あとから調べたところ、これは沖縄の方言で箸のことを言うらしい。箸袋に箸と書いてあるのなら自然ですな。

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