特集 2014年1月7日

銀杏スイーツはぼんやりしている

豆大福に代わる新スイーツとなるか、銀杏大福。
豆大福に代わる新スイーツとなるか、銀杏大福。
銀杏が好きだ。
秋以降の銀杏ハイシーズンになると、パックで購入しては自宅で少しずつ煎って食べる。居酒屋でも見つけたら頼む。
モソモソとした食感と微妙なエグさが大好物なのだが、文章にしたら何が美味いんだか全く伝わらないあのぼんやりした感じがまたたまらない。
で、今回はそのぼやけつつも美味しい銀杏をスイーツにしてみたらどうだろう、という提案をしてみた。
1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

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銀杏、調理法がない

銀杏を食べる機会は多いのだが、調理法の選択肢が極端に無い食材だと思う。
煎るか電子レンジで加熱するかで火を通したら殻を剥いて塩をつけて食べるのが基本。
あとは茶碗蒸しに入っていたらボーナスキャラ的に嬉しいぐらいだろう。
茶碗蒸しの銀杏は、良い子へのプレゼント的ボーナス。
茶碗蒸しの銀杏は、良い子へのプレゼント的ボーナス。
銀杏好きとしては、もう少しいろいろな調理方法で銀杏を食べてみたい。
さらに言えば、いつも塩味で食べてばかりなので、あらたに違う味も追求してみたい。
じゃあ塩味でなければ甘くするのはどうだろう…という驚くほど短絡的な発想で申し訳ない。

銀杏は食べ過ぎ危険

今から調理しようという段階で言うことではないが、実は銀杏にはわずかながら毒がある食材だ。
食べ過ぎると頻脈・ふらつき・嘔吐・痙攣などに症状を起こすことがあるのだ。
大人で40粒~300粒、子供だと10粒以下でも中毒することがあるらしいので、いくら好きだと言ってもあまり無理して食べるものではないらしい。
今回は60粒用意。もちろん怖いので一気に全部は食べない。
今回は60粒用意。もちろん怖いので一気に全部は食べない。
ちなみに生食もあまりよろしくないので、きちんと加熱してからスイーツ化しよう。
いちばん手軽な加熱方法は、殻にハサミか包丁で切れ目を入れたあと、茶封筒に塩ひとつまみと一緒に放り込んで電子レンジにかける「封筒銀杏」だろう。
そこらにあった封筒にザラザラと入れる。入れすぎると爆発するので注意。
そこらにあった封筒にザラザラと入れる。入れすぎると爆発するので注意。
普通の茶封筒に10粒ぐらい入れたら口を折り曲げて(糊づけはしなくてOK)加熱する。
1分から1分30秒ぐらいで中からボンボンと良い感じにハデな破裂音が聞こえてくるので、それで調理完了だ。超カンタン。
この破裂音でテンションが上がる。
この破裂音でテンションが上がる。
調理終了。封筒、パンパンに膨れてる。
調理終了。封筒、パンパンに膨れてる。
欲張って20粒とか詰めて加熱すると、封筒ごと破裂して電子レンジの中がとんでもないことになる。何事もほどほどが一番だ。
食べ過ぎは毒だし。

きちんと加熱できていると殻は手でも剥ける。
きちんと加熱できていると殻は手でも剥ける。
いい色の銀杏。うっすら塩をふって、このまま食べたい。
いい色の銀杏。うっすら塩をふって、このまま食べたい。
いつもなら電子レンジの前で立ったまま、封筒に手を突っ込んで銀杏を食べ出すところである。
しかし今回はここからさらに調理せねばならない。

まずは銀杏チョコレート

名前が出た時点で「アーモンドチョコのアーモンドを銀杏に代えたやつだな」と丸バレのやつだ。
ところがこれ、作る工程やビジュアルにはカンタンに思い至るのだが、なぜか味がまったく想像できない。
元から銀杏自体の味がぼやけているので、そこにチョコを足した時に何が起きるのかイメージが届かないのである。

銀杏、おそろしいまでのぼんやり力(ぼんやりりょく)だ。

製菓用のアルミカップに銀杏をイン。(想像通りでしょう)
製菓用のアルミカップに銀杏をイン。(想像通りでしょう)
作り方は簡単で、電子レンジで加熱した銀杏に溶けたチョコをかけて冷やし固めるだけ。
調理時間、銀杏を封筒に入れるところから含めても30分かかっていない。
アーモンドチョコのように銀杏をローストして飴がけして…という工夫をしても良かったのだが、そうするとなんとなく味が想像できるような気がしたので、今回はあえてそのまま謎の部分を残してみた。

湯煎して溶かしたチョコを流し込む。(もちろん想像できたはず)
湯煎して溶かしたチョコを流し込む。(もちろん想像できたはず)
ところで、この作業は2014年の1月1日深夜に行っている。
一年の計は元旦にありとは言うが、たぶん今年一年ずっと、銀杏にチョコレートをかけるようなことばかりして過ごすんだろうなあ。

そんなことを考えているうちにも銀杏チョコレートが完成した。
具体的な完成品を見ても、やはりどういう味になるのか想像はつかない。

銀杏チョコレート。名前も工夫しようがないシンプルさ。
銀杏チョコレート。名前も工夫しようがないシンプルさ。
銀杏の緑色とチョコの色がマッチして、ビジュアル的にそんなに不味そうな感じはしないが、果たしてどのようなものだろうか。

ひとまずチョコは置いて、次のスイーツにかかってみよう。
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銀杏大福も想像がつかない

続いては銀杏大福に挑戦してみたい。
つまりは豆大福の銀杏バージョンであって、これまた味以外は全部想像できるだろう。

今回は豆大福の豆を銀杏に代えただけだと面白みが足りないので、あんも銀杏で作ることにした。
あん用銀杏。40粒以上使用しているので一人で全部食べないこと。
あん用銀杏。40粒以上使用しているので一人で全部食べないこと。
ずんだあんをイメージして、まずは銀杏を砂糖と一緒にすり鉢ですって…と思ったが、どうにもぐんにゃりと伸びるばかりで上手くあん状に潰すことが出来ない。
こういうメリハリのない感じも、銀杏のぼんやり力の一部であろう。

できないものは仕方ないので、フードプロセッサーで粉砕してから炊くことにした。
あまり見た目がよくない銀杏あん。
あまり見た目がよくない銀杏あん。
正月からことことと銀杏を煮る。
正月からことことと銀杏を煮る。
鍋でゆっくり煮てみたが、砂糖と、うっすら銀杏の水煮缶っぽい匂いがするだけで、とりたてて意外性のある変化は無い。
いや、やってることはどちらかというと意外性たっぷりなはずだが、その途中経過がどうにもぼんやりしている。
ぼんやりしたまま、銀杏あん完成。
ぼんやりしたまま、銀杏あん完成。
大福の餅部分はパックの餅を使えばいいか、と思っていたが、クックパッドで大福のレシピを調べると「白玉粉と砂糖を水で溶いてレンジで加熱すればカンタン」とあったので、そのように。
なるほど、レシピ通りに作るだけで5分でつきたてのような柔らかい餅がカンタンにできてしまった。クックパッドすごい。なんでも載ってる。
白玉粉の餅。超伸びる。
白玉粉の餅。超伸びる。
大福包み作業。手早くできると爽快感がある。
大福包み作業。手早くできると爽快感がある。
どうせなら銀杏大福の作り方も載っていればもっと楽だったはずだが、それはさすがに見つからなかった。
ここはごく当たり前の手法で、べたつかないように片栗粉を打った餅で銀杏あんと銀杏をくるっと包んで完成にした。
銀杏大福、ご想像どおりの見た目で完成。
銀杏大福、ご想像どおりの見た目で完成。
なんというか、やはり作りながら想像していた通りの出来上がりである。
そしてこちらもチョコと同じく味の方の想像は全くつかない。
自分で作っておいてなんだが、どんなんだ、銀杏チョコと銀杏大福。やはり食べてみないと分からないだろう。

食べてみてもやはりぼんやり

で、さて。
困ったことに、食べてもよくわからない。

銀杏チョコはチョコレート部分がかなり勝っているのだが、たまに銀杏の部分を噛むと、もさっとしたあの歯応えと、銀杏のぼんやりとした風味がわずかに舌に届く感じ。
「銀杏?…ああ、銀杏かー」ぐらいのピントの合わなさ。

アーモンドの代わりだからといって、あのカリッとした感じと風味を期待すると、あまりのぼやけ具合にイラッとする。
あくまでも銀杏は銀杏だ。

銀杏大福は、さらにぼんやりだ。
銀杏あんを食べると、「小豆あんってちゃんと豆の味がしてるんだなー」と気付かされるぐらいにぼやけている。

甘く煮た銀杏というのは、それ以上でもそれ以下でもない。甘い銀杏としか言い様のない味だ。
とはいえ決してまずくはない。
丸のままの銀杏の部分は少し塩をまぶしてあるので、あんとの甘じょっぱいバランスは悪くない。
そういう意味では美味しいのかもしれない。
食べてもぼんやり。
食べてもぼんやり。
しかし改めて、こんなに味のぼけた食べ物だったのか、銀杏。
自分でもなんで銀杏が好きなのか分からなくなってきた。
銀杏によるアイデンティティの喪失だ。

あまりにも分からなくなってきたので、新年の挨拶ついでに、いつもお世話になっている文房具店の店主さんや先輩ライターの方など友人関係に試食をお願いした。
年明け早々から面倒なことをお願いしたものである。
左が文房具店主、右が先輩ライター氏。
左が文房具店主、右が先輩ライター氏。

文房具店主「うーん。チョコは無いなー。でも大福は銀杏の風味が意外といけるかも」
ライター「大福は普通に有り。生まれて初めて『ずんだ』を食べた時よりはずっと違和感無い」
革製品デザイナー氏。すごい真剣に味わっていただいた。
革製品デザイナー氏。すごい真剣に味わっていただいた。
「僕はチョコもありです。大福も銀杏好きなら普通に美味しいですよ」

自分で食べて「ぼんやりしてるなー」と思いながら人に試してもらったら思った以上に褒められてしまった。
これでは余計に評価を迷ってしまう。味だけじゃなくて評価までぼんやりしてしまった。

奥は豆大福。味がぼんやりしてない。
奥は豆大福。味がぼんやりしてない。
あとからノーマルの豆大福と銀杏大福を食べ比べてみたのだが、豆大福はやっぱり小豆や赤エンドウ豆など使ってる材料の味がハッキリしてる。ハッキリと美味しい。
やっぱりちゃんとしたスイーツは味がちゃんとハッキリしているんだな、と体感できたことが今回最大の収穫だったかもしれない。
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