社長のシロは三毛猫のメス
店の名前は「かぎねこ亭」。丸の内線・東高円寺駅からすぐの青梅街道沿いにあった。
どれどれ
スリッパにさっそく猫
「いらっしゃいニャン」
抱かれているのが社長のシロ。三毛猫のメスで推定10歳。捨てられていたのを保護したため、正確な年齢はわからないそうだ。
この先どうなってしまうの?
あ、猫が占ってくれるわけじゃないんですね。
「たまに依頼はありますが、そういう場合はしっぽでタロットカードを払った時とかに、『あ、今社長が悪い星を消してくれましたよ』などというやりとりをします」
エンジンを作る工場で働いていた
ここは2010年にオープン。占いの種類は、紫微斗数(しびーとすう)、気学四盤掛け、周易、タロット、六壬神課、手相などだ。
ムニャ先生は雑誌でも占いページを連載中
ムニャ先生は、もともと静岡県に住んでおり、スクーターのエンジンを作る工場で働いていたそうだ。しかし、あるきっかけから紫微斗数占星術に興味を持ち、週末ごとに上京し、師匠について勉強したという。
なかなかの美人である
当時は勉強しつつ、自分でも鑑定をしており、半年間で100人ぐらいのお客さんが来訪。この盛況はシロのおかげに違いないと思ったムニャさんは、東京で独立する際にシロを社長に据えた。
シロはかぎしっぽの「かぎねこ」。屋号の「かぎねこ亭」はこれが由来である。
「幸運の扉を開ける」とされるかぎしっぽ
「4人も生んどるからわからんわ」
さて、いよいよ占ってもらおう。占いの種類は紫微斗数。初めて聞くが、これは中国や台湾で生まれた伝統的な星相学で、生年月日時をもとに運勢を判断する方法だという。
14の星のどれに当てはまるかで運勢がわかる
具体的には、12の宮が配された「命盤(めいばん)」に、どの星が入るかによって鑑定するらしい。
さて、来年の運勢は?
生年月日を答えると、さらに出生時刻を聞かれた。たしか、午前6時か7時だと言われたような記憶があるが確信はない。母親に電話してみよう。
もしもし、お母さん?
母親いわく、「うーん、どうやったっけねえ。4人も生んどるからわからんわ」。そのまま先生に伝えると、「7時だと筋肉隆々タイプだから、6時じゃないでしょうか」と言われた。
午前6時で入力
鑑定を待つ間、先生の小指の爪だけ長いことに気づいた。理由を聞くと、「あ、中学生の頃から無意識に伸ばしているんですよ。エンジンを作る時はちょっと邪魔でした」とのこと。
運気を呼び込むアンテナなのかもしれない
常に自由な社長
2014年は「大きな変化が起きる勝負の年」
鑑定が終わった。それによると、僕は巨門星(こもんせい)という星に当てはまり、「仕事の気運はいい」「健康状態もいい」「お酒の失敗に気をつけて」「お金に執着がない」という結果だった。
これが鑑定結果をまとめた「命盤」だ
いろいろと当たりすぎている。そして、肝心の2014年は「大きな変化が起きる勝負の年。応募とか創作に向いている」という。小説を書いて賞に応募しなさいということだろうか。
手書きにこだわるのは師匠の教え
こうして鑑定した「命盤」はずべてファイルに保存している。6割ぐらいがリピーターのため、過去のデータを参照するからだ。
分厚いファイル
そういえば、先生。ずいぶん前からキッチンの蛇口が水漏れしていて困ってるんですが、どうしたらいいですかね。
「それは管理会社に電話してください」
自由な社風である
ムニャ先生、社長、ありがとう
興味本位で訪れてみたが、想像以上に深い感銘を受けた。気が引き締まる思いだ。とはいえ、何から手を付けてよいのかわからないので、まずは管理会社に電話をするところから始めよう。