特集 2013年11月12日

まだ建つのか!今度はヒノキのスカイツリーが建った

唐突にいい話をしはじめる

――龍馬、長吉、スカイツリーときて、と最新作はミニチュアですか?

「今日本の国で一番光ってんのはスカイツリーだじゃ。輝いてんのがな。あれを見てると元気をもらえるの。だからやっぱり、シンボルだからね。作りてえなと思ってたの。

龍馬作るのもね、彫刻やったわけではないけんど、やってみようと思うことが大事だと思うの。今の人はさ、ぜったい安全安心のとこしか進まないじゃん。やっぱり思うことをやってみようという取り組み、そういうことが大事だと思うの」

土屋さん、突然質問とは関係ない"いい話"を語りはじめた。全くの正論であるのだが、その後もいい話モードはとどまるところを知らない。
ログハウス会社としてのショールーム。ログハウスオブザイヤーなど数々の賞を持ち、土屋さん自身も「森の名手名人」に選ばれた
ログハウス会社としてのショールーム。ログハウスオブザイヤーなど数々の賞を持ち、土屋さん自身も「森の名手名人」に選ばれた
「そのとき高校生が取材しにきたんだよ。ここに書いてあるだろ、『男はロマンで女はガマン』だ」純真な高校生相手に!
「そのとき高校生が取材しにきたんだよ。ここに書いてあるだろ、『男はロマンで女はガマン』だ」純真な高校生相手に!
「やっぱりいつも言うだよ。感謝する気持ちでさ、何事も取り組まなきゃ。そういう前向きな姿勢がやっぱり元気の秘訣、一番の理由だよ。男はロマン、女は我慢。おもしれえら~?」

おもしろいかどうかは時代によるであろう冗談が出てきた。一体、私の質問の「最新作はミニチュア?」はどこにいったのだろう。

――となると、自分が元気になるためにスカイツリーを作ったという面もありますか?

「そう、自分の元気の。夢よ。いくつになっても夢をもたないとまずいと思うの。今71だけんど、夢をもって前へ進む。それが元気の秘訣だと思うの」

この広い意味での健康器具みたいな話、米子でうどんにモーツァルトきかせてるおじいさんもそうだった。そういえば、あの人も東京オリンピックを祝ってたのだった。

[参考]モーツァルトうどんとは何か
なぜか製塩室があり近くの海水を煮つめて塩をつくっている
なぜか製塩室があり近くの海水を煮つめて塩をつくっている

なぜか塩も作っている

土屋さんの作業場には製塩室もあって近くの海水を煮つめて塩を作っている。

満月の朝取り塩。「宇宙パワー最大の時」とかいてあり、思わず身構えるほどにあやしい。

――満月のときの海水の塩がなぜ良いんですか?

「月が一番近いから。月の引力があるわけじゃん。海底にあるものが表面にきてる。海底にしまってあるものが海面に上がってんの。そんときに汲み上げた塩水がいいの」

――海底にあるものがなぜいいのかがわからないんですけども……

「わかんねえ? 月の引力がはたらくから。海底のものが上に上がってんの」

話がまた最初の地点にもどったとき、私たちはおたがいにわかりあえないことを知った。
「うちの塩でつけた梅干しでも漬物でもうめえんだ」一個500円で販売しているそうだ。ひとついただいたのだが、その辺の海水を塩にして食べていいのかつい検索してしまった。
「うちの塩でつけた梅干しでも漬物でもうめえんだ」一個500円で販売しているそうだ。ひとついただいたのだが、その辺の海水を塩にして食べていいのかつい検索してしまった。
木製のハウス栽培をしている。引いてきているのは海水。どちらの情報もはじめてすぎて、何もつっこめなかった
木製のハウス栽培をしている。引いてきているのは海水。どちらの情報もはじめてすぎて、何もつっこめなかった
コンテナがあるなと思ったら中は木材の燻製室。囲炉裏にいぶされたような良質の木材になるらしい
コンテナがあるなと思ったら中は木材の燻製室。囲炉裏にいぶされたような良質の木材になるらしい
土屋さんが趣味で収集している石油発動機。昭和初期のものながらちゃんと動く
土屋さんが趣味で収集している石油発動機。昭和初期のものながらちゃんと動く

石油発動機のコレクターでもある

これすごいら?と見せてもらったのは、昭和初期の日本のエンジン、石油発動機。バルバル、バスバス、音をたてて動くところを見せてもらった。

なんと土屋さんは16台を所有しているらしく、地元の新聞にも紹介されたそうだ。

「ここに石油発動機の歴史が書いてあんじゃん。日本にはこんなにあっただよ、メーカー。今残ってんのはクボタとかさ、ヤンマーとかさ、ムサシってのがあんだ、おれムサシ持ってんだよ」

――いいんですか、そのムサシってのは?

「おもしれ~じゃん、名前がおもしれ~じゃん。あんだよこういう世界が。勉強しないと困るな~」

名前がおもしろいのか。好きな人の世界にむやみに首をつっこむべきではないなと思い知った。
石油発動機の雑誌の特集を見せてくれた。小学生の髪型から、デコチャリみたいな文化なのかなと思った
石油発動機の雑誌の特集を見せてくれた。小学生の髪型から、デコチャリみたいな文化なのかなと思った
古い車が好きで雑誌にも載った。「車も女房も古いほうがおもしれえっていうの。古いもの大事にしようってこと」深いですよこれは、もしくは浅いですよ
古い車が好きで雑誌にも載った。「車も女房も古いほうがおもしれえっていうの。古いもの大事にしようってこと」深いですよこれは、もしくは浅いですよ

若えもんはいそがしい

――スカイツリー見にきたんですけど、おもしろいものいっぱいありますね

「だからうちのね、うちが飼ってる犬がね、真っ白だよ。尾も白いだよ」

――は、はい……

「だからおもしれえ話をしなきゃ、つまんねえじゃん。おれみてえなね、人はなかなかいねえよ。独りでやってんだもん、全部。わけえもんは忙しいら」

若い人は忙しい。これだけの熱と力を持った人に時間があるとおもしろが暴走する。
左から勝海舟、ログハウス会社社長、そのご先祖様、東京スカイツリー
左から勝海舟、ログハウス会社社長、そのご先祖様、東京スカイツリー

取材協力

天城カントリー工房
http://www.amagi-log.com/

※ログハウス業界では老舗で、家を建てたりお店の内装をやったり「うちが手がける店はぜんぶ流行んだよ」とのことです(大北)

もてあますとスカイツリーが建つ

おじいさんが元気だといわれている。定年退職が延びるいいわけかと思っていたが、こんな人と会うと実際元気だなと思う。

考えてみれば今やこういう変なことをするのは、だいたいおじいさんだ。元気なおじいさんスカイツリーを建てる、元気なおじいさん蜂の巣でスペースシャトルを作る、うどんにモーツァルトをきかせる、などなど。

おじいさんはもてあましている。熱意と体力と技術と時間をもてあましている。そしてスカイツリーを建てちゃうのである。

そんなおじいさんの話を近くできいてみると、はたして私たちはわかりあえるのかと自信を失ってしまう。しかしわかりあう必要がそもそもあるのだろうか。

建てちゃった人。そんな技術と時間と熱意をもてあました人を、これからもできるだけ遠くから見つめていたい。
昼ごはんを食べるのに「この辺に珍しい店ないですか?」ときいて教えてもらった店。ヒノキのスカイツリーの写真が貼ってあるという珍しさだった(行きつけの店の可能性大)。
昼ごはんを食べるのに「この辺に珍しい店ないですか?」ときいて教えてもらった店。ヒノキのスカイツリーの写真が貼ってあるという珍しさだった(行きつけの店の可能性大)。
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