特集 2013年10月21日

ラベルライターで、違和感

自分のなのに遠くなる
自分のなのに遠くなる
ラベルライターという道具がある。メーカーによって商品名は違うが、テプラやネームランドあたりがよく知られているだろうか。

シールのテープにきれいな文字を打ち出せる機械。資料や備品のわかりやすい管理のために、多くのオフィスに1台あるだろう。

そして、オフィスにありがちゆえに、下手に使うと妙な事務っぽさが出てくるとも思う。その違和感を確かめてみたい。
1973年東京生まれ。今は埼玉県暮らし。写真は勝手にキャベツ太郎になったときのもので、こういう髪型というわけではなく、脳がむき出しになってるわけでもありません。→「俺がキャベツ太郎だ!」

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テプラで他人行儀

ラベルライター特有の雰囲気を確かめる今回の試み。自宅にはなかったので購入してみた。
これが自宅に来たことがまず違和感
これが自宅に来たことがまず違和感
買ったのはキングジムの「テプラPRO SR150」という機種。ラインナップでは下位に当たるもので、家庭利用も想定していそうな親しみやすいデザイン。それでも個人的には、この佇まいだけで事務の匂いが漂ってくる。
長年使ってるいつものパソコン
長年使ってるいつものパソコン
まずは普段から使っているノートパソコンで試そう。シールを貼ったりすることなく、買ってきたままで素っ気ないが、もう2年以上使っているので自然と愛着は湧いている。
ああ、ちまちましている
ああ、ちまちましている
独特の印刷音も仕事を想起
独特の印刷音も仕事を想起
テープを打ち出すため、テプラに文字を入力。人差し指でポチポチと打っていくのがもどかしい。仕事でも使ったことはあるが、ごくたまになので操作手順を忘れてる。

それでもなんとか打って印刷。ウーウーうなりながら出てくるテープに、ああテプラだなと思わされる。

いくつか適当に打ち出して、パソコンに貼ってみた。
パッと見は変わらないが…
パッと見は変わらないが…
目に入りやすいところに備品の証
目に入りやすいところに備品の証
自分のお金で買った感じがしなくなる
自分のお金で買った感じがしなくなる
数字を振ると事務っぽさアップ
数字を振ると事務っぽさアップ
それっぽいテープを3枚貼っただけだが、なんとなく悲しい気持ちになる。自分のパソコンがよそよそしくなって、急に距離ができた感じがするのだ。

さらには「ちゃんと仕事して下さい」と言われているような気までしてくる。そういうのやめてよ、ここ自分ちなんだから。
悲しいお知らせ
悲しいお知らせ
はい、わかりました
はい、わかりました
黄色テープで警告系のメッセージを貼ると、さらなるせつなさがにじむ。「前に何かあったな…」と、見えないドラマが見えてくる。

ラベルを貼るとパソコンに「管理されてる感」が出るのはわかる。さらにはそれを使う自分まで管理されてる気がしてくる威力がすごい。

あまりにも悲しい。別の方向でオフィス感を出せないだろうか。
テプラに励まされるというオフィスシーン
テプラに励まされるというオフィスシーン
犬の絵柄に「ガンバレ!」の文字。ディスプレイ上部に貼ってみた。自分でやっておきながら、元気印の同期女子貼ってくれたという想定だ。

どうだろう、これ。余計に葛藤が深くなった気もしてくる。
かわいさ&厳しさ
かわいさ&厳しさ
わかんなくなってきた
わかんなくなってきた
ヒヨコに「寝るな!」は、姉御肌の先輩女子が貼ってくれた設定。仕事中にウトウトしかけたとき、このシールを見て気持ちがピリッとするという想定だ。

3枚のテープが貼られたディスプレイを改めて眺める。僕はこれで頑張れるのだろうか。

オフィス感を超えろ

もう少し自分を奮起させたい。忘れたくない言葉は常に視野に入るようにしておくといいと聞いたことがある。社是や今期目標が掲げてあるオフィスも多いだろう。
こんなことしてて叶うのか
こんなことしてて叶うのか
まだ空いているスペースに、自分へのポジティブなメッセージを貼ってみよう。それをいつも目にすることで、実現の可能性は上がる気がする。
本当にそうだろうか?
本当にそうだろうか?
とりあえず大枠で捉えたメッセージを貼ってみた。

おかしい。言ってることの信憑性への疑念が、テプラ化することでより際だってないだろうか。なんとなく「お前に言われたくない」とも思えてくる。
お前が言うと逆効果なんだよ
お前が言うと逆効果なんだよ
こちらも出てくる雰囲気が内容と逆。自分で書いたこんなテプラをパソコンに貼ってるという状況からして、孤立してるだろ。矛盾があぶり出されて逆の意味で真実味が高まる。

ともあれ、「テプラで違和感を出す」という目的については果たした部分も大きい。
耳なし芳一みたいになってきた
耳なし芳一みたいになってきた
実際にパソコンを使ってみるとわかる。とにかくやりづらい。

必要な情報が画面の中にあるのに反して、その周囲が気になって仕方がない。煩わしさに仕事の能率は下がるだろう。このまま使っているとバカになりそうな気までしてくる。

やけに饒舌になったパソコン。もうわかったよ!と言いたくなる。
気に入って使ってるマウス
気に入って使ってるマウス
わかってるって!
わかってるって!
わかりきっていることを、改めて表示されるのもくどい。初めてマウスを触る人には、もしかしたわかりやすいのだろうか。
うざったいマウスだな
うざったいマウスだな
その部分の名称ではなく、「どうすればいいか」を示す表示の仕方もある。ただ、テプラに命令形で言われると、なぜだか反発したくなる気がする。「たまに押せ!」って、言ってる内容も雑だ。

そこはテプラじゃないだろう

ここまで、事務的な物を対象にテプラを貼ってきたが、逆のパターンも検証してみたい。普通そこにはテプラ使わないだろ、という場合だ。
テーブルの上にあるメモ
テーブルの上にあるメモ
例えばこの写真のような状況。誰もいない家に帰宅すると、テーブルの上に誰かからのメモが乗っている場合だ。
意味は伝わるけど、意味以外が謎
意味は伝わるけど、意味以外が謎
内容はわかる。でもなんで?なんでテプラなの?

シチュエーションが想定できない。目に浮かぶのは、ちまちまテプラ打ってる母の姿。しかも「母」だけ黄色だ。ここでわざわざテープ入れ替えてるわけだ。そういう心の込め方、しなくていいだろう。
まだ出会ったことのない2つ
まだ出会ったことのない2つ
他にも何かないか探してみたところ、出てきたのは和風柄のかわいらしい一筆箋。ここにもテプラを浸食させよう。
風情と事務感が激突
風情と事務感が激突
書いてみたのは百人一首の和歌。風流とテプラがぶつかりあって、互いの持ち味を打ち消している。その結果湧き出るのが、意味不明感だ。趣きがあるのかないのか、どっちなんだ。
そこに凝るのか、小町
そこに凝るのか、小町
よく見ると名前の部分には枠囲いの装飾が。テプラを使いつつも、ちょっとしたところで女らしさを出したい小町の乙女心が垣間見える。

テプラ下位機種ゆえ、フォントがギザギザ。それもここでは味わいに感じられてくるだろうか。

「な…が…め…せしま…に、っと」と、テプラで打つ小野小町。やっぱりイメージってものがあるんだから、筆で書いた方がいいと思うよ。

この時点でもう変
この時点でもう変

見えてきた「ラベルライター文学」

いくつかの角度から考察した、ラベルライターならではの味わい。そこには、書かれている内容を超えた、ラベルライター文学とでも呼ぶべき余韻がある。

ラベル以外での活用の可能性はもっと広がるはず。事務性を生かして、別れたいと思ってる相手にテプラで手紙書いたら、きっと気持ちが通じるんじゃないかと思う。
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