鰹節のそっくりさん
我々の周りを見ると似ているものであふれている。タレントの「マナカナ」を筆頭に、アシカとオットセイ、パフェとサンデーなど厳密には違うがその差はあまり分からない。そして多くの場合はそのどちらでも問題ない。
これはたぶんアシカ、あるいはオットセイ
たとえば、アシカだから「かわいい」というわけではなく、オットセイを見ても「かわいい」と感想を持つだろう。違いなんてもはやないに等しいのだ。似ていればどちらでもいいのである。厳密な区別はない。そのような星の下で生きているのだ。
鰹節もそうだ!
出汁を取るのに欠かせない鰹節もそう。似ているものがあるのだ。サバやアジで作った削り節も似ているが、もっと外からも似ているものがある。ヒノキである。木だ。でも、並べてみるともはや鰹節。鰹節とはヒノキなのだ。
ヒノキはどれでしょう?
鰹節とはヒノキだ!
鰹節は海のものでヒノキは山のもの。真逆なもののよう思えるが実は似ている。マナカナレベルである。先に書いたように似ていればもはや一緒理論に基づけば鰹節とヒノキに厳密な区別はない。「鰹節=ヒノキ」が成り立つのだ。
ちなみにヒノキはこの二つでした!
ということはヒノキでも出汁が取れることになる。だって「鰹節=ヒノキ」なのだから。そこでヒノキで出汁を取り味噌汁を作ってみようと思う。見た目は似ているのだから味も似ているに違いない。そのような信じる心が世界を平和にするのだと私は信じて疑わないようにしている。
ヒノキをパックに詰めて、
出汁を取る
最初は無色だったお湯に色がついてくる。鰹節の出汁と変わらない色だ。完璧ではないかと思う。唯一違いを挙げると、部屋には素晴らしいヒノキの匂いが漂っている。鰹節では絶対に起こらないことだ。またヒノキはシロアリもあまり食べない素材らしい。家を建てるならばヒノキだ。今は味噌汁を作っているけれど、家を建てるならヒノキなのだ。
完成!(向かって左がヒノキ出汁、右がカツオ出汁)
お口の緑化
比べるためにカツオ出汁の味噌汁も作った。見かけは一緒だ。目を閉じてササッと移動させてもらえば見分けがつかない。やはり似ているのだ。もっとも匂いが違うので鼻を頼れば分かる。鰹節は一歩引いた感じがするが、ヒノキ出汁は全面に個性を押し出してくるのだ。
ヒノキ出汁を飲む!
香り立つヒノキ。緑豊かな山を鹿が歩いている様子が頭に浮かぶ。ちなみに鹿はヒノキの皮を食べるそうだ。
このような味噌汁は初めてだった。匂いがとにかく際立つ。美味しいか否かと言えば美味しい。少し苦みはあるが大人の味を言えるだろう。もっとも味はカツオ出汁の味噌汁とはもう全く似ていない。見た目は似ていたのに。
ただしヒノキ出汁も美味しい!
比べるためにカツオ出汁の味噌汁を飲んだがどこかパンチを感じない。ヒノキの味噌汁の後では影が薄いのだ。どちらが美味しいかと言えばカツオ出汁。ただし山奥の宿で飲むならヒノキ出汁であり、大地を感じたいと思った時もヒノキ出汁である。どこかのB級グルメとしてあても驚きはない。そんな味だった。
ヒノキ出汁の味噌汁のイメージ
貝柱に似ている
ヒノキと鰹節だけでなく、干し貝柱とサクラチップもどこか似ている。貝柱とはホタテの一部で出汁を取るのに使われることも多い。一方、サクラチップは薫製に使われるのが主な用途だ。しかし、似ているのだ。ということは出汁が取れるのではないだろうか。
似ている
似てないように見えるかもしれない。目が悪い人なら眼鏡やコンタクトを外して見て欲しい。目がいい人ならば目を悪くしてから見て欲しい。新たな世界を感じることができるはずだ。最近は眼鏡も安いので目が悪くてもそんなには困らないと思う。
ブレさせたらもうそっくり!
ブレるのはよくないというがブレてみるのも悪くない。貝柱とサクラチップの区別がより鮮明に分からなくなった。ブレることで鮮明になることもあるのだ。これは人生においての大切な哲学なのではないだろうか。
ということで出汁を取ります!
上記のように貝柱とサクラチップが似すぎていることが分かったと思う。ということで、出汁を取る。ヒノキと違い甘酸っぱい匂いが部屋を支配する。いいのではないだろうか。お湯にもキチンと色が付いている。もはやサクラチップは貝柱だ。
完成!(向かって左がサクラチップ、右が貝柱)
お口が春!
味噌を加えサクラチップ出汁の味噌汁が完成した。味噌汁としてはかつてない芳醇な春の香りを放ってる。味はともかくこの時点では最高級の味噌汁である。おもむろに口に運ぶとやはり口に春が来た。口にも春はやってくるのだ。
美味しい!
やはり渋みというものが多少あるが、それは出汁を取る時のチップの量で調節すればいい。奥行きのある味、そして香り、とても美味しいと思う。ちなみに味は貝柱出汁の味噌汁とは全く、もう全然似ていなかった。その点は鰹節とヒノキの関係性に似ている。
貝柱出汁の味噌汁
貝柱出汁の味噌汁は特にこれと言ったくせはなく、悪く言えば特長のない味噌汁と言える。先ほどの鰹節出汁と同じく、これと言った主張がないので優しい味だ。
サクラチップ出汁の味噌汁と味を比べれば断然、貝柱出汁の方が美味しいが、これは美味しいか否かではなく、似ていることが主な目的なのでこれでいいのだ。味は似ていないけれど。
サクラチップ出汁の味噌汁のイメージ
牛皮の味噌汁
ヒノキもサクラチップも決してマズくはなかった。もっとも見た目は似ていたが味は全然似ていなかったけれど。また木を煮た汁を食べても大丈夫なのか、という疑問も残る。
そこで牛皮です!
もう似ているとかは置いといて、間違いないもので出汁を取ろうと思う。牛皮である。木を食べることは稀だが、牛の皮なら食べられる気がする。肉は食べるし、犬のおやつに牛の皮はあるのだ。
牛の皮!
牛革のバックなどに使う牛の皮を準備した。皮なら食べられるはずなのだ。ちなみにそのまま齧ったら牛革バックの味だった。ひねりのないストレートな味だ。マズい。
しかし出汁に期待したいと思う。そのままではマズいが出汁としてはいいというものがあるのだ。具体的なものは全く思いつかないがこの広い世界にはきっとあると私は信じるようにしている。
出汁を取る
鮮やかな色!
味噌汁完成!
本来は縫い合わせて鞄になる牛革が見事な味噌汁となった。味噌の匂いを消すほどの強い革のバッグの匂いがする。ゆっくりと食べてみるとこれは声を大にして言いたいほどマズかった。これはない。
昔、牛革の靴を非常食として食べたという話を聞いたことがあったので期待したが、常用ではなく非常食だった意味を理解した。マズいからだ。
これはなかった
町おこしにぜひ!
似ているという理由で出汁を取ったヒノキとサクラチップだったが、食べられなくはなかった。地方のB級グルメとしては十分に行ける味なのだ。個性をいかんなく発揮している。問題は食べてもいいのかだけれど、今のところ元気なのでヒノキやサクラの産地はぜひこれをB級グルメにして欲しいと思う。一度は食べに出かけると思う。