特集 2013年8月30日

西の横綱ローカル線で時間セレブの旅

時間セレブのローカル線

日本にはいろいろな電車(路線)が走っている。東京だけを考えても山手線、中央線、京浜東北線など挙げればキリがない。いま挙げた電車の特長は5分も待てば次の電車が来ることだ。乗り遅れてもたいした時間のロスはない。
逆にこんな本数の路線もある(これから乗る木次線の時刻表)
逆にこんな本数の路線もある(これから乗る木次線の時刻表)
しかし、世の中そんな路線ばかりではない。一時間に一本という路線もあれば、一日に三本という路線もある。いわゆるローカル線だ。そのローカル線の中でも横綱と呼ばれるローカル線が存在する。「木次線」である。
横綱ローカル線「木次線」
横綱ローカル線「木次線」
島根(松江)から広島に行こうと思うと、「特急やくも」で岡山に行き、そこから新幹線で広島というのが最短である。それでも4時間弱の旅となる。

そこで木次線という選択だ。倍の8時間もかかり、電車の本数も一日3本と少ないけれど可能ではあるのだ。これが時間セレブの旅。

急がないのだ。お金はないけれど時間だけはある人を時間セレブと言うのだ。お金がないからこそ特急料金などがかからないローカル線を選択する。そのようなセレブが時間セレブである。
ということで時間セレブの旅が始まります!
ということで時間セレブの旅が始まります!

見所ばかりの木次線

島根の宍道駅から広島の備後落合駅を結ぶ木次線。広島駅に行くには備後落合駅から、さらに芸備線に乗り換える必要があるが、この旅の目玉は何と言っても「木次線」である。
電柱が木
電柱が木
木次線は指定席料のかかる観光列車を除けば一日に3本しか走っていない(時間セレブは指定席料を払えない)。ただし見所ばかりの路線である。無料の水、日本に数カ所しかない3段式スイッチバック、西日本で一番標高の高いJRの駅など、西の横綱ローカル線と言われる理由だ。
もちろん車窓はのどか
もちろん車窓はのどか
ちなみに東のローカル線の横綱は岩手の「岩泉線」。しかしコチラは2010年の脱線事故以来休止しているらしく、現在横綱はこの木次線しか存在していない。それに乗れる喜びと言えば、明日から夏休みみたいな感じだ(時間セレブは通年でほぼ夏休みではあるが)。
駅名の看板もカッコいい
駅名の看板もカッコいい

時間セレブです

湯水のごとく時間を使い目的地に向かうローカル線の旅。セレブである。時間セレブである。悲しいかな急ぐ用事がなく、特急券もいらないので値段的にも安い。時間セレブとはセレブではあるけれど、いわゆるセレブとは逆の存在にある。だからこそ楽しめる木次線だ。
駅にも趣がある(出雲横田駅。この駅は女子高生が多かった)
駅にも趣がある(出雲横田駅。この駅は女子高生が多かった)
とはいえ、宍道駅方面から乗ると出雲坂根駅辺りまでは特に見所はない。しかし見所がないこともいわば見所で、これぞローカル線なのである。もっとも木の電柱が現役だったりと外を見ていれば何かしらの発見があり楽しい。
出雲坂根駅の到着
出雲坂根駅の到着
宍道駅を出発して二時間弱の出雲坂根駅から怒濤の見所ラッシュが始まる。まず出雲坂根駅では延命水という水が無料で飲める。電車もそれを考えてか10分以上停車する。自由に駅外に出れるので水が飲めるのだ。
水、無料の水!
水、無料の水!
先述の通り時間セレブは時間はあれどお金はないので無料の水を好む。その場でも飲むし、このために空のペットボトルも持参している。ちなみに延命水のすぐ横では空のペットボトルが売られている。しかし100円もするので時間セレブはぜひペットボトルを持参するべきだろう。
100円で売られている
100円で売られている
時間セレブはペットボトル持参
時間セレブはペットボトル持参
飲んでみるとこの水が非常に口当たりがよく美味しい。無料という言葉が味の評価に十分すぎるほど加味されているが美味しいのだ。宍道駅から2時間弱。その美味しさはひとしおだ。そして、この駅ではもう三段式スイッチバックというこの路線のハイライトが始まっている。
無料は美味しい!
無料は美味しい!
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三段式スイッチバック

スイッチバックとは勾配のキツい山道を走る際に使う方法である。山道を直線で登るのではなく、ジグザグに登るのだ。ローカル線ではこのスイッチバックが名物となるところも少なくない。
これがスイッチバックです!
これがスイッチバックです!
ただし木次線のスイッチバックは違う。三段式スイッチバックなのである。通常の二段ではないのだ。三段式は片手で足りるくらいしか存在しない貴重なスイッチバック。時間セレブとして見ないではいられない存在なのだ。
これが三段式スイッチバック
これが三段式スイッチバック
宍道駅方面から来るとまず出雲坂根駅で運転手さんがここまでとは逆の運転席に移動する。スイッチバックは進行方向が変わるので運転手さんが後ろから前に移動するのだ。
こうきて、
こうきて、
こうなって、
こうなって、
こうして、
こうして、
こう!
こう!
これが貴重な三段式スイッチバックである。二段はよくあるが三段を体験するともう二段には戻れない。傘の存在を知ったら、もうずぶ濡れ時代に戻れないのと一緒だ。それほどに興奮が違うのだ。この電車に乗っている人のほとんどがそのようで、運転手さんが移動する度に、観客も移動する。一体感である。
盛り上がる観客席
盛り上がる観客席

おろちループ

三段式スイッチバックが終わっても見所は続く。「奥出雲おろちループ」である。ヤマタノオロチを思わせる名前の通り道がループしている。これは木次線から見えるのであって実際に走るわけではない。しかし絶景なのだ。
奥出雲おろちループ
奥出雲おろちループ
ちなみにまだここは島根である。広島を目指しているが島根を未だに脱出できていない。時間セレブである。これでいいのだ。急いで家に返ってもなんの用事もないのだ。電車の中の方が涼しくて快適なのだ。家のエアコンは壊れているのだ。
また湧く観客席!
また湧く観客席!

西日本一標高が高いJRの駅

興奮の連続に若干疲れているが次は「西日本で一番標高の高いJRの駅」である。高いといのはやはり大切なことで、多くの人が危険を顧みずエベレストを登る。高さは人を虜にするのだ。この駅「三井野原駅」もきっと多くの人が集っていることだろう。
普通の駅!
普通の駅!
むしろ廃ってる!
むしろ廃ってる!
普通の駅だった。スキー場がある駅らしく夏場のこの時期は来る人も少ないのだろう。そう思い後で調べたら2010年の平均乗車人員は8人/日だった。しかも無人駅である。冬もそんなになのだろう。高いだけでは人を引きつけることはできないらしい。
人のいない夏のスキー場が見えた
人のいない夏のスキー場が見えた
三井野原駅までくれば終点である備後落合駅はすぐである。広島駅へはここから芸備線に乗り換える。時間セレブの旅は続くのだ。

とは言っても、芸備線は普通のローカル線なので特に見所はない。マラソン後にすぐに止まるのではなく少し走り続けるように、芸備線は木次線での興奮を冷ます時間となる。もっとも外を見ていればあっと言う間に広島である。
木次線の終点「備後落合駅」
木次線の終点「備後落合駅」

旅は続く

広島駅を目指せばまだ時間セレブの旅は続くが、取り立てて書くこともないので、この記事は終了である。ただし本文中にも書いたように見所がないこともまたローカル線の見所である。そのため芸備線も書くことこそないが、乗っている分には十分すぎるほどに楽しい。ゆっくりと外を見ていればいいのだ。時間セレブのススメである。
その後、芸備線から山陽本線にさらに乗り継ぎ宮島まで行きました!
その後、芸備線から山陽本線にさらに乗り継ぎ宮島まで行きました!
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