本当にあちこちにある一本松
最初に京都の市バスの話をしたが、もちろん京都にも一本松バス停がある。
で、東京に居を移してからも、妙にあちこちで『一本松』と書かれたバス停を見かけるような気がするのだ。
地図アプリで検索をかけてみると、確かに出るわ出るわ、一本松バス停がぞろぞろ並ぶではないか。
まだまだ出てくる。
自宅からすぐに行けそうな範囲でも4つ5つある。
あるなー、とは思っていたが、まさかこんなにあったとは。『一本松』という名称のオンリーワン感の高さにすっかり騙されていたが、実はいっぱいあるのだ、一本松。
一本松バス停(東京都荒川区 都営バス)
一本松バス停(千葉県市川市 京成バス)
一本松バス停(千葉県松戸市 松戸新京成バス)
地図で見る限り簡単に回れそうな気がしたので立て続けに3つ移動してみたが、実際、バスと電車を乗り継げばこの三本松の移動時間はせいぜい2時間ちょっとである。
そんな近い範囲内にあるなんて、本当に一本感ゼロ。密集しすぎである。
一本松の由来
ところで上写真、松戸の一本松バス停の近くには、実際にひょろっと小さな松の木が一本立っていた。
身長よりちょっと高いぐらいの一本松。
「この松が本当に『一本松』の由来だったら笑うなー」と思って写真を撮っていたら、なんとこれがちゃんと地名に関係のある松だった。
正確には、一本松(二代目)。
この松から東に10mほどのところに大きな松が生えていて、それが地名の由来となっていた。残念ながらその松は枯れてしまったが、地名の謂われが忘れられないよう新たに松を植樹したよ。ヨロシク。という内容の立て看板付き。
やはり『一本松』の周辺には、目印となるような松の木が生えていたのだろう。
そういえば、京都の一本松バス停の近くにもひょろっと松の木が生えていたように思う。あれが初代か二代目かは分からないが、とにかく松の木はあった。
『一本松』を見える化する
では実際問題、日本には一本松バス停がいくつあるのか。
バス路線検索などを使って、調べられる限りのものを上げてみると…
ジャスト、四〇本松。
日本地図の上に一本松ピンを立てると、だいたいこんな感じ。
40本松。ほぼ防風林。
こんなもの、どう考えても一本松であろうはずがない。松林だ。防風林だ。
一本松の北限は北海道枝幸郡枝幸町の一本松(道北バス)、南限は長崎県西彼杵郡長与町岡郷の一本松(長崎バス)と思われる。
他には一本松に別パーツを付けた「石塚一本松(茨城県東茨城郡)」や「国道一本松(奈良県奈良市)」などの準一本松も存在する。上の地図からは省いてあるが準一本松は七本あるので、それを加えると四七本松。なんと平均すると一本松/1都道府県である。
一本松過密地帯
1県に一本松…というのは平均の話であって、実際には地図でも分かる通り本州中央やや東寄りに集中している。
さらに、県単位でも過密過疎が大きい。これは地図では分かりにくいが、リストによれば最多一本松県は福島・兵庫の五本。次いで千葉・神奈川・三重の三本となっている。
西の松どころ、兵庫県における一本松配置はこのような感じ。
一本松のメッカ、兵庫。
西宮・加古川・姫路と比較的沿岸部に近いところの一本松は、もともと本当に防風林だった松が一部だけ残り、一本松という地名の元となったのかもしれない。篠山・豊岡は山深い地域なので、まぁ大きな松があっても何の不思議もない。
それに対して東の福島はというと…
一本松銀座、福島。
こちらも山野の松が地名の元になったのだろうという予想は付くのだが、興味深いのは、五本の一本松が二本松市を取り囲むように配置されていることだ(ややこしい)。五本松二本松包囲網だ。
ちなみに二本松市には一本松は存在しなかった。たぶん、あったら色々と面倒くさいからだと思う。
今回、直接行ってみた荒川・市川・松戸の一本松のうち、周辺にリアル松の木があったのは松戸だけであった(二代目だけど)。
他の一本松はどうなんだろうか。由来の松が残っているバス停はあるんだろうか。