特集 2013年8月13日

お前もペンにしてやろうか

全部ペンにしてしまえば大丈夫。
全部ペンにしてしまえば大丈夫。
いわゆる「文房具好きの人あるある」なのだが、旅先のお土産物屋などで細長いものが並んでいると全部ボールペンに見えてつい手に取ってしまう、的なうっかりプレイがある。
民芸品っぽい箸や万華鏡、耳かきなど、毎回無意識につまみ出しては「なんだペンじゃないのか」とガッカリして戻す、というのが大まかな流れである。
いちいちガッカリするのも面倒なので、もうそういう細長いものは全部ペンにしてしまえばいい。
1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

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人間には、ペンロックオン機能がついている

日常的に文房具のことを気にしていると、どんなによそ見をしていても、ペンぐらいの縦横比率の棒状の物体があればそこに視線が自動的に吸い寄せられるようになる。
デジカメの顔認識と同様の機能がペンに対して働いてしまうのだ。

これはもう人体の仕組み的な話なので、例えば社員旅行先の土産物売場で同僚が細長いものをいじりだしても「ああ、そういう人もいるんだな」ぐらいで止めておいて欲しい。
とある民芸風の店頭。
とある民芸風の店頭。

例えば僕が上の写真のようなお店の前を通った時は…

僕にはこんな感じに見えている。
僕にはこんな感じに見えている。
だいたいこれぐらいターゲットマーカーが出てると思って欲しい。
そして「わー、見たことないボールペンがいっぱいだ。どれ買おう」とテンション上がった直後に、これが全部ペンではなくお箸だったと気付いた時のがっかり感。これはご理解いただけるのではないか。

じゃあもうボールペンにしよう

こんながっかり感を毎回味わうぐらいなら、いっそ自分で目に入ったものを全部ペンにしてしまえばよいのではないか。
店頭でボールペンと間違えてしまう率ナンバーワン、箸。
店頭でボールペンと間違えてしまう率ナンバーワン、箸。
ボールペンというのはだいたい「レフィル」と呼ばれる芯の部分さえあれば筆記可能なので、このレフィルを気になった細長いものに埋め込んでしまえばオーケー。それだけで、もう二度とあんな辛い思いはしなくて済むのだ。
適当なボールペンを…
適当なボールペンを…
分解して芯(レフィル)を引っこ抜く。
分解して芯(レフィル)を引っこ抜く。
ペンの種類によってレフィルの直径もまちまちだが、普通の油性ボールペンであれば直径3mmぐらい。それに合うドリルで穴を開けてレフィルを突っ込めば、それで簡単にペンの出来上がりである。
電動ドリル突入。
電動ドリル突入。
今回は3.2mm径の穴をあけた。
今回は3.2mm径の穴をあけた。
中でガタつかないよう、レフィルにボンドを塗って挿入。
中でガタつかないよう、レフィルにボンドを塗って挿入。
先端パーツも接着して完成。
先端パーツも接着して完成。
箸一本で作業時間わずか5分強。
こんな簡単なことで世界中の文房具好きがあの悲しみから解放されるとしたら、それはもう、僕は何らかの賞をいただいても良いのではないか。なんかノーベルボールペン賞的なやつ。

箸がペン

ボールペンのある食卓。
ボールペンのある食卓。
文具好きの皆さん、もういいんです。我々は二度と箸売場の前で泣かなくてもいいんです。
こんな感じにしてしまえば良かったんです。

あと、箸の直径と辺の直径が偶然同じだったので、キャップまで再利用できたのは僥倖だった。
あ、そうだ忘れてた。いま食べてる献立をメモしておかなきゃ。
あ、そうだ忘れてた。いま食べてる献立をメモしておかなきゃ。
今後人類は、ご飯を食べながらでも気付いたことや忘れてはいけないことを即、メモすることが可能になった。
食事の途中でも、つい忘れがちなライフログを記録することができるのだ。
キャップを外すだけで筆記可能。
キャップを外すだけで筆記可能。
あっ。
あっ。
大事なところをうっかり書き損じてしまったが、問題はない。
何のために箸が二本で一組になっているのか。
そんな時はもう一本の箸を抜いて…
そんな時はもう一本の箸を抜いて…
間違った部分は赤で訂正すれば良し。
間違った部分は赤で訂正すれば良し。
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実は意外とペンと間違う靴べら

靴べらも、意外とボールペンと間違ってしまうアイテムの一つだ。
土産系のペンには普通よりも軸が大きく太いものが出回っており、それがまた靴べらの握りの部分と良く雰囲気が似ているのだ。
まさにこんなサイズの靴べらがよく見間違う。
まさにこんなサイズの靴べらがよく見間違う。
箸と違って、冷静に見ればまずペンとは間違わない形状をしているだけに、騙された時のショックは大きい。
しかし今度からは大丈夫。騙されても、ペンにしてやれば良いのだ。
箸と同じようにドリルでドリッと穴を開ける。
箸と同じようにドリルでドリッと穴を開ける。
先ほどの箸は比較的柔らかい竹素材で穴が開けやすかったのでいきなり電動ドリルを使ったが、普通は最初にピンバイスと呼ばれる小さなハンドドリルで仮の穴を開けておくほうが良い。
その仮穴をガイド代わりにして電動ドリルを入れるのが失敗しないやり方である。
レフィルと先端パーツを接着。
レフィルと先端パーツを接着。
穴さえ空いてしまえばあとは先ほどの箸と同じ作業で完成だ。
吊してみると、まだ靴べら感は残っている。
吊してみると、まだ靴べら感は残っている。
もちろん靴を履くのにも使える。
もちろん靴を履くのにも使える。
下駄箱でも靴の中でも違和感のない靴べらっぷりを装っているが、もはや彼は一本のペンでしかない。
このとおり、持ち替えればすぐに筆記できるのだ。
今日の靴も忘れないうちに、履いたその場でメモできる。
今日の靴も忘れないうちに、履いたその場でメモできる。

自宅にある細長いものは全部ペンにしてやる

さて、ペンと間違う率の高い箸と靴べらをこらしめてやったわけだが、どうせなら、それ以外の細長いものもどんどんペンに変えていっても良いのではないか。
現時点でたまたまペンとその細長いのを間違えたことがない、と言うだけで、今後いつペンと間違ってしまうか分かったものではない。危険な芽は早く摘んでおくに限る。
あきらかにバール。
あきらかにバール。

ドリルなどを工具箱から取り出した時、中で邪魔になっていたので取り出したバールがあった。
以前にホームセンターで200円だかで売っていたのを、あまりの安さに驚いて購入したものだと記憶している。すでにバールは大きいのを1本持っているので、あまり使っていない。というかむしろ邪魔だ。
幸いなことにハンドル部分に穴が開けられそうだし、どうだろう、キミ。いっそペンに改造されて新たな生を得てみる気は無いか。
これまた5分で改造完了。
これまた5分で改造完了。
バールのようなもの(ペン)に。
バールのようなもの(ペン)に。

今後もしこれが金庫をこじ開けるような犯罪に用いられた場合、ニュースでは「犯人はバールのようなペンを用いて…」などと言われるのだろうか。少しワクワクする。
このとおり、角材に素早くメモがとれる。
このとおり、角材に素早くメモがとれる。
このペンは釘抜きにくい。(早口言葉)
このペンは釘抜きにくい。(早口言葉)
さすがにペンとしてはリアヘビーすぎるため、ほんの数行書いただけで右手の筋が痛くなってしまった。
それでも、釘の近くに「この釘は抜きにくいよ」という警告がその場ですぐに書き残せるのは大きなメリットであろう。ペン、便利だ。
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天突きもペンだ

次に目をつけたのがキッチン周りである。
そういえば、何年か前に「なんとなくところてんを突くのをやってみたい」という気分だけで買ってみたものの、一度で飽きた天突きがあった。
そいうやこれも、棒の辺りがちょうど良い細長さだな。
じゃあキミも今日からペンだ。
じゃあキミも今日からペンだ。
ほら、ペンだ。
ほら、ペンだ。
天突き、「もう使うことも無かろう」と思ってペンにしたのだが、この写真を撮るためにわざわざスーパーを3軒ほど探して、切れてない固まりのところてんを買って来てしまった。
ペンにすることで天突きの雇用が拡大したとも言えるだろう。意外な効用だ。アベノミクスもみんなペンにすればいいのに(良く分かってない)。
数年ぶりに仕事をした元・天突き(ペン)
数年ぶりに仕事をした元・天突き(ペン)
たまに食うと、まあアリかなー。そんなに好きでもないけど。
たまに食うと、まあアリかなー。そんなに好きでもないけど。
そういや思い出した。なんで天突きに飽きたのかというと、ところてん自体がそんなに好きでもなかったからだ。ま、たまにならいいかなぐらいのローテンションでずるずる、と。
おやつも素早くメモしておこう。
おやつも素早くメモしておこう。
酢醤油。からしをうっかり切らしていたのが地味に痛い。
酢醤油。からしをうっかり切らしていたのが地味に痛い。

杭もペンだ

最後の一つは、杭だ。
これは今までとはちょっと方向性が違い、すでに家庭内にあったものではない。
ホームセンターの杭売場に杭がずらりと並んでいるのがペンに見えたから、じゃあペンにしてやろうという流れで買って来たものだ。
杭売場、後から写真で見ても文具売場感強い。
杭売場、後から写真で見ても文具売場感強い。
今までの人生で杭を買った事なんて無かったので、とりあえず一本ぐらいそういう理由で買ってみるのも良いかも知れない。そんな理由でペンにされる杭もどうかとは思うが。
一番安い杭。158円。杭価格の相場が分からない。
一番安い杭。158円。杭価格の相場が分からない。
思った通り違和感無くペンだ。さすが元からペンぽかっただけはある。
思った通り違和感無くペンだ。さすが元からペンぽかっただけはある。
ところで、今回はライフログを取る事が出来なかった。
こうやったら
こうやったら
こうなったから。
こうなったから。
作っている最中は「ペンを地面に打ったらかっこいいなー」ぐらいの気分で作業していたのだが、冷静に考えればこうなるだろうことは予想できたはずだ。勿体ないことをした。
ただ、作業後にペン先が壊れなかったとしても、書ける内容は「今日の杭 1本」という無意味な一文だけだろうが。

たとえば筆をペンにした「筆ペン」など、あまりにも馬鹿馬鹿しいので記事には使わなかったものもある。しかし、手当たり次第に身近なものからどんどんペン先が生えるという光景は楽しかった。もっとやりたい。
そして、いずれ家にあるものをほとんどペンに置き換えた際には、自宅のことを「筆箱」と呼ぼうと思う。
墨を擦るのが面倒なとき用のペン。
墨を擦るのが面倒なとき用のペン。

8/17に、お台場の東京カルチャーカルチャーで、今回作ったペンに近いような馬鹿馬鹿しい文房具ばかりを紹介する『駄目な文房具ナイト5』というイベントをします。
拳銃で撃たれても大丈夫なクリップボードや、座布団ぐらいの巨大な付箋など、いろいろと変わったものが見られますので、ぜひお越しください。
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