特集 2013年8月12日

エスカレーターのインディーズレーベルをご存知か

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以前私は、この記事で日本国内にあるエスカレーターのメーカーは、だいたい6社だと自信満々にお伝えした。
ところがその後、新たに4社のエスカレーターメーカーがあることが判明した。
深く反省し、ここにご紹介したいと思う。
1984年うまれ、石川県金沢市出身。邪道と言われることの多い人生です。東京とエスカレーターと高架橋脚を愛しています。

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6社の見究めでいい気になっている場合ではなかった

だいたい6社と言っているが、「まぁほかにはないだろうね、海外メーカーならもう少しあるから、もしかしたら今後参入してくることがあるかもしれないけど」ぐらいの意味での「だいたい」だった。自信満々だった。
ところが、だ。その後、海外メーカーどころか、れっきとした、日本のメーカーで、さらに、4社のエスカレーターメーカーがあり、しかも、そのエスカレーターが現存することを、報告いただいてしまったのだ。
これがどういう事態かというと、エイベックスや東芝EMIのようなメジャーレコード会社の音源しか扱わないCD屋に足繁く通って、すっかり音楽通になった気でいた私が、はじめてタワーレコード渋谷店の豊潤のインディーズコーナーを知ったときの衝撃と同じものがある。
まったく恥じ入るばかりだ。順々にご紹介したい。

日本エレベーター工業

1基目は、ちょっと古めの昭和なスーパーをめぐっていろいろなレトロなエスカレーターを堪能した際お世話になったMACLORD氏に教えてもらったエスカレーターだ。この記事の中でも紹介したのだが、良いものは良い。もう一度きちんと紹介しよう。
それは、会津若松の素敵な商店街にある。
この商店街の感じ、とても好きだ。地元金沢も、市内随一の繁華街が、こんな感じのアーケード商店街である。
この商店街の感じ、とても好きだ。地元金沢も、市内随一の繁華街が、こんな感じのアーケード商店街である。
問題のエスカレーターは、TSUTAYAの入っているこのビルにある。いかにも渋いビル!
問題のエスカレーターは、TSUTAYAの入っているこのビルにある。いかにも渋いビル!
そしてエスカレーターがたしかに見える。
そしてエスカレーターがたしかに見える。
めずらしいメーカー製のエスカレーターがあるとMACLORD氏にきいてやってきたのだが、この渋いビルにエスカレーターがある、という時点で私はけっこう驚いている。なぜかというと、こういった地方都市でエスカレーターがつくというと、もっぱらデパートか、新しめの商業施設につくことが多いので、渋いエレベーターにはなんの興味もない私にとってはこの手のビルは空振りになることが多いのだ。だから今まで、地方に行くときはデパート中心に散策していたので、MACLORD氏がめぐっている渋いスーパーは、まったく盲点だったといえる。本当に心強い同好の士があらわれたものだ。

話がすっかりそれたが、エスカレーターである。
素敵な部分照明の丸ボディタイプ(ガラスが湾曲してせりだしているもの)
素敵な部分照明の丸ボディタイプ(ガラスが湾曲してせりだしているもの)
照明がこの部分だけ、というタイプはけっこう珍しい。
照明がこの部分だけ、というタイプはけっこう珍しい。
銀色の床板部分に、「nippon elevator ind.」の刻印がご覧いただけるだろうか。
銀色の床板部分に、「nippon elevator ind.」の刻印がご覧いただけるだろうか。
日本エレベーター工業製なのである。当然、この将棋の駒みたいな注意ラベルも初めて見る。
日本エレベーター工業製なのである。当然、この将棋の駒みたいな注意ラベルも初めて見る。
日本エレベーター工業は1985年にシンドラーの傘下に入り、1991年に商号もシンドラーエレベータとなったので、現在の新しいエスカレーターには、このラベルも、nippon elevator ind. の刻印も見ることはできない。というかそれ以前に、日本エレベーター工業の時代に、エレベーター以外にエスカレーターも作っていたという事実を知らなかった。他で見たことがない。
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会津若松のエスカレーターがすごすぎる、という話である

ついでに、インディーズレーベルモノではないが、この建物のほぼ向かいのリオンドールに、日立の規格型エスカレーターであるクリスタレーン(透明タイプ)とエスカレーンが、上下並んで設置されている。クリスタレーンもエスカレーンも、現在は生産がないので、国内でほかに現存が確認されているのは2,3箇所という、超希少種だ。
これもまた味のあるすごくよい建物。
これもまた味のあるすごくよい建物。
透明薄型の準丸ボディ(ちょっとだけガラス部分がせり出している)
透明薄型の準丸ボディ(ちょっとだけガラス部分がせり出している)
これがクリスタレーンで、
これがクリスタレーンで、
より安価なパネルタイプの
より安価なパネルタイプの
こっちがエスカレーン。
こっちがエスカレーン。
もう一度言うが、このふたつが「上下並んで」あるのだ。
もう一度言うが、このふたつが「上下並んで」あるのだ。
上下のエスカレーターをこういうふうに同時に設置する場合、もちろん同じ型のエスカレーターを設置するのがふつうだ。こんなことをする必要は、まったくない。まったくどうしてこうなってるのかわからん。むむぅ。
話の脱線ついでに、非常口のマークがとても前衛的だった。
話の脱線ついでに、非常口のマークがとても前衛的だった。
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ひきつづき、会津若松のエスカレーターがすごすぎる、という話である

で。古い建物がいい意味でとても大事にされていて現役である、この商店街に、いいエスカレーターがたくさん残っているのは、わかる。わかることにしよう。

問題は、会津のふつうのロードサイド店舗である、ヤマダ電機である。外観は、1階が駐車場で2階が売り場という(そのために、土地の余っている田舎だがエスカレーターがある)ごくごく普通のヤマダ電機だ。ふつうすぎて外観写真を撮り忘れた。

そこにあるのがこれ。よくみる感じのヤマダ電機の入り口ですよね。
そこにあるのがこれ。よくみる感じのヤマダ電機の入り口ですよね。
エスカレーターも、ちょっと変わった位置に方向表示が出ているのをのぞけばごくふつうの新しめなのだが
エスカレーターも、ちょっと変わった位置に方向表示が出ているのをのぞけばごくふつうの新しめなのだが
輝く「SEC」の刻印がある。
輝く「SEC」の刻印がある。
会津が地元の友人から、これの発見報告が寄せられたときは、「ああ、シンドラーエスカレーターカンパニーの略なんじゃない?」とか余裕でこたえていたのだが、余裕でちがった。こちらはそのまま、SECエレベーター製のものである。そしてSECとは、旧社名鈴木エレベーター工業からきている。ぜんぜんシンドラー関係なかった。
SECエレベーターは、現在もエレベーター生産、メンテナンスをしている東京の会社で、ホームページには、「エスカレーター生産」も掲げられているが、私の知る限り他の場所でSECのエスカレーターを見たことはない。なぜ、会津の、しかもここのヤマダ電機だったのだろうか。なぜなんだ会津、そしてヤマダ。
そしてやっぱりこの注意ラベルも初めて見る。細かい話をすると、安全喚起ステッカーは日本エレベータ協会発行のものが主流なので、メーカーオリジナルというだけでも珍しいんです。本当に細かい話ですが。
そしてやっぱりこの注意ラベルも初めて見る。細かい話をすると、安全喚起ステッカーは日本エレベータ協会発行のものが主流なので、メーカーオリジナルというだけでも珍しいんです。本当に細かい話ですが。
というわけで、貴重なエスカレーターが惜しげもなく設置されている(というか貴重でないエスカレーターが無い)会津若松は、エスカレーターにおいては完全なる秘境、異次元の世界であった。八重の桜も毎週欠かさず観るというものである。
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MASUDAKIKAI

会津がすごいという話で終わりそうになったが(本当は福島駅前のエスカレーターもすごかったので福島特集にしようかとも思った)、もう1基紹介したいものは、京都にある。

三条通りの商店街にある渋い西友だ。
三条通りの商店街にある渋い西友だ。
これも、私の盲点である渋いスーパーだが、おそらく地元の方から、Twitterで目撃情報をいただいた。すばらしい時代である。
それがこちら。
それがこちら。
ひとり乗りの渋い部分照明タイプだ。この時点で私は軽く興奮している。
スーパーのエスカレーターは、それなりに店内の動線の中心として重視されていてデザインや設置方法に気を使われていることがわかるデパートのそれと比べると、脇役感が強い。「なぜわざわざエスカレーターをつけちゃったんだろう感」ともいえる。それはどういうことを意味するかというと、古くなった場合、つけかえられずに撤去される可能性がかなり高いと言うことだ。急げ。
だってここのエスカレーター、「MASUDAKIKAI」製なのだ。
だってここのエスカレーター、「MASUDAKIKAI」製なのだ。
ステップの側面にクリート(溝)がない、ツルツルタイプ。
ステップの側面にクリート(溝)がない、ツルツルタイプ。
降り口部分は乳白色の照明タイプ。スーパーのエスカレーターは、照明タイプであっても光っていることはほとんどない。中の蛍光灯の交換とか、きっと大変なんだろうな。
降り口部分は乳白色の照明タイプ。スーパーのエスカレーターは、照明タイプであっても光っていることはほとんどない。中の蛍光灯の交換とか、きっと大変なんだろうな。
現在の管理はシンドラーになっていた。
現在の管理はシンドラーになっていた。
このMASUDAKIKAI、関西方面でいくつかの目撃情報があるが、増田機械なのか、益田機械なのか、はたまた桝田機械なのか、なにも情報のない状態だ。シンドラーに管理がうけつがれていることから見ても、もうエスカレーターの生産はしていないか、会社自体存在しない可能性もある。なにかご存知の方は、ぜひともご連絡ください。

レアなエスカレーターメーカーを見かけたら、ぜひ教えてください

もう1社の「ダイコー」のエスカレーターについては、神戸での目撃例を教えていただいたのだが、これをまだ見に行けていない。中途半端な紹介になってしまっているが、まだ4社ですべてと決まったわけでもないのだ。高度成長期に各地方でローカルなエレベーター会社がエスカレーターの生産も始めたが、最近は事業縮小でエスカレーターについては生産をやめてしまった、ということが、もしかして他にも、あるのではないか。ある気がしてならない。こういう情報は募集してしまうにかぎる。
地元のスーパーやデパートのエスカレーターに乗るときは、ぜひ足下に注目して、変わった名前の会社を見つけたらぜひ、報告をお願いしたいと思います。
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