特集 2013年7月16日

古いデジカメで名所観光

スカイツリーに登ってきました(記念写真)
スカイツリーに登ってきました(記念写真)
知人から変わったカメラをもらった。古いデジカメなのだが、写真を撮ったらその場でプリントできるのだ。
ポラロイド的なものではなくて、その場でプリンターから写真をプリントアウトするのだ。
このカメラを持って観光したら楽しいんじゃないか。その場で観光スナップをガンガンとプリントアウトしてきた。
1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

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キングジムの『ダ・ビンチ』をもらった

先日、お世話になっている先輩ライターが事務所を移すということで、片付けのお手伝いに行った。
モノ系の記事を多く書いている方なので、事務所内には雑貨や小物が古いの新しいのと満載で、片付けついでにそういうのを安く売ってもらったり譲ってもらったりしたのだ。
で、事務所の押し入れの中からこういうのも出てきたのである。
『ダ・ビンチ』1990年発売。
『ダ・ビンチ』1990年発売。
モノ自体は知っていたが、実物を手にしたのは初めてだ。
今やデジタル文具のリーディングカンパニーとなったキングジムが、ラベルプリンターの『テプラ』を発売した直後ぐらいに作ったデジタルプリンターカメラ『ダ・ビンチ』である。23年前の商品だ。

デジタルプリンターカメラ、というのがいきなり謎だ。
どういうものなのか、実際に使ってみよう。
片手に持って撮影する。パシャ。
片手に持って撮影する。パシャ。
撮影が終わったら、あとはプリントするだけだ。
本体のプリントボタンを押す。
本体のプリントボタンを押す。
がががが。
がががが。
ががががががががが。
ががががががががが。
…ビリッ。(所要時間約1分20秒)
…ビリッ。(所要時間約1分20秒)
プリント上がり。ザ・古いデジタル感たっぷりのギザギザテイスト。
プリント上がり。ザ・古いデジタル感たっぷりのギザギザテイスト。
本体内にモノクロの感熱プリンターと感熱紙のロールを内蔵しており、撮った写真をその場でプリントアウトできるのだ。プリントが終わったらビリッと破りとれるようになっている。
本体カバーを開けると中に感熱紙。
本体カバーを開けると中に感熱紙。
感熱紙というのは、古いFAXとか古いワープロなんかで使っていたアレなのだが、それで説明が伝わる世代には元から説明なんか要らないことにいま気がついた。
えー、表面に熱を加えると黒く変色する薬品が塗ってある特殊な紙で、プリンターのヘッド部分で熱を加えることで印刷を行うのである。今だとレシートに使われているやり方だ。
感熱紙のパッケージ。1箱3ロール入りだった
感熱紙のパッケージ。1箱3ロール入りだった
元々、感熱プリント自体がそんなに精細な印刷に向いていないし、さらにカメラ自体の画質も現代と比べるとよろしくない。
なんせ世界初のデジカメが富士フイルムから発売されてわずか2年後の商品である。
正直なところ、何かもうちょっと先に進化させるべき部分があったんじゃないかと思わないでもない。

中に余分なメモリが入っていないので、撮り貯めておけないのだ。撮ったらプリントする。もう一度シャッターを押したら、もう先ほど撮った分は上書きされてしまう。さっき撮った方が良かったなー、と思ってもその時にはもう遅い。
デジカメならではの「気楽に何枚撮っても大丈夫」という安心感はゼロだ。というか、だいたい常に「さっき撮った方が絶対に良かった」となるので、昔の銀塩カメラ以上にギスギスした気分で撮影することになる。

ファインダーが雑なので、狙った通りの写真がなかなか撮れない、というのもギスギス気分に拍車をかける。
ファインダー収納状態。
ファインダー収納状態。
黒い針金みたいなファインダー。雑。
黒い針金みたいなファインダー。雑。

試し撮りしてみよう。

とにかく撮影をしてみないと勝手が分からないので、外に持ち出して撮ってはプリントを繰り返してみた。
近所の公園で、おじいちゃんたちがペタンク(金属球を投げるスポーツ)をしている。パシャ。
近所の公園で、おじいちゃんたちがペタンク(金属球を投げるスポーツ)をしている。パシャ。
作品名『老人の午後』
作品名『老人の午後』
お、いいじゃないか。古デジタルの良さというか、階調の少なさやギザギザの味わいが考えていた以上にコク深い。これはもうデジタルのヴィンテージだ。
撮るだけで意外とアート写真っぽくなるのが楽しいし、ファインダーで狙った通りに撮れない、というのも予想外の面白さがあって悪くない。

ついでに正直な話をすると、顔にモザイクやボカシを入れる手間のかからない解像度なのが素晴らしい。写真の加工が超ラクだ
公園の放置自転車。パシャ。
公園の放置自転車。パシャ。
作品名『公園の放置自転車』
作品名『公園の放置自転車』
階調が絶対的に少ないので、自動的にコントラストがパキッと効いた感じになる。この極端な感じが素敵だ。
インスタグラムに「デジタル(古)」というフィルタがあれば絶対ウケると思う。

カメラを持って観光に来た

何度かパシャパシャやっているうちに、なんとなく撮っても狙ったものが撮れるようになった。
これなら、観光地に持っていってスナップを撮っても、取り損なって旅の思い出が台無し…みたいな惨事は起こるまい。

観光の思い出というのは放っておいても古い記憶になる。それなら最初からヴィンテージ感を出しておけば手軽に懐かしさが得られてお得なんじゃないか、という趣旨である。

いや嘘だ。単に面白いカメラで写真がいっぱい撮りたいだけなので、カメラで撮りまくっても訝しまれない観光地に行きたかっただけだ。
パシャ。微妙に自分がズレて隙間が空きすぎた。作品名『わたくしとメモ欄』
パシャ。微妙に自分がズレて隙間が空きすぎた。作品名『わたくしとメモ欄』
これだけだと今どこに来ているのか良く分からないので、普通の写真も差し挟んで行く。
スカイツリーに来ました。
スカイツリーに来ました。
実は都内に住んでいながら、未だにスカイツリーに登った事がなかったのだ。
というか、カメラでツリー観光しながら写真を撮る、という必要性がなかったら面倒くさがって一生登らないような気もしたので、この機会に登っておくことにした。
さすが、高い。スカイツリー高い。
さすが、高い。スカイツリー高い。
作品名『スカイツリー高い』
作品名『スカイツリー高い』
去年完成したばかりのタワーなのに、こうやって見ると東京タワーより余裕で古いな。映画『3丁目の夕日』でやってたの、スカイツリーの方じゃないか?
ちなみに同じ場所から普通のデジカメで撮るとこんな感じ。やはり古い方が素敵。
ちなみに同じ場所から普通のデジカメで撮るとこんな感じ。やはり古い方が素敵。
観光スナップといえば、お土産売場での一枚も押さえておきたい。定番土産の棚の前でにっこりピースだ
作品名『ソラカラちゃんとわたくし』
作品名『ソラカラちゃんとわたくし』
後ろに並んでいるお土産も、ソラカラちゃんと言わないと分からない解像度なのがまた味わい深い。この何が何だか分からない混濁した感じがヴィンテージの良さだ。
こちらの写真は言わなくてもソラカラちゃんと分かる。ヴィンテージじゃないから。
こちらの写真は言わなくてもソラカラちゃんと分かる。ヴィンテージじゃないから。

見知らぬ人の記念撮影も撮りたい

スカイツリーのあちこちで観光写真を撮っていると、カップルから「シャッターお願いしていいですか」と頼まれた。香港から観光で来たというお二人だ(彼氏が日本語ペラペラ)。
ツリーも写るように撮っときますね。
ツリーも写るように撮っときますね。
もちろん喜んでお引き受けしたが、ついでにこちらからも改めて「撮らせて下さい」とお願いしてみた。もちろん良い感じに写るヤツでだ。
「えー、このカメラで撮ると素敵な感じになるんすよ」
「えー、このカメラで撮ると素敵な感じになるんすよ」
作品名『恋人達の逢瀬』
作品名『恋人達の逢瀬』
知らない人のスナップ、楽しい。一度お願いして撮らせてもらうと楽しくなってきたので、他に記念撮影されているところに無理矢理割り込んで撮らせてもらってきた。
「じゃ、撮らせてもらいまーす」
「じゃ、撮らせてもらいまーす」
「ほら、ここからいまプリントアウトしたのが出てくるんですよ」「ほー」
「ほら、ここからいまプリントアウトしたのが出てくるんですよ」「ほー」
作品名『家族の肖像』
作品名『家族の肖像』
こちらは、奥さまのご両親が福島から出ていらしたので、親子でスカイツリー観光をしていたとのこと。
お父さんが「ほう、今のカメラはよく撮れるもんだねえ」と喜んでくださったので嬉しかったが、すいません今のカメラはもうちょっと良く撮れると思います。でも味わいはこっちの方が圧勝。
「ポーズおねがいしまーす」
「ポーズおねがいしまーす」
「写真がにょろにょろ出ますよー」「ウケルー」
「写真がにょろにょろ出ますよー」「ウケルー」
作品名『青春の群像』
作品名『青春の群像』
スカイツリーの足元も、広げた手もばっちり収まって、まさに古デジタルな記念スナップの見本のような作品になった。素晴らしい。
ちなみにモデルは埼玉から遊びに来た社会人5年目のお姉さんたち3人組。いいポーズありがとうございました。

さて、当日は梅雨明け直後の猛暑日。気温35度。
外で調子に乗って写真を撮りまくっているうちに脱水気味になってきたので、一旦休憩してから次に行くことにする。本当に死にそう。
アイスコーヒーうめー。
アイスコーヒーうめー。
作品『アイスコーヒーうめー』
作品『アイスコーヒーうめー』

観光本番

展望フロアは冷房効いてたらいいなあ(本気の猛暑日)
展望フロアは冷房効いてたらいいなあ(本気の猛暑日)
さて、いよいよスカイツリー観光の本番、地上350mの展望フロアへ登ってみよう。
展望フロア入場券の購入待ち、日曜昼で30分待ち。パシャリ。
展望フロア入場券の購入待ち、日曜昼で30分待ち。パシャリ。

かなりの行列を覚悟していたのだが、午前中に整理券をゲットしておいたおかげで、正午から30分待ちぐらいで展望フロアに登れるという。列は長いがスムーズに流れている。
すでに登ったことのある人たちから「数時間待ったぜ」みたいな話を聞かされていたので、ちょっと拍子抜けしたぐらいだ。そろそろ登り頃らしいよ、スカイツリー。
作品名『オイルショック』
作品名『オイルショック』
そして古デジタルな写真にすると、平成の流れている行列も、トイレットペーパーの備蓄に群がる昭和の大混雑風景に。

空から日本を見てみよう(古いデジタル画質で)

エレベーターを降りたらもう東京タワーのてっぺんより高い350m。
エレベーターを降りたらもう東京タワーのてっぺんより高い350m。
いま言うことではないのだが、実のところ高いところが好きなわけではない。どちらかというと苦手な方だ。
しかし登ってしまったからには仕方ない。良い感じの写真が撮れることを祈って、できるだけ直接下を見ないようにシャッターを押すだけだ。
座って撮ったらそんなに下も見えないし怖くない。パシャ。
座って撮ったらそんなに下も見えないし怖くない。パシャ。
作品名『ゴジラ出現のちょっと前』
作品名『ゴジラ出現のちょっと前』
解像度の低さで細かいディテールが見えないのと、全体的にピントが合っていることから、ミニチュア特撮の町並みのように見える写真になった。
このカメラのレンズは1mから先はずっとピントが合う(パンフォーカス)ので、ボケて遠近感を出すとかそういう仕事はできない。高いところから遠景を撮れば確実にこんな感じに写るだろうと予想していたのだが、思った以上に格好良い。我慢してスカイツリー登って良かった。
撮るたびにプリントアウトして確認。あらいいじゃない。
撮るたびにプリントアウトして確認。あらいいじゃない。
当初予想よりも写真の出来が良かったので、ちょっと調子が出てきた。
さっきまで、窓際では腰が引けて座った姿勢でしか撮影できていなかったが、これ以降はちゃんと立ったままの姿勢でシャッターを切っている。あと、明らかにファインダーをのぞき込んでる。さっきはわざと目の焦点をぼかして下を見ないようにしていた(なので写真的に橋の位置が収まり悪い)。
アグレッシブに下を見ながらシャッターを切る。パシャ。
アグレッシブに下を見ながらシャッターを切る。パシャ。
作品名『隅田川慕情』
作品名『隅田川慕情』

ちゃんと見ながら撮ったので、今度は目標物がきれいに収まっている。
ビルとビルの間に見えているのが、吾妻橋のアサヒビールの本部ビル。「金のうんこ」と言われている屋上オブジェだ。
周囲から突出して高い建物があったり、目立つオブジェがあると、ゲームのドット絵っぽい風景にも見える。スーパーファミコン版シムシティってこんな感じじゃなかったか。こっちはモノクロだけど。
普通のカメラで撮るとこんな感じ。
普通のカメラで撮るとこんな感じ。
次は空も入れて撮ってみます。パシャ。
次は空も入れて撮ってみます。パシャ。
作品名『ラスボス出現直前』
作品名『ラスボス出現直前』
空と雲が低階調で表現されているので、これはもう明らかにドット絵だ。ゲームボーイ(初代)でRPGをやってる時にこの絵が出たら、直後にラスボスが上からスルーッとスクロールして降りてくるはずだ。終末感バリバリでかっこいい。

ご当地キャラとも撮りたい


良い感じの古デジタル写真が撮れたので満足して地上に降りてきたのだが、エレベーターホールの隣が何か賑やか。
作品名『悪夢』
作品名『悪夢』
ソラカラちゃん本人がいた。
ソラカラちゃん本人がいた。
観光地スナップならば、ご当地キャラとのツーショットも欲しいところだ。
ソラカラちゃん(本人)とわたくし。
ソラカラちゃん(本人)とわたくし。
作品名『ソラカラちゃん(本人)とわたくし、の写真を撮ってくれているお姉さん』
作品名『ソラカラちゃん(本人)とわたくし、の写真を撮ってくれているお姉さん』

観光写真は撮りたいだけ撮ったので、そろそろ次のステップに進もうと思う。
ランチにおしゃれカフェめしも撮りたいし、ラテアートも必須だろう。石段で寝てるネコの写真にもチャレンジしたい。目指すは古いデジタル写真界の宮崎あおいである。
スカイツリーの足元で食べたハヤシライス。美味そうに写すのは難しそうだ。
スカイツリーの足元で食べたハヤシライス。美味そうに写すのは難しそうだ。
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