特集 2013年7月8日

「気持ち多めに」の「気持ち」とは具体的にどれくらいの量なのか

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先日、定食屋に入った時のこと。隣の席のお兄さんが店のおばちゃんに「ご飯を気持ち多めにしてください」と注文していた。僕はその「気持ち多めに」という言葉のニュアンスから、普通盛りより1.5倍くらいの量を想像していたのだが、おばちゃんが持ってきたのは日本昔ばなしみたいなてんこ盛りのご飯だった。なるほど、これがおばちゃんが考えるところの「気持ち」なのだ。

「気持ち」の量というのは人によって個人差があるだけに、そんなぼんやりした頼み方だとサービスを与える側と受ける側の間でギャップが生まれやすいのではないだろうか? この曖昧な「気持ち」というものの正体を確かめてみよう。
1980年生まれ埼玉育ち。東京の「やじろべえ」という会社で編集者、ライターをしています。ニューヨーク出身という冗談みたいな経歴の持ち主ですが、英語は全く話せません。

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> 個人サイト Twitter (@noriyukienami)

「気持ち○○」という言い方のモヤモヤ感

僕ら日本人はつい「気持ち○○してください」なんて曖昧な言い方をしてしまうが、こちらの思う気持ちと相手の思う気持ちにズレがあったら満足のいくサービスは受けられない。

そこでこの「気持ち」というボンヤリした頼み方によって当人の思惑と実際の結果にどれだけズレが生じてしまうものなのか、身を持って検証してみようと思う。
会社近くの定食屋
会社近くの定食屋
「ご飯、気持ち多めでお願いします」と注文する
「ご飯、気持ち多めでお願いします」と注文する
お昼休みのランチである。午後からもバリバリ働くためにしっかり食べたいけど、あまり食べ過ぎると眠くなってしまう。そんな微妙な心情から発せられる「気持ち多めでお願いします」というオーダー。店員さんには、そのあたりを汲み取って丁度いい塩梅の盛りをお願いしたいところだが…。
10分後、刺身定食が来た
10分後、刺身定食が来た
こっちは同僚が頼んだご飯普通盛りの刺身定食
こっちは同僚が頼んだご飯普通盛りの刺身定食
そしてご飯「気持ち」多めの刺身定食
そしてご飯「気持ち」多めの刺身定食
普通盛りと比べると「気持ち」どころじゃない、かなりの大盛りに見える
普通盛りと比べると「気持ち」どころじゃない、かなりの大盛りに見える
運ばれてきたご飯は「気持ち多め」どころか、だいぶ多い印象だ。つまり、僕の「気持ち」を店員さんの「気持ち」がずいぶん上回っている。

ちなみに、そんな「気持ち」の量を物理的に計量してみたらおよそ100gだった。
ふつう327g
ふつう327g
気持ち大盛り425g
気持ち大盛り425g
もしかしたら、単純に「こいつデブだから食いそうだな」と見た目で判断されただけかもしれないが、それにしてもプラス100gというのは「気持ち」の範疇を超えているような気がする。
まあ、完食したんですけどね
まあ、完食したんですけどね
ご飯の量が多いのは単純に嬉しいのだが、やはり午後からの仕事は眠気に襲われ集中できなかった。ふだんはやらないようなミスもした。店員さんの気持ち(ご飯の量)があと50g少なかったらきっとあんな凡ミスはしなかったと思う。

「気持ち強めに」はどれくらいの強さ?

さて、互いの気持ちがシンクロしづらい状況というのは他にもある。例えばマッサージなんかもそうだろう。
ということで会社近くの「てもみん」へ
ということで会社近くの「てもみん」へ
正確にはマッサージではなく「ほぐし」のお店ということになるみたいです
正確にはマッサージではなく「ほぐし」のお店ということになるみたいです
マッサージにおける、気持ちのいい力加減というものは人それぞれ。それだけに施術者の力が弱くて物足りない時などは、「気持ち強めにお願いします」とかつい言ってしまいがちだ。
だが、困ったことが起きた。すでに力加減がちょうどいいのだ
だが、困ったことが起きた。すでに力加減がちょうどいいのだ
よくマッサージは当たり外れがあると聞く。 僕はあまりマッサージ自体に行かないので上手い下手とかはよく 分からないのだが、この人は間違いなく「当たり」だった。力加減が絶妙で、特に言葉を交わさずともこの人とはすでに気持ちがぴったりシンクロしているのだ。

だがあえて言おう。

「気持ち強めでお願いします」
瞬間、指にグっと力が込められたのが分かった
瞬間、指にグっと力が込められたのが分かった

ズレていく気持ち

明らかに力加減が変わった。僕の「気持ち」よりも3倍くらい気持ちのこもった力強い指圧だ。ハッキリ言って痛くてたまらないが、でも今さら弱くしてなんて言えない。この痛みこそが彼の「気持ち」なんだと思って我慢した。
痛いくらいの「気持ち」をビンビン感じる
痛いくらいの「気持ち」をビンビン感じる
こうして原稿を書いている今もまだこめかみの辺りがズキズキする。それくらい彼の「気持ち」は強かった。

今回は「気持ち」の微妙なスレ違いでお互いにとって不幸な結果となったが、施術の腕前はとてもよかったのでこれからぜひ通ってみたいと思う。
会員になった
会員になった

床屋はどうだ

あと、髪の毛を切る時なんかも、つい「気持ち短めで」なんて言ってしまいがちだ。これも自分と美容師さんの「気持ち」にズレがあると、イメージと違うヘンテコな髪型になってしまうのでとても危険である。
それが初めて行く床屋だったらなおさらだ
それが初めて行く床屋だったらなおさらだ
「気持ち軽くしてください」とぼんやりオーダー
「気持ち軽くしてください」とぼんやりオーダー
ちなみに美容師が綺麗なお姉さんだったこともあり、今回は特に気持ちが通じてほしいと思っている。
カットされた髪の毛の量=お姉さんの気持ちの量と解釈
カットされた髪の毛の量=お姉さんの気持ちの量と解釈
カット中、会話は一言もなかったけどそれだけ気持ちを込めて切ってくれたのだと思う。

結果、こんな髪型になった。
ビフォアー
ビフォアー
アフター
アフター
ビフォアー
ビフォアー
アフター
アフター

「THE・気持ち」カット

アフターの目が死んでいるので不満っぽい感じだがこの髪型、自分的にはかなり気に入っている。全体的な印象をほぼ変えることなく、まさに「気持ち」すっきりしたという表現がぴったりの絶妙な塩梅に仕上げてくれたと思う。そのさりげなさたるや、ほぼ毎日顔を合わせる会社の同僚が髪を切ったことにまったく気づかなかったほどだ(単に僕に興味がないだけかもしれませんが)。

つまり、あの美容師さんと僕は「気持ち」のさじ加減がぴったり同じなのだ。これは嬉しい。結婚したい。

気持ち濃い目のウーロンハイ

さて、突然話は変わるが「今夜はちょっとだけ酔いたい」と思うことはないだろうか。

僕みたいなおっさんでも、そういう失恋したOLみたいな気持ちになることはたまにある。
なので「気持ち焼酎濃いめ」のウーロンハイを頼んだ
なので「気持ち焼酎濃いめ」のウーロンハイを頼んだ
ただ、酔いたい気分ではあるんだけど、基本的に酒は弱いのであまり濃すぎるのも困る。求めるのはそんな複雑な事情をも斟酌した「気持ち」濃いめのウーロンハイなのだが果たして…。
めちゃくちゃ濃かった!
めちゃくちゃ濃かった!
しかし出てきたのは半分以上焼酎なんじゃないかと思うほど濃いウーロンハイ。マスターの「気持ち」がこれほど濃厚だとは…。嬉しいけど僕の気持ちはそこまでじゃなかったです、ゴメンナサイ。

「気持ち○○してください」という言い方は、一般的に広く使われているが、改めて考えてみると「気持ち」という個人の感覚によるところが大きい微妙なさじ加減を、他人に委ねるというのはちょっとヘンだ。所詮、自分の気持ちは自分にしか分からない。

なのでこれからは「気持ち」じゃなくて具体的に言おうと思います。
写真は「気持ち」とかじゃなくて心おきなく大盛りにしたカレー
写真は「気持ち」とかじゃなくて心おきなく大盛りにしたカレー
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