特集 2013年6月25日

2013年、僕はお歯黒に挑戦した

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日本の伝統風習であったというお歯黒をやってみたいと思った。
江戸時代の人に出来て、21世紀に生きるこの僕に出来ないはずがない。
1978年、東京都出身。漂泊の理科教員。名前の漢字は、正しい行いと書いて『正行』なのだが、「不正行為」という語にも名前が含まれてるのに気付いたので、次からそれで説明しようと思う。

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製法を調べます

『古釘などの鉄くずに、お粥や茶葉などを混ぜて壺に詰め、2ヶ月くらい発酵させるとドロドロした非常に臭い液体ができる』
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子供の頃、「まほうの薬を作ります」とか言ってこんな感じのことしたことがある。あとで母親に見つかって大変なことになった。
『この液体に、ヌルデという植物の虫こぶから作った「ふし粉」という粉を混ぜて歯に塗る』
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虫こぶ。
ヌルデの虫こぶというのは、葉にアブラムシが寄生して巨大に膨らんだ構造物である。
はっきり言うと、すごく気持ち悪い。
(興味のある方はこちら→クリック
これはよく見かけるツツジの虫こぶ。まだかわいい。
これはよく見かけるツツジの虫こぶ。まだかわいい。
食べ残しと鉄くぎを発酵させた異臭を放つ液体を、虫が寄生して奇形化した植物とともに、歯に塗る。
昔の人の、お歯黒に対する情熱が理解できない。

お歯黒、ネット通販で買えました。

上記の物を自宅で作るなどと言うと、おそらく妻に離縁されてしまうので、お歯黒の素は買うことにした。
意外なことに黒くない。ぱふぱふした粉。
意外なことに黒くない。ぱふぱふした粉。
お歯黒は、科学的には「タンニン酸・鉄イオン・カルシウム」の混合物であるらしく、異臭発酵やアブラムシなどに頼らずとも、薬品を混合して作ることができる。
科学バンザイ。21世紀バンザイ。
さあ、さっそく歯に塗ってみよう。

お歯黒、歯からは取れない

さて、ここで子供のころ「理科はかせ」と呼ばれた僕の勘がはたらく。
これ、歯に塗るというか、歯に染み付く系の成分じゃないだろうか。おそらく元の白い歯には戻らない。こんなもの、自分の歯に塗りたくない。
だが、そんな僕の手元に都合良く、塗ってもいい歯がある。
去年抜いた親知らず。
去年抜いた親知らず。
恥ずかしいので、画像は小さめにした。
親知らず、捨てるのも惜しいので、なんとなくとっておいた。せっかくなので、この機に活躍してもらおう。

お歯黒パウダー、その黒さを発揮

おそるおそる、お歯黒パウダーを水に溶かすと……
ふあっ! 黒くなった!
ふあっ! 黒くなった!
ナスの皮のごとき、色の深さ。
ナスの皮のごとき、色の深さ。
最初は疑いの目で見ていた黄土色の粉だが、「ねるねるねるね」もかくや、と思うばかりの変色ぶりである。こいつは頼もしい。
さあ、これを親知らずに塗ります
黒……っ! 黒……っ! まさに圧倒的、黒……っ!
黒……っ! 黒……っ! まさに圧倒的、黒……っ!
あっというまに黒く染まった。
しかし調べるところよれば、かつて新婚の女性はお歯黒がなかなか歯に染まず、せっせと毎日塗ったという。
ということは一見黒く見えるこの歯も、実際はそんなには黒くなって無いのではないだろうか。
ということで洗ってみると……。
全然染まってない!!
全然染まってない!!
きれいさっぱり落ちてしまった。小学生の頃、歯のエナメル質は鉄よりも硬いと習ったが、さすがに手ごわい。
それでもあきらめずに何度も塗ってみる。
2回目
2回目
3回目
3回目
んー……。なんか、イカ墨パスタを食べた後 、ぐらいにしか染まらない。これは時間がかかりそうだ。
歯は漬け置きをしておいて、お歯黒を少しだけ口に入れてみようか。
渋くて、しょっぱくて、鉄臭い!
渋っ! そして鉄臭っ!
人類が口にしうるものの中でも一等級にまずい。血の味がする渋柿 みたいなまずさだった。 毎日こんなもの口に入れてたなんて、昔の新婚女性はどれだけ我慢強かったんだ。心底尊敬する。
舐めた後、呪いのシミのように舌から黒が取れない。
舐めた後、呪いのシミのように舌から黒が取れない。

お歯黒、あっさり落ちる

それから6時間ほど漬け置きした親知らず。
漆黒に染まりたる、我が身体の破片(かけら)
漆黒に染まりたる、我が身体の破片(かけら)
ほどよく黒も染み込んだのではないだろうか。
満を持して引き上げてみよう。
おお、けっこう染まってる!!
おお、けっこう染まってる!!
これは上出来だ!黒というより、紫に近い感じだが、ここまで染まれば、歯磨きをしてもそう簡単に落ちることは無いだろう。
試しに磨いてみよう。
!
ハイ、落ちましたーー!!
ハイ、落ちましたーー!!
ものすごい歯の白さである。
むしろクリニカのCMで使ってもらってもいいぐらいじゃないだろうか。
もう一度お歯黒漬けにして、勝負は明日に持ち越す。

お歯黒24時

心機一転、新しい粉を出して漬け直した親知らず。
かれこれ、24時間お歯黒に漬け込んだ。
かれこれ、24時間お歯黒に漬け込んだ。
何やら毒の沼地に現れたモンスター みたいになっているが、正体は日本の伝統文化である。
さあ水洗いしてみよう。
おお!染まった!?
おお!染まった!?

昨日よりも、圧倒的に黒の付き方が安定している。色も深く浮世絵で見るお歯黒のようだ。ブラシでこすっても落ちない。明らかに成功だ。 成功! 21世紀のお歯黒、成功!

しかしこれ、磨いても取れないのだろうか。昨日のは磨いたら結構いい勢いで落ちた。 歯磨きしてみよう。
ハイ取れましたーー!!(2回目)
あれ、けっこう取れた……、でもまあ、こんなもん?
取れたといっても、クリニカで10分ぐらい磨いてこれだった。普通に磨く分にはほぼ落ちない。 昔の人も、週に1回は染め直して黒さを維持してたというし、もしかしたらこのぐらいがお歯黒の限界点なのかもしれない。

成功なのかわからないが、成功。

さてそんなことより、塗りながら一つのコツを覚えた。
お歯黒パウダーは水を入れ、混ぜてすぐじゃないと黒く歯に染まらない。時間が経つと、ただの黒い粉になってしまう。
今日のぼくらが、染髪剤のA液とB液を混ぜて速やかに髪に塗るように、昔の人もあくせく急ぎながら歯の色を染めてたのだろうか。
そう思うと昔も今も、人が体を染めるのに同じ苦労をしているようで、ちょっとおかしくもある。
虫こぶについてもっと知りたい人は、これを読もう(超マニアックです)
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