すごいいる
運河沿いを歩いていると
水面で適当にカメラを構えて適当にシャッターを押しただけで、10匹くらい入ってくる
多いのだ。クラゲ。
この丸くて透明のクラゲはミズクラゲという種類で、一年中いるけど特にこの時期大発生するらしい。
そろいもそろって何をするでもなく、ただプカプカしている
傘のてっぺんにお花みたいな模様がついていてオシャレ
密集
クラゲに癒し系のイメージを持っている方もいると思う。確かに水族館で見るクラゲは、透明で、フワフワしていて、なんだか見ていると心がなごむような感じがする。
それが海に出てくると途端に、「うわっ、やる気ねぇー!」みたいな感じに見えてくる。
なんかやる気なさそうな例
一切やる気が感じられない
本当にやる気がないのか
クラゲに限らず、人間にも、普通にしていてもやる気がないように見える人っていうのはいる。そういう人はたとえ頑張っていても、はたから見るとやる気がなく見える。
誰のことを言ってるかと言えば僕のことである。大学生のころにバイトしていたコンビニで、しっかり仕事してたにもかかわらず店長に「やる気がなさすぎる」と怒られたのをいまだに根に持っている。
そう考えると途端にシンパシー
クラゲもやる気がなく見えるだけかもしれない。本当は力がみなぎっているのかも。
もしそうだとしたら、そこにはだるそうに見える理由があるのだ。
僕は猫背で姿勢が悪く、動作に力がなく、話し声にも芯がない。
休んでいてもやる気が「ある」ように見える側の生物。姿勢がよいのだ
同じように、クラゲにもやる気がなく見える原因がなにかあるのだと思う。そこを探っていきたい。
浮いちゃってるからね
運河と水族館の大きな違いは、運河には水面があることだ。水族館の水槽にもあるんだろうけど、のぞき窓の外にあって見えないことが多い。
水面があるから浮いてきちゃう
浮いちゃうと一気にダメになる
クラゲはやはり水中にいてほしい。
いや意志を持って浮いてくるなら、「水中はもういろいろやりつくされてるから、俺は水面の方で頑張っていこう!」みたいな感じならいい。
でもクラゲの場合は、どう見ても「油断してたら浮いちゃった」という感じなのだ。
いけね、浮いちゃった!(2体)
時々頭が水面から出ちゃったりするのがまた
裏返ってる
こちらに至っては浮いてる上にひっくりかえってしまっており、ほぼゴミのよう
ちなみにこれに酷似したものとしてこういうゴミを発見した。
あわてて撮ったら色味が変ですが、カレーとかに使う
この容器の中皿
クラゲ、裏返ってもさして気にしていないような感じなのが、また無気力を感じさせる。
さらに、気にしないのは裏返しの時だけじゃない。
全体的に体の向きに無頓着
これらは、フワフワ自在に動き回ったからこういうバラバラな向きになったわけじゃない。
波(それも運河だから、さざ波以下の超弱い波だ)でワワワーって変な向きにされて、それを直すでもなく、ずっとそのままボーっと過ごしている、という感じなのだ。
かと思えば、こんなのもいる
もう「ゴロゴロしてる」としか言いようがない
波任せ
ここまで書いてきて確信した。さっき「やる気がないように見えるだけかも…」なんてことを書いたけれども、そうじゃなくて、本当にやる気がない。
奴らは本当に、波に流されてフワフワ漂うだけである。
波に任せてゴミとのランデブー
運河で波に流されてフワフワしているものと言えば、クラゲと別にもう一つある。
それがゴミなのだ。
見た目的にも近い
これはクラゲ
むしろゴミの方がクラゲよりくっきりしていて頼もしい
ゴミとクラゲ、どちらも波に流されるだけであり、動作原理が同じなので動き方もおんなじである。
姿は似てないけど動きは同じである
どれがクラゲでしょう?
いろいろ考察してきたが、結局のところ、水族館のクラゲが優雅なのに運河のクラゲがやる気なく見える理由はここにあると思う。ゴミになじみすぎているのだ。
よくウミガメがクラゲと間違えてビニール袋などを食べて命を落とすことがあると聞くが、無理もない。
傘にゴミが挟まり、もはや一体化している
とはいえクラゲいいよね
まあそんなかんじで、やる気ねえなーと思いつつも、プカプカ浮いてるクラゲを見るのはそれなりに楽しい。
なんだかんだでかわいいよね
クラゲ、いいよ
クラゲいいよね…あっ!
エイだ
エイがいた!すごい!
うちの近所にこんなのいるんだ!かっこいい~!
悠々と泳ぐこの姿
別のエイも発見。でかいぞ!
これは大発見。スーッと音もなく出てきてそのままスーッと消えていく、その形状も相まって、まるでステルス機のようだ。すっかり興奮してたくさん写真を撮ってしまった。
エイはみんなのスター
別の日、またクラゲの写真を撮っていたら、立ち止まって海を眺めていた知らないおっちゃんに声をかけられた。
おっちゃん
いる!!
「ほんとだ!」
やった!またエイが見れた!
おっちゃんと二人で並んで柵につかまり、海を眺める。
「モリで突きゃ捕れそうだな」
「でかいですねえ」
「悠々と泳いで、なあ」
ぽつぽつと感想を交し合ったあとは、しばらく二人並んで黙って水面を眺めた。夕陽見にきたカップルみたいだな、と思った。
「エイがいる」という事実が圧倒的すぎて、二人の間に言葉はいらないのである。
しばらくして、頭上の橋の上からも、老夫婦が興奮して声を上げるのが聞こえた。「エイがいる!」
クラゲもいるのだが……
みんなエイに夢中だった。クラゲの方が数にして300倍くらいいると思うのだが、誰一人クラゲには言及せず、エイに心ときめかせていた。
かくいう僕も、撮影のため4日間ほどこの場所に通ったうち、前半2日こそ記事のための写真をたくさん撮ったものの、後半の2日間はエイを見にきたようなものであった。
それを全く気にかける様子もなく、相変わらずゴミと漂うクラゲ
やる気ゲージは常にゼロ
スーッと音もなくエイがいなくなった後も、足元には無数のクラゲがプカプカしていた。数日間の観察を経てそろそろ僕も分かってきた。それがクラゲなのだと思う。やる気がないのは手を抜いてるからとかマイペースだからとかじゃなくて、そういう生き物だから。そういうスタンスで10億年以上生き続けてきたのである。
やる気がなくてもいいじゃないか
一時は「やる気がなく見えるだけなんじゃないか」と思ったクラゲへの認識。「やっぱり本当にやる気がないのかもしれない」を経て、いま至ったのは「やる気がなくてもいいじゃないか」の境地だ。
地球上に人類が登場してからまだ500万年。進化の大先輩として、これからもやる気ゼロの態度を貫き通してほしい。