特集 2013年5月20日

そんなケーキは聞いてない

これも立派にケーキ
これも立派にケーキ
お菓子の中でも、「ケーキ」という言葉には他にはない特別感があると思う。

バースデーケーキやウェディングケーキなど、イベントの際に豪華なのが出てくることもあるだろう。そうでなくても「冷蔵庫にケーキあるよ」と言われたら、嬉しい気持ちになる。

そんな華やかなイメージのケーキだが、中には「え…君もケーキなの?」と思わされるものもある。それらを探ってみたい。
1973年東京生まれ。今は埼玉県暮らし。写真は勝手にキャベツ太郎になったときのもので、こういう髪型というわけではなく、脳がむき出しになってるわけでもありません。→「俺がキャベツ太郎だ!」

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ケーキという響きに心揺られて

おやつの中でも別格のポジションにいるお菓子、ケーキ。スペシャルな響きがそこにある。

そんな中、ケーキに対するイメージをずらされるような存在がある。例えばこれ、台湾旅行のおみやげにいただいたものだ。
漢字が読めない
漢字が読めない
これくらいの英語なら読めるぞ
これくらいの英語なら読めるぞ
箱には「鳳梨酥」と書いてある。台湾ではこれは「オンライソー」と読むそうだが、側面には「PINEAPPLE CAKE」とあるので、漢字が読めなくてもどんなものかは察しがつく。

そう思って開けると、やや拍子抜けさせられる。
よく見るとカタカナでも書いてある
よく見るとカタカナでも書いてある
中の感触は、ザ・ねっとり
中の感触は、ザ・ねっとり
中の個包装には「パイナップル・ケーキ」とカタカナ表記もあって、ますますケーキへの確信が高まるが、出てきたのはなんだか立方体。

表面はサクッとしていて、さらに遠のいていくケーキ感。それでもかじると中からしっとりしたパイナップルペーストが出てきて、食感の組み合わせも楽しくおいしい。

初めて見たときはケーキと名が付いてることへの違和感があったが、食べてみたらそれとは別にとてもおいしく、以来おみやげでもらうと嬉しいものとなった。

ケーキの概念が揺れたあの食べ物

もっと激しくケーキ観を揺さぶられたものとの出会いが子供の頃にあった。父が出張みやげに買ってきてくれたのだったと思う。
  銀座にある山形
銀座にある山形
出張先だった場所は山形県。関東に住む私には簡単に行ける場所ではないが、銀座に並ぶ道府県のアンテナショップの中には山形のものもある。
知らないうちに仲間が増えてる
知らないうちに仲間が増えてる
よそ行き風の箱入りも
よそ行き風の箱入りも
それは「ミルクケーキ」という食べ物。店内にもばっちり品揃えされていて、6種類もの味がラインナップされていた。
そのうち3つを買ってきた
そのうち3つを買ってきた
ケーキという名なのに、こうしたパッケージに入っているのがまず不自然。袋を開けると、ケーキへの一般的なイメージは完全に打ち砕かれる。
これがケーキとは…
これがケーキとは…
子供心にそれにケーキとついてることがうまく処理できなかったミルクケーキ。しかし、もやもやした気持ちを抱えながら食べたら、ものすごくおいしく感じた覚えがある。牛乳のコクを100倍くらいに濃縮したうまさだと驚いた。

ただ、よく考えたら今でもケーキという名の不思議は変わっていない。メーカーである日本製乳株式会社の問い合わせ窓口に電話で聞いてみた。
見つめるほどにケーキとの距離が広がる
見つめるほどにケーキとの距離が広がる
実のところ、古くからある商品なのでメーカーにも資料などが残っておらず、諸説あってはっきりわからないそうだ。それでも、「ケーキというとショートケーキのようなものを想像しますが、今ほど豊かではなかった昔はそういうものがあまり食べられなかったので、こうして固めて作った甘いお菓子ということで、ケーキとつけたかと」と教えてくれた。

加えて「ケーキへの憧れ?もあったかもしれません」とも。その感じ、わかる。納得した。

ミルクケーキの誕生は1919年。思っていたより歴史が古く、もうすぐ100年だ。その頃のことを思うと、「甘くておいしいから、ケーキってつけちゃえ」という感じはわかる気がする。
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外国の菓子文化へのイメージが混乱

他にもまだ「これって、ケーキなの?」と思わされた食べ物はある。
寒い国のケーキ
寒い国のケーキ
いや、君ってケーキじゃなくない?
いや、君ってケーキじゃなくない?
例えばそれは、ロシアケーキ。厚みがあって、それぞれ何かしら工夫が加えてあるクッキーだ。

そう、これってクッキーだろう。これも初めて手にしたとき釈然としない気持ちになったものだ。それでも食べて「でもうまいから許す」と思ったのはこれまで登場した疑問ケーキたちと共通。
言われて気がつくその特徴
言われて気がつくその特徴
購入したのは東京駅地下街の「鎌倉甘露泉」という店。「最近ロシアケーキってあまり売っていないようで、ネットで調べてみなさん買いに来るようです」と店員さん。そうそう、自分もそうです。

話によると、「諸説あるもののロシアのレシピを元にして作ったと言われているお菓子」とのこと。これで「ロシア」部分は納得。改めて辞書で調べると「ケーキ」は「小麦粉などを混ぜて焼いた洋菓子」との説明があるから、広義で考えるとこれもケーキと言えるのだろうか。

さらなる枠を超えるケーキ

先ほど台湾のパイナップルケーキを紹介したが、シンガポールにはまた別のケーキがあると聞いた。実際に食べに行ってみよう。
シンガポール気分出てくる雰囲気
シンガポール気分出てくる雰囲気
パイナップルではなくキャロット
パイナップルではなくキャロット
とは言ってもさすがにシンガポールそのものは遠い。やってきたのは六本木の「カフェ シンガプーラ」というシンガポール料理店。ここにあるのが「キャロットケーキ」だ。

おしゃれなカフェで野菜を使ったケーキを見かけること、たまにあるだろう。しかし今回はそうではない。
何かの間違いではない
何かの間違いではない
店員さんもちゃんと「キャロットケーキです」と言って運んできたから間違いない。これがキャロットケーキだ。ざっと見た感じ、ケーキとしての要素は何ひとつ感じられない。
君、キャロットじゃないだろう
君、キャロットじゃないだろう
実はメニューにはちゃんと表記がある
実はメニューにはちゃんと表記がある
ケーキのことは置いておいて、キャロット=ニンジンすら入ってない。品名の言葉が表す実体が何もない。

…まあ本当は、メニューには「大根餅の卵炒め」と説明が書いてある。だから、いわゆるケーキと間違えてこれを注文する人はいないだろう。

この料理、「ケーキ」と名が付く理由は調べてもわからなかったが、「キャロット」は広東語で大根のことを指すとのことで納得。味の方も、大根餅の表面の焦げが香ばしくてとてもおいしかった。

定番ケーキも話が違う

再びお菓子のケーキに戻ろう。単に「ケーキ」と聞いてイメージするものは様々あろうが、ショートケーキを思い浮かべる人は多いのではないか。

定番中の定番、ショートケーキ。もともとはアメリカから来たという説がある。作って食べてみよう。
キルシュヴァッサーも使って気取ろう
キルシュヴァッサーも使って気取ろう
もちろんイチゴも使います
もちろんイチゴも使います
アメリカ版ショートケーキの材料には、ホイップクリームもイチゴもある。普通だ。

それならそんなに変わったものでもないだろう。そうも思えるのだが、レシピに従って作るとこういうことになる。
アメリカ版ショートケーキ
アメリカ版ショートケーキ
これがアメリカにおけるショートケーキ。うまそうだけど、一般的なケーキとは違う。だいぶフランクな感じ。

説明すると、スコーンあるいはビスケットに、生クリームとイチゴソース・イチゴそのものを挟んだもの、ということになる。この場合のビスケットは、ケンタッキーで売ってるタイプのあれだ。

日本では繊細な洋菓子であるショートケーキだが、こちらはアメリカの母ちゃんが作ってくれる、家庭のカジュアルなお菓子と言えるだろう。

関係ないけど、山形の店で気になった物
関係ないけど、山形の店で気になった物

キラキラした感じが漂う言葉、ケーキ。それにあやかっていろんなものにケーキってつけたくなっちゃう気持ちはよくわかる。そう思って数々の「聞いてないケーキ」を食べると、疑念は「まあそうだよね」と共感に変わっていった。

最後のアメリカのはワイルドだったけど、材料の組み合わせからして、うまくないはずがない。こちらも当然おいしくいただきました。
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