ンマハラセーのここが違う
沖縄の競馬のことを方言で「ンマハラセー(ンマハラシー)」といいます。
現在では沖縄にいる在来馬は宮古馬、与那国馬の2種(日本全体では8種)。
宮古馬は沖縄県の天然記念物、与那国馬は与那国町の天然記念物に指定されており、どちらも保存会の活動によって徐々に増えてきていますがまだまだ頭数は少ない馬です。
しかし、そもそも沖縄には沖縄本島産馬、伊平屋馬など種類も数も今よりずっと多くの在来馬がいたそうです。ンマハラセーはそれらの在来馬が競う競馬でした。
沖縄の在来馬は小さくて優しい性格で、荷物を運んだり、農耕のお手伝いをしたりと、人間の生活に密着して仲良く暮らしていました。そんな馬で競うンマハラセーは、スピード勝負ではな優雅さを競ういかに優雅に進むことができるかという、足並みの美しさを競う勝負
だったそうです。
在来馬で優雅さを競う競馬とはどんなものなのでしょうか?
実際の勝負を見る前にもう少し詳しくルールをみてみましょう。
ンマハラセーのルール
当日会場に出されていたンマハラセーのルールです。
1.速足の優雅さ
馬がゆっくり歩くときに見られる「並足」
急ぎ足のときに見られる「速足」
飛ぶように走る「駆足」
並足が遅く駆足が速いのですが、ンマハラセーは中間の「速足」が基本。
速足でいかに速く、優雅に走られるのか、が勝負の決め手になります。
全力疾走してしまうと失格になってしまうとか。
2頭が紅白に分かれてコースを往復して競います。
今回は会場の都合で100mを往復しますが、本来は200mぐらいの一直線の道で競っていたそうです。
ゴール後には審判がどちらが勝ちか赤白の旗を上げて判定します。
今回は総勢24頭が出場。優勝をかけてトーナメントで戦います。
ンマハラセーはオシャレ
会場ではスタッフの方が丁寧に在来馬やンマハラセーの解説をしてくださってました。
まっすぐな道に琉球松が植えられていたそうです。
昔はこんな場所が沖縄県内にいくつもあったとか。
説明が終わったら子どもたちを集めて消しゴムをプレゼントしていました。
ンマハラセーは優雅さを競う競技なので、オシャレも基本なのでしょうか。
編み込まれたしっぽ
いざ、レース!
ンマハラセーのスタートは騎手同士がスタートの息を合わせるところからはじまります。
スピード勝負ではないので、お互いが集中できたタイミングがスタートなのだと思います。
白い線のスタート前でお互いに「さぁ行こう」と合図を交わして走り出します。
スピードを競うJRA競馬の騎手は体を馬に平行にするように乗りますが、ンマハラセーでは体は馬にほぼ直角。
生活に密接に関わる馬は、速さだけでなく背中に乗せた積み荷を落とさないように運べることも必要な技術でした。
ンマハラセーでも走っている最中に騎手の体が揺れないように走ります。「優雅に走る」言葉では理解しづらかったものの、実際の走行を見ればなるほどと思いました。
足音をつけるなら「タタタタタタ」という感じ
全力疾走したり、興奮して歩行リズムを崩してしまわないように、騎手と馬が心を合わせ落ち着かせながら走らせます。
今回の審判役である照屋寛得さんと宮里朝光さんは子どもの頃に実際にンマハラセーを見て育ったとか。
二馬がゴールすると審判が旗をあげて判定します。
70年ぶりに見るウマハラセーをお二人はどんな思いで見ていたのでしょう。
特別ゲストのJRAの元騎手である岡部幸雄さんも来られていました。
すごい贅沢なゲストですね!
与那国馬に乗って、与那国の衣装をまとっておられます (優勝候補だったものの2回戦で敗退されました)
在来馬の大活躍
今回のレースに出た全26頭のうち、大和馬もおそらく半数ほど出場していたのですが、準決勝の4頭に残ったのは在来馬3頭、大和馬1頭。正直馬のことはよくわかりませんが、あの小さな体の在来馬が勝てるというのは、やはり温厚で優しい性格で優雅さを競うレースに向いているからなのだと思いました。
写真だけじゃわからん!という方は映像でご覧ください。
このレースは準々決勝(在来馬と在来馬のレース)のもので、会場がどよめくぐらいどちらが勝ったのかわからない良い試合でした。
決勝戦はこどもの国で飼育されている与那国馬の「どぅなん」と、大和馬「シャイニングスター」の勝負。
シャイニングスターも落ち着いた堂々とした走りでしたが、どぅなんはそれ以上の集中力で一度もリズムを崩すことなく走りきりました。
そしてどぅなんが優勝!!
体の小さい希少種である与那国馬どぅなんが勝った瞬間は会場が湧きました!
ンマハラセーのこれから
ンマハラセーは古琉球の時代から戦前まで約500年間続いていたそうです。
しかし最初の方で書きましたが、現在の沖縄在来馬は宮古馬と与那国馬のみ。
昔は本島産の馬や伊平屋島産の馬もいて、沖縄県各地でンマハラセーは楽しまれていたそうです。
それが戦時下で戦力用の大きい馬を作るために大和の馬と掛け合わしたり、体が小さい在来馬が増えないようにオス馬を虚勢したりという政策によって、その結果生活の中から馬が姿を消し、本島産の馬と伊平屋馬は絶滅し、ンマハラセーは途絶えたそうです。
戦前は那覇市内だけでンマハラセーが行える馬場が18カ所もあったそうです。
那覇市古波蔵に残る馬場跡
ウマハラセーではなく馬勝負(ウマスーブ)とあります
はじめてンマハラセーを見ましたが、優雅さはもちろん、馬と人が心をあわせるようすや、試合のドキドキ感にすっかり夢中になっていました。それは私だけでなく、会場にいた人たちも試合ごとに歓声が大きくなっていったり、いつの間にか贔屓の馬ができていたりと、人を熱中させる何かがあるような気がします。
昔の人が熱中したということがすごくわかりました。
関係者の方のお話では今後もンマハラセーを開催していくということだったので、いつかまた沖縄競馬ンマハラセーが盛んになる日がくるかもしれませんね。
動物園の注意看板が狂気
イベント終了後に、ンマハラセーが行なわれた沖縄こどもの国の動物園コーナーに行ってみました。
ここの動物園の注意書き看板はなかなか見応えがあるので、最後に紹介させていただきます。
ライオンの檻に近づきすぎるな!
辛い状況すぎる
こちらでも大噴射
ポーイ
沖縄には動物園が少ないので、注意をわかりやすく伝える工夫なのかもしれません。
ということで沖縄子どもの国の動物園は動物だけでなく看板を見るだけで楽しめる施設としてもオススメです。
沖縄こどもの国
沖縄県沖縄市胡屋5丁目7番1号
【営業時間】[4-9月] 9:30~18:00
(入場は17:00まで)
【休業日】毎週火曜日