商店街の超人気スポット(ハトに)
亀戸駅前北口から続く商店街を北上し、蔵前通りとぶつかる交差点にその店はある。
亀戸駅から十三間通り商店街を5分ほど歩く
大きな交差点の一角にその店はありました
鳩の溜まり場といえば公園や河原が相場。こんな普通の商店街になぜハトが集まってくるのかといえば、ハト界のホットスポット「但元いり豆本店」があるからだ。
店の周囲の電線にはハトがびっしり
カラスではない。ハトである
ハトのトイレみたいになってる案内板
見上げればハト、ハト、ハト
店の看板の上にもこの通り。オブジェではなく本物である
店の中にも侵入
店の周囲には無数のハトたちが陣取っていた。店内に好物の豆があることを知っている近所のハトたちに、完全にロックオンされているのだ。
ヤツらは店の中にもガンガン侵入してくる。
ものすごい勢いで
次から次へとやってくる
観光客にも人気の店らしく、ハト以外のお客さんも普通に多い繁盛店なのだが、ヒトの2倍くらいハトの来店率が高い。
ヒトとハト、言葉にすれば一文字違いだが、そういう問題ではない
なかには徒歩で来店する鳩もいる
ふらりと立ち寄り、豆を一杯ひっかけて店を出るハトたち。その姿はまるで新橋のサラリーマンのようでもある。
「課長ごちそうさまです!」 「おう」、なんて声が聞こえてきそうだ
気さくなお母さんが切り盛り
なお、このお店は大正時代に創業し、まもなく100年目を迎えるという老舗。現在はご年配のお母さんがひとりで切り盛りされているようだ。お母さんの気さくな笑顔と明るい接客が印象的だった。
許可を得て、店内を撮影させていただいた。
ハトに屈することなく元気に働くお母さん
実家か
店内を覗くと、数羽のハトがまるで実家でくつろぐかのように居座っていた。
蛍光灯の上から人間を見下ろすハト。何ともふてぶてしい態度だ
整列するハト。真ん中の綺麗なのがリーダーだろうか
一方、ハト目もはばからずイチャイチャする鳩カップル
と、人の店の中でやりたい放題だ。人を恐れる気配がまったくない。お母さんにハトについて聞くと、「ああ…豆屋だからね、ホラ…」と明るい表情が一瞬曇った。悪いことを聞いてしまった。多くは語らなかったが、やはりお母さんもハトには困り果てているようだ。
ハト追い出し用のはたき
ハトを追い出しては、こまめに掃除。その繰り返しだ
「口コミで広まった豆の味は、遠方から足を運ぶ客もいるほどの絶品。親子二代、三代で通う常連も多い」。
ハト界にガイドブックがあるとしたら、この店はこんなふうに紹介されるかもしれない。ただ、いくらハトに人気があっても、あいつらは一銭もお金を落としてくれない。落とすのはフンのみである。
豆を買ってもハトにあげるのはやめましょう
ほかのお店に害はない
ただ、ハトたちはこの店だけをピンポイントで狙っているので、商店街の他の店にはまったくといっていいほど被害はなさそうだった。
帰り際に近くのラーメン屋でご飯を食べたが、ハトは入ってこなかった。やはりハトはラーメンより豆が好きらしい
ハトの追い出しやフンの掃除に追われるお母さんがとても気の毒に思えてくる。しかし一方、店のショーケースにはハトを模したような木工品も飾られていて、ハトのことが憎いのか本当は好きなのか、お母さんの本心はよく分からなかったが、あまり深く踏み込んではいけない気がした。
ハトを模したらしき木工品
ちなみに、豆はケースでガッチリガードされているため、衛生面は問題なし
ショーケースには、手づくりのひよこ豆や砂糖豆、落花生が並んでいた。豆にうるさいハトたちから熱烈に支持される逸品とはいったいどんなものなのか、せっかくなので購入してみた。
贈答用はちゃんと包んでくれます
ハトの熱い視線を感じつつ、3種類の豆を購入
ハトにはやらず、家でゆっくり楽しみます
「最後にお母さんの写真もいいですか?」と言ったら「恥ずかしいから」とレジの陰に隠れてしまった
なぜか「代わりにアンタを撮ってあげる」と、お母さんが撮ってくれた一枚
足元ではオスのハトがメスを追っかけまわしていた
おいしい豆が(ハト的)に評判を呼び、ハトに占領されてしまった店。お母さんの苦悩は察するに余りある。
しかしそんな逆境にも負けず、毎日きちんと豆を煎り、衛生管理をして、多くのお客さんに愛されているのが凄い。これからもヒトにもハトにも愛されるお店として残り続けてほしい。
ちなみに、買った豆はものすごくおいしかったです。