亀戸駅に大根が生えているらしい
その話を聞いたのは、先日、東京にやってきた「水陸両用バスツアー」車中でのこと(※なお、当ツアーの模様は後日「らくらくニッポン探訪」というサイトにて紹介します)。
バスが亀戸駅の近くを通過する際、ガイドの菊池さんが「亀戸駅ではホームで大根を育てている」という情報を教えてくれたのだ。
亀戸に詳しい菊池さん
ウワサの現場
いたって普通のホーム
亀戸駅のホームはいたって普通のホームで特に畑らしきものは見当たらない。「亀戸大根」立て札はホームではなく、線路の脇にあった。
ホームに生えていたわけではなかったが、確かに駅の中に大根の畑はあるようだ。
確かに亀戸大根の畑はあった
あれ?
大根ない…
ない
畑には大根ではなくキレイな菜の花が植えられていた。もしかしたら菊池さんの情報が間違っていたのだろうか? だとしたら一刻も早く真実を教えてあげなければならない。
このままでは菊池さんが嘘つきになってしまう
もしかしたら大根の収穫期が終わって、畑が空いたので菜の花を植えているだけかもしれない。だとしたら問題ないが、もう大根自体を育てていないとしたら菊池さんが嘘つきになってしまう。菊池さんに代わって僕が真相を突き止めよう。
やってきたのは亀戸大根を使った料理で有名な地元の料亭
ここ「升本」さんは、亀戸大根を使った料理を味わえることで有名な料亭だ。駅の大根についても何か知っているかもしれない。
これが亀戸大根。ふつうの大根より細くて小さい
水をかけると福を分けてもらえるというのでたくさんかけた
亀戸大根は江戸時代からこの近隣でつくられていた大根。しかし、宅地化が進んでからは都内や北海道の一部でしか栽培されない「幻の大根」になってしまったという。
「升本」さんではそんな貴重な亀戸大根を一年中味わうことができる。
せっかくなのでいただきます
名物の「亀戸大根 あさり鍋」
亀戸大根スティック
亀戸大根の天ぷらなど、「昼の膳」は豪華な大根づくし
初めて食べる亀戸大根は大根の概念を覆すほどのうまさだった。果物みたいに瑞々しくて肉質もみっちり詰まっている。そのままかじっても申し分ないが、鍋で煮込めば汁のうまさをあますところなく吸い込み、僕の舌に幸せを運んでくれる。大根なのにカツ丼と同じくらいうまい。
小さくカットされたシャキシャキの大根が入ったまんじゅう
わざわざ食べに来る価値がある大根です
「大根足」「大根役者」など、何かとバカにされがちな大根だが、この大根のうまさを知ったらそんな軽口は叩けなくなるに違いない。
けっきょくこの店では駅の大根に関する情報は特に得られなかったが僕は満足だ。
その後、亀戸大根発祥の地である香取神社にも立ち寄ったが。手掛かりナシ
けっきょく駅大根に関する有力な情報は得られないまま、再び亀戸駅に戻ってきた。
駅員さんに聞いてみよう
忙しい駅員さんに大根のことを聞くのは申し訳ないが、仕方がない。
亀戸駅で大根を育ててるって聞いたんですが…
女性の駅員さんによると確かに駅で大根を育てていたことは間違いない。でも詳しく分かるものがいないので、あとで調べて連絡をくれるとのことだった。親切な駅員さんである。
なんか大ごとになって申し訳ない
電話が鳴ったのは翌日の朝のこと。駅員さんはやや興奮気味に
「大根、生えてますよ!」
と言った。
えっ、生えてないじゃないか?
「いや、生えてるんです。菜の花の前にちょっとだけ見えてる葉っぱが亀戸大根です」
つまり、これですか?
駅栽培の大根は確かに存在していた。菊池さんの言っていたことは本当だったのだ。
滅多に出ない上モノ
数は少ないものの亀戸大根を駅でつくっているというウワサは本当だった。聞けばもうすぐ収穫の時期だという。電話を切ると、朝ドラの最終回を見た後みたいなほっこりした気分になった。