そもそも、お湯でスープを作るカップ麺があったのだ
若い人は知らないかも知れないが、僕が子供の頃に『焼きそばBAGOOON』というカップ焼きそばがあった。実は今でも東北地方限定で売られているので東北の人は知ってる人が多いと思う。昔は全国で売られていたのだ。
BAGOOONにはお湯で作るワカメスープが付いていた。捨てるしかなかったお湯がスープに化けるという点で画期的な商品だった。
これは今でも北海道では売られてる『やきそば弁当』。8年前の写真である。
スープの素が付いたカップ焼きそばといえば、他にも『やきそば弁当』や『焼うどん弁当』などがあり、こちらは北海道限定である。
弁当シリーズもBAGOOONも東洋水産(マルちゃん)の商品なので、東洋水産は伝統的にお湯を捨てたら勿体ないと思っていたのだろう。マルちゃんはエコだ。
こんな感じで中華スープが付いている。麺のもどし湯で作れと書かれている。
焼きそばにスープが付くと大変に食事っぽい。
では、他のカップ焼きそばのお湯はどうなのか?
やきそば弁当やBAGOOONはスープの素が付いているが、他の、普通のカップ焼きそばのお湯はどうなんだろう?味に違いはあるのだろうか?
という事で、色んなカップ焼きそばのお湯を飲み比べて、美味しく飲む方法を探ってみた。
ずっと変わらないパッケージ。
マルカ食品 ペヤング ソースやきそば
まずはペヤングのお湯を飲んでみよう。
うっすら黄色で味はかなり薄め。ほぼキャベツのダシって感じだ。スープとして飲むならコンソメなどでちょっと味を足した方がいいだろう。顆粒のコンソメを溶かしてみたらグッと美味しくなった。
お湯を飲むといっても味付け無しではあまりに薄味なので、調味料で適当に味を付けて飲むといい。
味が薄いので、なにか適当に味付けした方がいい。
ペヤング自体は安定のジャンク感。緊張感が高い湯切りシステムや駄菓子系の麺、遠くに辛味があるソース。20世紀に食べたペヤングとなにも変わらない味だ。だが、それが良いのだ。
力強いパッケージ。
エースコック 大盛いか焼きそば
次はエースコックの『大盛いか焼きそば』のお湯。イカのダシを期待したい。
湯はやや黄色めでやや濁りタイプ。大盛という名前の通りお湯も大盛だ。
細かい麺や乾燥具材の欠片が、かなりお湯に混じっている。お湯を捨てる場合はもったいないなと思ってしまう欠片達だが、飲むとなると話は別だ。スープの具や浮き実として俄然輝き出す。その輝きっぷりたるや、水泳大会のおりも政夫の如しだ。
お湯に塩気はほぼなく、キャベツの香りとなにやら薄いうま味がある。これがイカのダシなのかもしれない。お湯を少なくして作るか、塩やうま味調味料を足すと美味しく飲めると思う。
具入りである。というか、こいつの湯切りシステムは麺が漏れすぎなのだ。
スーパーカップなので、ボリュームと味の濃さが魅力だ。エースコックのカップ麺はラーメンも3D麺を名乗っている。なにが3Dなのかは各自調べてください。
箸でガシッと掴んでワシワシ食べられるボリュームと容器の底に溜まるほど多いソースが生み出す味の濃さ。みなぎるジャンク感が大盛いか焼きそばの魅力である。
力強いパッケージ。
日清食品 U.F.O.
3つめは日清食品のU.F.O.だ。日清と言えば、カップヌードルを発明した業界の創造主。商品は常に進化を続け、麺も具も味付けもコロコロ変わっていく。
UFOは麺がモチモチ、ソースはピリ辛。キャベツと肉の味が本物っぽく美味い。本格派の焼きそばを目指した王道系である。
さて本題はお湯だ。透き通った金色で、ちょっと油が浮いていた。なぜか薄めの塩味が付いていて、追加の味付けなしでも美味しい。
キャベツっぽい甘味とうま味が感じられ、意外にしっかりスープなのだ。捨てるにはあまりに惜しいので積極的に飲むべきだと思う。黒胡椒を掛けるのもおすすめ。
焼きそばも美味しいが、このお湯もかなりイケる。なぜこれを捨てることが出来ようか。
次のページでもお湯を飲み比べたり、美味しく飲む工夫をしたりします。
今回の優勝者、ジャンジャン。
エースコック ジャンジャン
ここで今回のお湯飲み比べ選手権、優勝の商品を紹介します。エースコックのジャンジャンです。もうね、これは別格ですわ。
なんで別格なのかというと、麺に旨味が練り込まれているからだ。パッケージに『旨みがギュッ!練り込み<ウマMIX麺>』と誇らしげに書かれている。
麺に練り込まれた旨味は、内側は麺に残って焼きそばとして食べるときの旨味になり、表面の旨味はお湯に溶け出す。だからお湯が美味い。自明だ。
お湯に旨味が溶け出すのだ。思わず挿絵を作るくらい美味い。
ウマMIX麺は茶色。お湯を注いで3分待って、出てきたお湯の色もしっかり茶色だった。どう見てもスープである。
飲んでみるとこれがもう、しっかりきっかり完璧にスープであった。例えて言うなら、駄菓子屋で売ってるブタ麺のスープを薄くした感じというか、ジャンク系のスープである。一度飲んだらもう捨てられないお湯である。JANJANのお湯を捨ててる人に「食べ物を粗末にするな!」と言う資格はない。
そのままで十分美味しい。
美味しく作るコツだが、お湯を少なめにすると美味しいお湯を抽出できる。説明通りにカップの線までお湯を入れちゃうと薄くなるので、麺のちょい上に被るくらいでちょうどいい。飲んでみて味が濃かったらお湯を足してください。
お湯を美味しく飲むには?
上述のようにジャンジャンのお湯はそのままでも美味しいのだが、ペヤングや大盛イカ焼きそばのお湯はちょっと味気なさ過ぎた。
そういう場合は塩やだしの素で味付けすれば美味しいスープとして飲めるようになる。カップスープの素を使うのは大げさすぎるきらいもあるが、ガラスープやだしの素は味の調整もしやすいのでおすすめだ。
各種調味料で味をととのえて飲んでください。
僕はだしの素がお気に入り。なんでもお吸い物になる。
川越達也も絶賛した焼きそば。
サンヨー食品 サッポロ一番おたふくソース味焼きそば
お願いランキングの美食アカデミーでちょいキビ判定員から絶賛されていた『サッポロ一番おたふくソース味焼きそば』だが、川越達也さんもお湯は飲んでいなかった。ではお湯はどうか?
色は薄めで透明度高め。多少油が浮いているが、かなり白湯に近い。塩気もうま味も薄いので物足りなかった。むしろクノールのカップスープの素でも混ぜてガッツリ味付けしたくなる。
お湯の味で言えばほぼゼロ。それだけ麺に旨味が残っているという事か。
お湯は残念だったが、焼きそばとしては確かに相当美味しかった。麺にコシがあり、青のりがマヨネーズとソースの味を引き立たせる。ソースはさすがおたふくソース、甘くて麺にガッチリ絡んでくる。これは相当に美味しい焼きそばだ。焼いてないけど。
からしマヨネーズに定評がある。
明星食品 一平ちゃん夜店の焼きそば
以前松村邦洋がCMをやってたので、未だにそのイメージが抜けない一平ちゃん。
お湯は薄めでサッポロ一番おたふくソースに似た感じ。麺が茶色かったのでJANJANみたいに濃いめのお湯になるかと思ったが、予想が外れた。
だしの素を小さじ半分くらい入れると美味しくなるので積極的に味付けして飲みましょう。
濁っているが味は薄めだ。
一平ちゃんは相当に好きなカップ焼きそばだ。からしマヨネーズがツーンと効いており大人の味。細麺にソースがよく絡んでいる。
具はキャベツのみと寂しいが、そこら辺が夜店の焼きそばって名前の由来なのかも知れない。
凄太のそばって、つまりうどんじゃね?
マルちゃん 昔ながらのソース焼きそば 凄太
マルちゃんは『昔ながらのシリーズ』を色々出しているが、焼きばもあったんですな。
お湯は限りなく透明に近いが麺が太いせいか油が結構浮いていた。味は非常に薄いが、雑味が無くバランスがいいせいか不味くはない。
が、スープとして飲むには薄いのでやはり味付けが必要である。コンソメかだしの素をちょっとだけ溶かすといいだろう。
不味くはないが味が薄い。ちょっとだけ塩味が欲しい。
ところで、『凄太』の名前の通り麺が激太だった。焼きそばっていうか焼きうどんの風情である。東洋水産は北海道限定で焼きうどん弁当を出しているので、系統としてはそちらに近い。
やっぱうどんだよね?
待ち時間は5分と長めだが、それでもまだ麺に芯が残っていた。6分以上は待った方が良さそうだ。ソースは甘味があるおたふく系。太麺と合っていて美味しい。お湯の味はいまいちだったが、カップ焼きそばとしては好きな味である。
最強の塩焼きそばだと思う。
サンヨー食品 サッポロ一番塩カルビ味焼きそば
塩焼きそば界で最も美味しいと思うのがこれだ。じゃあお湯はどうなのか。
薄めタイプで見た目は一平ちゃんに似ていた。具のカルビからうま味が出るかと思ったがあまり感じない。このお湯を美味しく飲むには理研のワカメスープなど、ちゃんとしたスープの素が必要と思われる。
期待に反して全然美味しくなかった。
お湯は期待はずれだったが、やはり塩焼きそばとしては最強だ。
添付の油は植物油なのになぜかしっかりとカルビの味がする。塩味と粉末レモンのほのかな酸味、牛肉っぽい味がよく調和している。うまい焼きそばランキングだったら上位に食い込む実力者である。でも、お湯はいまいちである。
業界では珍しい中華タイプ。
エースコック 中華焼きそば
塩焼きそばの次は中華。
同じエースコックの大盛イカ焼きそばのお湯に似た感じだが油が多め。敢えてお湯を少なめで作ったので、薄いながらも味があるスープに仕上がった。
焼きそばがキッパリ濃いめのオイスターソース味なのでいい箸休めになった。つけ麺みたいにお湯に麺をつけて食べるのもアリだ。
これでも薄いという場合は、やはり各種調味料で味を調えて飲んでください。
お湯を少なめで作ったので濃くなった。美味い。
焼きそばはコッテリしてて美味しかった。
オイスターソースとごま油、きくらげで中華風。中華料理店で出てきそうな味である。かなり油っぽいが、だからこそ美味い。スーパーカップのエースコックならではという感じのヘビー級焼きそばだ。
次のページではまたちょっと違った食べ方をします。え?!カップ焼きそばがラーメンに?
同じ日清のUFOとは方向性は違うが美味い。
日清食品 ソース焼きそば
パッケージを見るからに懐かしい感じの日清ソース焼きそば。でも食べてみると、ペヤングみたいに麺もソースも昔ながらって感じではなく、ちゃんと改良されて今風の味に付けになっている。
で、お湯である。色は良い感じに黄金色で油の浮きも適度だが味は薄め。美味しく飲むにはやはりだしの素や塩、コンソメなどで味付けをする必要がある。ジャンジャンの様にそのままでも味が付いてて美味しいお湯ってのはなかなか無いものだ。
お湯は色も味も薄いので味付け必須だ。
結局の所、味付け無しでお湯が美味しいのはエースコックのジャンジャンと、強いて言えば日清のUFO、エースコックの中華焼きそばくらいだった。でも、他のも味付けをすれば美味しく飲めるので、これを読んだ皆さんはお湯を捨てずに味付けして飲んでいただきたい。
それとは別の話を書こう。この記事の話を打ち合わせで発表したところ、水曜ライターの北村ジンさんが
「学生自体に、お湯を捨てずにそのままソースで味付けしてラーメンとして食べてました」
と言いだした。へ?と聞いてみると、カップ焼きそばは普通のカップ麺より麺が多くてカロリーが高いので、効率を考えてカップ焼きそばばかり食べていたのだという。で、お湯も捨てずにソース味のラーメンとして食べていたらしいのだ。
それは美味いのだろうか?やってみました。
ベースは日清のソース焼きそば。湯切りせずに粉末ソースを溶かす。
たまにウッカリお湯を捨てずにソースを混ぜちゃった、みたいな失敗談を聞くが、これはわざと敢えてそうしているのだ。わざとでも間違っちゃった感は健在だが。
なんだか残念な見た目である。
カップ焼きそばは具が少ない。しかも、具が麺の下にあるので出来上がりのビジュアルがあまりに残念である。
という事で、ラーメンのどんぶりに盛り付けてみた。
見た目は良い感じになりましたが、匂いはソース。青のりが掛かってるのが焼きそばの名残か。
ちょっと麺が伸びやすいかも知れないので、急いでいただきまーす。
いただきます。
ラーメンみたいに食べる。
ムグムグ。
意外にイケるわ。
凄い美味しいかって言われると、それほどではない。でも、具を色々足したからってのもあると思うが食べ応えがあっていい。確かに麺が多いし、ソース味のスープも悪くない。
というか、1年くらい前にライターのさくらいさんが「
新・つゆ焼きそばを作りたい」という記事を書いていた。焼きそばとスープってのはそんなに相性が悪くないのかも知れない。だしの素とか入れて味を調整したら更に美味しくなっただろう。
エースコックのジャンジャンがガチ
僕は普段はカップ焼きそばを食べるときはお湯をカップに取っておいて、それに適当な味を付けて飲んでいた。お湯だけの味を飲み比べたのは今回が初めてだ。なので、ジャンジャンのお湯がそのままでも美味しいと発見したときは興奮した。
他のお湯達も、ちゃんと味を調えてあげれば美味しく飲める。捨てたらもったいないので、是非みなさんも飲むようにしてください。油が浮いてて体に悪そう?カップ麺食べてる時点でそんなの気にしてもしょうがないでしょう!