千葉で輝く北斗星
やってきたのは千葉県の鴨川市。房総半島南東部、太平洋に面した町だ。その海沿いの道に「北斗星」はある。
列車の中間車が埋まってるような外観
電車の北斗星とは異なるカラーリングだが、「あ、電車」と一目でわかる雰囲気にインパクトがある。
北斗星、営業中
海もすぐそば
看板の「北斗星」と「たこ焼」の文字が頭の中でなかなかなじまないのも面白い。海が近いので海鮮料理として結びつけようとしても、たこ焼きはやっぱりそういうイメージではない。
見るほどに気になるたたずまい。中に入ってみよう。
見るほどに気になるたたずまい。中に入ってみよう。
一見普通のようにも思える店内
入った瞬間は普通のお店のようにも見える店内だが、すぐそこかしこに電車要素が散りばめられていることに気がつく。
駅っぽさが急に出てくる壁面
最寄駅は安房小湊だけど駅名表示は茂原
こんな使われ方もしている鉄道要素
天井の曲線は列車内風
視野にこれでもかと入ってくる鉄道成分。特に鉄道ファンというわけではない私だが、この空間に包まれると旅気分が盛り上がってきて楽しい。
「近距離きっぷ」の表示はテーブルに埋め込まれた鉄板のカバーとなっていた。よく見ると天井の造りも電車風になっていて、隙あらばと電車っぽさが目に入る。中でも存在感があるのがこれだ。
「近距離きっぷ」の表示はテーブルに埋め込まれた鉄板のカバーとなっていた。よく見ると天井の造りも電車風になっていて、隙あらばと電車っぽさが目に入る。中でも存在感があるのがこれだ。
ここだけ切り取ると本気で電車
電車、それも特急を思い起こさせるイスは実際に使われていた本物。懐かしい感じも漂うのは、これが0系と呼ばれる初代新幹線に使われていたものだからだろう。
もちろん客席として座れる
サイドテーブルも出てきてうれしい
貴重なものだろうが、食事をするための座席として座ることができる。横に仕込んであるテーブルもちゃんと出てくるし、リクライニングもする。
歴史を感じつつも古びた感じがしない。店のご主人によると、可能な限り分解して清掃したそうだ。いや、ご主人と呼ぶのはこのお店の場合ふさわしくないだろう。
歴史を感じつつも古びた感じがしない。店のご主人によると、可能な限り分解して清掃したそうだ。いや、ご主人と呼ぶのはこのお店の場合ふさわしくないだろう。
店主の德弘さん
いや、車掌長と呼ぶべき
名刺に「車掌長」とある德弘さん。本物の制服を着て仕事をしている徹底ぶりがさらに鉄道ムードを高める。車掌長は単にコレクターというだけでなく、使える物は積極的に使うそうで、自宅でも寝台列車のベッドで寝ているとのこと。
割引券にもなる名刺も切符風。ディティールまでぬかりがない。
割引券にもなる名刺も切符風。ディティールまでぬかりがない。
ここが飲食店だってうっかりしてた
焼き色もうまそうなたこ焼き
こちらは別バージョン
中にいるのがタコではない
ここまでとことんやってくれると何の店だか忘れそうになるが、ここはたこ焼きやお好み焼をメインとしたお店。飲食業界で働いてきた車掌長が、趣味と合体させて開いたそうだ。
注文が入ってから焼いてくれたたこ焼きは、カリッとした表面からトロトロの中身が飛び出すうまさ。入荷時限定だが、地元で獲れたサザエを一匹分使った「サザエ焼き」もおいしい。
注文が入ってから焼いてくれたたこ焼きは、カリッとした表面からトロトロの中身が飛び出すうまさ。入荷時限定だが、地元で獲れたサザエを一匹分使った「サザエ焼き」もおいしい。
厨房への扉には「乗務員室」の文字
ワインの品揃えも北斗星と同じ
どこでもいいからこのまま行きたい
リアリティある表示
たこ焼きを食べつつ目に入ってくる物は鉄道グッズなので、やはり列車旅情に呼び戻される。トイレはさすがに電車で使用していたものではないが、「このトイレはタンク式です」の表示は見覚えがある。
「下水道じゃないので、意味合いとしては表示の通りなんですよ」と車掌長。結果としてリアルなお願いになってるわけだ。
「下水道じゃないので、意味合いとしては表示の通りなんですよ」と車掌長。結果としてリアルなお願いになってるわけだ。
なんでも鉄道風に見えてくる
しゃれが効いてると思った表示
洗面台は鉄道で使用されていたものではないとのことだが、周囲が徹底されているので「これも鉄道っぽい」と、そう言われるまで思い込んでしまった。
JR東日本の「びゅう商品券」が使える表示も鉄道グッズの一環だろう。そう思って確認すると「まあ、それで払ってくれてもいいですよ。どうせ自分で使いますからね」とのこと。しゃれではなかったのだ。
JR東日本の「びゅう商品券」が使える表示も鉄道グッズの一環だろう。そう思って確認すると「まあ、それで払ってくれてもいいですよ。どうせ自分で使いますからね」とのこと。しゃれではなかったのだ。
見覚えのある表示がいろいろ
国鉄時代の路線図はすかすか
地元特急「わかしお」の本物ヘッドマーク
割引券は使用時に青森駅の改札鋏を入れる
本物の駅員が来たときは、逆になんとなく気まずくてあまりしゃべらなかったと車掌長。帽子だけ取った制服での来店だったとのことで、そのときの空気を想像すると当人でなくてもモゾモゾしたくなる。
さまざまな行き先になる北斗星
店のカラーリングは「ほんとは赤い線で塗りたかったけど、親戚に反対されて…」とのこと。来訪当日は千倉行きの表示が出ていたが、こちらは日によって変わるそうだ。
車掌長は鉄道の他に船旅もよくするらしい。「シートベルトがいらないのは電車と船だけですから」と聞き、なるほどと思う。千葉の北斗星は全く揺れることなく、快適な安全運行でした。