「稲福」
伏見大社の周辺を歩いていると、スズメを出す店はすぐに見つかった。
店先に「国産すずめ・うずら」と明快に書いてある
さらにお店の前では店員がとても元気に呼び込みをしていた。
カジュアル
鳥の中で何が一番好きですか?と問われたら、僕はスズメと答える。だって素朴でかわいいじゃないですか。小さくてまるっこい体でチュンチュン鳴いて。
動物園に行くと、飼育されている動物のエサを、野良スズメが勝手に食べているところをよく見る。そんな時はついついスズメの方に見入ってしまう。
焼き鳥メニューに、スズメとウズラしかない
そんなかわいいスズメを食べるということで、ちょっと感傷的になっている。しかしこうあっけらかんと食材としてのスズメをPRされると、その感傷も根底からグラついている。
京都らしく和のテイストでガンガン推してくる
左が「スズメ」、右が「ウズラ」
スズメと同じくらいウズラも推されていたので、両方頼んだ。
若干原形が残っているかな
スズメもウズラも味付けが上品で、なかなかうまい。
肉っぽい質感が少なくて、サワガニとかシシャモとかを食べている感じに近い。小さな生き物はだいたい食感が似ているのかもしれない。
ここのお店の店員さんはみんな若くて小さくてかわいい人たちばかりで
不意にスズメのようにかわいい…と思ってしまった
花家
歩いてみると、スズメを出している店は少ないようだ。しかし、ウズラを出している店は他にもたくさんある。
その中の一つ、「花家」に行ってみた
稲荷大社のすぐそばにありながら、いなり寿司よりもずっとハバをきかせている存在、ウズラ
もはやコンビニホットコーナーにおけるフライドチキンくらいの感じで、ウズラは店先に並べられている。
店に入ると、おじさんたちがワイワイいいながらウズラ串で日本酒飲んでいた。なるほど、フライドチキンを卒業した大人の買い食いって感じがする。
フライドチキン卒業したらウズラってのもよくわかんないですが
ちょっと甘めのタレに山椒がおいしい
だいぶ小さくカットされている。さっきの稲福と同様、ふつうの焼き鳥って見た目だ。
安心なような、寂しいような。どうも僕は「かわいい鳥を食べる」という自分の感情の揺れを楽しんでいるフシがあるんじゃないか。
趣味悪いな、と自責の念にかられる。しかし、となりの席で日本酒飲んでるおじさんたちは、とても明るい雰囲気だ。
楽しげないい集団
でも高齢のせいか話題は暗い
僕もつられて細かいことを気にしないモードになった。旅行っていいなと思う。
祢ざめ屋
最後はこのあたりで一番有名らしいお店、祢ざめ屋へ。
観光地の有名店。さすがの混雑ぶり
1540年創業。その3年後が鉄砲伝来である
1540年創業。その3年後が鉄砲伝来である
店内も超混雑。遠くから旅行に来ているという、上品な老夫婦と相席になった。
そして注文したスズメが運ばれる
すごい食いつき
老夫婦、僕のスズメにがぜん興味を示しだした。
おじいちゃん「スズメ、懐かしいな」
斎藤「あ、昔はよく食べたんですか?」
混雑してるところにスズメだけじゃ申し訳ないんで、きつねうどんも
おじいちゃん「こう、パチンコで石を飛ばしてな、当たるとスズメが落ちてくる。その瞬間が楽しくて楽しくて…身体中が興奮して、ワッ!ってなる」
斎藤「パチンコで当てるのすごい腕ですね。当たるんですね」
そうそう当たらないそうです
おじいちゃん「でも何度でもやるからね」
おばあちゃん「昔は娯楽が少なかったのよ」
斎藤「なるほどー。で、捕まえたら羽根むしって焼いて食べるんですね」
食べないのかよ!
おじいちゃん「食べないんだけれどもね、落ちる瞬間が楽しくて、一度やったら忘れられないから…」
ここでおばあちゃんがいなり寿司おごってくれた
おじいちゃん「米で誘っておいて、ひもを輪っかにして罠作ってな、こう…ひもを引っ張って足を縛るのもやった」
まあ、そうだよなー
スズメを食べる前に僕の中にあった、心の揺らぎ。それがなんか気恥ずかしくなるくらいの、おおらかな時代っぷりである(でも野鳥をいじめるのはダメなのでみんなはやらないようにしましょう)。
よく考えたらかわいいから食べられない、なんて理屈も自分で作り上げた思い込みなのだ。
スズメおいしかったです
伏見稲荷大社の周りはスズメをふつうに食べる空気に満ち満ちている。これを読んで「えっ!スズメ食べるの?」なんて思った人も、現地に行けば自然にむしゃむしゃいけるんじゃないかなと思います。
伏見稲荷大社自体も、鳥居がホッチキスの芯のように大量に圧縮されていて、すごいところだった