特集 2013年2月26日

ハトになりました

なんか大きいやつがいるな
なんか大きいやつがいるな
これまでハトを題材にした記事を多数書いてきたが、今回ついにハトになることに成功した。

アメリカの通販サイトからハトになるマスクを買ったのだ。嬉しくていろんな場所でハトになってみると、意外なことがわかってきた。都会でハトになるとうっかり風刺になることや、ハトハックは女性のほうが向いていることなど。

思わせぶりなことを書いているが、本稿の趣旨は「ハトのマスク買って嬉しい」である。
1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

前の記事:上海とハトのおもちゃ240個

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シアトル・上海・東京

ハトのマスクがあるのを知ったのは1月だった。
アニメGIF研究会にも参加している水島ひねさんのツイッターでこれが紹介されていたのだ。シアトルの雑貨屋で売ってるらしい。
はじめてシアトルに行きたいと思った
はじめてシアトルに行きたいと思った
ハトの得体のしれない感じを忠実に再現しているマスクである。かわいくもないしホラーでもない。無みたいなマスクである。擬人化なんてどこ吹く風のリアリズムだ。行き過ぎた資本主義が産み落とした商品である。

欲しい。欲しいのだがショップの通販では日本への発送を行っていなかった。だがきっと中国製だから中国にあるかもしれない。2月上旬、世界最大のおもちゃの問屋がある義烏(イーウー)に行ったのでそここのハトマスクの写真を見せて回っていた。

この男見たことないか?と聞き込みするような感じでスマホに入れたハトマスクの写真を見せた。
しかし答えはすべて「ネイヨー」だ。
(中国語でないことを没有(メイヨー)なのだが、僕の耳にはネイヨーに聞こえた)。
カラスのデコイならあった。どうすんだそれ。
カラスのデコイならあった。どうすんだそれ。

代行業者に頼む

通販サイトは日本のクレジットカードも使えなかったので(なんでそこまで拒絶するのか。軍事秘密なのかもしれない)、アメリカの通販サイトで買い物を代行してくれる会社に頼んだ。注文から約12日で日本に来た。

発送ステータスで、ポートランドを発送しましたと出たときにポートランドの地図を5分眺めるぐらい待ち焦がれていた。こんなこと久しぶりである。41歳でこんな世界があったとは…とマカのバナーみたいなことを思う。
買ったものを箱から出すところの写真を載せてるサイトがあるが
買ったものを箱から出すところの写真を載せてるサイトがあるが
その気持ちがよく分かった
その気持ちがよく分かった
もしかしたら日本でこのマスクを持っているのは僕だけかもしれない。

かぶれば僕は日本で唯一の二足歩行するハトである。と書いたところでハトは二足歩行であった。ゆとり教育世代でもないのにゆとり教育っぽいことをさらりと言う自分に驚く。

ハトがたくさんいる公園に来てみた。
けっこうハトだ
けっこうハトだ
なじんだ
なじんだ
妻と
妻と
ふたつ買ったのだ。ちなみに明るい色のマフラーとシャツで胸元を明るくしたのはハトを意識したからである。
この部分は
この部分は
ハトのここをあらわす
ハトのここをあらわす
しかしあっというまになじむ。
どこにいるかわからないだろう
どこにいるかわからないだろう
このマスクがあれば追っ手におわれていてもハトに紛れることができる。
「ちくしょう、あいつどこ行きやがった」
「ポポー(実はおれ)」
という展開が可能である。
ハトがたまっているところは暖かい
ハトがたまっているところは暖かい
最初は巨大なハトに引き気味だった近所のハトだが徐々に慣れて一緒にひなたぼっこするまでになった。ハトは暖かいところを知っている。

撮影中、ノラネコがやってきて巨大なハトを見て逃げ帰った。

街でハトになる

やはり街でもハトになってみたい
あっというまに
あっというまに
ハト!
ハト!
ハトだと変身して誰かを助ける気配が全くしないところがすばらしい。むしろ周囲のやっかいなトラブルから黙りを決め込んでいる感じすらする。
服を買ったハト
服を買ったハト
大きな帽子が見つかって嬉しいハト
大きな帽子が見つかって嬉しいハト
終電間際で帰るハト
終電間際で帰るハト
おれふけたな…と思うハト
おれふけたな…と思うハト
だが、街でハトになってみて思うのは、人型のハトがいるのではなく、人がハトに置き換わった景色のように見えるということだ。

なにを言っているのかと思うかもしれないが、以下の写真だともっとわかりやすいかもしれない。
名刺交換するハト
名刺交換するハト
アフターファイブのハト
アフターファイブのハト
はたらくハト
はたらくハト
現代人はハトのようだ…などと言いたくなる写真になってしまった。ハトのもつ匿名性がそうさせるのだろうか。そういう意図はまったくなくて、ただおもしろかっただけなのに。
でもミスターミニットでハイヒール修理待ちの女性がみんなハトだったり、バスに乗ってる客すべてがハト(はとバスだ!)だったら面白いのでこの原稿書きながらハトマスクを追加注文した。

ハトの持つ匿名性としれっと書いたが、ハトは一羽一羽がハトではなく、群れ全体でハトだと思っている。たしか村上春樹が書いていたような気がするか全く確信が持てない。宇能鴻一郎かもしれない。

女性のほうがハトっぽく見えるTIPS!

写真を眺めていると妻のほうがハトらしいことを発見した。
あふれるハトっぽさ。突如見せたハトの才能
あふれるハトっぽさ。突如見せたハトの才能
似たようなポーズの2枚の写真を見比べて欲しい。右が僕である。
背中を丸めてみても、首をかしげてみても妻のほうがハト感出てる。くやしい。
肩幅がないほうがハトっぽくなるのかもしれない。

ハトをハックするには女性のほうが向いている。

本稿で唯一のTIPSである。目立つように太字で書いておいた。ライフハックのサイト風にタイトルをつけるなら人間がハトになるためのたったひとつの冴えたやり方、だ。
MOVのきれいな受付スタッフもいいハトになった
MOVのきれいな受付スタッフもいいハトになった

ハトになりたかったんだ

2002年にデイリーポータルZをはじめたときにハトキャッチアンドリリースというハトを捕まえる記事を書いた。それから11年、自分がハトになった。

ひとつの到達点に達した感はある。ここから宇宙だ。それまでの騒音が消えて無音になったような気持ちだ。そんな全く伝わらない比喩を書くぐらい興奮している。
ついでに買ったトートバッグもよかった
ついでに買ったトートバッグもよかった
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