特集 2013年2月25日

説得してくる調味料「燻味塩」

この塩がいろいろとただ者ではない
この塩がいろいろとただ者ではない
スーパーの塩売り場に行くと、さまざまな塩が並んでいる。産地や製法など多種多様だ。

クレイジーソルトのように、プレーンな塩にプラスアルファの味が加えられているものもある。今回紹介するのは、その系統の「燻味塩」という塩だ。

この燻味塩、どんな風味なのかも興味深いが、味にたどり着く前にいろいろと気になるところがあるのだ。
1973年東京生まれ。今は埼玉県暮らし。写真は勝手にキャベツ太郎になったときのもので、こういう髪型というわけではなく、脳がむき出しになってるわけでもありません。→「俺がキャベツ太郎だ!」

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味より前の部分がまず気になる

今回紹介するのは燻味塩という塩。萬有栄養株式会社が作っている製品だ。
正体そのものは名前から予想がつく
正体そのものは名前から予想がつく
燻味塩という漢字表記に加えて「SMOKED SALT」と書いてあるパッケージ。「これは燻製の風味がついた塩なんだな」ということが推測できるだろう。実際にそれで正しい。
欧米での人気もアピール
欧米での人気もアピール
おいしそうだと感じる名前だが、気になるのは中身の塩だけではなく、まずパッケージ。

いきなり「ビフテキ,うなぎ蒲焼の『うま味』は『燻味』です」と主張。よくわからないけど、きっぱり言ってるからそういうもんなのか、と思わされる。

続いて「ひき肉,ぎょうざ,カレー・ライスら」と、「ら」で括っているのがなぜか新鮮。この独特な雰囲気、なんだろう。
信用したくなる文体
信用したくなる文体
さらに断定調でかくし味と性能を語ってくる。いよいよ素晴らしそうな調味料ではないか。
句点を省いて一気に読ませるところも
句点を省いて一気に読ませるところも
この雰囲気はパッケージ裏面にも続いていく。料理の下味つけによいのはすぐに納得。食材にシンプルにふりかけてもよいようだが、その対象として挙げられている「ユデ野菜,ユデ卵」の表記がクラシック。

そして「チャーハン,ピラフ,カレーライスにふりかけると」のあとにくるのが「すごくうまくなります」。フランクでハートがこもってるではないか。
朝鮮漬という言葉も久しぶりに聞いた
朝鮮漬という言葉も久しぶりに聞いた
魚臭が消えることを小さいフォントで書いたあと、サラダ系では再び「うまくなります」。2回目は「すごく」を取ってくどさをなくしているのだろうか。

すっかり「こいつはすごい塩だ」と叩き込まれたところでいよいよパッケージを開けてみよう。
これはたまらない
これはたまらない
開けた瞬間、ふわーっと広がる燻製の香り。しばらくクンクンやっていたくなる。ソーセージやスモークサーモンでおなじみのあの芳香が、濃厚に漂ってくるのだ。
パッケージの指南に従おう
パッケージの指南に従おう
今回は裏面に書いてあった通り、ユデ野菜とユデ卵につけて食べてみる。…おお、これは確かに燻製味。ウッドチップから立つ煙が想像できるような味わいだ。「すばらしい味になります」と書いてあったが、その言葉に偽りはない。

色づかいがきれい
色づかいがきれい
ちなみにこの燻味塩には兄弟がいる。
かな文字の使い分けか絶妙
かな文字の使い分けか絶妙
水色のパッケージは「燻味・塩・ガーリック」。説明の調子は燻味塩と共通のテイストがある。

「ガーリック」という言葉は「本来の風味」とつなげてポジティブに使い、「にんにく」は「不快臭」とネガティブにつながる。語義的に正しいかはともかく、語感の響きをうまく使っているようにも読める。
燻製の香りが使われているのは燻味塩と共通
燻製の香りが使われているのは燻味塩と共通
裏面でも同じような主張が重ねられる。同じことを繰り返し読んでいるうちに、文体に満ちる自信がより響いてくる。
わかったような、わからないような断言
わかったような、わからないような断言
ただ、「すべての料理にガーリックとして使用できます」という一文は、なぜだか頭に「?」が浮かぶ。

いや、言ってる意味そのものはわかる。わかってると思う。ただなんだろう、「すべての料理」と網羅的に掲げた上で、「ガーリックとして使用できます」とつながるのところに、なんとなくぼんやり感があるのだろうか。はっきりと説明できない不思議さがある。
グイグイとひき肉を前に出してくる
グイグイとひき肉を前に出してくる
黄色のパッケージは「燻味・塩・コシヨウ」。こちらはひき肉料理とのマッチングがよいらしく、「ひき肉料理の調味香辛料」「ひき肉料理の素」と重ねて伝えてくる。
パッケージ下部でもリフレイン
パッケージ下部でもリフレイン
大きく商品名を掲げたあとに、再びひき肉料理へのアピール。
ここまでで6回「ひき肉」って出てきてる
ここまでで6回「ひき肉」って出てきてる
さらには裏面でも念を押すかのように、ひき肉との相性を語り続ける。さすがにもうわかった。この商品はそういう用途のために開発されたということなのだろう。
えーっ、最終的にはそういうことなの?
えーっ、最終的にはそういうことなの?
しかし、ひき肉が完全にインプットされたところで、使い方の「2.」では魚肉や生野菜、サラダへの使用も提案。ここまで広げてもいいのか……と少々拍子抜けしたところで、「3.本品はすべての料理に使えます」。今まで読んできたことはなんだったのだろうか。

「その結果、本品の燻味によって、新しい味が賞味できます」と自信満々。ひき肉と汎用性との間で、気持ちが引き裂かれそうになる。

ピンク色なのは妹分か
ピンク色なのは妹分か
さらに姉妹品もある。「ごはん・うまい」という商品だ。
独特のリズムに磨きがかかる
独特のリズムに磨きがかかる
多めの読点が刻む変則的なリズム。「ぐっと、おいしくなる、うまくなる」「ぐんとうまくなる」といった言葉には、ナショナルブランドの製品にはない情がこもっている。こりゃきっとうまいんだろうな、と思わされる。
飾らない言葉が力強い
飾らない言葉が力強い
「最高においしくなります」と、シンプルな言葉で言い切ってくれるのが気持ちいい。商品に自信があれば、気の利いた表現はいらないのかもしれない。
あからさまではないのがいい
あからさまではないのがいい
こちらはご飯に入れて炊いてみた。分量通り入れたところ、炊きあがって上がってくる香りは、入れないときより気持ち強いかな…?というくらいのもの。

よくよく考えると、ご飯という食材の特性上、はっきりした香りがつき過ぎてしまうのは好ましくないだろう。ちゃんと抑制が効いているのに好感度アップだ。

整列するとかわいい燻味兄弟
整列するとかわいい燻味兄弟

燻製の香りを上手にいかした調味料、燻味塩シリーズ。味ももちろんよいが、パッケージにおける洗練されきってない訴求が、逆に心に迫ってきた。
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