マシュマロが苦手な理由を語る
白くて、甘くて、フワフワしているという、その要素だけを集めれば大好物となりそうなマシュマロなのだが、昔からどうにも苦手である。
マシュマロというものを、初めて自分で購入したかもしれない。
個人的な感想なのだが、マシュマロは雪見大福の皮だけ食べているような寂しさがある。
確かにお菓子として十分な甘さはあるのだが、それでも噛むたびにやってくる空虚感。実体の無さ。無の世界。
そして薬っぽさを想像させる表面の粉っぽさ。やはり苦手だ。
久しぶりにマシュマロを食べてみた。
昔はマシュマロに対してそこまで厳しい感想を持っていなかったのだが、ある体験がマシュマロへの評価を大きく下げた。それは母親が何気なく買ってきたチョコパイである。
チョコパイといえばクリームが挟まっているものと思って喜んでかぶりついたのだが、そこに挟まっていたのは、マシュマロだったのだ。
マシュマロに歯が埋まっていく感触に、なんでお前がここにいるんだよと、なんだか悲しくなった。
なぜマシュマロを挟むかな。
さてマシュマロに対する愚痴はこれくらいにして、これからは前向きにマシュマロと付き合っていきたいと思う。私も、もう大人だ。
そのまま食べるのは苦手なマシュマロだが、どこかに手を取り合える接点があるはずだ。
ヨーグルトマシュマロを作ってみる
まず挑戦したのが、買ってきたマシュマロの裏面に書かれていた、ヨーグルトマシュマロというメニューである。パッケージに書かれているくらいだから、オフィシャルの調理法といってもいいだろう。
要するにマシュマロにヨーグルトを掛けるだけらしい。
マシュマロにプレーンヨーグルトを適量掛けて、冷蔵庫で4時間ほど冷やしたら完成。
いただいてみると、ヨーグルトを吸った外側の部分がフワフワのムース状態で、中心部分はまだマシュマロ独特の弾力を残していた。
これによって、マシュマロの苦手な点であった「全体が同じ食感」という部分がクリアされて、だいぶ食べやすくなった。歯ごたえにメリハリがある。
なんとなく北欧っぽい味。パッケージに書かれている通り、ここにフルーツソースが掛かれば立派なデザートになるだろう。
ヨーグルトを吸わせたことで、だいぶ味の印象が変わった。
マシュマロと私の1対1の対話では見られなかった側面が、ヨーグルトが加わったことで発見できたようでうれしい。そういう人間関係ってありますよね。
マシュマロと私の距離が、少しだけ縮まったような気がする。
ドライフルーツミックスを一緒に入れることで、味と食感にさらなるバリエーションが加わった。味の宝石箱や。
お菓子作りの材料にしてみる
次の付き合い方は、マシュマロをそのまま食べるのではなく、お菓子作りの材料として接してみるという方法だ。マシュマロの材料といえば、砂糖と卵白とゼラチンなので、この転用はごく自然である。
普段、お菓子なんて自分では作らないけれど、こんな時くらいはチャレンジしてみてもいいだろう。
お菓子作りといっても、あまり難しく考えないで、マシュマロに牛乳を加えて、レンジでチンして溶かし、冷蔵庫で冷やし固めるという手法で攻めてみることにする。
マシュマロに含まれるゼラチンによって、ババロア的なものになると予想したのだが、さてどうなるだろう。
カップにマシュマロを並べて、牛乳を半分隠れるくらいそそぐ。
せっかくなので、チョコレート味も作ってみよう。
電子レンジで牛乳とマシュマロの入ったカップを温めると、すぐにマシュマロがモコモコと勢いよく膨れだして焦る。なんだかゴーストバスターズのマシュマロマンを思い出した。
どうもマシュマロは、電子レンジでの加熱に対して、とても感情的なところがあるらしい。
この倍くらい急に膨らんだので牛乳が少しこぼれた。
急いで電子レンジを止めると、マシュマロは反省したようにシューッと縮み、カップの中にちんまりと納まったので、よく混ぜてから冷蔵庫で冷やす。
さっきの膨らみっぷりは一体なんだったのだろう。
この状態で食べてもフワフワしておいしかった。
こちらはチョコレート入り。
ババロアが出来上がった
冷蔵庫で冷やし固めた牛乳入りマシュマロを食べてみると、これが見事なまでにババロアになっていた。
やるじゃないか、マシュマロ!
マシュマロと牛乳だけのプレーンなババロア。
チョコ入りの方がやっぱりおいしいかな。
プレーンな牛乳だけのものは味がちょっとさみしいが、フルーツソースを掛けたり、カットしたイチゴでも飾ってあげれば、ちょっと育ちのいい小学生の誕生会で出てくる、おかあさん特製のデザートみたいなクオリティになりそうだ。
チョコレート入りはこのままで十分おいしい。
やはりマシュマロは、そのまま食べるよりも、ひと手間加えてあげたほうが、私との相性はいいようである。
マシュマロでクッキーを作る
続いての挑戦は、マシュマロのクッキーである。色白が売りのマシュマロだが、オーブンでじっくりキツネ色になってもらうことで、大胆なイメチェンをしてもらうのだ。
材料はマシュマロのみ。ただ低温でじっくりと焼くだけ。
色白のマシュマロを日焼けサロン気分でオーブンへ。
先ほど電子レンジで温めたら、いきなりの巨大化をしたマシュマロに対して、今度は140度に予熱したオーブンで30分の長期戦に挑む。
また巨大化したら大変なので、付きっきりで見張っていたのだが、今度はいきなりの巨大化はせず、ほぼそのままの体積で、若干潰れて焼きあがった。
置き方が悪かったため、3対1に仲間割れしてしまった。
少し冷めるのを待ってから手に取ってみると、外側はしっかりと堅くなっていた。そして食べてみると、キメの細かいカリカリとした食感で香ばしく、口の中でふわっと溶けていく。
一度も 食べたことはないけれど、じゃりン子チエというマンガに出てくる、カルメラ焼きって、たぶんこんな味なんだろうなと思った。
マシュマロとは思えないカリカリ感。
飲み物に入れてみる
マシュマロの食べ方として、コーヒーやココアに浮かべるというのも、定番中の定番らしい。
みんなが愛する定番料理も試さなくてはということで、ココアにマシュマロを浮かべてみた。
ゆっくりと溶けていく様子がかわいい。
昨日までよりもだいぶ好きになってきているマシュマロが、温かいココアの中でゆっくりと溶けていく。
ココアは無糖のものを使ったのだが、溶けてフワフワになった甘いマシュマロとの相性は、さすが定番といえる味だ。これを知ってしまうと、マシュマロの浮いていないココアに寂しさを感じてしまうだろう。
それに対して、思いつきでやってみたマシュマロのお汁粉はイマイチだった。
見た目がモチとか白玉っぽいかなと思って。
お汁粉自体も溶けたマシュマロも、両方フワフワしているので、どこまでいってもフワフワしている。そしてどこを食べても甘い。
なんだかマシュマロがぬるいソフトクリームのように感じられた。
見た目はクリーミーでおいしそうなのだが。
串焼きで楽しむ
続いてはアウトドアでの定番デザートである、マシュマロの炙り焼きに挑戦。
本来は小枝に刺したマシュマロを焚火で炙って食べるものだが、家の中なので竹串に刺してガスコンロで炙ってみる。
マシュマロは燃えやすいので遠火でじっくりと焼く。
表面がうっすらと茶色くなったところで食べてみると、外側が薄皮一枚分だけサクっとしていて、その中がフワフワネットリのクリーム状になっている。
これまた今まで食べたどのマシュマロとも違う食感だ。マシュマロ七変化。
今更ながら、マシュマロの自由な変化に驚く。
これを食べて思いついたのが、みたらし団子風にすることである。
串に刺したマシュマロ三兄弟をまんべんなく炙り、急遽作ったみたらし団子のたれをかけて食べてみたのだが、これが「生みたらし団子!」と呼びたくなるインパクトを放っていた。
生みたらし団子の完成である。
生チョコ、生キャラメル、生ドーナツと、数ある生デザートに一石を投じる、生みたらし団子。
甘じょっぱいタレがフニャフニャしたマシュマロを包み込み、口の中でフワっと消えていく。巣鴨あたりで売りだしたら、一瞬だけ爆発的に売れそうな気がした。
これは焼いたネギと挟んだ、ネギマ(シュマロ)。味はともかく、酔っ払いを驚かせることはできそうだ。
イチゴと並べて刺すとかわいいという発見。
マシュマロのオムレツ
もうマシュマロとはマブダチと言えるくらい付き合いが深くなってきたところで、あえてマシュマロの懐の深さを試すという意味で、ちょっと無理のある料理に使ってみることにした。
まずはマシュマロのオムレツである。卵に小さく切ったマシュマロをたっぷりと加えて、バターを広げたフライパンで焼きあげる。
調味料は入れずに、マシュマロの底力を試す。
溶けていくオムレツの具。
火が通っていくにつれて溶けて形を失っていくマシュマロを無理矢理寄せて、どうにかオムレツの完成。火が強すぎたのか、不恰好になってしまった。オムレツというか、卵焼きである。
デザートなのか、オカズなのか。
マシュマロは溶けてしまってその食感はもうなくなっているが、全体が少しふんわりと仕上がって、優しい甘みに溢れている。お弁当に入っていたらうれしい味。
バターをたっぷりと入れてスクランブルエッグにするか、小麦粉と牛乳を加えてホットケーキにしてもよかったかな。
マシュマロを揚げてみる
もうマシュマロの事はすべてわかったといいたいところだが、あえて最後に無茶をさせていただこう。
禁断ともいえる、マシュマロのフライである。
電子レンジで温めると急激に膨らみ、140度のオーブンでじっくり焼くとクッキーとなるマシュマロが、180度の油に対して、一体どのようなリアクションをとるのだろうか。外側がカリっとして、中がトロトロを期待したいところだが。
ドキドキしながら熱した油にマシュマロを投入すると、これがびっくりするくらいのノーリアクションだった。
水分がまったくないので、油が跳ねることもない。
このままこんがり揚がるかと思いきや、そうは問屋が卸さない。
しばらくしてマシュマロが温まると、ブクブクブクと一気に膨れだして、そして淡雪のように溶けてペシャンコになり、白身だけの目玉焼きのようになったところで諦めた。
急に膨れだして焦る。
膨れたと思ったらペシャンコに。
どうもマシュマロとは、どうしても分かり合えない部分が最後まであるようだ。
しかし、これは衣を用意しなかった私が悪かったのだろう。今度はしっかりと天麩羅の衣をつけてサッと揚げてみることにした。
マシュマロの表面についたコーンスターチのためか、ツルリと逃げようとする衣を菜箸で押さえて、二つのうち一つをどうにか揚げることに成功。一つは衣が剥がれて溶けて消えてしまった。
油に入れたとたんに衣が剥がれていく。
どうにか一つだけ成功。
これは天つゆじゃないよなということで、軽く塩を振っていただいてみると、甘ったるい油と小麦粉の塊みたいな味なのだが、これがなぜか強烈にうまく感じてしまった。
さすがに油っこいので何個も食べる気はしないけれど、どこか前世あたりで食べたことがあるような懐かしい味。イメージとしては、食パンの耳を揚げて砂糖をたっぷりまぶした感じの甘さ。あれをクリーミーにした感じ。とりあえずカロリーならここにある。
なんだかんだマシュマロで遊んでいるうちに、用意した2袋を食べ切ってしまった(一部油に溶けてしまったが)。
これでもう、マシュマロに対する苦手意識はなくなったと思う。
今、普通にそのまま食べてみたら、そこそこおいしく感じられた。
なんだかすっきりした。
そしてマシュマロのチョコパイの問題
いろいろとマシュマロの可能性を模索した結果、今後マシュマロが挟まったチョコパイをもらう機会がもしあったなら、まず包丁で開いて、マシュマロ部分をガスバーナーで炙ってから、閉じて食べるといいと思います。