怒らないからこの線引いた人は手を挙げなさい
まずは今回見に行った場所を地図で見てください。きっと誰もが気になると思う。
左上から右下に向かって斜めに引かれた点線が、東京都町田市と神奈川県川崎市麻生区の境界だ。
このあたりの東京と神奈川の県境は割と複雑な場所が多いのだけど、それにしてもこの部分の入り組みようはちょっと異様である。
こういう、ぐにゃぐにゃした境目はたいてい川だったりすることが多いけど、ここは拡大しても川らしい場所が見当たらない。いったいどういうところに県境が引かれているんだろう、と思って現地に行ってみたら「これが県境!?」と言いたくなるような場所がたくさんあったのでご紹介したい。
これから向かう場所を暗示するような屋根の形
丘陵地帯を歩く
まずは上の地図で左上のあたり向かうべく、小田急多摩線の栗平駅で降りた。
ここは川崎市麻生区だけど、10分ほど歩けば県境にたどり着くはずだ。
駅前がいきなり坂だった
すごく高低差のある街並み
駅を降りて歩きはじめると、もうそこらじゅう坂だらけだった。もともと尾根と谷が連なっていた場所が切り開かれて人が住みはじめたのだろう。
尾根の上を通る広い道からはずれて細い坂をくだり、谷に降りるとそこには川が流れていた。あたり前だけど、目の前の景色が地形のセオリー通りで少しうれしい。
橋を渡って、今度は反対側の尾根に登っていくのだけど、その道が薄暗い雑木林の中を通る細くて急な坂で、これはテンションが上がった。
なんだかものすごい色の川
こんな道自分の生活圏にない
薄暗い坂を登り切ってちょっとした農村地帯を抜けると、その先にはこんな光景が広がった。
サッカーグラウンドだ
あ!Jリーグのチーム!
目の前に奇麗に整備された巨大なサッカーグラウンドが現れた。その隣には見たことのあるマークが描かれた建物が。どうやらここはJリーグの川崎フロンターレの練習場らしい。
フロンターレと言えば、そのスポンサー、というか親会社はニフティと同じ富士通である。これは記事的にいい流れだ!
ところで、そのすぐ先で道がT字路になるのだけど、実はそこが県境だった。
あの道の向こう側は東京都(マウスオンで境界が出ます)
県境の道を歩く
まあ、道路が県境になっている場所は日本中にいくらでもある。まったく珍しくも何ともないのだけど、日本の首都である東京都と巨大都市・横浜を擁する神奈川県の県境にこんな場所もある、というのは少しおもしろいと思う。
東京と神奈川の県境がこんな細い道(マウスオンで境界が出ます)
地図ではこの道の上に線が引かれているけど、本当にこんな辺鄙な道が県境なのかと疑いたくなる。そう思って地面に注意しながら歩いていたら、一定間隔で境界標が埋められているのを見つけた。
道の真ん中に点々と埋められていた
ちなみにここも尾根の上を通る道で、視界の開けた場所から見ると特に町田市側は大きく谷になっていて、そこに住宅がびっしり立ち並んでいた。
「いくよー!アリーナー!」「わー!」(いちおうマウスオンでエリアが出ます)
そしてこんな道が続く(マウスオンで境界が出ます)
たとえばこの道の左側でひったくられたら町田警察署じゃダメなのだろうか
この水は向かいの家が燃えたときも使えるのだろうか
どんどん進むと道は下り坂になり、まわりも雑木林から住宅が建ち並ぶようになって、尾根から平地に降りてきた。ここまでは道路が県境の、だいぶ地味、という点を除けばふつうの境界だったけど、本題はここからである。
地図で言うとここまで来た。
県境が動きだす
それまでのんびり道の上をなぞってきた県境が急に鋭角に曲がり、空き地を突っ切ってその向こうの駐車場と野球場の中に入って行く。どうした、何があった。
県境はおおよそこんな感じで引かれている
グラウンドの中を縦横無尽に動き回ったあと、県境はそのグラウンドの入口を横切り、管理棟の外側をなぞって通り抜ける。
もちろん、そこには川もないし土地の高低差も見られない。なんなんだこの自由すぎる動きは。
奥のグラウンドの中をあちこち動き回ってこっちに向かってくる
ひょっとしてこれが県境だろうか
その後、グラウンドと同じ一角に立つ民家を避けるように引かれた境界は、その民家とテニスコートの隙間から外に出てくる。僕の認識が正しければ、道路は東京都だけど垣根は神奈川県のはずだ。
壁が変わったところで県も変わる(マウスオンで境界が出ます)
垣根の中に境界票があったからたぶんそうだと思う
境界は道路の外側をぐるりとまわって...(マウスオンで境界が出ます)
フェンス沿いに民家の裏側にまわる(マウスオンで境界が出ます)
こんなスキマが県境だなんて(マウスオンで境界が出ます)
道路脇のフェンス沿いに延びる県境は、民家の裏手のものすごく狭いところに突っ込んでいるようだった。
そこ通す!?というのが率直な感想だ。シャビのスルーパスか。その先にメッシが走り込むのか(サッカーの話です)。
それからしばらく、県境は民家の裏側を通り、その先の路地で表に出てきた。
まったくスキマのない民家と民家の間が県境!(マウスオンで境界が出ます)
その後ぐるっとコの字にまわって...(マウスオンで境界が出ます)
先に見える公園を取りかこむような方向へ(マウスオンで境界が出ます)
こんな獣道のようなところも県境だ(マウスオンで境界が出ます)
そんな道の真ん中にも境界票がある
県境は路地に沿って進み、窪地に造られた公園を縁取るように引かれている。そこは舗装もされていない細い道、というか踏み跡のようなところで、まさか東京の端に(とは言っても住宅街だ)こんな場所があるとは思ってもいなかった。
そしてその先には、もはや境目がどこなのか分からない県境が出現した。
もうこの程度では驚かないですよね(マウスオンで境界が出ます)
ではこの雑木林の県境はどうだろう(マウスオンで境界が出ます)
ふたたび細い道が境界になったと思いきや、急に雑木林の方へ曲がってしまった。もはや境目の目印となるようなものすらない。もしこれが国境だったら密入国し放題である。
その先も路地に沿って県境が進み、そしてまた民家の間にもぐりこんで行ってしまった。
県境をたどる足跡(マウスオンで境界が出ます)
ここに線を引いた人は県境を何だと思っているんだ(マウスオンで境界が出ます)
この塀に県境を守っているという自覚はあるだろうか(マウスオンで境界が出ます)
この先も同じように住宅地の中をくねくねと抜けて行く。
人んちの裏を通ることが多く順を追えないので、特に県境らしくないところをダイジェストで紹介したい。
民家の間から出てきてまたすぐに民家の間に消える県境(マウスオンで境界が出ます)
連続した壁なのに県境で仕上げが違う!(マウスオンで境界が出ます)
県境にはどっちのエリアか分からない細長い空き地や溝がある(マウスオンで境界が出ます)
県境の溝の上に乗せられた植木鉢はどっち所属なのか(マウスオンで境界が出ます)
この曲がり具合はリアルなのか、そして奥のブロックの違いも注目(マウスオンで境界が出ます)
なぜか県境の車での行き来が不可(マウスオンで境界が出ます)
10mくらい投げれば少なくとも町田市の条例では罰せられない...?(マウスオンで境界が出ます)
とまあ、ずっとこんな感じで、とても東京都と神奈川県の県境を成しているとは思えない場所ばかりだった。
同じ一角に暮らしながらお隣さんが違う県の人、ということも多く、そのあたりどうなのか住民の方にお話を聞いてみたかったけど、このあたり一帯は割と立派な家が多く、どの家も「不審者に注意」的な看板が貼ってあったりして、見た感じから無理そうだった。
境目は萌える
というわけで、やたらぐちゃぐちゃしている東京都と神奈川県の県境を歩いてみたところ、とても楽しかった。
でも実際目の当たりにしても、川もないし道もない場所もあって、どうしてそこに県境の線が引かれたのかは結局分からなかった。
やっぱり昔の人の気まぐれなのかも知れない(いいかげんなまとめ)。