特集 2013年1月30日

真夜中のタコ拾い

夜の浜辺にはタコが落ちているんだよ。
夜の浜辺にはタコが落ちているんだよ。
海の近くに住む友人から、「タコを拾いにいかないか」という誘いを受けた。

タコって、クリとかギンナンみたいに、落ちているものなのだろうか。

その誘いに乗って指定された夜の海岸にいってみると、確かにタコは落ちていた。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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タコを拾いに夜の浜辺へ

友人曰く、タコが落ちている場所というのは、潮が引いて干潟が現れた夜の海岸らしい。集合時間は干潮の二時間前。

この海岸はとても遠浅で、砂浜に生息するイイダコという小型のタコが、海の水が引いたことに気付くのが遅れて、陸となった場所に取り残されているのだそうだ。酔っぱらって電車を乗り過ごしたサラリーマンみたいである。

そんなおっちょこちょいなタコを求めて、真冬の寒空の中、大人5人が集まった。内容のくだらなさに対して、なかなかなの出席率である。
この寒い中、私を含めて5人も集まった。
この寒い中、私を含めて5人も集まった。
このために巨大懐中電灯を用意しました。
このために巨大懐中電灯を用意しました。

タコの探し方

タコの探し方は大きく分けて2種類あるそうで、まずその辺に落ちているタコを探すという方法。

これはあまり確率は高くないのだが、酔っ払いが終電のなくなった駅のホームで寝ているように、タコが潮の引いた砂浜で寝ていたり、千鳥足で歩いているらしい。本当だろうか。

懐中電灯で照らしながら、延々とタコを捜し歩く。
懐中電灯で照らしながら、延々とタコを捜し歩く。
もう一つの方法は、タコのねぐらとなっている巻貝を探して、その中をチェックするという方法で、こっちがメインとなる。

タコといえばタコツボに入るくらいに狭い場所が好きなので、巻貝の中も当然大好き。結構な確率でタコが入っているらしい。

手ごろな巻貝を見つけたら、それはもうタコ拾いにおける「リーチ」なのだそうだ。

こういう巻貝の中にタコが入っているらしいです。
こういう巻貝の中にタコが入っているらしいです。
貝だけではなく、ビンやカンなどの人工物に入っていることもあるのだとか。
貝だけではなく、ビンやカンなどの人工物に入っていることもあるのだとか。
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なかなか落ちていないタコ

こんな原始的な方法でどれくらいタコを拾えるのかが気になるところだが、誘ってくれた友人の情報によると、過去には30匹くらい拾ったこともあるという話である。タコってそんなに落ちているものなのか。

しかし、今回は以前と砂浜の地形が変わってしまったのか、たまたま潮の流れが悪かったのか、タコを探すキーポイントである巻貝が、なかなか見当たらないらしい。
巻貝がぜんぜん見当たらない。
巻貝がぜんぜん見当たらない。
前回は巻貝がまとまって落ちているパラダイスのようなポイントがあったらしいのだが、今回は10メートルごとにポツリとある程度。ちなみに前回来たのはいつですかと聞いたら、二年以上前という答えが返ってきた。

本当にタコが落ちていた

タコを求めて大人5人で30分以上さまよい歩いたあたりで、すでに水がすっかり干上がった砂浜から、「いたよー!」という声が聞こえてきた。

ジャブジャブと駆け寄ってみると、確かに小さなタコが、引き潮で遠くに逃げていく海に向かって、千鳥足でよろよろと歩いていた。
タコが上から下へと移動した後が砂浜に残っているのがわかりますか。
タコが上から下へと移動した後が砂浜に残っているのがわかりますか。
なるほど、タコは確かに落ちていた。

落ちているとしか言いようのない姿である。
イイダコという種類の小さなタコです。動きが酔っ払いっぽい。
イイダコという種類の小さなタコです。動きが酔っ払いっぽい。
そしてもう少し先でも、別のタコが発見されたのだが、こちらもやはり貝の中ではなく、裸で砂浜にゴロリだ。

どうも貝が見当たらなくて困っているのは我々だけではなく、タコも適当な家が見当たらないので、その辺で寝てしまっているらしい。

どうにも住宅事情の悪い海岸だ。
ライトに照らされて、あわてて逃げるタコ。本当に地球上の生物なのだろうかと真剣に考えてしまう謎のフォルム。
ライトに照らされて、あわてて逃げるタコ。本当に地球上の生物なのだろうかと真剣に考えてしまう謎のフォルム。

水中で寝ているタコを発見

三匹目に発見されたタコは、まだ水がギリギリ残っている場所で、星を見ながら露天風呂にでも浸かるように、のんびりと丸まっていた。

あと数分もすればここも海水が引いてしまうので、また酔っ払いに例えると、風呂場で寝てしまって、気が付いたらお湯が抜けてなくなっているというパターンなのだろう。風邪ひくよ。
肩まで水に浸かってぐっすりお休み中。
肩まで水に浸かってぐっすりお休み中。
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貝殻をひっくり返しまくるが見つからない

とりあえず、どうにか海岸に落ちているタコを見るということには成功したのだが、やはり私としては、貝殻に隠れているタコをぜひ見てみたい。貝殻に隠れるといえばタコか武田久美子だろう。

延々と砂浜を歩き回り、タコが入っているっぽい貝を見つけてはひっくり返す。それを延々と繰り返す。しかしなかなかタコは入っていない。

なんだか自動販売機のおつりが出るところに指を突っ込んで小銭を探している悲しい月末のような気分になる。
窓もあって住みやすそうなワンルームなのだが、いない。
窓もあって住みやすそうなワンルームなのだが、いない。
時には膝まで水に浸かりながら、時にはすっかり潮の引いた場所を歩きながら、タコを求めて海岸を右往左往

いくら探しても今日に限って空き家ばかりなのだが、どうしても貝に入ったタコが見たいので諦めない。
よさそうな巻貝かと思ったらウミウシというトラップ。
よさそうな巻貝かと思ったらウミウシというトラップ。
こういう地味な狩猟行為自体はとても好きなので、見つけるまで何時間でもやっていたいところだが、潮がそろそろ満ちてきてしまう。

そして大きな懐中電灯とカメラを首にぶら下げて前かがみで歩き続けているので、首のコリが半端なく辛い。気力はあるだが体力がない。

携帯のゲームでこのタコ拾いが出ないだろうか。布団の中でぬくぬくと探していたい。

ようやく貝に入ったタコを発見!

尻尾に猛毒を持つアカエイを踏みそうになったりしているうちに、そろそろ干潮の時間を迎え、もうタイムアップとなりかけたときに、その貝は落ちていた。

自然との同化具合、そして貝の中から伝わってくる気配からして、これはという貝殻の発見である。巧妙にカモフラージュされたテントのような姿が逆に怪しい。

これこそ「リーチ」というやつではないだろうか。
これにいなければ、もう諦めよう。
これにいなければ、もう諦めよう。
ドキドキしながら派手な色のゴム手袋をはめた手で貝を掴むと、ずっしり重い。いやだがまだ安心はできない。砂が詰まっているだけの可能性もある。今までそれで何度もがっかりしてきたのだ。

花札、トランプ、麻雀、そして貝。裏返して内容を確認するという瞬間はなんでも楽しい。

コイコイと念じながらひっくり返すと、貝の中に吸盤らしきブツブツが詰まっているのが見えた。
これはもしや…。
これはもしや…。
タコだー!
タコが本当に貝に入っていた!
タコが本当に貝に入っていた!
ついつい真夜中の砂浜で、「タコだー!」とみんなに聞こえるように大声を上げてしまった。しかし、そのくらいうれしかったのだ。

イイダコは今までに何回も「釣り」という形で捕まえてはいるが、このように貝の中からというのははじめてである。

捕まえ方が違うだけで、同じ生き物なのにまったく違った新鮮な喜びに感じられる。

もうちょっと人生に余裕があれば、この貝ごと持って帰って、水槽でこのタコを飼いたいくらいに愛しい。まあ食べるんだけど。
吸盤の力が強くて、貝の中から取り出すのが大変だった。
吸盤の力が強くて、貝の中から取り出すのが大変だった。
夜の潮が引いた砂浜で、貝の中に隠れているタコを拾うというミッション、無事成功。これで私も栄光のタコ拾い経験者となった訳だ。

どうでもいいといえばどうでもいい経験なのだが、こういうどうでもいい経験と勲章こそ、今後も増やしていきたいと思う。

新月の真っ暗な海岸で、懐中電灯の明かりだけを頼りにさ迷い歩き、無心になってタコを探すというのは、キノコ狩りや山菜採りに通じる良さがあり、個人的にはとても気に入ったのだが、大人5人が二時間がんばって小さなタコ4匹という効率の悪さから、次回の開催はしばらくなさそうだ。
捕まえた火星人はおいしくいただきました。
捕まえた火星人はおいしくいただきました。
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