特集 2013年1月19日

ネオ芸道旗揚げ! 消しゴム香道

消しゴムに見えるが、お香なのだ。(心の目で見よ)
消しゴムに見えるが、お香なのだ。(心の目で見よ)
お茶とかお華とか、そういう雅な芸道に憧れている。
あの落ち着いた雰囲気や、背筋が伸びるようなピリッとした緊張感が気持ちよさそうだなあと昔から思っていたのだ。
ただ、ぼちぼちな年齢になってしまった今からそういう古典的な世界に足を踏み込むのは勇気が要る。着物やら道具やらでお金もかかりそうだ。
ならば、いっそまったく新しい芸道を自分で興せば良いのではないか。新芸の立ち上げである。旗を揚げろ、ヨーホー!
1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

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> 個人サイト イロブン Twitter:tech_k

ネオ芸道の夜明け

芸アコガレの中でも特にやってみたかったのが、香炉で香木を焚き、その香りを鑑賞する『香道』である。
聞くところによると、香道の中には複数の香木を焚いてそれが何の香りかを当て合う、ブラインドテスト的な『組香』というゲームがあるらしい。お茶やお華にはないバトル性が、なんとも楽しそうではないか。燃えそうではないか。

香道が成立した室町時代にもしコロコロコミックがあったら、間違いなく『お香バトラー・シゲザネ』的な漫画が連載されていたと思う。主人公が変なポーズを決めながらジャンプしてお香の名前を叫ぶ、見開きページの決めカットが目に浮かぶようだ。

ただ、香木というのがやたらと希少で高価なものらしい。
お香の通販サイトで見つけてしまった『香木6種類セット(各0.5グラム)12,600 円』のせいで、バトル前から心が折れそうである。

僕のネオ芸道は、そんな敷居の高いものではいけない。誰でも参加できるようなローコストかつハイパフォーマンスな香り素材を使いたい。
安い。文房具屋ですぐ買える。香りに飽きたら消しゴムとして使える。
安い。文房具屋ですぐ買える。香りに飽きたら消しゴムとして使える。
そこで用意したのが、いわゆる香り付き消しゴムだ。
これは安い。香木が1グラムあたり4,200円するのに対して、こちらは1つ105円(重量19グラム)なので、グラム単価は5円強。これは安い。
お香の専門店を探さなくても、文房具屋でいくらでも入手可能という強みもある。

よし、決まった。『消しゴム香道 きだて流』旗揚げだ。

家元、準備する

ひとまずTwitterとFacebookで消しゴム香道の旗揚げを宣言し参加者を募ったところ、年末のクリスマス・イブイブという日程にもかかわらず10人ほど新流派への合流を希望する声が上がった。
正直なところ、誰も来てくれなかったらと心配していたのだ。家元、うれしい。
会場も家元が自ら押さえてきた。都内の公共施設だが、なかなかに趣のある和室である。
消しゴム香道 きだて流初代家元ざんす。
消しゴム香道 きだて流初代家元ざんす。
さて、門下が来る前に本日のお香の準備をせねばならぬ。家元は忙しい。
家元が都内近郊の文房具屋で買い求めてきた本日のお香の数々。
家元が都内近郊の文房具屋で買い求めてきた本日のお香の数々。
ひとまずお香は40個ちょい、準備してみた。
いい香りのもの、よくわからない香りのもの、新しいものから懐かしいレアものまで、様々だ。

今回はこれをタイプ別に「い・ろ・は・に・ほ・へ」の6グループに分け、それぞれを外見が分からないよう封筒に入れた。
門下の皆さんには、香りだけで「この消しゴムは何の香りの消しゴムか?」を当てる組香バトルに挑戦してもらうのだ。
ただいま袋詰め中。
ただいま袋詰め中。
皆さんにはこの袋に鼻を突っ込んでもらうぞ。(文字通り)
皆さんにはこの袋に鼻を突っ込んでもらうぞ。(文字通り)

MP(雅っぽさ)をアップさせよう

ここで、消しゴム香道のノウハウをひとつ。
消しゴムは、冷えていると香りが立ちにくい。香木なら香炉で焚けばいいのだろうが、消しゴムはそういうわけにもいかない。
そこで少しでも消しゴムを温めておこうということで、準備用のマットの下に使い捨てのカイロをべたべた貼ってみた。
こういう細やかな心配りが、いかにも「芸道やってます」という雅っぽい雰囲気をアップさせるので、できれば今後も意識的に盛り込んでいきたい。
家元は腰痛持ちなので、同じものが腰から背中にかけてびっしり貼られてます。
家元は腰痛持ちなので、同じものが腰から背中にかけてびっしり貼られてます。
雅っぽさをアップさせるためにもうひとつ。
なんと門下の中に書家の方がおられるということで、お願いして看板を書いてもらうことにした。
ただし、看板用の立派な板など準備する手間と予算もないので、会場に備え付けのホワイトボードにマーカーでぐりぐりと。
さすが、筆運びによどみなし。
さすが、筆運びによどみなし。
ホワイトボードにマーカーでも、ちゃんとした人が書けばここまで格好良くなる。さらに、道場破りが来ても看板より持って帰られにくい、というメリットも。
ホワイトボードにマーカーでも、ちゃんとした人が書けばここまで格好良くなる。さらに、道場破りが来ても看板より持って帰られにくい、というメリットも。
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いざ、消しゴム。

開始時間の前にはぽつぽつと門下の皆さんも集まってきたので、まず最初に記録用紙を配ることにした。
きだて流門下の皆さん。いずれは名取や師範になるのですよ。
きだて流門下の皆さん。いずれは名取や師範になるのですよ。
記録用紙はグループ別に分かれて、出題されている消しゴムのリストになっている。
お香の入った封筒には1から順に番号が振ってあるので、クンクンと香りを聞いたあとに、リストに「この消しゴムはこれだ」と思った番号を書き込んでもらうのだ。

ちなみに、香道の世界では香りを「嗅ぐ」というのは不粋な表現とされている。香りは「聞く」ものなのだ。ということで消しゴム香道もそれにならって香りを「聞く」と表現する。
記入例はこんな感じ。番号+感想や決め手となった要素も書き込んでもらった。
記入例はこんな感じ。番号+感想や決め手となった要素も書き込んでもらった。
ということで用紙の使い方を説明した後は、さっそくバトル開始だ。プレイ香ー(こうー)!
一心不乱に香りを聞く門下諸君。
一心不乱に香りを聞く門下諸君。
お香は一組しかないので、順番に回しながら聞いてます。
お香は一組しかないので、順番に回しながら聞いてます。
Group い
!
まずは小手調べの『Group い』である。
区別が付きやすいようにフルーツ系の香りばかりをまとめてみた。

かおりちゃん【パイナップルの香り】 ヒノデワシ
かおりちゃん【ももの香り】 ヒノデワシ
かおりちゃん【メロンの香り】 ヒノデワシ
かおりちゃん【ブドウの香り】 ヒノデワシ
かおりちゃん【いちごの香り】 ヒノデワシ
かおりちゃん【バナナの香り】 ヒノデワシ
かおりちゃん【チェリーの香り】 ヒノデワシ
かおりちゃん【リンゴの香り】 ヒノデワシ
かおりちゃん【オレンジの香り】 ヒノデワシ
かおりちゃん【ラ・フランスの香り】 ヒノデワシ


全て、ヒノデワシというメーカーの「かおりちゃんシリーズ」で統一してある。
このヒノデワシというメーカーは古くから香り付き消しゴムを作り続けている、まさに香り消しゴムのリーディングカンパニーなのだ。

さすが老舗だけあって、香りが強く再現性も高い。家元のお薦めは、本物の香りに非常に近いと感じた『メロン』と『いちご』だ。

あと、ラ・フランスは実物の香りの記憶がないので再現性ついてはさておくが、昔懐かしのプラモ入りガム『ビッグワンガム』の香りに非常に似ていると感じた。80年代のザ・駄菓子ガム香だ。
答え合わせ中。
答え合わせ中。
さて、門下の皆さんが一通り聞き終えたら、答え合わせをすることにした。
以下、記録用紙からの抜粋である。
主に自分の香りの記憶と、お香側の再現性に頼る戦法。
主に自分の香りの記憶と、お香側の再現性に頼る戦法。
なんと産地指定。かと思えばバナナの欄には「昔、理科室で合成した香り」
なんと産地指定。かと思えばバナナの欄には「昔、理科室で合成した香り」
やはりまだ鼻が慣れていないのか、期待していたよりは正解率低め。
最高8点、平均すると6点強というところだった。
やはり再現性が高く、かつ本物の香りの記憶があるものは正解しやすいようだ。逆に、理科室産という意見のあったケミカルなバナナと、やはり記憶にないラ・フランスは外す人が多かった。
Group ろ
!
続いて『Group ろ』は、おやつ系で揃えてみた。

クッキークリーム【ミルクの香り】 サクラクレパス
ICE消しゴム【ミントの香り】 SEED
アポロチョコ消しゴム【アポロチョコの香り】 サカモト
チョコレート消しゴム【チョコの香り】 サカモト
にっぽんのおやつ【くろみつきなこの香り】 ヒノデワシ
ラムレーズン【グレープの香り】 サクラクレパス
プリンけしごむ【プリンの香り】 サカモト

二組目にしてもうトリッキーなアイテムが紛れ込み始めた。この辺りをどう聞き分けていくかがポイントとなるだろう。
みたまんまのプリン。ちゃんとカラメルっぽい香りもする。
みたまんまのプリン。ちゃんとカラメルっぽい香りもする。
なんと半々タイプ。チョコ消しゴムとイチゴ消しゴムを合わせてアポロチョコの香りに。
なんと半々タイプ。チョコ消しゴムとイチゴ消しゴムを合わせてアポロチョコの香りに。
ヒノデワシと並んで香り消しゴムに強い文具メーカー、サカモトがこのグループから登場だ。
サカモトの消しゴムは香りのレベルが高いのに加えて、プリンやチョコなど特殊な形状をしているものが多い。封筒に入っているとはいえ、手に持てばすぐにバレてしまうので、組香としてはある意味ボーナスステージみたいなものか。

ヒノデワシのくろみつきなこは練りケシ。くろみつの香りにくわえて、きなこの粉っぽいような、埃っぽいような香りも入ってる。強く吸い込むと思わずむせてしまうほどの再現性。これさえあれば信玄餅いらずだろう。
ミントはトイレの香り。
ミントはトイレの香り。
欄外より。身もフタもない。
欄外より。身もフタもない。
サカモトのチョコレートとアポロチョコの聞き分けがポイントだったようだが、アポロチョコ側からうまくイチゴの香りを探せた人も多く、およそ正解率は高かった。最高は全問正解の7点、平均しても5点と上々。
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Group は
!
『Group は』は飲み物ばかりを集めてみた。
このグループでは、そろそろ香りを聞くことに慣れてきたであろう門下のために、少し高度なトラップをしかけてみた。
セットリストは以下の通り。

かおりちゃん【ミルクティーの香り】 ヒノデワシ
ジュース消しゴム【メロンシェイクの香り】 クラックス
紙パック消しゴム紅茶【紅茶の香り】 サカモト
紙パック消しゴム牛乳【ミルクの香り】 サカモト
ジュース消しゴム【クリームソーダの香り】 クラックス
世界初か、匂い方の説明つき消しゴム!
世界初か、匂い方の説明つき消しゴム!
前グループのアポロチョコと同様の半々型だが、こちらはなんと「メロン(緑色)を3秒におって、バニラ(白色)をすぐにおうと、メロンシェイクのかおりに!?」という香りの聞き方と聞く秒数の指示までされている。恐ろしいまでの余計なお世話だ感。
※ちなみに今回の組香は袋詰めのブラインドテストなので、申し訳ないが袋ごとまとめて聞いていただくことにした。

で、なにがトラップかというと、この強いバニラの香りが問題なのだ。
実は香り消しゴム業界において『ミルク』や『クリーム』系統はなぜか総じてキツめなバニラの香りをつけられてしまう傾向があるのだ。端的に言えば、白い香り付き消しゴムはだいたいバニラだ。

そこを踏まえてもう一度リストを確認してもらうと、なんと5つ中4つにバニラ(ミルク/クリーム)要素が含まれているではないか。いや、「ではないか」もなにも問題を作ったのは僕だが。
つまり、強いバニラの中に紛れた別系統の香りをいかに聞き分けるか…がこのグループのテーマになっている。
ついでに『ミルクティーの香り消しゴム』と『紅茶の香り消しゴム』の紅茶対決も密かな見所だ。
見事、クリームに潜むメロンを発見。
見事、クリームに潜むメロンを発見。
この方は香りの強弱を距離的にとらえているっぽい。なるほど、かなり遠そうだ。
この方は香りの強弱を距離的にとらえているっぽい。なるほど、かなり遠そうだ。
今回はかなり荒れた。
まさかここで出るまいと思った全問正解が3名も出たが、その裏で全問ハズレの方もいた。ちなみに僕が事前にブラインドでやってみたところ、全問ハズレだった。家元としてはお恥ずかしい限りである。
平均点は2点と3点の間ぐらい。やはり難しかったか。

そろそろ出る鼻疲れ

この時点で開始から1時間半。
そろそろ門下の皆さんから鼻の疲れを訴える声が聞こえだした。
香りに疲れ、無臭空間を求めて鼻をふさぐ。
香りに疲れ、無臭空間を求めて鼻をふさぐ。
一度にこれだけの香りを聞くというのは普通の生活ではあまりない体験だ。慣れない行為で、とにかく鼻の奥がつーんと痛くなってくる。
さらに、だいたいが甘ったるい香り傾向なので、それが苦手な人は気分を悪くするということもあるようだ。

あと、意外だったのが、目の奥から頭の前の方にかけて軽い頭痛を訴える人が複数いたことだ。(少し休憩したらすぐ回復した)
その場では冗談半分で「脳のその辺で嗅覚を処理してるんじゃないの?働かせすぎで知恵熱が出たんだよ」と笑っていたのだが、帰宅してからWikipediaなどを見ると、本当に脳のその辺り(前頭眼窩野と言うらしい)で嗅覚を処理しているとあった。マジか。
自分の匂いで鼻をリセットする人たち。
自分の匂いで鼻をリセットする人たち。
インスタントコーヒーの粉も効果的だった。
インスタントコーヒーの粉も効果的だった。
プロの調香士の方は、嗅覚をリセットするのに自分の匂いを嗅ぐらしい。
つまり、日頃から一番触れている匂いを改めて嗅ぐことで、普段の嗅覚に戻せるらしい。
あと、香水屋で多用されているのがコーヒーの香り。これも甘い香りで疲労した鼻には効果的で、確かにかなりリフレッシュできた。

しかし、会場内で一番「リフレッシュ率が高い」と評判が高かったのは、家元が近所のコンビニでおやつ用に購入しておいた『醤油せんべい』の香りだった。(うっかり写真を撮るのを忘れた)
甘いもの続きだと、しょっぱいものが欲しくなるのが真理なのだ。
Group に
!
家元、抜かりなし。
そろそろ門下の皆さんが「甘いものに飽きた」と言い出すことを見越し、満を持して『Group に』投入だ。
このグループは、甘くないおやつ系である。

おやつマーケットバター【バターの香り】 サカモト
うまい棒消しゴム【とんかつソースの香り】 サカモト
うまい棒消しゴム【コーンポタージュの香り】 サカモト
人気の!カレー消しゴム【カレーの香り】 レモン
まとまるくん【コーンポタージュの香り】 ヒノデワシ
おやつマーケットクリームチーズ【チーズの香り】 サカモト


こんなものがあるのか!と驚かれるかもしれないが、実は甘くない系、昔からそこそこ発売されている。カレーの香り消しゴムなど、昭和50年代には複数メーカーから発売されていたぐらいだ。
クリームチーズとバターは、本物同様にアルミ包装紙でくるんである。
クリームチーズとバターは、本物同様にアルミ包装紙でくるんである。
コーンポタージュの違いを聞き分けられるか。
コーンポタージュの違いを聞き分けられるか。
今回のポイントは、同じコーンポタージュの差をどれだけ感じ取れるか、だ。
うまい棒コーンポタージュ味の方は、ちゃんとうまい棒の「お馴染みのコーンパフの匂い」がする衝撃のお香。ぜひこの驚異的なうまい棒テイストの再現性を感じ取って欲しい。
確実にうまい棒感を真芯でとらえている。食べられる!という賛辞まで。
確実にうまい棒感を真芯でとらえている。食べられる!という賛辞まで。
意外な伏兵、チーズとバター。
意外な伏兵、チーズとバター。
素晴らしい。やはりうまい棒のコーンポタージュは認識率が高く、正解率は八割を超えた。『コーンポタージュ』と『うまい棒コーンポタージュ味』の匂いは別物なのだ。
しかしといっては何だが、『バターの香り』と『チーズの香り』の差が分からないという意見が続出。
家元は微妙なチーズっぽい酸味香を感じ取れたので認識できたが、そこに気付かないと難しかったかも知れない。
全問正解3名、平均点は4点だった。
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Group ほ
!
『Group ほ』は飲み物シリーズ第2弾。
毎度で恐縮だが、またも家元の意地悪が含まれている。

コカコーラねりけし【コーラの香り】 サカモト
スーパーねりけし【はちみつレモンの香り】 SEED
コカコーラゼロねりけし【コーラの香り】 サカモト
かおりちゃん【トマトジュースの香り】 ヒノデワシ
かおりちゃん【コーラの香り】 ヒノデワシ
かおりちゃん【キャロットジュースの香り】 ヒノデワシ

明確な悪意によって同グループ入り。
明確な悪意によって同グループ入り。
ご覧の通り、セットリストの半分がコーラだ。しかも、そのうちの2個は同メーカーの、しかも同じく練り消しである。違いは『コカ・コーラ』か『コカ・コーラ・ゼロ』かの差だけ。イントロクイズで言えば超ウルトラエクセレントスーパーゴールデンイントロドン、みたいな話である。
リストを見た時点で頭を抱える皆さん。
リストを見た時点で頭を抱える皆さん。
で、実はネタばらしをすると、『コカ・コーラ』と『コカ・コーラ・ゼロ』は同じ香料を使った、単なるパッケージ違いの同一商品なのだ。
申し訳ない。これでは問題というよりは悪質な嫌がらせである。
家元も文房具屋でこれらを見つけた時点では「えっ、違いがあるのか。聞き分けられたら面白いだろうな」と期待含みで購入したのだが、改めてメーカーさんに問い合わせたところ、上記のような回答を得たのであった。

「まあ買っちゃったしな。問題に使わないと勿体ないから入れてしまえ」という家元の貧乏根性が問題と言えば問題、という話だろう。

お詫びのつもりで、知り合いの古文具屋でもらってきたヒノデワシの廃番レアもの、かおりちゃん『トマトジュースの香り』と『キャロットジュースの香り』を入れておいた。
こちらはメーカーの人も「え、そんなの残ってたんですか。それはすごいレアです」と驚く値打ち物である。
本当にごめんなさい。一緒です。
本当にごめんなさい。一緒です。
せっかくのレアものも「ケチャップ」「土の中」扱いだ。正解だけど。
せっかくのレアものも「ケチャップ」「土の中」扱いだ。正解だけど。
全問正解は3名。コーラ練り消しを入れ違えて間違えた人も含めると5名。かなり優秀と言えよう。平均点は4点。
Group へ
!
香りもモノから概念へ。
香りもモノから概念へ。
友人が世田谷のボロ市で見つけてプレゼントしてくれた、懐かしのブック型消しゴムだ。おそらく15~20年前のもの。
それはいいのだが、香りが『銀河系のかおり』と『アツアツのかおり』である。

まさかの、概念。
香りと言えば物質からするものとばかり思い込んでいた家元、目から鱗が落ちる思いだ。

ちなみに家元が感じたところ、銀河系はメロンをかなり薄めたような香り。アツアツの香りはロッテのフルーツガムのような、かなり甘い香りだった。
「アツアツは甘い」と覚えておけば、今後なにかの役に立つだろう。
やはりメロンっぽい。それにしても「銀河はメロン」は言い過ぎだろう。
やはりメロンっぽい。それにしても「銀河はメロン」は言い過ぎだろう。
「アツアツは甘い」とイメージした上での消去法。
「アツアツは甘い」とイメージした上での消去法。
結果はこれまで最高の全問正解6名。平均点も5点と高め。
さすが生活の香りだけあって、嗅いだ記憶のあるものが多かったようだ。

香り以外の楽しみ方

さて、全グループを終了したところで、消しゴム香道をより楽しむためのポイントも記しておきたい。
それが「人が香りを聞いている姿の面白さ」である。

特に香りが薄い消しゴムの香りを聞き分けようとするとき、一心不乱で袋に鼻を突っ込んでクンクンしている姿は、老若男女の別なく、だいたい面白い。
たとえばこんな感じである。
聞く。
聞く。
聞く。
聞く。
聞く。
聞く。
ドン引きされても聞く。
ドン引きされても聞く。
聞く。
聞く。
答え合わせのため、両手にひとつずつ掴んでのダブル聞き。
答え合わせのため、両手にひとつずつ掴んでのダブル聞き。
最終的にはラッパ飲みのような姿勢で袋を傾け、少しでも鼻の奥に香りを送り込もうと努力しているのが分かる。
ただ、彼の姿だけを笑ってはならない。消しゴム香道にチャレンジする限り、多かれ少なかれ誰もがだいたい同じような姿勢になってしまうのだ。

逆に言うと、そこまで集中し没頭して遊べる、という証拠でもある。
いけるぞ、消しゴム香道。これで芸事の歴史に名前が残せるかも知れない。まずは人間国宝あたりをめざして、もう少し頑張ってみたいと思う。

誰でも手軽に、レッツ香(こう)

2ページ目で試合開始という意味をこめて「プレイ香(こー)」というかけ声をかけてみたが、いまいちだったので、もうひとつ考えてみた。やっぱりいまいちだった。

まあそれぐらいのユルさで楽しめる芸道である、ということさえ伝わればいいので、皆さんもぜひ試してください。小学校の近くにある文房具屋さんで探すと、いろいろな香り消しゴムが見つかるはず。
会場の施設にあった顔ハメ。家元らしいカットのつもりで撮影した。
会場の施設にあった顔ハメ。家元らしいカットのつもりで撮影した。
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