特集 2012年12月24日

楽しいスナックブスの店

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自転車で家に帰っているときにあるお店を見つけた。あ、あれは、ブスの店だ!
1983年三重県生まれ、大阪在住の司法書士。
手土産を持参する際は消費期限当日の赤福で受け取る側に過度のプレッシャーを与える。

前の記事:ニョッキで作る血のスープ

> 個人サイト owariyoshiaki.com

有名なブスの店

このブスの店、面白画像としていろんなところで紹介されており、結構有名な感じなのだがまさか家の近くにあるとは思わなかった。

画像では見たことがあったものの実際に見るとインパクトが凄い。通り過ぎそうになって「あ、ブスの店。えっ、ブスっ!?」となって引き返してきた。
圧倒的にブスの店。
圧倒的にブスの店。
夜の街に燦々と輝くブスの店。なにを思ってこの名前を付けたのか。本当にブスがいるのだろうか。店構えだけで疑問が尽きない。行ってみたい、が、怖い…。

スナックって、なに

ブスの店、これはなんとも行ってみたい。しかし、スナックというものに行ったことが無いので入りづらい。スナックって何するんだ、カラオケか、ママとデュエットか。

スナックって常連さん、身内ばっかりってイメージを持っているのだが、一見でふらっと入って大丈夫なのか。
助っ人、当サイトライターの小堀さん。うっかり顔の写真しかなくてすみません。
助っ人、当サイトライターの小堀さん。うっかり顔の写真しかなくてすみません。
スナック自体に不安を覚えているのに、更に店はブスである。超えるべきハードルが二段構え。初めてするスキーがジャンプ台からのジャンプ位の状況。

そんな葛藤を抱いていた際、当サイトライターの小堀さんに「ブスの店っていうスナックを見つけたんですが、行きませんか?」と声をかけると「いいですよ、行きましょう」と二つ返事で快諾。すごい、なに、頼れる。

やった、心強い味方が加わった。これなら何とかブスの店に行けそうだ。

誰がブス専や

即決であった小堀さんも聞くとスナックは初体験らしい。それなのによく即決しましたね…。度胸ある。

僕「初スナックって、なんだか緊張しますね。しかもブスの店。ブスな人いるんですかね~」

小堀さん「えっ、いないんですか!?」

えっ、何そのリアクション。

僕「いや、分からないですが、何か自虐ネタみたいな感じで実際そうでもない。とかなんじゃないですかね」

小堀さん「てっきり僕はそういう趣味嗜好の方が行くお店かと思ってました」

なんだ、そういうお店だったとしたら僕の性癖を公開しているだけではないか。
ブスの店に向かう前に軽く御飯を食べていく。
ブスの店に向かう前に軽く御飯を食べていく。
僕「えっ、だったらなんで行こうと思ったんですか?」

小堀さん「好奇心で」

お互い好奇心で向かうブスの店だが、方やブスの店というおもしろ店名を付けた理由を知りたい男に、ブス専のお店ってどんなんだろう。という事に興味を持つ男。

でも、確かに本当にそういう趣味の方が集まる店の可能性も無くも無いのか…。もしそういうお店であった場合、なんとも記事にしづらいので次のページから馬の耳に念仏を唱えてみる。というネタに変わっているかもしれません。

突入

ここでようやっとブスの店に再来。
中が全く見えないのも不安と期待をかき立てる
中が全く見えないのも不安と期待をかき立てる
小堀さん「うわー、本当にブスの店って書いてますねー。これは凄い」

僕「でしょ。中見えないからちょっと入りづらいですね。いやぁ、勇気いるわ」
当方ブスぞろいから感じる力強さ。
当方ブスぞろいから感じる力強さ。
よく見ると求人看板らしきものはスタッフではなく客の募集。このユーモアからするとブスというのも冗談っぽい感じがする。が、それでも当方ブスぞろいの文言の破壊力は凄い。なんだその自信は。

小堀さん「スナックってどのくらいの料金なんですかね、あまり手持ちが」

僕「大丈夫です。僕も料金の相場分からなかったので多めに持ってきました。あ、しかもここに低料金優遇すって書いてますよ」

小堀さん「でも、取材依頼とかしてるから大丈夫なんでしょうか」

僕「いや、全くなにもお話してません。そっちの方が面白いかなと思って」

小堀さん「えぇー。ダメって言われたらどうするんですか」

僕「なんか、別の、馬の耳に念仏とかいう記事に差し替えを…。まぁ、頑張ります」

ブスの店内部報告

ドアを開けるとカウンター八席くらいの小ぢんまりとした店内でカウンターの中に女性がいる。その後ろにはお酒のボトルがいっぱい並んでいるという、まさに想像通りのThe・スナックという感じ。
コースターも手作りぶすのみせ
コースターも手作りぶすのみせ
平日の夜だというのにすでに店内はお客さんでいっぱい。入れないかもしれないと思ったが、丁度お客さんが席を立つタイミングだったので何とか座ることが出来た。予想以上に繁盛しているぞ、ブスの店。

ブスの店の由来

さてスナックデビューを果たしたけれども、一体何をしていれば良いのかと思っていたら、ママが話しかけてきた。

ママ「ご来店ありがとうございます、数あるお店の中からどうしてうちを選んでくれはったんですか?」

おぉ、どうやって聞き出そうと思っていたところからズバッと切りだしてくれた。ありがたい。
つまみがさっぱりとしてて美味い。
つまみがさっぱりとしてて美味い。
僕「看板が面白いなーと思いまして。ブスの店って、ちょっと、凄いですよね…」

ママ「アレね、昔は美人の店って看板やったんですよ。美人の店、杏って。店始めたころ、二十歳位の頃はそら美人やったんですよ。でも、お客さんが『何が美人の店や、ブスの店や、ブスの店!』って言うから、じゃあそうしたろ思ってブスの店にして」

すごい、ブスの店の由来はほぼ勢いだ。

僕「ええっ、そんな理由!?大事な店名をそれで変えちゃって客足落ちたりしなかったんですか!?」

ママ「それでもたくさんのお客様にいらっしゃっていただいて、バブルのころは、ずっと満席で隣の喫茶店で席空くまで待ってて貰ったりしてたのよ。最近でも面白がって福山雅治のラジオとかでも紹介されて!福山雅治くんのかな~思って服脱いで待ってたのにスタッフさんしかこーへんかったわ」

ブスの店なのに凄く人気のお店なんだ…。

ブスの店のママお披露目

ママ「でもね、ブスの店なんて名前に出来るのは自分に自信があるからなのよ。ほーら、私、綺麗でしょ~」

そう言ってママはニッコリ笑う。綺麗かどうかについてはコメントを差し控えるが、ママは凄く可愛いのだ。
この満面の笑みよ。
この満面の笑みよ。
中はどんな風なのか、いきなり入って大丈夫なのか、取材させてくれるかな…。などと不安でいっぱいの状態で初スナックのドアを開けてまず目に飛び込んで来たのがママの笑顔。よくわからないけど、あ、大丈夫だ。って思った。

ずーっとニコニコ笑ってパタパタ動いていて凄く愛嬌があってかわいらしい。
いえーい!
いえーい!
そして話も面白い。日本人の抱く大阪のおばちゃんというものを具現化したかの様な存在。期待を裏切らない生の大阪がここにある。

店に入った時点で身内

入る前の心配が何だったのかというくらいに楽しく時間が過ぎていく。

実は、小堀さんとは1、2回くらいしか会ったことがなかったのでそんなに親しくない。ブスの店前のお店ではちょくちょく会話が途切れたりしていたのだがママを挟むことによって会話が流れる、弾む。
堺正章のさらば恋人を歌う小堀さん。選曲が渋い。
堺正章のさらば恋人を歌う小堀さん。選曲が渋い。
ママが話を振って、引き出して、なんならママがオチまで付けてくれる。話が上手いとかいうレベルではなく、これはもう芸だ。ママ単体で話が上手いのではなく、人と人の話を盛り上げる芸。コミュニケーション芸である。
小堀さんの歌でみんな大盛り上がり(そういう曲じゃない)
小堀さんの歌でみんな大盛り上がり(そういう曲じゃない)
その結果がこの盛り上がり。来たグループごとではなく、店単位で大盛り上がり。写真では切れてしまっているが何故かガッツポーズをしている人もいた。別れの歌だぞ。

大体いつもこういう風にお客さん同士も仲良くなって行くらしい。「ウチは良いお客さんが多くて」とママは言う。もちろん、ママの人柄で良い客を集めているという事もあるんだろうが、店名の効果もあるんじゃないだろうか。
ママとのデュエット達成。
ママとのデュエット達成。
ブスの店という店に入ろうとする時点でシャレの分かる人だろう。その時点でその人とは仲良くなれそうな気がする。スナックって身内ばかりなのでは…と思っていたが、店名に興味持った、お店に入ってきた時点でもう身内なのではないか。

スナック楽しい

ほう、ほほう、これがスナックか。女性とお話をしに行く(下心あり)みたいなイメージであったが、実際はママという潤滑油で一緒に行った人とも、知らない人ともスムーズに話せる、楽しめる大人の社交場という感じ。

小堀さんと二人であらば絶対にしなかったであろう切り口からの話題が生まれたり、非常に新鮮な体験だ。
スタッフの方に「ブスの店で働くのに抵抗なかったんですか?当方ブスぞろいとか言ってるし」というと「あっ、そっか。気にしたことなかったわ」と言っていた。
スタッフの方に「ブスの店で働くのに抵抗なかったんですか?当方ブスぞろいとか言ってるし」というと「あっ、そっか。気にしたことなかったわ」と言っていた。
もちろんママの豊富な人生経験で話を聞いてもらう事も可能、常連さんが「10年通ったら1つは悩み解決してくれる」といっていたら、ママは「そんなことないわー、もっと解決してるでしょ。20年に1つよ」と返していた。

スナック界のタモリ

そんな何十年も通っているお客さんをたくさん抱えているブスの店スナック杏、今年で開店四十数年にもなるらしい。なんとその間、自称病弱なママは正月以外休んだことがないという。
笑顔力
笑顔力
来ようと思ってくれたお客さんにはいつでも楽しんでって貰いたいからといって四十数年旅行などにも行かずお店に立ち続けて、ゲストとトークを繰り広げるママはまるでスナック界のタモリである。

僕も二十年通って悩みを解決してもらいます。というとママは「そのころには天国と地獄、両方で店出しとくから、ゆっくり来てな」と言っていたが二十年後も元気でお店に立っていてほしい。多分立ってそうな気がする。

ブスの店って看板見て来てくれたんやから、その前で写真撮ろ。って言ってくれたので撮った写真。ブスの店って文字全部隠しちゃった。
ブスの店って看板見て来てくれたんやから、その前で写真撮ろ。って言ってくれたので撮った写真。ブスの店って文字全部隠しちゃった。

看板への興味だけで入った店だったけれど非常に楽しく過ごすことが出来た。「はー、スナックってこういう感じなんですね」というとスタッフの方が「こういう感じはウチのママだけかも」と言っていた。

一人ひとりのお客さんを店の前まで送り出して、心からありがとうという、ここ二十年位のお客さんならどの席に座って何を飲んでいたか覚えているという。ブスの店、という名前で四十数年も続けてこれているというママの腕は確かだ。

ブスの店スナック杏、お勧めですよ。
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