
生まれて最初のドクロ服
かわいさ噛ませ犬としてのドクロ服説。試してみたいが、個人的にはドクロ服なんて持ってない。どこに行けば売ってるんだろうか。


闇に浮かび上がるしまむら

おそらく今回の実験後は着ることがなさそうなドクロ服。できれば安く手に入れたいところ。まず思いついたのはユニクロだが、あの店でドクロ服って見たことない気がする。
そこで思いついたのがしまむら。ここならシンプル&ベーシックを超えた、幅広い商品を扱っているのではないか。
そこで思いついたのがしまむら。ここならシンプル&ベーシックを超えた、幅広い商品を扱っているのではないか。


ビラビラが付いてるタイプを発見


慣れないドクロ服にも挑戦しやすい価格

期待通り、あっさり見つかったドクロ服。元々しまむら安心価格であるのに加えて、さらに約半額に値下げされて500円と安い。ドクロ、売れなかったのか。
悲しみのドクロよ、私の腹でその存在を放つことで、見る者に新しい感覚を示してくれたまえ。
悲しみのドクロよ、私の腹でその存在を放つことで、見る者に新しい感覚を示してくれたまえ。


(写真1)デフォルトのおっさん


(写真2)ドクロのおっさん

さて、早速着てみた。普段着てるような服の「写真1」と比べて、「写真2」の私はどんな風に見えるだろうか。理論的にはかわいく見えてるはずなのだ。
比較の性質上、同じような表情で写ったつもりだったのだが、こうして見るとドクロの自分の方が心なしかキリッとしてしまった。チョイ悪気取りが顔にも出てしまったようで恥ずかしい。
比較の性質上、同じような表情で写ったつもりだったのだが、こうして見るとドクロの自分の方が心なしかキリッとしてしまった。チョイ悪気取りが顔にも出てしまったようで恥ずかしい。


バックプリント下の部分、ドクロがいいこと言ってる

見た人それぞれに微妙な思いが胸に去来するのだろうが、どういう変化が起きたのか判断するのは、自分ではどうも難しい。ドクロ服の意図を知ってしまっているからという背景もある。
他の人がどう感じるかを知りたい。そこで、編集部の安藤さんにメールで写真を送り、ドクロ服の意図を伝えない状態でドクロの私がどう見えるか教えてもらった。
他の人がどう感じるかを知りたい。そこで、編集部の安藤さんにメールで写真を送り、ドクロ服の意図を伝えない状態でドクロの私がどう見えるか教えてもらった。


元気な安藤さん(こちらの記事より)

安藤「ドクロ服の方が若く見えます。あとちょっとワルっぽくも。」
理論上かわいく見えるはずだが、安藤さんの感想は少し違っているようだ。それでも「若く見える」というのはプラスに評価していいだろう。「ドクロ服はよく若者が着ているから」と要素以外にも、「ドクロと比べたら、生きてる人って若い」という比較の軸もあるかもしれない。
理論上かわいく見えるはずだが、安藤さんの感想は少し違っているようだ。それでも「若く見える」というのはプラスに評価していいだろう。「ドクロ服はよく若者が着ているから」と要素以外にも、「ドクロと比べたら、生きてる人って若い」という比較の軸もあるかもしれない。


無理のある若さが滲み始めた

安藤「あと、ドクロ服は対女性を意識しているように見えます。」
私としてはそういうわけではなかったが、「ドクロでワイルドな自分を演出して女性にアピール」という解釈はあり得そうだ。写真の様子からするとアピールしたところで実る気はしないが、アピールすることそのものは自由だ。
私としてはそういうわけではなかったが、「ドクロでワイルドな自分を演出して女性にアピール」という解釈はあり得そうだ。写真の様子からするとアピールしたところで実る気はしないが、アピールすることそのものは自由だ。


腕にもドクロ、いるんだぜ

「ドクロを着てるとかわいく見える」理論は、今のところ不発に終わってる気がする。ならば、逆にするとどうなるだろうか。

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真逆に振り切れてみる
今ひとつ成果が見えなかった「かわいくない服を着てるとかわいく見える」説。では理屈を逆にして「かわいい服を着てるとかわいくなくなる」は成立するだろうか。


全力でぶつかっていきたい

かわいい顔がプリントされている服を同じくしまむらで探して、見つかったのが上のパーカー。あえてグローバルなかわいさを選んで、世界に挑戦してみたい。


(写真3)地味チョイスな普段のおっさん


(写真4)ミステリアスなおっさん

なんでまた「写真4」の方がキリッとしてんのか。着てる服がメンタルにどういう影響を及ぼしているのかよくわからないが、この写真も安藤さんに見てもらった。
安藤「顔が小さく見えます。ミニーと無意識に比べているのかも。」
おお、これは予期していなかった小顔効果。確かに「でかい顔の絵が服に描いてあると、それと比べて本人の顔が小さく見える」というのはあり得そうだ。
安藤「顔が小さく見えます。ミニーと無意識に比べているのかも。」
おお、これは予期していなかった小顔効果。確かに「でかい顔の絵が服に描いてあると、それと比べて本人の顔が小さく見える」というのはあり得そうだ。


こちらも安心価格+値下げのコンボで敷居が低かった

安藤「あと、やはり写真3より4が若く見えますね。」
この感想もポジティブに評価していいだろう。顔は小さく見えるし、加えて若々しくもある。こうして並べると素晴らしい効果がありそうだが、それは問題の本質から目を逸らしているに過ぎない。
安藤「ただ、話しかけるなら3です。4は話が通じなさそうな気がするから。」
ここだ、一番のネックはここだ。安藤さんはまずプラスの評価を書いていたが、最も言いたいことはここだったと思う。でかいミニーの顔入りパーカーを着てるおっさん。説明するまでもなくやばい。
この感想もポジティブに評価していいだろう。顔は小さく見えるし、加えて若々しくもある。こうして並べると素晴らしい効果がありそうだが、それは問題の本質から目を逸らしているに過ぎない。
安藤「ただ、話しかけるなら3です。4は話が通じなさそうな気がするから。」
ここだ、一番のネックはここだ。安藤さんはまずプラスの評価を書いていたが、最も言いたいことはここだったと思う。でかいミニーの顔入りパーカーを着てるおっさん。説明するまでもなくやばい。


袖口に自信満々なことが書いてある


「Yes, I'm cute!」

この服、袖口に書いてあることもすごい。小さい字の方は「Kiss me quick!」である。なんとなく音読したあと、何言ってんだ!と自らを叱責するような気持ちになった。



さらなるリアリティを求めて
ここまでの検証では芳しい結果が出ていない今回の試み。しかし考えてみれば、安藤さんの感想はあくまで写真を通してのもの。人の印象というのは、やはり実際に向き合ったときにリアリティをもって感じるものだろう。


写ってないけど周りには商談してる人もいる

そういうわけで、やってきたのは編集部があるニフティ株式会社の応接スペース。特に女性の感想を聞きたいと思い、今回は橋田さんと古賀さんに来てもらった。


まずは標準装備のおっさんを確認


「………」

先入観のない率直な感想を知りたいので、もちろん企画の意図は伝えていない。それゆえなのか「何が始まるんだろ…?」感あふれる2人の表情が刺さる。
さあ、これから地獄のショータイムが始まるのだ。
さあ、これから地獄のショータイムが始まるのだ。


光と影との競演が始まる

今回はスムーズに服を見せるために、ドクロとミニーを下に着込んで、上に着ている服を徐々に脱いでいくスタイルとした。まずは黒いベストを脱いで、ミニーの登場だ。


ショワー


古賀さんにズームイン

古賀「…ないないない、これはない。どうしちゃったんですか?」
しばらく「…!?」と絶句したあと、古賀さんの口から絞り出すようにやっと言葉が出てきた。
古賀「…夫だったら止めるなあ。なんかちっちゃくてピチピチだし、袖も短いし。私服としてこれ着てこられたら、ほんと要注意だと思う。」
しばらく「…!?」と絶句したあと、古賀さんの口から絞り出すようにやっと言葉が出てきた。
古賀「…夫だったら止めるなあ。なんかちっちゃくてピチピチだし、袖も短いし。私服としてこれ着てこられたら、ほんと要注意だと思う。」


袖口ピーン


「いやー、いやいやいや…」

服そのものではなく、服を着ている自分本体がどう見えるか聞かせて欲しいとお願いしたのだが、ミニーのインパクトが強くてどうしても服に目が行ってしまうとのこと。自分でも無理なお願いをしたものだと思う。


グゴゴゴゴゴ…

橋田「…そういう人、なのかなって。うん、こういう人、いるかもしれない。」
どうにかして私を受容する方法がないか考えてくれている橋田さん。それは優しさとして受け取っていいのだろうか。こういう人、いるのかも知れないけど僕は見たことない。
どうにかして私を受容する方法がないか考えてくれている橋田さん。それは優しさとして受け取っていいのだろうか。こういう人、いるのかも知れないけど僕は見たことない。


どうする…どうする……


私「はい、あ、はい。はい…、はい。」

橋田「なんとなく、上司に報告しとかなくちゃ、って思う。」
他のブースで商談を終えたスーツ姿の人たちが、私に一瞥もくれることなく帰っていく。都会の無関心は時として心地いい。
ミニー服の着用は「かわいい服を着ていると、それと比べて着ている人本体がかわいくなく見える」という仮説に基づいた試み。結果としては、そういう次元を超えたやばさが出てきたといったところだろうか。
さて、この下にはドクロ服を着込んである。いよいよ繰り出そう。
他のブースで商談を終えたスーツ姿の人たちが、私に一瞥もくれることなく帰っていく。都会の無関心は時として心地いい。
ミニー服の着用は「かわいい服を着ていると、それと比べて着ている人本体がかわいくなく見える」という仮説に基づいた試み。結果としては、そういう次元を超えたやばさが出てきたといったところだろうか。
さて、この下にはドクロ服を着込んである。いよいよ繰り出そう。

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もうやめようよ
続いては本命、ドクロ服。「かわいくないドクロの絵の服を着てると、着てる本人がドクロと比べてかわいく見える」という説の可能性に賭けてみたい。


ドコドコドコドコ…(ドラムロール)


ババーン!

どうだ!すっかりホネホネのしゃれこうべと比べて、生きてる人間はみずみずしいだろう!


「もう、なんなの…これ……」

橋田「…なんか…相当やばい……。」
古賀「……いや…なんだろう…。」
「言葉にできない」という表現は、別にロマンチックでもなんでもないこういう事例にも当てはまる。それでもファーストインパクトを乗り超えると、少し落ち着いて観察してくれはじめたようだ。
古賀「そもそも、こんな服あるんだ…。」
橋田「うん、こんなの初めて見た。」
古賀「……いや…なんだろう…。」
「言葉にできない」という表現は、別にロマンチックでもなんでもないこういう事例にも当てはまる。それでもファーストインパクトを乗り超えると、少し落ち着いて観察してくれはじめたようだ。
古賀「そもそも、こんな服あるんだ…。」
橋田「うん、こんなの初めて見た。」


古賀「ああー、ああ、あー、あははは」


私「腕にもドクロがついてまして…」

この服、長袖Tシャツにベストの前身頃だけが縫いつけてあるというもの。2人ともその構造に半笑いで感心した様子。かっこよく言えばフェイクレイヤードというやつなのだろうが、そんな言葉の響きはドクロを着た自分には似合わない。
他に言うこともなくて、腕のドクロをアピールし始めたところ、古賀さんが「あっ、これ、since 1987って書いてある」と気がついた。
他に言うこともなくて、腕のドクロをアピールし始めたところ、古賀さんが「あっ、これ、since 1987って書いてある」と気がついた。


1987年生まれなら、ドクロにしては若い

本体である私がどう見えるかというより、そこから目を背けたくなってしまうようで、ついディティールが気になるようだ。仕方のないことだと思う。


少しずつ目が慣れてきてる


「さっきの方がまずい」と…

古賀「中学のときの友達の彼氏って感じかも。」
橋田「ああ、友達のおにいちゃんとかでいたかも知れない。」
なるほど、あり得そうな話もやっと出てきた。「みんなと同じ服じゃイヤ」というあの頃の誰かと私が、今になって重なっている。
古賀「でも、まずい感じがするのはミニーの方だな。」
橋田「うんうん、さっきの方が読めない感じしたね。」
どうやら少しはましになっているらしい。ただそれでも未だマイナス圏で、少しばかり絶対値が変わっただけに過ぎない気がする。
始めからコンセプトがおかしいことには、自分でも気づいていた。「ドクロ着てたらかわいく見える」という仮説は、そもそもおっさんなのに「かわいく見せる」という目的設定からしておかしいではないか。
橋田「ああ、友達のおにいちゃんとかでいたかも知れない。」
なるほど、あり得そうな話もやっと出てきた。「みんなと同じ服じゃイヤ」というあの頃の誰かと私が、今になって重なっている。
古賀「でも、まずい感じがするのはミニーの方だな。」
橋田「うんうん、さっきの方が読めない感じしたね。」
どうやら少しはましになっているらしい。ただそれでも未だマイナス圏で、少しばかり絶対値が変わっただけに過ぎない気がする。
始めからコンセプトがおかしいことには、自分でも気づいていた。「ドクロ着てたらかわいく見える」という仮説は、そもそもおっさんなのに「かわいく見せる」という目的設定からしておかしいではないか。


もうちょっとだけ付き合ってね

男だったら「かわいく見せる」ではなく、「かっこよく見せる」だろう。そうだとしたとき、今回の理論を応用すると、どんな服を着ればよいことになるか。


今回の最終形態

行き着いた結果がこれだ。仮説としては「かっこ悪い絵の服を着てたら、それと比べて着ている本人がかっこよく見える」という理屈になる。


発注は「かっこ悪い顔」


うわー、注文通り

絵を描くのが好きな妻に「とにかくかっこ悪い顔で」とリクエスト。しばらくするとそこに妙な顔が浮かび上がってきた。


なんだろうな、これ

既存のかっこ悪さに頼らず、それでいてしっかりとかっこ悪さが滲み出るシャツに仕上げてくれたと思う。


まあこうなりますよね

ものすごく怪訝な表情を浮かべる2人。これまでよりも腰がさらに深く引けている。ドクロまででも相当な反応だったが、ネクストゾーンが存在したのだ。
ただ、見て欲しいのはシャツではない。あくまでシャツを着ている私がどう見えるかを知りたいのだ。
ただ、見て欲しいのはシャツではない。あくまでシャツを着ている私がどう見えるかを知りたいのだ。


古賀「もう、ちょっと…うん、その…」


橋田「えーと、でも…でも、ほら…」

橋田「ちょ、ちょっと待って…これ怖い……。」
古賀「まずいまずい。ザ・どん引き。」
「うわ…」という生理反応を隠せない2人。「さらにやばい」「ドクロが普通になってきた」と、他の追随を許さない衝撃があるらしい。
古賀「まずいまずい。ザ・どん引き。」
「うわ…」という生理反応を隠せない2人。「さらにやばい」「ドクロが普通になってきた」と、他の追随を許さない衝撃があるらしい。


「ザ・どん引き」っと…

次々と放たれる矢のような言葉をメモしていると、哀れに思えてきたのか、また別の角度から言葉を投げてきてくれた。
橋田「白っていう地の色はいいと思う。明るくて。」
古賀「この服で電車乗ったら、みんな近寄ってこなくて快適かも。」
自ら落ちた深い穴でも、上を見上げれば光は射してくる。謎のオーラを放つ服で孤独になった私に、ぎりぎりの工夫でやさしさを示してくれたことに感謝したい。
橋田「白っていう地の色はいいと思う。明るくて。」
古賀「この服で電車乗ったら、みんな近寄ってこなくて快適かも。」
自ら落ちた深い穴でも、上を見上げれば光は射してくる。謎のオーラを放つ服で孤独になった私に、ぎりぎりの工夫でやさしさを示してくれたことに感謝したい。







ネタばらししてやっとくだけた



全ての服を見せ終わって、今回の意図を伝える。「全然かわいく見えないし、かっこよくもない」「残念、全部うまくいってない」という2人の言葉を総合すると、「君は君らしくいたまえ」となると思う。
迷走の果てにたどり着いたのは、そんな少年向けのメッセージめいたものだ。
明日からは胸を張ってグレーや茶色の地味な服を着て歩こう。遠回りした自分再発見だ。
