特集 2012年12月7日

プレステのコントローラーで指圧できるのか

できるのだ
できるのだ
プレイステーションが初めて世に出たときの衝撃を覚えているだろうか。

新しいゲーム表現もさることながら、コントローラーの独特な形状に誰もが驚いた。あの手前に伸びてくる突起はそれまでのゲームパッドにはなかったのだ。

そして、ついでにこう思った人も少なくないはず。
「あのコントローラー、ツボを圧すのにちょうど良さそうだな…」
本業は指圧師です。自分で企画した「ふしぎ指圧」で施術しています。webで記事を書くことをどうしてもやめられない。(動画インタビュー)


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> 個人サイト ふしぎ指圧

新宿、さぼてん…持ち帰りとんかつ屋さんみたいな名前だが、腕のいい治療院である
新宿、さぼてん…持ち帰りとんかつ屋さんみたいな名前だが、腕のいい治療院である

プロとして検証します

僕は昨年、国家資格を持ったプロのマッサージ師になった。昔の思いつきを今なら検証できる。

さらに今回、新宿にある「仙人掌(さぼてん)」という指圧治療院の一色さんにも協力してもらえることになった。
全然関係ないが、仙人掌は半年くらい前に『タモリ倶楽部』の空耳アワーのPVロケにも使われたことがある。僕も観たのだが「♪マッサージ、ソバ、ソース~」みたいな空耳をやっていた(曲名は忘れた)。
人掌院長の一色さん。「一瞬、タモリがうちに来るのか、って喜んだんですけれどね。よく考えたら違いましたね」
人掌院長の一色さん。「一瞬、タモリがうちに来るのか、って喜んだんですけれどね。よく考えたら違いましたね」
用意したのはオールドタイプのプレイステーションコントローラー。突起部分の構造は最新のやつも同じはず
用意したのはオールドタイプのプレイステーションコントローラー。突起部分の構造は最新のやつも同じはず
白衣やめときゃよかった
白衣やめときゃよかった
せっかくなので気合を入れて白衣を着用する。

一色さんがそれを見て「僕が着られるサイズの白衣って売ってないんですよね…」と言ったのが印象的だった。

業務用マッサージ機

ちなみにお店で実際使っている道具にはこういうのありますよ、一色さんが紹介してくれたのが「ゼロプロマッサー」という道具。
銃のように持って
銃のように持って
トリガー部分にあるボタンを押すと、細かく振動する
トリガー部分にあるボタンを押すと、細かく振動する
珍しいマッサージ機で、見るのも受けるのも初めて。動きは単純だが、筋肉に対してすごく細かいあたり方をする。電気屋さんで売っている一般用のマッサージ機とは、全然違う感覚だ。

値段は7万円。この細かさに7万円かー、と思う。たしかに家庭ではなかなか使わなさそうで、業務用って感じだ。
さて、我らがプレイステーションはゼロプロマッサーに対抗しうるのか
さて、我らがプレイステーションはゼロプロマッサーに対抗しうるのか
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背骨のキワがいいのでは

一色「ちょっと僕も使い方を考えてみたんですけれども、やっぱり脊柱起立筋(背骨を立たせる筋肉)がやりやすいんじゃないですかね」
まず出たのは縦にコントローラーを使うやりかた
まず出たのは縦にコントローラーを使うやりかた
斎藤「せっかく突起が二つあるから、脊柱をはさむように使えないですかね」
横もアリ
横もアリ
一色「これもアリですね。でも脊柱起立筋の幅が人によって違いますからね、そこは注意して」

斎藤「それからお尻の横。中殿筋のあたりって固くなりやすいじゃないですか。そこもいいと思います」
中殿筋は、骨盤の位置を調整する筋肉。プレステではやりの骨盤矯正だ
中殿筋は、骨盤の位置を調整する筋肉。プレステではやりの骨盤矯正だ
一色「使えそうですね」
一点、注意が
一点、注意が
一色「あとは、コントローラーで腰部はやらないほうがいいと思います。肋骨がないから圧が入りすぎて腰椎をずらしちゃうかも」

斎藤「なるほど」

理論上はよさそうだが

スルスル話がすすむ。一色さんは指圧学校の先輩なので、ベースの考え方が同じなのが良いのかもしれない。

いや、しかし問題はここからだ。

指圧の指と、固いコントローラーの突起では、圧した時の感触が全然違うだろう。はたしてコントローラーでもちゃんと心地良いのか。まずは一色さんに使ってもらうことにした

一色「すごく持ちやすい」
一色「すごく持ちやすい」
初代プレステのコントローラーは、さっき紹介してくれた拳銃タイプのマッサージ機と同じように持てるらしい。
一色「これは、圧しやすいですね」
一色「これは、圧しやすいですね」
一色さんの「使いやすい」という感想にまず驚く。そして実際に圧してもらって、もう一つびっくりした。

指圧師として、信じられないことに、認めたくないことに、ちゃんと気持ちいいのだ!

脊柱をはさむ使い方も
脊柱をはさむ使い方も
これもちゃんと気持ちいい。ゴツゴツした感触を全く感じさせない。一体どうなっているんだ!
お尻の横も問題なく使える
お尻の横も問題なく使える

本当に使いやすい

実は、さっきから一色さんが企画に積極的過ぎていることが気になっていた。
ノリノリ
ノリノリ
この人「コントローラーが使いやすいと言った方が面白い」って思っているんじゃないのだろうか。なんかコードを無理やり手首に巻いて落下防止機能を持たせているし。そういう気遣いはいらない。

自分でも確かめてみる。
ヒー!本当に使いやすい!
ヒー!本当に使いやすい!
これは握りこまなくちゃいけないから、圧の調整しにくい
これは握りこまなくちゃいけないから、圧の調整しにくい
コントローラーは、指圧と全く同じ体勢でやれる。

手首や肘も活かせる。親指が力まなくて済む分、こちらの方がやりやすいかもしれない。

比較のために100円ショップでツボ圧し器具を買ってきたのだが、それよりもずっといいのは間違いない。
ポイントはコントローラーの突起の微妙な角度だ。これが指圧をする際の親指のポジションにそっくりなのである。
偶然の産物とは思えない
偶然の産物とは思えない
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XBOX

実はもう一つ、XBOXのコントローラーも用意してある。
プレイステーションよりはずんぐりとしたフォルム
プレイステーションよりはずんぐりとしたフォルム
これはこれで気持ちいい
これはこれで気持ちいい
一色「圧がちょっと鋭く入るから不安、手を添えながらやりたくなる」
一色「圧がちょっと鋭く入るから不安、手を添えながらやりたくなる」
斎藤「ちょっと小回り効かない感じかも」
斎藤「ちょっと小回り効かない感じかも」
ずんぐりとした形と、やや鋭い突起から、使いやすさはプレイステーションほどではない。
しかし、これもツボ圧し器として十分使える。ゲーム業界恐るべしだ。

甘手と苦手

ところで、指圧の世界では施術者の親指の質を「甘手(あまて)」「苦手(にがて)」という風に分ける。
ちなみに僕はかなりの甘手で、一色さんは苦手だ。
ちなみに僕はかなりの甘手で、一色さんは苦手だ。
ゲーム機のコントローラーもプレイステーションとXBOXで甘手と苦手のような味わいの違いがあるな、という話になった。

突起に角度がついているプレイステーションは甘手で、ストレートなXBOXは苦手である。
甘手と苦手
甘手と苦手
こういう施術者のパーソナリティな部分が簡単にコントローラーに置き換わるのは、なんともやるせない気分になる。

しかも、このコントローラーたちはツボを圧すだけではない。本体につなげて、ゲームだって出来るのだ。ひょっとしたらちょっと負けているんじゃないか、という考えが頭をよぎったが、いそいでかき消す。大丈夫、僕らの手だってツボを圧す以外にいろいろできるし。
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クイズ

一色「ここまで使えるのだったら、指で圧してもコントローラで圧しても、わからないんじゃないですかね?プレイステーションの突起には、人の指の優しさみたいの感じるし」

斎藤「いや、それはいくらなんでもわかるんじゃないですかね」

一色「ちょっとやってみましょうか」

一色さんの提案でゲームをやることになった。
出題者はランダムに「プレイステーション」「XBOX」「100均ツボ圧し器」「親指」の中から選び、回答者の背中を圧す。回答者は背中の感触だけで何で圧されているかを当てる。

そこまできちんと明らかにしなくちゃいけないものか。そもそも僕は今回の記事は「コントローラーもツボ圧しに使えないこともないけれども、やっぱり人の手とは全然違うね」みたいな指圧師に都合のいい着地を想定していたのである。
出題中(XBOX)
出題中(XBOX)
わからない。全然わからない。

しいていえば、ツボ圧し器っぽくはないと思う。プレイステーションか、XBOXか、それとも指か。

こんな風に悩む状況自体が想定外でつらい。出題している方もつらくないのか?

斎藤「XBOXですかね?」

一色「なるほど。XBOXだと思いますか。じゃあもう一問」

え、今の正解教えてくれないの?
出題中(プレイステーションをカチャカチャ取り出す音をさせてからの、親指)
出題中(プレイステーションをカチャカチャ取り出す音をさせてからの、親指)
なにやらコントローラーをいじっているような音がする。しかしそこが怪しい。ゆっくり取り出しているようで、まるで僕にわざわざコントローラーの音を聞かせているみたいだ。

だとすればこれは逆に親指であるはずである。なんだこの無駄としか思えない駆け引き!

斎藤「これは指でしょう」
斎藤「コントローラーの音わざとさせてましたよね!」
斎藤「コントローラーの音わざとさせてましたよね!」
結局僕は、2問正解していたのだが、このあとやった3問目を外す。スコアとしては2/3となった。

おまけ:指圧のやりかた

結局、指圧師二人で盛り上がってしまった。ふだん施術でふざけることって全然ないのでその反動だろうか。悲しいですね。

最後に二人の間で前提として共有していたふつうの「指圧」のやり方について簡単に説明しておこう。

1.親指はぐっと手の外側に立てる
!
2.親指以外の四本の指で、掌全体の支えにする
!
3.筋肉に対して垂直に、ゆっくりと圧を加えてゆきましょう(こねたり揉んだりしない、圧すだけ)
!
ふつうの指圧のやり方、といいながらもちょいちょいコントローラーが出てきている。

でも今回「指もコントローラーも同じ」ということになってしまったので、これでいいはずだ。

みんなもぜひやってみてほしい。親指に力を入れなくていい分、コントローラーの方が一般向けにはいいんじゃないか、とさえ思う。

ちょっと変なことやっても揺るがない

指とコントローラーの区別がほとんどつかない、という結論になった。ひょっとしたら指よりもコントローラーの方がいい、って人もいるかもしれない。

僕はけっこうショックで、途中から企画を進めるのに気が重くなっていたほどだ。でも今回手伝ってくれた一色さんは終始乗り気であった。

ここらへん、治療家として自信の強さが関係していると思う。自信があるから、変なことをやっても全然揺るがない。おもしろ企画をしながら格の違いを見せつけられた。

今度行ったら、むしろあっちから、変わったツボ圧し器を企画されそうだ。
一色「こう持って!」
一色「こう持って!」

取材協力
肩こり治療専門店仙人掌(さぼてん)
東京都新宿区新宿1-32-13 グラン・ビル1F
平日11:00~21:00(最終受付)
土・日・祝日11:00~17:30(最終受付)
水曜定休日
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