特集 2012年10月10日

そうだ京都、行こう(名刺を燃やしに)

じゃんじゃん燃やせー!ちょっと背徳感。
じゃんじゃん燃やせー!ちょっと背徳感。
社会人になればほとんどの人は持つことになる「名刺」、そして名刺ファイル。しかし5年、10年と経ち名刺ファイルが膨らんでいくと正直処分したくもなる。しかし人の名前が入ってるものってどうも捨てづらい…。この数年そう悶々としてたのだけど、京都に「名刺を供養するお祭り」があるというのだ。秋の京都へ、名刺を燃やしに行こう(声:長塚京三)。
1972年佐賀県生まれのオトナ向け仕事多数のフリーライター。世間の埋もれた在野武将的スゴ玉の話を聞くのが大好き。何事もほどほどに浅く広く、がモットー。

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あらためて供養すべき名刺の仕分け事業

自分が社会人になってから18年、今の仕事であるフリーライターになって14年。そんなに経つのか…。昔やってた営業職も人に会う仕事だったけれど、今も比較的人に会う仕事だ。最初4年分は既に処分したから、あらためて14年分の名刺をひっぱりだしてみた。
個人情報なのでいちおうモザイク入れます。
個人情報なのでいちおうモザイク入れます。
名刺ケース&ファイル4つ分と、袋にガサッと突っ込んでた名刺多数。もちろん全て処分するわけではないので、整理していこう。ちょっと前に流行った言葉でいえば、まさに「仕分け事業」だ。

あらためて残すもの・残さないものと分けていくと、あからさまに「残さないもの」も出てくる。まず多いのが「もう部署が変わってるもの」。たとえばデイリーポータルZ編集部も昔は部署がこんな名前だったりした。というか4,5回変わってる気がする…。
あと住所も昔の大森だったので供養行き。
あと住所も昔の大森だったので供養行き。
あと部署だけでなく「会社を辞めてしまったもの」。デイリーでおなじみ、宮城マリオさんの名刺でいえば、左は現役だしかっこいいから保存ファイルへ。右は前の会社のものなので京都に持ってくことに。京都行き、というとむしろ喜ばしい感じですが、実際は炎上です。
とりあえずこういうので勉強してみる。
とりあえずこういうので勉強してみる。
自分も昔の事務所の名刺がたんまりあった。
自分も昔の事務所の名刺がたんまりあった。
あとまあ明らかに飲み会とかで会って、確実に誰かわかんない名刺とかいっぱいある。そういうのが一番容赦なくホイッ!って感じ。まあ自分の名刺も同じ目に遭ってるだろうしお互いさまだ。

と、どんどん分けていくと綺麗に揃っていた名刺ファイルもどんどん歯抜け状態に。いやもう歯抜けというか歯の方が少ない。
当然ながら残る方が圧倒的に少ない。
当然ながら残る方が圧倒的に少ない。
しかし残したところで「でもこれから先見ることあんのかな?」と思うのが正直なところだ。実際のところ、一度メールのやりとりしてれば連絡先はそれでわかるし、その後も検索できる分手間もかからないし。極端な話、仕事でお世話になる人なら一度はメールのやりとりはするわけで、一回メールしたら名刺処分してもかまわない…といえなくもない。

それでもなお捨てれない名刺というとどんなものか?というと、ひとつは「有名人」。ある意味ノベルティグッズみたいなもんでやっぱ嬉しい。そしてもうひとつは「亡くなった人」。これはちょっと捨てづらい…これこそ供養してもらったがいいんだろうけどねえ。

そんなこと考えながら名刺仕分け大会してたら、供養側がこんな山積みに。
散乱してわかりづらいのでまとめると
散乱してわかりづらいのでまとめると
こんな量。一束約100枚。
こんな量。一束約100枚。
合計すると969枚。約1000枚といっても一枚が小さい名刺だけに、凄い山積み感はないのだけど、まあこれだけの人に会ってきたのだなあと感慨深いものはある。中には5回くらい名刺交換した人もいるけども。14年の間にこれだけの出会いがあったということ。実際は残された名刺もあるのでこれ以上なわけで。

とはいえ、さよならだけが人生だ(って都合いい言葉ですね)。供養のために京都に行ってこよう!
こんなタイトルの記事ですが、使ったのは高速バスです。
こんなタイトルの記事ですが、使ったのは高速バスです。
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正しくは「名刺感謝祭」だった

秋の京都…というと風情ありそうですが、高速バスだから朝早いし眠いし雨だし。目標の名刺供養はお昼14時からという話なので、しばらく京都観光することにします。
もやもやした曇天の中の京都タワー。
もやもやした曇天の中の京都タワー。
おかめ像を見に行ってみたり
おかめ像を見に行ってみたり
こんな名前のチャーハン屋さんに惹かれてみたり。
こんな名前のチャーハン屋さんに惹かれてみたり。
それにしても大阪京都方面に来るたびに目をひく、というか「関西の日常の光景」で関西以外と一番違うのが「電車に宝塚のポスターがいっぱいある」ということじゃないだろうか。こんなきらびやかなポスター(しかも多数貼り)が常に新作のたびに貼られるってあまりない。東京都内でいえば劇団四季に存在的には近いけど、全くもってこっちの方がゴージャスだもの。
やっぱエヴァの方を思い出すこのキーワード。
やっぱエヴァの方を思い出すこのキーワード。
さて軽く雑感でお茶を濁したところで、時間も間近になってきたので今回の行き先である「京都ゑびす神社」に向かいます。これがなかなか街中でありがたい。京都の中心部である四条河原町から歩いていける距離。
鴨川&河床。もう寒い季節ですが。
鴨川&河床。もう寒い季節ですが。
おお、警備員が。皆名刺燃やしに来てる?
おお、警備員が。皆名刺燃やしに来てる?
神社に近づくとけっこうな人通り。今回の目的である名刺供養祭り(仮称)については規模や内容がぜんぜんわからずに来たのもあって「交通整理が必要なほどなのか!」と思ったら、JRAの場外馬券場の警備員だった。週末混むからね…。

そこから京都ゑびす神社方面は人も多すぎずスッキリ。とはいえ、ここかしこに史跡がある京都だけに観光客の姿もちらほら。しかし、神社目的のような名刺をギュッと握りしめてるような人はいないな…。
ところどころ古い家がある京都らしい街並み。
ところどころ古い家がある京都らしい街並み。
の中に、ありました。京都ゑびす神社。
の中に、ありました。京都ゑびす神社。
観光客でいっぱいの祇園界隈から離れること数分、京都ゑびす神社に到着。しっかり看板も立ってました。その名も「名刺感謝祭」。ちょっと芸能界っぽくていいですね、感謝祭。
名刺に感謝と供養を!
名刺に感謝と供養を!
でっかい神社はあちこちある京都、その中では決して大きいというほどではない京都ゑびす神社。しかしいろいろ気になる要素が詰まってる。たとえば鳥居の上からの視線とか。み、見られてる!
鳥居の中央に顔が!見方によっては鳥居が手足みたいだ。
鳥居の中央に顔が!見方によっては鳥居が手足みたいだ。
福々しいゑびすさんの顔。その下には硬貨が…ということは?
福々しいゑびすさんの顔。その下には硬貨が…ということは?
おそらく願掛け的な感じでお金をポンポン投げるのだろう、ゑびすさんの顔の下の網部分には硬貨がいっぱい。そのまた下にはお金をかきあつめるかのような熊手が。

さらに神社を巡ると、京都イチの「商売繁盛神社」感が伝わるもろもろが見えてくるのですよ。ちょっと普通の神社とも違うのです。そして名刺感謝祭をやる理由は?
あのビッグネームの名前も!
あのビッグネームの名前も!
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ゑびすさんはノックしてお賽銭を入れる

さて到着した京都ゑびす神社、なんで名刺感謝祭なるものが行われるか?というとこういう塚が境内にあるから。
ふたつの塚が並んでますが、
ふたつの塚が並んでますが、
右手がその名も「名刺塚」
右手がその名も「名刺塚」
左手が「財布塚」。
左手が「財布塚」。
ゑびすさんのイメージどおり「商売繁盛」の神様であるこちら。にしてもここまでビジネスに寄った(商売っ気がある、て意味でなく)感じの塚はなかなか見ないなあ。その周りの柵に掘られた名前を見ても、地元企業との近しい感じがよくわかる。
ロゴ入りってあんまり見ない。
ロゴ入りってあんまり見ない。
名刺業界のみなさまからも。
名刺業界のみなさまからも。
西宮・大阪今宮神社と並んで「日本三大ゑびす」とも言われるこちら。「十日ゑびす」「二十日ゑびす」といったお祭りでも知られる神社だけども、この日はいわゆる出店みたいなのもないし、祭りといってもホントにそっと行われてる感じ。というかいわゆる「お祭り」ではなくて、「供養」ってムードですね。
拝殿の周りも特にお祭り感はなく。
拝殿の周りも特にお祭り感はなく。
左右に百貨店の提灯が。
左右に百貨店の提灯が。
左右にこれって、阿吽の像みたいな存在感。
左右にこれって、阿吽の像みたいな存在感。
ちなみに境内にいらっしゃるほとんどがスーツ姿。
ちなみに境内にいらっしゃるほとんどがスーツ姿。
この感謝祭、どうやら名刺業界の人が中心で、自分のような一般客はそんな多くないようだ。溜まった名刺を整理するいい機会なのになあ。まあ毎年来るほどすごい量が溜まる、て人もそれほどいるわけでもないでしょうが。

ちなみにゑびす神社、お参りの方法がちょっと変わってました。拝殿正面にも賽銭箱はあるのですが、横にもありまして。
賽銭箱なのに、やたら密閉されてる。
賽銭箱なのに、やたら密閉されてる。
柏手ではなくノックで?
柏手ではなくノックで?
中にゑびすさんらがいる様子。
中にゑびすさんらがいる様子。
ちなみにノックするのはゑびすさんが長寿で耳が遠いから、という説があるそう。

さて感謝祭の時間が近づいたところで、「名刺燃やす祭り行きません?」とお誘いした京都在住の加茂川さんがやってきた。
兄弟みたいですが違います。
兄弟みたいですが違います。
印刷ミスの名刺がいっぱいあったそう。
印刷ミスの名刺がいっぱいあったそう。
加茂川さんも「十日ゑびすは来たことあったけど、こんなのあるって知らなかったですねえ」というし、地元的にもそういう認識なんだろうな。供養始まる前の時点で、関係者ぽくない人は数人だったしなあ。

とはいってももちろん一般の人の名刺供養ももちろんOK。受付の「あの箱に入れてください」とのことで、こんもり溜まった箱に持参した名刺をドサッと投入。
名刺霊というのがあれば溜まりに溜まってるはず。
名刺霊というのがあれば溜まりに溜まってるはず。
成仏しろよ…。来世では使われる名刺に…。
成仏しろよ…。来世では使われる名刺に…。
と思いつつも乱雑にドカドカと約1000枚。
と思いつつも乱雑にドカドカと約1000枚。
さてやっと重い荷物…ではなく大事な名刺も預けた。あとは供養を待つだけ。会場に人も集まり、宮司さんも登場とやっと供養スタートです。
先の名刺塚前で儀式が行われます。
先の名刺塚前で儀式が行われます。
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ついに名刺が供養される時がきた

14時になり、供養が粛々とスタート。議員や協会のえらい人らの挨拶を挟みつつ、塚に祝詞があげられる。ちなみに今年で35回目だそう。

しかし加茂川さんと「考えてみれば他の供養とかに比べたら結構最近の歴史ですよねえ」という話に。日本における本格的な名刺の歴史を考えると、「神社」と「名刺」の組み合わせってどこかシュールにも思えなくもない。
でも日本では名刺は19世紀からあるそう。
でも日本では名刺は19世紀からあるそう。
意外と長かった名刺の歴史。供養も大事ですわな。
意外と長かった名刺の歴史。供養も大事ですわな。
あいさつでは「業界大変ですが頑張っていきましょう」みたいな話も。実用よりもビジネスマナーとして、の部分が多くなってる気するしな…。初めて会う会社の人や、フリーランスとかだと名刺のデザインも含めて楽しみだったりするのだけれど。

そんな格式高い供養が続き、途中で場所は別に作られたキャンプファイヤーみたいな献火場へ。おお、ついに名刺供養のメインイベントが。火を見ただけでいやおうなくテンション上がる年頃でもないけれど、やはり心の中で高まりが!
供養の場ですからしっかりお祓い。
供養の場ですからしっかりお祓い。
お祓いをした上で、ついに点火!
お祓いをした上で、ついに点火!
見た目キャンプファイヤーぽいけど違うんです。
見た目キャンプファイヤーぽいけど違うんです。
火が十分まわったところで、先ほどの名刺を束にして揃ってる人に渡される。どうぞ供養して下さい!ということか。宮司さんがじゃんじゃん燃やすのかと思ったら、けっこう参加型なんですね。
供養に参列した方から投げ入れていく。
供養に参列した方から投げ入れていく。
さすが紙!よく燃えます。
さすが紙!よく燃えます。
自分も供養させていただきました。
自分も供養させていただきました。
供養というか、「名刺を燃やす」ってどこか背徳的な部分もあったりしてそんな快感もあったりなかったり。紙一枚一枚が個人情報というかパーソナリティだもの。それだけにこういう「供養」「感謝祭」という形だと容赦なく処分できる。容赦なく、てのも変な言い方ですが。
それぞれに名前があると思うと凄い光景だ。
それぞれに名前があると思うと凄い光景だ。
丁寧に炭になるまで燃やしていきますよ。
丁寧に炭になるまで燃やしていきますよ。
薪ももう炭になるほどに。
薪ももう炭になるほどに。
ひとしきり名刺を燃やしつくしたあとは、御神酒をいただきます。最初はTシャツ短パンで来るようなラフな連中は我々くらいでしたが、最後の方は他にもけっこういらっしゃいましたね。やっぱただのゴミとしては捨てづらい、て人も少なからずいるのだ。
これで〆ると神事に参加した感。
これで〆ると神事に参加した感。
約1時間くらいで感謝祭は終了。もう使わない名刺とはいえ、ポイっとゴミ箱に捨ててしまうよりはこういう形で役目を終わらせると「全うさせてやった」感が自分にも出て罪悪感がありませんね。気分的にもスッキリ!こういう処分できる感謝祭は全国、いろんなジャンルでやってくれたらいいのにな。
ゑびすさんへの献火みたいだ。
ゑびすさんへの献火みたいだ。
業界のみなさまはこの後打ち上げとかあったりするのかな。
業界のみなさまはこの後打ち上げとかあったりするのかな。
しかし名刺は燃やせるからいいけど、同じく塚がある財布なんかは気軽に燃やせないから難しいよね。とはいえ「みんなで何かを燃やす祭り」は断捨離な時代に受けそうな気がするんですがねえ。

たき火てたまにしたくなるよね。
たき火てたまにしたくなるよね。

気軽にゴミも燃やせない世の中なんて

家で燃やそうと思ったら敷地も問題ですが、有毒ガス出るやつとかあるから難しいですよね。のどかなたき火をしたい人は過去記事「たき火入門」をどうぞ。でも感謝祭入門が今は欲しい!
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