特集 2012年9月18日

町中の痛み看板を探す

痛みの源流を探る
痛みの源流を探る
数年前に腰を激しく痛めてしまって以来、たまに町を歩いていると、痛くもないのに「うっ」と顔をしかめてしまうことがあった。

それがなぜなのか理由が分からなかったのだが、ある時、一緒にいた友人に「なんで整骨院の看板にらんでるの?」と聞かれて気がついた。どうやら、整骨院の看板に描いてある「腰が痛そうなアイコン」に無意識のうちに共感して痛そうな顔をしていたようなのだ。
1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

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痛そうな看板とはなにか

で、そうやって意識して見ると、確かに町中に痛そうな整骨院看板が大量に設置されているではないか。ということで、今回はみなさん(腰痛などで整骨院にお世話になったことある人限定)と痛みを共有してみたいと思い、痛む腰を引きずりながら都内で痛そうな写真を撮ってきた。
これが、痛そうな整骨院看板だ
これが、痛そうな整骨院看板だ
いかがだろう。歯医者に行って例のキーンというドリルの高周波音を聞くと歯の痛みを連想するという人もいるだろうが、自分としては断然こっちが痛い。体をくの字型に曲げ、顔を反らしたあの姿勢。まさに腰痛オブ腰痛の姿勢だ。あと、首の「ゴリッ。あっ、やっちゃった」というような雰囲気もかなり痛い。

まず基本的に整骨院の痛いアイコンの基本は、痛む箇所別になっているものが多い。
上の看板でいうと、向かって左から「ひざ痛」「くび痛」「腰痛」「肩痛(かたこり)」である。痛みの箇所に対してピクトさんが患部に手を当て、さらにそこからビリビリとしたマークが出ている。

このビリビリという雷のような痛み表現はここ以外の整骨院看板でも大量に使用されている、いわば全ての整骨院の真のマークのようなものだ。今後はこれを「痛みサンダー」と呼称したい。
くらえ必殺、痛みサンダー!!
くらえ必殺、痛みサンダー!!

痛そうに見えて痛くないのもある

次の看板は、痛みの箇所を人体図に星マークで提示し、その横に痛みの種類をアイコン表示している。
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ところで開始二例目でいきなり卓袱台をひっくり返して申し訳ないが、この看板はあまり痛くない。
一昔前、スポーツ新聞のいやらしい広告や雑誌のヌードグラビアなどでは肝心の部分を星で隠すという手法があったのだが、それを見慣れた世代には、人間の体の一部に星マークが乗っていると反射的に「あ、いやらしいものだ」と反応してしまう刷り込みがされているのだ。

もちろん、もういい加減分別もついた年齢だ。落ち着いて見れば星が痛みの箇所を示していることぐらいはわかるのだが、この看板を見て反射的に感じるのは「痛い」ではなく「いやらしい」だ。

痛みの種類パートでは、「関節痛」や「スポーツ障害」の表現として痛みサンダーがあしらわれている。
ただ、それよりも「けが」の表示が包帯ぐるぐる巻きで相当なダメージっぽいのが気になる。日常生活レベルでいうところの「けが」はもうちょっと軽くて、擦り傷や切り傷、せいぜいつき指ぐらいのものだろう。このアイコンはもう「大けが」もしくは「重傷」と呼ぶべきだ。あまりけがを甘く見ずきちんと治療を受けて欲しい。病院ならすぐそこだ。
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表情が入ると痛みは増す

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再び痛いほうの看板だ。これは間違いなく痛い。
やはり表情がつくと感情移入がしやすく、痛みの度合いもグッと上がる。
肩に手を当てた人のこの表情を見て欲しい。腕はおそらくあれ以上は上がらなくなっているに違いない。このしょんぼり顔だけで湿布3枚は貼れる。
痛みサンダー大盤振る舞い
痛みサンダー大盤振る舞い
そして腰。痛みサンダーも3本と大盤振る舞いである(サンダーは多いほうがやはり痛そうだ)。

腰の人はたぶん、あの姿勢から一歩も歩けないことだろう。中空に浮いた左手だけが助けを求めてふらふらと動くのである。誰か一刻も早く手を差し伸べてあげてほしい。もしかしたら救急車を呼ぶ必要があるかもしれない。

色合いも重要な痛み要素だ

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バッテン目の表情にくわえて全体の赤/黒グラデーションがなんとも根深く激しい痛みを感じさせる。
痛みサンダーは1本と少ないが、今までに見たサンダーよりも細く鋭く刺々しいのが痛みポイントを増加させている。

サンダー以外にも痛み表現はある

ふと視線を上げた先にも痛みはある
ふと視線を上げた先にも痛みはある
少し珍しい例で、患部から痛みサンダーの代わりに集中線のようなものがピッピッと放たれている。そのかわりに事故を起こした自動車からサンダーが出ているため、どちらかというと運転していた人よりも自動車の方が痛そうに感じてしまう。

また、これだけ簡略化されたピクトなのに首だけ丁寧にムチウチカラーのようなものを巻いているのが興味深い。もしかしたらこの看板をデザインした人は、とくに首の痛みに対して思い入れのある人だったのかもしれない。


さて、ここまで痛み看板をいろいろ見てもらったが、最後に人間以外のものが痛がっている、レアな痛み看板を見ていただこう。

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痛そうでかわいい、イタカワイイ

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松葉杖界のアイドル登場
松葉杖界のアイドル登場
かわいいキャラ(クマ)と大怪我、という組み合わせ。
痛そう、というよりは痛々しい。彼の顔がにこやかな分だけ健気さが先立つ。「そんな無理をするな」と言ってやりたい気分だ。

それだけ強そうなのに痛いのか

「恐竜の怪我と治療」とあるが、ちゃんと人間の怪我も見てくれる
「恐竜の怪我と治療」とあるが、ちゃんと人間の怪我も見てくれる
「イテテッ」とは言ってるし、見る限り相当な大怪我なのだが、こちらは痛さを共感できない。

子供の頃、5歳下の弟と遊んでいる時にこちらが転んでしまった時のこと。かなりざっくりと大きくスリ傷を負ったのに、近くで見ていた母親から「お兄ちゃんだから痛くないでしょ」と無茶を言われたことがある。

「いくら相対的に弟より年長であるといっても、それで痛みが相殺されることはないだろう」という主旨のことを幼いなりにぼんやりと感じて憤慨したのだが、今となって母親の気持ちも分からないではない。

つまり何が言いたいかというと「恐竜なんだから痛くないでしょ」だ。

そして、まさかの無生物への痛み

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これは最レア。この写真の中に、ちゃんと痛がっているものがいるのだ。お分かりだろうか。
よく見ると、字が痛い
よく見ると、字が痛い
正解は、「か」と「に」と「し」でした。包帯をまかれた「か」「し」と、松葉杖をつく「に」。まさか文字まで痛いとは、整骨院看板、奥が深い。

あと、仲間がこれほどの痛手を負っているというのに一人だけ無傷でピンピンしている「た」は逆に何をやっていたのか、気になるところだ。


町中に痛みあり

人間も、熊も、果ては文字まで、とにかく整骨院の看板は全部痛そうだった。

今回使用した写真を撮るために「より痛そうな」看板を探して歩く癖がついてしまったので、今後町中を歩くときは常に痛そうな顔をしていることになると思う。痛い顔をしすぎて本当に体のどこかが痛くなったら、さっさと目の前にある整骨院にお世話になろうと思う。
痛くはなさそうだが、施術してる側がなぜか不満顔
痛くはなさそうだが、施術してる側がなぜか不満顔
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