「タイガーバーム」とはなにか
「タイガーバーム」。有名な軟膏薬だが、何に効くのかはよく分からないという人も多いのではないか。しかし、とりあえず塗っておけば何かが治りそうなイメージがある。
本場のタイガーバーム
超もうかったので珍スポットもつくった
タイガーバームは中国の実業家である胡文虎、胡文豹の兄弟が開発。その後、シンガポール、香港を中心に販売展開し、巨万の富を得たという。
ちなみに巨万の富を得た人は、なぜかおかしな方向へと散財に走ることがあるが、胡兄弟の場合は「ハウパーヴィラ」という超A級の珍スポットを建設している。
その「珍」ぶりはこの写真一枚で分かっていただけると思う。このハウパーヴィラについては後日改めて語りたい
日本では薬局にしか売っていないタイガーバームだが、シンガポールでは観光客向けの土産物屋に必ず売っている。マーライオンかタイガーバームか、というくらいに同国ではポピュラーな存在らしいのである。
シンガポールの2大スター
日本のやつと何が違うのか?
では本場のタイガーバームは日本のやつと何が違うのか?
日本ではのど飴でおなじみの株式会社龍角散がタイガーバームを輸入販売しているのだが、日本人の肌に適応するようアレンジしてあり、本場のそれとは成分が異なるようだ。
ニオイのほうも本場のほうが若干きつい。さすが本場
強烈なメンソール臭で知られるタイガーバームだが、本場のそれは香りもさらに荒々しい。軟弱な日本人におもねらないというか、とにかく我が強い感じだ。
便の形状はほぼいっしょ
だが日本の虎の方はなぜか顔が赤い。酔っぱらいか
いろいろ軟膏薬くらべ
さて、冒頭でも述べたとおり、この手の軟膏薬は日本にもけっこうある。ドラッグストアや通販でいろいろ集めてみた。
軟膏オールスターズ
効能に違いはあるのか?
集めたのは6種類の軟膏薬。AKBでいえば神セブン入り確実のスターぞろいである。
いずれも馴染み深い軟膏薬だが、それぞれどんな効能があるのか調べたことはなかった。改めてチェックしてみよう。
■TAIGER BALM(本場)
【効能・効果】説明書が英語なのでよく分からないのだが、買った店のお姉さんによれば「頭に塗れば頭痛が治るし、腰に塗れば腰痛が治るわよ」などなど、もうとにかく何にでも効くという。あくまでお姉さん個人の見解だが「禿げにも効くし、ガンも治るわよ」くらいのことを言っていた ※たぶん効きません
■タイガーバーム(日本輸入版)
【効能・効果】筋肉疲労、筋肉痛、肩こり、うちみ、ねんざ、腰痛、神経痛、関節痛、リウマチ
■メンソレータム
【効能・効果】ひび、あかぎれ、しもやけ、かゆみ
■メンターム
【効果・効能】すり傷、やけど、しもやけ、虫さされ、そり傷、切り傷、打撲傷、神経痛、かゆみ、靴ずれ、ひび、あかぎれ、筋肉口イマチス、皮膚炎症
メンソレータムとメンターム。名前が似ている両者だが、メンタームのほうがより幅広い効果・効能をうたっている。ちなみにメンタームを販売している滋賀県の近江兄弟社はかつてメンソレータムの国内販売権をもっていたが、経営不振から販売権を返上。その後、類似製品のメンタームを主力ブランドとして再起を図ったという。
軟膏にも歴史あり、である。
メンソレータムのマスコットキャラ、ナースちゃん
対してメンタームは…インディアン?
■オロナイン
【効果・効能】にきび、吹き出物、はたけ、やけど(軽いもの)、ひび、しもやけ、あかぎれ、きず、水虫(じゅくじゅくしていないもの)、たむし、いんきん、しらくも
■ガマの油
【効果・効能】皮膚荒れを止め、キメを整え、うるおいを与える
こうしてみると同じ軟膏タイプといっても、それぞれ効能はだいぶ違う。ガマの油が美容クリームみたいな効能なのは意外だった。
ちなみに、筆者が子供のころ、我が家では「怪我したらとりあえずオロナイン塗っとけ」が合言葉であり、オロナインに対し全幅の信頼を寄せているところがあった。しかし今改めて効能をみると「水虫」「いんきん」など、どちらかというとおっさんの悩みに寄った効能である。31歳になった今も水虫やいんきんにならずに済んでいるのは、幼少期から肌にすりこみ続けたオロナインの賜物かもしれない。親に感謝したい。
次に色を比べてみる。タイガーバームは本場も日本もあまり変わらず
メンソレータムはクリーム色
メンタームも同じくクリーム色。全てにおいて模倣している
オロナインはホイップクリームみたいでおいしそう
意外だったのはガマの油。ストロベリークリームみたいな薄いピンクだ。ガマの体液ってこんな色なのかしら
塗ってみた
では、実際に肌に塗って、その質感、肌ざわり、匂い、効能のほどを確かめてみよう。およそ他媒体では見かけないレビューなので、この機会にあなた好みの軟膏薬が見つかれば幸いである。
■タイガーバーム(日本輸入版)
水っぽくゼリーのような質感で、少しベタっとする。肌に直接の刺激は少ないが、独特のメンソール臭が目と鼻を刺激する。電車の中では使用を控えたい
■TAIGER BALM(本場)
日本版よりクリーミーな質感。塗った直後から肌がスースーし、時間が経つごとに刺激が増す。軟膏を拭きとって腕を洗ってからもしばらくスースーしていた。まさにワールドクラスの攻撃力である
■メンソレータム
本場タイガーバームに近いクリーム質。匂いも同じくメンソール系だが、こちらはより湿布の匂いに近い。肌への刺激はあまりなく、スースーすることもない
■メンターム
類似品だけに質感、匂いともメンソレータムとほぼ同じ。だがこちらは時間の経過とともにじわじわ肌がスースーしてくる
■オロナイン
やさしい肌ざわりのクリームがよく伸びる。刺激はまったくなく、おかあさんの優しい手のひらを思い出す。また、子供の頃は気にしてなかったが、コレすごくイイ匂いだ。薬品っぽさは微塵もないナチュラルな甘い香り。これからは香水代わりにオロナインをつけよう
■ガマの油
イメージ的にもっと汗くさい感じかと思ったが、まったくの無臭、無刺激。ネーミングのインパクトとは裏腹に、もっとも地味な印象
軟膏で眠気は覚めるのか?
ところで、まぶたや目の下にタイガーバームを塗って眠気を覚ますという話をよく聞く。
日本のタイガーバームの説明書には「目の周囲や粘膜には仕様しないでください」との注意書きがあるのだが、シンガポールでTAIGER BALMを売ってくれたお姉さんも「眠気も覚めるわよ~、ビンビンよ~!」と言っていたし、本当かどうか試してみよう。
ということで目の下にTAIGER BALMを塗ってみる
…
ぐわっっっ!!!!
非常にキケンですのでやめましょう
これはまずい! つきさすような強烈な刺激が下から襲ってくる。確かに目は覚めたが、ひきかえに目玉をえぐる虎の一撃のような痛みがやってくる。非常にキケンですのでみなさんはマネしないでください。
ボロボロ涙が出た
軟膏通になりました
どれも同じだと思われがちな軟膏薬にもそれぞれ個性がある。おもしろくなって塗っては拭いてを何度も繰り返していたら、効き軟膏ができるくらい軟膏通になってしまった。この特技、どっかで生かせないだろうか。
とりあえずオロナインは万能ではないことを母に教えてやりたいと思う。
しばらく目が開かなかった。軟膏薬は用法を守って正しく使いましょう