特集 2012年8月24日

ヘラヘラ理論を検証する

何事もヘラヘラやればうまくいくんじゃないか
何事もヘラヘラやればうまくいくんじゃないか
先のロンドンオリンピックにて素晴らしい活躍をみせた日本勢。獲得メダル数の更新に加え、「史上初」「○○年ぶり」といった快挙も目立った。

個人的に最も印象深かったのは、銅メダルを獲得したアーチェリー女子団体チームの和気あいあいとした雰囲気と明るい表情だ。五輪のプレッシャーなどどこふく風といった三人娘は、終始にこやかでじつに楽しそうだった。

もしかしたら勝負ごとは眉間にシワを寄せて遮二無二やるより、彼女らのように笑顔で、極端にいえばヘラヘラ挑むほうがいい結果が得られるのかもしれない。
1980年生まれ埼玉育ち。東京の「やじろべえ」という会社で編集者、ライターをしています。ニューヨーク出身という冗談みたいな経歴の持ち主ですが、英語は全く話せません。

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> 個人サイト Twitter (@noriyukienami)

笑顔が咲いたオリンピック

アーチェリーチームだけでなく、銀メダルを獲得したなでしこジャパン(女子サッカー)も試合前やハーフタイムの表情はにこやかだった。逆に、金メダルゼロに終わった男子柔道は、全員が気の毒になるくらい深刻な面持であった。

勝負の最中に笑顔を見せることに、真剣さが足りないとの印象を抱く人もいるかもしれない。じっさい、それで負けてしまえば批判の的になることも考えられる。

だが、あまりシリアスになりすぎるより、じつは若干ヘラヘラするくらいの精神状態で挑んだほうがいいのではないか?

ヘラヘラと身体能力の関係

論より証拠。本当にそんなヘラヘラ理論が正しいかどうか、いろいろ検証してみよう。まずは単純に、ヘラヘラすると身体能力は向上するのか試してみる。
まずはジャンプ力で検証してみる
まずはジャンプ力で検証してみる
1回目はマジメに飛びます
1回目はマジメに飛びます
えいっ
えいっ
マジメに挑んだだけあって、天井に届かんばかりの好記録が出た
マジメに挑んだだけあって、天井に届かんばかりの好記録が出た
心静かに集中力を高め、一気に開放する渾身のジャンプ。いきなり天井まで届こうかという好記録が生まれた。これを超えるのは至難のワザに思える。本当の五輪ならガチガチに緊張してしまう場面だ。しかし…
「超ウケるんですけど!!!」
「超ウケるんですけど!!!」
ヘラヘラというか、もはや爆笑してしまっているコイツがさっきよりいい結果を出せるとは思えないし、なんか腹立つので出してほしくない気もするがはたして?
いっきま~す!
いっきま~す!
アーッハッハー! おもろ~、ジャンプおもろ~
アーッハッハー! おもろ~、ジャンプおもろ~
なんとヘラヘラ(右)の勝利
なんとヘラヘラ(右)の勝利
ご覧の通りヘラヘラが勝利した。勝負の世界は残酷だ。

念のため言っておくが企画を成立させるためどちらかに手心を加えることは一切していない。シリアスもヘラヘラも同じ自分。両方に勝ってほしいと思いながら試技に挑んでいることをサラマンチ会長に誓う。(※前IOC会長)

ただ、これだけではまだ理論が成立したとは言い難い。他の競技でも試してみよう。
日の丸を背負う覚悟で反復横飛びをします
日の丸を背負う覚悟で反復横飛びをします

反復横とびではどうか

続いての競技は反復横とび。30秒で何回ラインをまたげるかを競う。こちらもまずはマジモードで挑戦。
スタート
スタート
負けたら国に帰れないくらいの気持ちで
負けたら国に帰れないくらいの気持ちで
ここまで育ててくれた両親や恩師の顔を思い浮かべながら必死で頑張った結果、38回という記録が出た。良いのか悪いのかよくわからない数字だがベストは尽くせたと思う。
ちょっと休憩
ちょっと休憩
続いて、ヘラヘラしながら飛びます
続いて、ヘラヘラしながら飛びます
スタート
スタート
ウヒヒー!た~のし~
ウヒヒー!た~のし~
勝負とかいっさい忘れて横とびを反復する行為を心から楽しんだ結果、やはり先ほどを上回る43回という記録が出た。ヘラヘラの2連勝だ。瞬発系の競技に関しては、ある程度ヘラヘラ理論があてはまるのかもしれない。

ヘラヘラで足は速くなるか?

では、それ以外の競技にもヘラヘラの効能は作用するのだろうか? 例えばランニングはどうだろう。
いつものランニングコース。ヘラヘラ走ったらタイムが上がるかも
いつものランニングコース。ヘラヘラ走ったらタイムが上がるかも
最近ダイエットと体力作りのために週に数回3kmほど走っている。過去3日の平均ラップを計ったら約23分だった。同じコースをヘラヘラ走ったらタイムは上がるのだろうか?
というわけで全力でヘラヘラ。あれ、おれってこんな顔だったっけ?
というわけで全力でヘラヘラ。あれ、おれってこんな顔だったっけ?
しかし雲ひとつない、絶好のヘラヘラ日和ですな
しかし雲ひとつない、絶好のヘラヘラ日和ですな
でも気を抜くとこんな顔になる。ヘラヘラをキープするのも意外と大変だ
でも気を抜くとこんな顔になる。ヘラヘラをキープするのも意外と大変だ
そういえば笑うとドーパミンが出て、心身にポジティブな影響を与えるなんて話も聞く。そのせいか、なんだか今日は足取りが軽い気がするぞ。
だが、そんな感覚とは裏腹にタイムは落ちた。平均より2分以上も遅い
だが、そんな感覚とは裏腹にタイムは落ちた。平均より2分以上も遅い
これが五輪だったら「ヘラヘラしてるからだ!」と批判を受けるところ
これが五輪だったら「ヘラヘラしてるからだ!」と批判を受けるところ
結果だけみればタイムは落ちた。ただ、しかめっつらで走るより笑顔で走るほうが苦しさはやわらぐ。これからは苦しくなったらヘラヘラしよう。傍から見るとただドMな人みたいだが。
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ヘラヘラでボーリングのスコアは上がるか

身体能力だけでなく、よりテクニックや集中力を必要とする競技の場合はどうか。例えばボーリング。要素的にはアーチェリーに近い気がするので、ヘラヘラ理論が当てはまる可能性は高い。
というわけで、ひとりボーリング場へ
というわけで、ひとりボーリング場へ
こちらもまずはマジメに挑む。一球一球魂を込めてボールをレーンに投じよう。
一球入魂
一球入魂
しかし、いきなりのガター
しかし、いきなりのガター
さらに2連続ガター
さらに2連続ガター
見ての通りぼくはボーリングがヘタだ。アベレージは60。調子がよくても80くらいである。ボーリング場にひとりで来る人ってなんとなく腕が立つイメージだが、ぼくの場合はヘタなのでただ友達がいない人みたいになってしまうのが悲しい。
ところが、この日はやけに調子がよかった。6レーン目で早くもストライクを出すという快挙を達成
ところが、この日はやけに調子がよかった。6レーン目で早くもストライクを出すという快挙を達成
でも、ハイタッチする仲間はいない
でも、ハイタッチする仲間はいない
結局1ゲーム目は「91」で終了。僕にとってはベストスコアに近い数字である
結局1ゲーム目は「91」で終了。僕にとってはベストスコアに近い数字である
ひとりだと順番待ちがないぶん自分のペースでリズムよく投げられる。そのせいか(僕にとっては)かなりのハイスコアが出た。

ヘラヘラしながら挑んだら、もっといいスコアが出るのだろうか?
エヘヘ
エヘヘ
球で顔を隠せるので思う存分ヘラヘラできる
球で顔を隠せるので思う存分ヘラヘラできる
それ~
それ~

ヘラヘラしたらベストスコアが出た

平日の昼間にひとりヘラヘラと球を転がすおじさんは冷静に考えると若干変態っぽいが、それに見合うだけのリターンがスコアに表れた。

驚くことにヘラヘラしたらボーリングがうまくなったのだ。
なんと三連続スペア。どうしちゃったの?という好調ぶり
なんと三連続スペア。どうしちゃったの?という好調ぶり
エアハイタッチ
エアハイタッチ
ストライクを出してはしゃぐ子供と心の中で喜びを分かち合う
ストライクを出してはしゃぐ子供と心の中で喜びを分かち合う
けっきょく、ヘラヘラで挑んだ2ゲーム目は「105」。生まれて初めて100の大台を超えた
けっきょく、ヘラヘラで挑んだ2ゲーム目は「105」。生まれて初めて100の大台を超えた
このスコアシートは家宝にします
このスコアシートは家宝にします
堂々のスコア100超え。ボーリング苦手だったのに一気にワンランク上の存在になってしまった。

最初は半信半疑だったけど、ヘラヘラ理論、なんか本当に本当っぽいじゃないか。うん、なんだか自信ついちゃったな~。
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ヘラヘラで細かい作業は上達するか?

スポーツにおいては一定の成果が出たヘラヘラ理論。では事務的な作業の場合はどうか?

例えばiPhoneに保護シートを張るという作業。不器用な僕はこれが大の苦手。どうしても綺麗に張ることができずにイライラしてしまう。

だがイライラせずにヘラヘラしてみたら案外うまく張れるかもしれない。
真剣に張ると
真剣に張ると
ただただイライラするのみ
ただただイライラするのみ
でもヘラヘラ張ると
でもヘラヘラ張ると
ちょっと楽しい
ちょっと楽しい
イライラiPhone
イライラiPhone
ヘラヘラiPhone
ヘラヘラiPhone
左がイライラしながら張ったiPhoneで、右がヘラヘラしながら張ったiPhone。どちらが上とも言い難い微妙な結果だが、見た目的にほとんど変わらないならヘラヘラしてたほうがハッピーだ。

ヘラヘラで歌はうまくなるか

最後に挑むのは歌。ヘラヘラすることで歌唱力はアップするのか検証してみたい。
ひとりには広すぎる個室
ひとりには広すぎる個室
カラオケ自体5年ぶりくらいなので機械の扱いを理解するのに時間がかかった
カラオケ自体5年ぶりくらいなので機械の扱いを理解するのに時間がかかった
10分の格闘の末、ようやく曲が入った
10分の格闘の末、ようやく曲が入った
まずは心を込めて歌い上げる
まずは心を込めて歌い上げる
結果は64.260点。全体的に音痴だがリズムだけはやけに高評価
結果は64.260点。全体的に音痴だがリズムだけはやけに高評価
同じ曲を今度はヘラヘラ歌う
同じ曲を今度はヘラヘラ歌う
66.301点。音痴なことには違いないが、点数がアップした
66.301点。音痴なことには違いないが、点数がアップした
若干ではあるが点数がアップした。他の曲でも試してみよう。
2曲目
2曲目
シリアスカブトムシは76.474点
シリアスカブトムシは76.474点
対してヘラヘラカブトムシは71.094点
対してヘラヘラカブトムシは71.094点
3曲目
3曲目
シリアス73.217点
シリアス73.217点
ヘラヘラ72.019点
ヘラヘラ72.019点
今度は2曲連続で点数が下がった。ヘラヘラすると口の形が限定されるため、高音域に難が出るようだ。しかし一方で、気分の高揚によってリズム感や表現力はアップすることが分かった。

以上のことから、ヘラヘラ歌唱法にはノリのいい曲が合っているといえそうだ。
じっさいノリのいい曲で試してみると
じっさいノリのいい曲で試してみると
シリアスマジンガーでは72.840点なのに対し
シリアスマジンガーでは72.840点なのに対し
ヘラヘラマジンガーは78.659点と大幅アップ
ヘラヘラマジンガーは78.659点と大幅アップ

同じ結果なら楽しいほうがいいじゃない

と、まあ色々やってみたわけだが、分かったのは深刻な顔でやろうがヘラヘラしようが、そんなに結果は変わらないということ。全体的にヘラヘラのほうが結果がよかったのも、こう言っちゃうと身も蓋もないがおそらく「たまたま」だろう。

何が言いたいかというと、どうせ同じ結果なら眉間にシワを寄せるより、ヘラヘラやったほうが楽しいんじゃないの? ということです。
おっさんのひとりカラオケはせつない
おっさんのひとりカラオケはせつない
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