特集 2012年7月23日

酒が最も進むカステラ

カステラを名物として出している居酒屋があるらしい。
カステラを名物として出している居酒屋があるらしい。
なになに、ウイスキー飲むときはチョコをつまみにちびちびと、みたいな話かい?おしゃれだねぇ。と思ったら実際は瓶ビールやコップ酒がグイグイ進むものだった。
1983年三重県生まれ、大阪在住の司法書士。
手土産を持参する際は消費期限当日の赤福で受け取る側に過度のプレッシャーを与える。

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> 個人サイト owariyoshiaki.com

予想以上に身近にあった

まったく普通の居酒屋である。
まったく普通の居酒屋である。
居酒屋のカステラ、そんな珍しいものいったいどこで食べられるんだ…と思って調べてみたら、大阪市内中心部で何度も前を通ったことがあった店だった。
5時過ぎなのに、すでに出来上がってるテーブル多数。
5時過ぎなのに、すでに出来上がってるテーブル多数。
店内に入ると平日のまだ日も暮れてない時間だというのに、ほぼ満員。予想以上の熱気の中かろうじて空いていた席を確保。

カステラって食べてみたい。位の気分に対して煙草と焼き鳥、揚げ物のにおいが混じりあった空気がガツン!ときた。ビール飲みたい!! 扇風機のぬるい風を浴びながら瓶ビールを注文する。
この液体、輝いてるぞっ…!
この液体、輝いてるぞっ…!
生ビールでグイっといきたい気持ちを抑えてここは瓶。カステラという正体不明の敵に備え、相性に合わせてすぐに酒を変えられるようにフットワーク軽く様子見の意味での瓶。

ああぁ、美味い。染みわたる。季節で変わる景色も楽しいが、変わらないビールの味がものすごく美味しく感じるからそれだけで夏はいいものだ。

居酒屋のマエストロおかん

左下のまぐろ角煮のフダはこの後すぐに落ちてきて、ずっとテーブルの上にあった。
左下のまぐろ角煮のフダはこの後すぐに落ちてきて、ずっとテーブルの上にあった。
喉を潤したところでメニューを見る。カステラが無い。が、なんとも魅力的なラインナップ。誰もホームランは打ちそうにないが、絶対に三振はしないようなチームだ。

とりあえず、で出し巻と焼き鳥を頼もうとするが店員さんが捕まらない。ほぼ満席の店内を50代位のおばちゃんが一人で走り回っているのだ、そりゃ手が回らないわ。
こっちにもカステラの記載は無し。裏メニューなのではなのか。
こっちにもカステラの記載は無し。裏メニューなのではなのか。
周りのお客さんも店員が捕まらず、普通の居酒屋なら空気悪くなりそうなものだが、このおばちゃんが「今やってるから待ってなー」というとみんな、じゃあしゃあないな…。となるのだ。おばちゃんが場を支配している。

お客さんが「注文したイカまだか~?」というとおばちゃんは「無いんちゃうか、他のにしとき」と返す。お客さんが席について「いつもの」というとおばちゃんは「よっしゃ、いつものな。で、なんやったっけ?」と返す。

大阪に住んでても、大阪のおばちゃんホンマにこんなこと言うんや…。位のおかんと客全員子供たちみたいな状況になっていて、ほんわかとした雰囲気でビールが進む。

カステラがない

焼き鳥、超美味い。
焼き鳥、超美味い。
と、単純に楽しく飲んでしまっているが、本当の目的はカステラだ。そろそろいくか…と思って聞いてみた。

僕「おかあさん、カステラありますか?」
おばちゃん「ありまっしぇーん!」

えええっ、ありまっしぇーん、って。いやいやいや、おかんジョークやな。

おばちゃん「あっちの店でーっしゅ!」
僕「えっ、ほんとに!?」
おばちゃん「ホンマにホンマに」

確かに、あっちの方に同じ名前の居酒屋がある…。あっ、これ、店舗によって出してる商品違うパターンか。
頼んでないのに出てきた砂肝。美味かった。
頼んでないのに出てきた砂肝。美味かった。
もうしばらくここで飲んでたい気持ちはあるが、目的はカステラ(忘れかけ)だ。後ろ髪をひかれるが「兄ちゃんごめんなー」といわれながら後にする。

こっちでもないのでは

店を出て、五分くらい歩いて正宗屋から正宗屋に移動する。
同じ店じゃーん、って思ったけど、今見たら看板に掲げてるのアサヒとキリンだし、同名の無関係の店なのかも知れない。
同じ店じゃーん、って思ったけど、今見たら看板に掲げてるのアサヒとキリンだし、同名の無関係の店なのかも知れない。
すでに酔っ払っているのでメニューなど見ずに着いたー。と喜んで中に入る。
無いな、カステラ。
無いな、カステラ。
こちらも凄く繁盛している。さっきのアットホームな感じよりはやや普通の居酒屋寄りといった感じ、全部おばちゃん一人の力という気もするが。
無いな。まずいな、これは。
無いな。まずいな、これは。
が、こちらもメニューにカステラは無い。まずい、これはまずい。ここで無ければ次に行く、という余裕は無くそのまま飲んで帰って寝ちゃいそうだ。
カステラの上のぼんやりとした部分は携帯電話の番号が書いてあった。
カステラの上のぼんやりとした部分は携帯電話の番号が書いてあった。
これはまずいことになってきたぞ、と思っていると壁に張っていた仕事用のメモらしき物に「カステラ」との文字が。おぉ、これはあるぞ。

カステラ、濃い

カステラや、ホンマにカステラや…。
カステラや、ホンマにカステラや…。
店員さんにカステラ下さいと言うと、あいカステラ!といって10秒もしないくらいで出てきたそれは、まさにカステラ。味は一体…。

一切れ口に運ぶとグワッと広がる濃い旨みと、かまぼこを煮詰めたような香り。カステラじゃないとは分かっていたけれど、実際に食べると結構な衝撃。
これは一体。上はネットリ、下はポコポコした食感。
これは一体。上はネットリ、下はポコポコした食感。
このカステラ、上の部分がカニみそで下が鯛の子をほぐして蒸して固めたものらしく、珍味珍味アンド珍味がポップな姿をした存在。

料理は目でも楽しむとよく言うが、これは美味しそうな姿を楽しむのではなく、イメージする味と実際の味のギャップで旨みと香りをより強く感じるという楽しみ方。
カステラは日本酒だな!ってビールから変えたのに、日本酒の写真撮り忘れてたから、ビールの写真。
カステラは日本酒だな!ってビールから変えたのに、日本酒の写真撮り忘れてたから、ビールの写真。
ただでさえかけらをつまんでちびちび飲んで十分な旨みと癖があるのに、カステラの姿に騙されて大きく一口食べて旨みの堤防が決壊させられるので一口目の衝撃が物凄い。

ただの見た目でのウケ狙いかと思っていたが、実際食べてみると十分に見た目の効果があった。あと、居酒屋さんでおっさんがカステラ食べてるのを見るのが面白い。

外に飲みに行くと、よくわかんない食べ物があったり店員さんが面白かったり、予想外のことが起こるのが面白い。

自分の好きなもの頼んで好きな物食べてても完全に自分のペースではなく周りの雰囲気や人に影響される。飲み屋ってのは食べ物飲み物内装とかだけじゃなく、何もかも合わせて飲み屋だなぁと思った。またおばちゃんのいる飲み屋に行こうと思う。
げそ焼き超美味かった。
げそ焼き超美味かった。
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