特集 2012年7月23日

トランプタワーに地震対策をする

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遊びに、アンバランス系というジャンルがあると思うのだ。トランプタワーとか、ジェンガとか。ドミノ倒しなんかもここに分類してもいいかもしれない。

僕は心配性なので、ああいうの見てると、ついつい心配になってしまう。地震のことだ。クラス全員で1週間かけて並べたドミノ、地震が来たら、たとえ震度1でも、全部のドミノが「済」になってしまう可能性がある。ドミノだけじゃない。手に汗握って作ったトランプタワーだって…。
インターネットユーザー。電子工作でオリジナルの処刑器具を作ったり、辺境の国の変な音楽を集めたりしています。「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」主催者。1980年岐阜県生まれ。(動画インタビュー)

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地震対策グッズいろいろ

そういうわけで今回は徹底的に地震対策をしてみる。まずは地震対策グッズを見にお店にやってきた。昨年のこともあって、お店では売り場がかなり大きくなっている。こちらはうちの近所のホームセンターの様子。
もうみっしりである
もうみっしりである
グッズのほとんどは、家具の転倒防止に関するものだ。
何軒かのお店を回ってみると、これら転倒防止グッズはいくつかの種類に分けられることがわかった。

1.壁に固定するタイプ

これはワイヤーで固定するタイプ
これはワイヤーで固定するタイプ
金具を壁と家具の両方に取り付け、ワイヤーや鎖、ベルトなどで引っ張っておくことで、転倒を防止するものだ。ほかにL字型の金具で直接家具を壁に固定してしまうものもある。愛情を束縛で表現するタイプのグッズたちである。

2.天井に固定するタイプ

かなりデカイのもある
かなりデカイのもある
いわゆるつっぱり棒。天井と家具の間をつっぱっておくことで、家具を固定する。一本の棒に足がついた構造のものが多いが、中にはこんなのもある。
自動車修理のジャッキみたいだ
自動車修理のジャッキみたいだ
うっかり締めすぎると天井をぶち抜いてしまいそうな迫力。どうでもいいけど「ふんばりくんZ」という名前にはシンパシーを感じる。

3.床に固定するタイプ

いわゆる耐震マット
いわゆる耐震マット
これはタンスなどの大物ではなく、OA機器みたいな小物に使われる。粘着かつ揺れを吸収するマットで、家具を床にくっつけてしまうことで倒れなくする。
デモがあったんだけど、軽く目を疑うほどのくっつきぶり
デモがあったんだけど、軽く目を疑うほどのくっつきぶり
これだけくっつくなら手足につければ壁を登れるんじゃないかとかいろいろ思いつくが、それはまた別の機会に。

4.傾けるタイプ

幅の広いドアストッパーみたいなやつ
幅の広いドアストッパーみたいなやつ
家具前面の足の下に挟むことであらかじめ壁側に傾けておき、手前に転倒しないようにする。
単純すぎる仕組みに、え、こんなのでいいの…?という気がしないでもないけど、Amazonで高評価のレビューがたくさんついてたので意外に実力は確かなようである。

5.飛び出し防止タイプ

転倒防止とはちょっと違うんだけど、たとえば地震の揺れで食器棚から皿が飛び出て割れたりすると大変危険だ。それを防ぐためにこんなのがある。
戸開き防止チェーン
戸開き防止チェーン
他にも同じ目的で、食器の下に敷く滑り止めシートなんてのも。
これらは家具全般に使える他のタイプと比べて、用途がニッチだ。さらにネットで調べてみると、液晶テレビ専用固定金具とか、本棚専用の滑り止めシート、ピアノ専用ストッパーなんてのもあるようだ。極めつけが「地震対策専用墓地」。これだけで記事一本かけそうなレベルのニッチさである。

このように一口に地震対策グッズといってもいろいろあるんだけど、これらは全体に家具を対象に作られている。それを無理矢理トランプタワーに転用しようというのが今回の企画だが、はたして耐震性能は上がるのだろうか。

非耐震タワーを作ってみる

いくつかのグッズを買い込んだ。さっそく地震対策タワーの製作に移りたいところだが、そのまえに、比較のためにまずは地震対策しないでトランプタワーを作ってみる。
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実は、僕はトランプタワー懐疑派である。トランプを積んで塔ができるの、もしかして都市伝説なんじゃないだろうか。正直、トランプタワーよりは、まだスプーン曲げの方ができそうな気がする。実際、いままで僕が見たことあるトランプタワーはボンドでくっつけたやつだけである。
30分くらいやって最高傑作
30分くらいやって最高傑作
余談だが、去年タイに行ったとき、夜市の路上で、寝かせたビンの上に別のビンを立てる教室が開かれていた。何人かの若者が成功し、喝采を浴びていた。
あのとき僕も参加していれば、今頃トランプなど余裕で立てられたかも知れない。僕は隣で行われていた若者のラップバトルに制服の警官が乱入(制止する側でなくラッパーとして)したのが面白くて、ついついそっちに夢中になってしまったのだ。タイ語のラップは言葉がフニャフニャしててなんか可愛かった。

念願のマイホームだ

素のタワーの脆さはよくわかった。それだけで収穫としよう。早々にあきらめて地震対策版に移るのだが、そのまえにもうひとつ下準備。家づくりだ。前ページで紹介したように、地震対策グッズの大半は壁やら床やら、家のどこかに家具を固定するように作られているのだ。
念願のマイホームは総工費800円
念願のマイホームは総工費800円
板を組み合わせて床と壁を作成。家具の前にこの家自体がものすごく地震に弱そう…。
だがここにこだわるとキリがないので無視して次へ進む。

まずは土台から

いよいよ地震対策版の制作に移る。まず最初に使うのは、こちらのグッズ。
耐震マット
耐震マット
OA機器の下に敷くタイプのやつだ。トランプが揺れないように、床の上にこれを貼る。
等間隔に並べて
等間隔に並べて
カードを設置。
カードを設置。
頼もしい粘着力。指先でグラグラしてみても、カードの足下はピクリとも動かない。土台は完璧だ。
と思って手を離した瞬間。
パタリ
パタリ
…
一瞬で倒れた。カードの足元だけとめて、肝心の上端が固定されてないからか。まあ、考えてみりゃそうだよな…。

食器棚に学べ

これを使おう
これを使おう
次に取り出したのは滑り止めマット。食器棚に敷いておくと、地震の時も食器が飛び出ない。
カードと同じサイズに切って
カードと同じサイズに切って
おお…
おお…
1段目のカードを食器棚とすると、上に乗るカードは食器である。そういった見立ての元に、食器カードの下に滑り止めマットを敷いた。マットが下のカードをグリップしてくれるため、全体がうまく固定されたのだ。
2枚目も余裕
2枚目も余裕
すごい安定感なので、崩さずに横に移動させたりできる
すごい安定感なので、崩さずに横に移動させたりできる
1段目が完成
1段目が完成
ほんとに驚くほどの安定感である。試しにちょっと揺らしてみよう。
ビクともしない
ビクともしない
ここで白状するが、こんな記事を書いておいて、僕の家はまだ家具に地震対策をしてない。そんな僕でも、さっそく今週末にでもやろう、と決心するほどの絶大な効果であった。

超能力としての耐震

同じやり方で、塔の2段目もサクサク積んでいく。
耐震マットは段ごとに敷いていく
耐震マットは段ごとに敷いていく
2段目、完成
2段目、完成
ほんとうに順調にトランプタワーができていく。さっきのスプーン曲げの話じゃないけど、自分が新たな超能力でも身につけたような気分である。スプーン曲げや透視、テレパシーに続く新たな超能力のジャンルとして、「耐震」というのがあってもいい。

壁に固定

いいか、人間な、こうやって調子に乗り始めたタイミングが、一番失敗しやすい時なのだよ。いまのところ耐久性に不安はないが、このあたりでカブトの緒を締め直す気持ちで、新たな地震対策も導入しておきたい。
家具転倒ストッパー
家具転倒ストッパー
これは壁に打ち付けるタイプの、転倒防止金具である。
2段目までをひとつの家具と見立てて、その上部を壁に固定することにしよう。
L字の方向が変えられて便利
L字の方向が変えられて便利
この角度にしよう
この角度にしよう
パッケージ裏の説明を見ながら、より耐震効果の強そうな方向で設置。
ネジでしっかり固定して
ネジでしっかり固定して
完成
完成
2段目の天板に当たるトランプが、壁に完全に固定された。
さて、ここで従来のトランプタワーの常識を覆す事態が起こっている。このまま3段4段と積んだ場合、2段目より下が全部崩れても、金具で固定したこのカードが床になるため、3段目より上は崩れずに維持可能なのだ。
耐震が、ついにチートの域に達した。

ゲーム性ゼロ

3段目に着手。耐震マットが変わりました
3段目に着手。耐震マットが変わりました
いろんなマットを買ってきたのでここから色を変えてみた。
途中で誤って崩してしまったが、下の段はビクともせず。
途中で誤って崩してしまったが、下の段はビクともせず。
トランプタワーの難しさに、「ちょっとミスすると最初からやり直しになってしまう」という点が挙げられる。耐震タワーはそんなの無視である。ブロック落とす途中でセーブができるテトリスといった感じで、大変ヌルい。
ちょっとサマになってくる高さまできた
ちょっとサマになってくる高さまできた
ここでさらに新兵器を投入する
ここでさらに新兵器を投入する
今度はワイヤーで壁に固定するタイプのもの。
負荷20kgまで対応のオーバースペックぶり
負荷20kgまで対応のオーバースペックぶり
しかしワイヤーがちょっと長すぎた
しかしワイヤーがちょっと長すぎた
ので巻いて止めます
ので巻いて止めます
ワイヤーを巻くのは正しくない使い方なので普通の家具なら絶対にやってはいけないところだが、今回はトランプタワーがめちゃくちゃ軽いのでこれでも十分な支持力が得られた。

※地震対策グッズを設置するときは説明書をしっかり読んで正しい使用法で使いましょう
バーン
バーン
なんだか金具が増えてくるに従って妙なメカメカしさが漂ってきた…。

最後の難関

つづいて4段目まで進める
つづいて4段目まで進める
この時点で、残りの工程は最後の一段を残すのみ。
ただ、ここが難関なのだ。

いままでと違って、5段目はもう上にカードを載せない。カードの下に敷いていた滑り止めマットも載せられない。すると、カード上部が固定できないのだ。
いま指で支えてる部分ね
いま指で支えてる部分ね
ここは発想を変えて、また別のグッズを投入することにした。
転倒防止と戸開き防止のタッグ
転倒防止と戸開き防止のタッグ
ここまで、カードを家具や食器に見立てることによって、耐震グッズの本来の用途に沿った使い方を心がけてきた。
(たとえば滑り止めマットでカードをくるんでしまえば絶対に崩れないタワーができるけど、それは本来の使い方じゃないからダメなのだ)
今回もちょっと複雑な見立てをすることで(=こじつけを考えることで)、そのルールは遵守していきたい。

まず戸開き防止。
本来の使い方
本来の使い方
カードを扉に見立てる
カードを扉に見立てる
こうすることで、カードが開きすぎてしまうのを押さえることが可能だ。
この状態
この状態

しかしそれでも安定感が悪かったので、転倒防止も投入。
こちらはトランプタワー自体を家具に見立て、その最上部を壁に固定する、という理屈。
最上階をチェーンで固定。
最上階をチェーンで固定。
ここでもチェーンが長かったので説明書を無視して折り返したら、不良中学生の財布みたいにすごくジャラジャラになってしまった。

※地震対策グッズを設置するときは説明書をしっかり読んで正しい使用法で使いましょう

というか、そもそもトランプタワーに使ってる時点で正しい使用法ではないのですが。

そしてようやく、耐震トランプタワーはその全貌を表した。
ババーン
ババーン
これだけ歪んでるのにバランス崩さずに立ってるのがすごい…。

その全貌

足下には耐震マットと滑り止めマット
足下には耐震マットと滑り止めマット
2段目に転倒防止金具。
2段目に転倒防止金具。
4段目に転倒防止ワイヤー
4段目に転倒防止ワイヤー
そして最上階は戸開き防止&転倒防止のダブル
そして最上階は戸開き防止&転倒防止のダブル
再び全貌を
再び全貌を
作業工程ですでに、通常のトランプタワーより遙かに強力な耐震性能を有していることは明らかだ。では実際どのくらいの揺れに耐えられるのか、揺らして試してみよう。
これ、決して接着剤でとめてるわけではないので、手でなぎ倒せば簡単に崩れる。それなのに、縦揺れ、横揺れ、円を描くような揺れ…。いろんな揺れを試してみたが、いずれもビクともしない。振動に対してそうとうな耐性があるのだ。
ちなみに最上部だけ揺れやすいのは、チェーンの重さのせい。カードの方が軽いので、チェーンが揺れるのに引っ張られてしまうのだ。家具からトランプへの転用の弊害。ここだけは若干改善の余地があるかもしれない。

耐震しようぜ

思った以上に頑丈になった耐震トランプタワー。今後、アンバランス系のものはすべて耐震にしていくという方向性はアリだと思う。ドミノ倒しも下に耐震マットを敷こう。ジェンガも壁に金具で固定しよう。いっそのこと一輪車も天井に固定すればばっちり安定するし、御社のバランスシートも地震対策すれば経営が安定するかもしれませんよ…。

と唐突な社会人ギャグで読者のみなさまを不安定な気持ちにさせたところで、この記事は締めさせていただきます。
調子に乗って思いっきり振ったらさすがに崩れた。それにしても1~2段目の丈夫さが異常。
調子に乗って思いっきり振ったらさすがに崩れた。それにしても1~2段目の丈夫さが異常。
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