特集 2012年7月16日

クールさ基準でジャンケン対決

このあと必殺のグーチョキパーが繰り出される
このあと必殺のグーチョキパーが繰り出される
「ジャンケン」というシステムがある。グー・チョキ・パーの手の形を出し合って、勝敗を決めるものだ。 誰でも子供の頃から何度もしてきていると思う。どうだろう、もうそろそろ飽きてる頃ではないだろうか。

来る日も来る日も決まり切ったグーチョキパー。そういう制度から自由になってジャンケンをしてみたい。
1973年東京生まれ。今は埼玉県暮らし。写真は勝手にキャベツ太郎になったときのもので、こういう髪型というわけではなく、脳がむき出しになってるわけでもありません。→「俺がキャベツ太郎だ!」

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勝敗基準も曖昧な新ジャンケンシステム

生まれてからこれまで、大人ならもうそれぞれ何百回レベルで出しているであろうグーチョキパー。冷静に考えれば、うんざりしてきてもおかしくないはずだ。

そんな停滞を打破するべく、新しいジャンケンを考えてみたい。
格闘ゲーム風の構えから
格闘ゲーム風の構えから
まず相手になってもらったのは、当サイトのライター、平坂さん。シャッターの下りた夜の商店街でファイティングポーズを取って向き合ってみる。
最初はグー!
最初はグー!
ジャーンケン…
ジャーンケン…
通りすがる人たちの中には、私たちを見てハッとして「…こいつら、やんのか?」という顔になる人もいる。しかし安心してほしい、僕らがやろうとしているのはジャンケンだからだ。あくまで平和的なのだ。
ホーイ!
ホーイ!
新ジャンケンでは、それぞれが自分なりのグーチョキパーいずれかのポーズを出す。既存のグーチョキパーにとらわれることなく、全身を使って表現することにしたい。
「ウオリャー!」(パー)
「ウオリャー!」(パー)
「フッ…」(パー)
「フッ…」(パー)
両腕をねじって前に突き出した私に対して、斜めに背を向けて振り向きざまに手を出した平坂さん。形の種類は共にパーだ。

通常のジャンケンの場合、これは「あいこ」となるわけだが、新ジャンケンでは違う。
どっちでもいいこと聞いちゃってごめん
どっちでもいいこと聞いちゃってごめん
審判の裁定は絶対と自分に言い聞かせて
審判の裁定は絶対と自分に言い聞かせて
このジャンケンでは審判を設け、勝敗を判断してもらうことにする。その基準は「クールさ」だ。今回のジャッジは同じくライターの小堺さんにお願いした。

判断内容がどうでもいいことゆえに、笑顔になるしかない小堺さん。判定をお願いすると、勝者は平坂さん。

確かに写真を見ると、自分でもそう思う。クールとは何かは自分でもよくわからないが、その要素は平坂さんの方が上なのはわかる。悔しいけど結果を受け入れよう。
いつの間にか小堺さんの心に火が付いてた
いつの間にか小堺さんの心に火が付いてた
このクールジャンケンは男女共通の競技。続いての相手として小堺さんにお願いしたところ、なぜか上着を脱ぎ始めた。
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うすぼんやりした真剣勝負

当初は恥ずかしそうにしていた小堺さん。私が「じゃあとりあえず『最初はグー』までやってみましょう」と、無理のある説得をしたところ、やる気になってくれたようだ。
オアチャー!
オアチャー!
ジャンケーン…
ジャンケーン…
ポーズを出す途中の写真は妙にスピード感があって、格闘ゲームのワンシーンのようでもある。通りすがる人の中には「相手は女性だぞ…」といぶかしむ表情の人もいるが、やろうとしていることはジャンケンなので通報とかしないでおいてほしい。
ホーイ!
ホーイ!
ガシーン!
ガシーン!
体側部のストレッチも兼ねたポージングの小堺さんはチョキ、頭の上に握り拳を並べた私はグーだ。

通常ジャンケンでは私の勝ちとなるが、今回はクールジャンケン。勝敗はあくまで審判にゆだねられるのだ。勝負の行方はジャッジの平坂さんに判定してもらう。
勝者と敗者の構図はいつもむごい
勝者と敗者の構図はいつもむごい
「これは小堺さんの勝ちですね」と平坂さん。なぜだ、なぜなんだ。

理由を尋ねたところ、「小野さんのは『プンプン!』ってやってみたいで、かわいくなっちゃってるから」とのこと。そうか、クールさじゃなくて、かわいさ出ちゃったか…。

そういうことなら仕方ない。言われて納得の敗戦だ。

期せずして信号みたいになってる
期せずして信号みたいになってる
続いて勝負を申し込んだのは、ライターの藤原さんと小柳さん。こうして並んでみると、全くの偶然なのだが並び順の違う信号機のようになっている。戦いの三つ巴を予感させると解釈すればよいのだろうか。まずは藤原さんと対戦しよう。
ショアー!
ショアー!
ジャンケーン、ホーイ!
ジャンケーン、ホーイ!
ガシーン!と技を出し合ったところで、周囲の空気が固まる。男同士の対決の真剣勝負だ。
西部劇でこういうシーン見たことある
西部劇でこういうシーン見たことある
でも誰も死にはしないクールジャンケン
でも誰も死にはしないクールジャンケン
両者とも股間スルー系のポージングとなったこの対決。しゃがんだ足の間から両手でグーを出した私に対して、藤原さんは逆向きになってオープンにパー。

この勝負にジャッジ小柳さんの判定は、小野の勝ち。理由は「藤原さんは何でも受け入れるような幅広い体勢になっていて、勝ちに行ってる感じがしないから」。いよいよ勝敗基準が深い森を迷い始めたような話になってきた。
ジャンケーン…
ジャンケーン…
ホーイ!
ホーイ!
続いてはその深い勝敗理由が印象的だった小柳さんとの対決。

クールとは何かがいよいよわかんなくなってきて、ファニーに走り始めたパーの私に対して、苦悩や祈りをも感じられるグーを繰り出した小柳さん。
ポーズのコントラストが高い
ポーズのコントラストが高い
そして色のコントラストも高い
そして色のコントラストも高い
藤原ジャッジの判定は、小柳さんの勝利。理由は「小野さんがはじめからプルプルしていてこれは勝敗は決まったなと思ったら、小柳さんが途中から尋常じゃなく小刻みに振動し始めて迷いだした。でも最初からプルプルしてるのはクールじゃないので小柳さんの勝利」という話だったと思う。

クールジャンケンの勝敗基準は、合理性に依拠してなくていい。今回はプルプル感の有無がそれだったのだ。
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一族を巻き込んだ戦いへと発展

信号機トリオの最終対決は、藤原さんと小柳さん。そして私はジャッジ初体験となる。
この時点でもう面白いのがなんかずるい
この時点でもう面白いのがなんかずるい
2人ともこれまでにない方向へシフト
2人ともこれまでにない方向へシフト
ファイティングポーズを2人に取ってもらうと、既に勝負が始まっている雰囲気が漂い始める。審判としてはここで決着をつけてもいい気分になったが、いざ考え始めるとやっぱり勝負をつけがたいので、通常通りポージングフェイズへと進行願う。
シャキーン!
シャキーン!
これぞクールジャパン
これぞクールジャパン
2人とも寝技を繰り出してきた。今まで出てこなかった発想だ。ただ、ポーズからグーチョキパーが一目では読み取りがたい。確認してみると、両者ともチョキとのこと。

ハサミを体現した藤原さんと、足でチョキ的な形を作った小柳さん。言われてみて「ああ、なるほど!」と思ったと同時に「やっぱり普通のジャンケンの方がわかりやすいな…」と、発案者なのにやってることの根幹を揺るがすようなことを思ってしまう。
確かにいい感じのハサミ感
確かにいい感じのハサミ感
でも勝者は小柳さん
でも勝者は小柳さん
審判の私としては迷ったところだが、勝者は小柳さんということでジャッジ。理由は「このまま両者が近づいていったら、小柳さんの鋭い足先が藤原さんの股間に突き刺さるから」というもの。

自分で審判をしてみると、どうでもいいことに何らかの合理性を求めてしまっているのが意外に思える。ここでのクールさとは、股間に足が刺さることだったのだ。

最後の対戦相手を求めてやってきたのは実家。いろいろな世代が思うクールさというのを確かめてみたいからだ。
そういうわけで頼みます
そういうわけで頼みます
なんだろうね
なんだろうね
企画の趣旨を説明すると、首をひねって無言の2人。「クールってのがよくわからない」とのことだったが、自分もよくわかってないので、ここは自由に解釈してほしい。

しかしいざ対戦となると、母の構えは意外と様になっている。覚悟が決まったらしい。
ジャーンケーン、ホーイ!
ジャーンケーン、ホーイ!
かけ声と共に繰り出す、それぞれのジャンケンポーズ。静と動とがわかりやすい対決になった。
風神雷神を思わせる対決
風神雷神を思わせる対決
「どっち?勝ったのどっち?」
「どっち?勝ったのどっち?」
ちなみに両者ともチョキを表現。閉じたハサミを模した私に対し、「これは誰が見てもチョキでしょう」と内部的に完結した理由の母。それぞれが思うクールなので、ルール上は問題ない。

ジャッジである父の判定は、私の勝ち。理由は「お母さんのはチョキに見えない」とのこと。相手が自滅した形になるが、ハサミの真似した甲斐があった。
続いては父との対戦
続いては父との対戦
年齢を超えた勝負が始まる
年齢を超えた勝負が始まる
次のラウンドはVS父。気分を高めるためなのか、ベストを羽織って勝負に臨んできた。構えて向き合うと、互いに気分が高ぶってきたように思う。いざ尋常に勝負、ジャンケン、ポーン!
んー?
んー?
私はスタンディングでのグー。対する父は、ポーズこそ決まっているものの、グーチョキパーはよくわからない。
父「これはわかりやすいだろ」
父「これはわかりやすいだろ」
母「あー…」
母「あー…」
審判の母や私が「?」となっているところで、父は「こりゃ誰が見てもわかるだろ」と自信満々。それでも不思議顔をしていると「チョキだよ、ほらチョッキ、これ、チョッキ!」。

謎は解けた。そしてへなへなした気持ちになった。
もう僕の負けでいいです
もう僕の負けでいいです
羽織ったのはベストではなくチョッキだったのだ。母のジャッジは「ひねり具合が面白いから父の勝ち」とのこと。これは納得の敗戦だ。

パー対グーとなった両親対決
パー対グーとなった両親対決
「クールさとは何か」が見えてくることも期待して行った新しい形のジャンケン。それは、割と何も見えないまま終わるに至った。

父と母との対決では、オーソドックスにグーを全身で表現した母に対し、父は「クルクルパー」を体現したとのこと。私の判定はやはり父の勝利。小野家では父が最強となった。

結論めいたことを言おうとすると「クールはともかく楽しいね」ということになるだろうか。判定が曖昧なので、本気で何かを決したいときはおすすめしかねます。
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