特集 2012年5月21日

伝説のレトロゲーセン探訪

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そのゲームセンターは、都内某所にあった。
90年代にゲーマーだった、友人Aさん(34歳)とBさん(30歳)に、連れていってもらった。マニアの間では、有名なゲームセンターだという。その理由 は、「その昔、このゲーセンのそばに、アーケードゲーム専門雑誌編集部があって、そこのライターが出入りしてたから」らしい。しかしその雑誌は、今は廃刊 してしまったらしい。
中に入ると、ムワーッと部室の匂い。ホコリや人間の匂い。でも、決して嫌な匂いではなく、なんとなく懐かしいような。
埼玉生まれ。電子書籍『初恋と座間のヒマワリ』(リイド社刊)発売中。最近、ほぼ毎日ブログを更新していますので、良かったら読んでください。

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うわ、時代を感じるなあ。壁の岩模様とか。
うわ、時代を感じるなあ。壁の岩模様とか。
床も壁もへこんでいる、はがれている。ガムテで貼って誤摩化していたりするが、とにかくボッコボコ。何十年もこの状態なんだろうなあ、という感じ。
なかなかスゴイ内装。
なかなかスゴイ内装。
廃墟と違う点は「生き物の匂いがとてもするところ」「現役感」。
廃墟と違う点は「生き物の匂いがとてもするところ」「現役感」。
壁にガムテ。…誰かパンチしたのかな。ていうか、この処置でいいのか?
壁にガムテ。…誰かパンチしたのかな。ていうか、この処置でいいのか?
だけど、場内は、ガンダムの新機種ゲームの周辺に、ひとだかりが出来ていた。男子ばっかだ。すごい熱気。
私たちはレトロゲームのほうに行った。80-90年代のゲームが大量にあった。

友人Aは「やったことないけど」と言いながら「新入社員とおるくん」という激ムズ80年代ゲームをプレイ。
私は「昔、温泉場で、兄貴がやってたなー」という記憶だけで「ラリーX」をプレイし、あっというまに撃沈。「スパルタンX」も撃沈。
もう両替機自体がレトロ。赤い!! 赤い両替機なつかしい!
もう両替機自体がレトロ。赤い!! 赤い両替機なつかしい!
スパルタンX。友だちんちのファミコンで1回やったきりなので、あっというまに負けた。
スパルタンX。友だちんちのファミコンで1回やったきりなので、あっというまに負けた。
新入社員とおるくん。横で見てたけど、ものすごーく難しそうだった。Aさんは50円玉を入れ続け、ムキになってプレイしていた。
新入社員とおるくん。横で見てたけど、ものすごーく難しそうだった。Aさんは50円玉を入れ続け、ムキになってプレイしていた。
せっかくなので、著名ゲーム「ストリートファイター2」の前身ゲーム、「ファイナルファイト」というのもやってみた。いかついおっちゃんが、ただただ戦って歩く(なぐる、爆弾投げる)という結構乱暴なゲーム。なんぞこれ。

最後、AさんとBさんは仲良く「パカパカパッション」という、昔人気だった音ゲーをやっていた。今の音ゲーよりも画面が見にくくて、ムズかしく見えた。
パカパカパッション。そんなゲームあったんだね(きいたことない…)
パカパカパッション。そんなゲームあったんだね(きいたことない…)
ストリートファイター2も、新旧置いてあった。
ストリートファイター2も、新旧置いてあった。
私にはその差がさっぱり分からないけれど。
私にはその差がさっぱり分からないけれど。
ゲーセンの下が居酒屋になっていたので、大人な私たちは、飲み会に突入した。
――私はアーケードゲーム文化、全然通ってないから、今日は新鮮でしたよ。二人とも、昔はアーケードゲーマーだったそうだけど、なんでアーケードなの? 家のファミコンじゃ駄目なの?
A「当時の技術では、家庭用ゲーム機に入るデータの上限があって、アーケードゲーム版のほうが充実してたんですよ。
俺らは格ゲー、Bくんの時代は音ゲーが流行ってたんじゃないかな」
B「そうですね、音ゲー。今も好きな音楽って、音ゲーに使われてた音がルーツだったりしますよ」

――そんなにゲーセンが好きだっていうことは、上手だったの?
A「下手の横好きですよ。だって、その頃、名人と呼ばれる人たちって、本当に上手かったんですもん」

――アスリートと一般人みたいな違い?
B「そうそう。100人組み手って言って、リアルに100人を倒すイベントをしてましたから」
A「ゲーマー著名人がいっぱいいましたよね。」

――あ、前から謎に思ってたんだけど、ゲーセンで友だちになるのって、どうやってなるの?
A「うーん。まず、昔は、人気のゲーム台は並ぶんですよ。だからプレイしてる人に、『プレイヤ-2に入っていいですか?』って声かけるの…普通でしたね」

――そこで顔見知りになるのか。
B「あと、コミュニケーションノート!」

――何すか、それ。
B「要するに大学ノートなんだけど、そこに、攻略法の情報交換とか、まあ何でもいいけど書くんですよ。そして店員さんにお願いして、ゲーム機の横にぶらさげておくんです」
A「あらゆる場所のコミュニケーションノートに書きにくる、伝説の絵師もいたね。V12とか。」

――「V12さんって、ゲーマーなの?」
A「ゲームやってるかどうか分からないですね。ていうか、絵をかいているところを見たこともない。でも絶対に存在するという…独特な絵で。」

――何だろう。今で言うネット文化みたいなものかなあ。見てみたいなあ、伝説の絵師の絵。
90年代って、まだネットがパソコン通信とかだったですもんね。確かにノートのほうが簡単に情報交換出来た時代でしたね。

B「僕、コミュニケーションノートの管理人やってました! 中学生時代!」

――管理人!? すごい! 具体的には何をするの?
B「ノートがいっぱいになりそうになったら、取り替える(笑)。あと、オフ会もやりましたよ、ファミレスで。学生も社会人もいました。」

――そこで恋は生まれないの?
B「どうだったんだろう?(笑)」
A「俺には生まれなかったけど、周辺は2組結婚しましたよ。」

――すごいなあ。女ゲーマーも多かったの?
A「ゲームあんまりしないで、見てるだけ、ノートだけの人っていうのも多かったんですよ。ノートにイラストだけ描きに来るんですよ」
――不思議なカルチャーだなあ。
B「この間、引っ越しの時、その時のノートが出て来て、捨てるに捨てられなくて、残しちゃいましたもん。」

――確かに捨てにくそうね。
B「本当にね、当時は攻略法とか、自分たちでさぐっていかなきゃいけない時代だったから…」
A「アーケードゲーム専門雑誌は皆読んでた。それで攻略法をやっと知って、それが流行ったり。」

――お話きいてると、すごく楽しそうなんだよなあ。ひとつのゲームをじっくり遊べる感じがして。
A「だから俺なんか、いまのケータイのつまらないゲームに腹立つ!」

――怒らなくても(笑)。そうだ、昔、ゲーセンに不良っていた?
B「こわそうな人たちが、椅子使って花札やってるのは、見た事あります」

――何故ゲーセンで、アナログゲームをやるんだろう(笑)。
A「でも、僕らの時代は、もうほとんど不良とかいなかったですよ」

――オタクが増えてた?
A「オタクでもないんだよな~。まあ一種のオタクではあるんだけど、アーケードゲーマーはアーケードゲーマーなんですよ。」

――んーわからんです(笑)。
居酒屋で見かけた謎メニュー。頼んだら、普通のサラダに、春巻きの皮が乗ってました。巻かない生春巻き。
居酒屋で見かけた謎メニュー。頼んだら、普通のサラダに、春巻きの皮が乗ってました。巻かない生春巻き。

私は反射神経がにぶい。スーパーマリオが1面クリア出来ない。
だけどなぜか、ゲームセンターの空気が好きだ。わしゃわしゃっとした、ちょっと殺伐としている、でもほんのりボヤーッとしている、あの変な空間。
あそこに惹かれる人がいるのも分かる。AさんもBさんも、ゲームしてる間は、目がキラキラしていた。

私もゲーマーになれたら、人生観変わったのだろうか。ゲーム出来るのって才能だ…楽しいだろうってことが頭で分かるのに、手先がついていかない悲しさってないぞ。そんなことを考えながら、ゲーセン下の居酒屋で、レモンサワーを飲むのであった。
来世はゲーマーに生まれ変わりたい。かな…。
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