ホットケーキミックス+水、の実力
「加えるのは水のみでOK」とされているホットケーキミックス、実は過去に使ったことがある。某、連日行列が絶えない超人気パンケーキ店が売り出しているそれだ。
本当に水だけで美味しく焼けたので驚いた。
ここぞとばかりに大きな写真で、上手に焼けたことをアピールします
普通にその辺で売っているミックスでも同じことが出来るのだろうか。あの時のあれは、何か特別な調合がされていたのでは? という疑惑を捨てきれない。
気になるならやってみればいいだけの話
ごく普通のホットケーキミックス+水を用意。卵も牛乳も不要。
一瞬で準備が終わってしまった。こんなにハードルの低い食べ物だっただろうかと少し不安になるが、とはいえ簡単なのは良いことだ。
そして水を加えて混ぜる
やはり卵が無い分、なんだか色が薄く見えるが
焼いたらこうなった
おお、期待以上にホットケーキだ。卵と牛乳というベストパートナーがいなくとも十分な実力を発揮するホットケーキミックス。
かじってみると味気ない、なんてこともなく、ふんわりとした甘い香りも漂う。ホイップやシロップをかけて食べるなら全く何の問題もないだろう。もちろんこのままでも。
厚みもこんなに。ふっくら。
ホットケーキミックス+水
結果:普通のホットケーキ。シロップ等をかけて食べるなら全く何の問題もない。
小麦粉ではどうか
先日、関東は春の嵐に見舞われた。台風並みの雨風。次々に運休する電車たち。
そんな中で「なんか急にホットケーキ食べたい!」となった呑気な人間もいる。私である。 ほとんど傘が役に立たないような荒れ模様の中、近所のコンビニに向かった。食欲が嵐に打ち勝ったのだ。びしょびしょになりながらコンビニのドアを押し開いた。
そしてホットケーキの売り切れを確認し愕然とするのは、更にその数十秒後である。素直に落ち込んだ。ああ家にホットケーキミックスさえあればこんなことには。
小麦粉ならあったんだけどね
というわけでこのような悲劇を繰り返さないためにも、小麦粉でホットケーキが作れれば非常に助かる。(主に私が)
そんなに好きならミックスを常備しておけ、というのはまあ、当然の指摘ではあるが。
小麦粉に水を混ぜる。分量は先程とほぼ同じ。
そして焼く。見事にふくらまない。
正直言って、これは美味しくないだろうなあと薄々感づいてはいた。だって小麦粉+水である。小麦粉味に決まっている。
しかし、ものは試し、と信じて。
焼きあがった。なんだこの白さは。
ポテトチップスか
ふくらまない。お煎餅のようにペッタリ。
全くキツネ色にならない。見た感じのホットケーキ感はゼロに近い。それもそのはず、だってこれ小麦粉焼きだもの。
一口食べるが、味が無い。絵に描いたような無味。ただ、もちもち感はある。最初のホットケーキよりも格段に歯ごたえはあるのだ。しかし食感だけ。なんだろうかこの虚無感。噛み締めているうちにちょっと泣きたくなってきた。
端的に言うと、「マズい!」
もしかしたら世の中にはこの食べ物を心から愛している人がいるかもしれないのであまり悪し様に言うのは憚られるが、いや、それにしてもマズい。なんという残念な物体。
ホットケーキはもうちょっとこう、しあわせを感じるメニューであってほしい。どこまでも幸の薄い味しかしない。
耐えかねたのでいちごジャムに頼る
少し食べやすくなった。しかし油断大敵。幸福感の10割をジャムが担っている食べ物になったというだけなので、口の中からジャムの甘さが消えた途端に小麦粉の味気なさが「やあこんにちは」と言わんばかりにもちもちと台頭してくるのだ。落差が逆にツラい。
小麦粉+水のみ
結果:絵に描いたような無味(もちもち感はある)
やはり小麦粉だけでは荷が重いらしい。ここでホットケーキミックスの原材料を確認してみると、小麦粉、次いで糖類が多いようだ。
色々入ってるものですね
では、張り切って砂糖を足してみます
甘みの重要さは先程のジャムから十分学んだので、やや多めに。小麦粉50gに大して砂糖9gを投入した。さてどうなる。
焼けたが…見た目ほとんど変化なし
厚みのなさも相変わらず
ポテトチップスからの脱却ならず。やや焦げ目がつくようになったのは、砂糖の力だろうか。
さて食べてみると、ちょっと甘すぎたかという気はする。無味を恐れるあまりに砂糖を入れすぎたか。しかし味があるというただそれだけで、得られる安心感は段違いだ。急に「おやつ」といえるものになったと思う。
しかし残念ながら、ものすごく美味しいから毎日食べたい、というものでもない。小麦粉に砂糖を足したものを食べている。それ以上でも以下でもない。少なくとも、ホットケーキではない。
小麦粉+水+砂糖
結果:味がついて一安心。だが、まだホットケーキではない。
更に、塩を加えてみる。ミックスの原材料にも挙がっていたことだし。
焼きあがったのがこちら
砂糖はやや減らし、代わりに塩をひとつまみ。やはり見た目にほとんど変化はない。間違って一個前の写真を載せてしまっているのでは、と不安になる。
味の方は、塩の効果で甘みが引き立っているように思う。普通に食べられるしますますおやつっぽくはなったが、何だかホットケーキからは遠ざかっている気もする。
これはあれだ。パンだ。それも、ちょっと失敗しちゃった手作りパン。そんな味だ。
小麦粉+水+砂糖+塩
結果:ちょっと失敗しちゃった手作りパン
そろそろ理想のホットケーキが見たい。更に材料を増やして、大本命の登場である。ベーキングパウダー。つまり重曹。
君には期待している
小麦粉焼きがホットケーキらしくならない大きな要因が「見た目」だ。美しいきつね色。ふんわりした厚み。この要素が欠けている限り、どうしたってホットケーキにはなれまい。
そこら辺を解決してくれそうなのが重曹である。小麦粉50g、砂糖6g、塩ひとつまみ、重曹適量。
フライパン上で既に変化が
ぽつぽつと穴が空いてきた。これは実にホットケーキっぽい光景。期待が持てる。
ひっくり返してテンションが上がる。きつねだ!
これは、ホットケーキと言っていいんじゃないか
これまでのポテトチップスから一転、こんがりとした焼き色がついた。重曹パワーだ。いくら何でもさきほどまでの物体を「ホットケーキです」と言いはる度胸はないが、これなら許容範囲だと思う。どう見てもホットケーキだ。
また、食感も大違いである。小麦粉のみだとひたすらもちもちしていたのが、表面サクサク、内側ふっくら、という理想的なホットケーキになっている。味つけ自体は一個前のものと変わらないはずなのだが、これで数倍美味しく感じられるのだから不思議だ。
重曹ありがとう、君のおかげだ
ホットケーキとそうでない物体の境界線上には重曹がいる、ということでよさそうだ。かといって小麦粉+重曹のみ、では味がなさすぎてまた泣くことになりそうなので要注意。
小麦粉+水+砂糖+塩+ベーキングパウダー
結果:急にホットケーキになった。境界線はここだ。
今後、もしどうしてもホットケーキが食べたい、しかしコンビニは売り切れ、家にはミックスがない、という嵐の日には、小麦粉に水と砂糖と塩、それから重曹を入れれば最低限それらしきものが作れるということが分かった。ミックスを使わない、かつそこそこ美味しく作るための簡略レシピとしてはこれが限界だろう。
しかしそれなら最初からミックスを常備しておいて水だけ加えた方が断然楽なのでは、という話ではある。
重曹の偉大さ
ほんのひとつまみ加えただけで、完成品ががらっと変わるのだから重曹パワーは侮れない。見事に小麦粉焼きをホットケーキに変えてくれた。
少し調べたら、小麦粉からホットケーキを作るレシピはさほど珍しいものではないらしい。ただその場合は卵や牛乳を加えるのが一般的であるらしいので、今回の方法は「どうにか食べられるホットケーキ」が成立するギリギリのラインであったのかもしれない。