スーパーの棚はにぎやかだ
スーパーでインスタントみそ汁の売り場に行くと立ち止まってじっくり見てしまう。いろんなパッケージがいっせいにアピールしている。
野菜が入ってますよ、こっちはしじみ70個分だ、うちはあさりで殻までついてるぞ、と観光地の市場で客引きされているようだ。どうだい兄ちゃん。
値段は高いが減塩で野菜がタップリ、しじみ70個分…特徴が商品名になっている。
にぎやかなのはみそ汁だけではない。冷凍食品や調味料のパッケージも攻めている。
迫ってくる炒飯の大群
コナモンは筆文字使い放題
革命とスタミナ、レイヤの違う言葉が平然と並ぶ
エロティックですらある
写真を小さくして4枚並べただけでずいぶん彩度が高いページになった。スーパーは毎日が祭りだ。
ジャケ買いしてみた
食べたいとか酒のつまみにちょうどいいとか理屈を抜きにして見た目だけで買ってみた。レコードで言うジャケ買いである。どれもハードコアなアートワークだ。
ジャケットがぐっとくるかだけで選んだ。レコードのジャケ買いと同じように気分が高揚する
濃いジャケットが並ぶと壮観である。「クリムゾン・キングの宮殿」のジャケットに通じるものがあるし、サンボマスターの曲を聴いているような気分だ。見てるだけなのに。
これらのジャケットのぐっときたポイントを紹介したい。ほぼこれだけでイベントができてしまいそうなので要点だけ。
具体的になにが入ってるかすべて書く
プレゼントだって前面に書く
UFOの編隊のように遠近感をもって迫ってくるお茶漬け。かっこいい。右の矢印は飛行の軌跡(想像)
豚バラからかつ煮ができる夢のようなお総菜のもとは作り方を前面に。かかる時間も書く。わずか8分。
「うまい!」「うれしい」は食べた僕が言うセリフだけど先回りして書いてある
ラーメンではよく見かける顔ジャケみそ汁。寿司もみそ汁も大きさがおかしいけどそんなこと構わない
どれもパッションがあふれてる。寿司職人がみそ汁に対して一寸法師ぐらいの大きさしかないとかそんな細かいことはどうでもいいのだ。
商品を手に取らなくても伝わるように大事なことはすべて正面に書いてある。作り方がカンタンならおもてに書いちゃう、フライパンが当たるならその写真も載せとこう。
学生時代、会社訪問で訪ねたとあるゲームメーカーは会社概要の表紙に給料と有休日数が書いてあった。いちばん質問されるので表紙に書いた、と担当者は言っていたが、まさにその思想である(その会社案内はどっちが表紙か裏表紙かが分かりにくかったけど)。
ちなみにかつ煮の裏にはもういちど作り方が書いてあった。意外!
真似しよう
ようやくここまで来て次のフェーズである。このデザインを別のものに当てはめてみよう。素材はこれだ。
なんだこのすかすかのパッケージは
iPadだ。最新のではなく去年出たモデルである。こんなに無口なパッケージにもかかわらず箱を捨てられずにいるのがくやしい。
これをみそ汁パッケージにならって作り直すとこうだろうか。
スーパーで買ってきた、というイメージで食卓の上に並べた(右です)
封を切るとiPad(イメージ)
「きょうiPadが安かったから買ってきたわよ」
これからの家庭用コンピュータはiPadのようなスレート型になるといわれているので、たぶんみそ汁的なパッケージで売られるに違いないのだ。
お総菜感出すためにやや強引なことをしている
パッケージを作る人は大変だ
みそ汁風のパッケージを作ろうと思ったら思いのほか大変だった。特徴をあれこれ書いてもみそ汁や冷凍食品のパッケージのようなみっちり感が出ない。
きっとお総菜パッケージデザイン界にも大御所がいてその人に頼むと売上ががらっと変わったり、もうあの人は古いんだよなんて陰口をたたかれたりといった世界があるのだろう。
そう思うとパッケージのデザインは味わい深い。これだけでごはんおかわりできてしまいそうである(うすらぼんやりとうまいことを言ったのにお気づきか)。