特集 2012年3月13日

公園の味噌おでんが食べたい

公園で食べる味噌おでんはなぜあんなにうまいのか
公園で食べる味噌おでんはなぜあんなにうまいのか
温めたこんにゃくに甘辛の味噌が塗ってある。
ただそれだけなのに、なぜかうまい味噌おでん。
特に、ちょっと大きな公園の売店で売られている味噌おでんのおいしさは、他を圧倒する。
1973年北海道生まれ。物心ついた頃から飽きっぽい。そろそろ自分自身にも飽きてきたので、神様にでもなってみたい今日この頃。

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味噌おでんのベストシーズン

食べたい。
公園の味噌おでんが、食べたい。
近所を散歩していて、そう思った。
東京でいうと、井の頭公園とか上野公園とか、そういう大きめの公園の売店で売られている、シンプルな味噌おでんが。
3月も半ばになり、すこし暖かくなってきた。
アツアツの味噌おでんを頬張るには、ほんのり日差しがあって、それでも風が冷たい、今ころの季節がベストだ。
味噌おでんが食べたい。
葛西臨海公園にやってきた
葛西臨海公園にやってきた

味噌おでんを求めて

公園の売店にはたこ焼きとかアメリカンドッグとか、魅力的な食べものが売られているが、なんといっても味噌おでんだ。
焼きそばとかフランクフルトにはない、優しさとぬくもりが、味噌おでんにはある。
芯までよく温まったこんにゃくにとろりととける味噌だれ。
家でつくろうと思ったら簡単に作れちゃうのに、公園でみかけると無性に食べたくなってしまうのはなぜだろうか。
カップルの後ろを、味噌おでんを求めてひとり歩く
カップルの後ろを、味噌おでんを求めてひとり歩く
あのほんわかと暖かい味を想像していたら、どうしても食べたくなってしまい、葛西臨海公園にやってきてしまった。
たしかここで「おでん」というのぼりを見かけたことがある。
その時は別な用事(→これの撮影)があったので、食べることができなかった。
菜の花が咲き乱れる。もうすぐ春ですね
菜の花が咲き乱れる。もうすぐ春ですね

お・で・ん! お・で・ん!

売店の前に真っ赤な「おでん」というのぼりが立っている。
そう、これを見て食べたくなったのだ。
ちょうど去年の今ころだ。
まるで僕を待っていたかのよう
まるで僕を待っていたかのよう
さて、味噌おでん、いっちゃいますか
さて、味噌おでん、いっちゃいますか
それにしてもなぜ公園の売店というのは、こうテンションが上がる店構えなんだろう。
同じものが近所の駅前にあっても、僕は同じように興奮するのだろうか。
(たぶんするんだろうな)
ぐいぐいと期待が高まる店構え
ぐいぐいと期待が高まる店構え

おや、味噌おでんがない

「すいませーん、味噌おでん一つ!」
という気満々で店に近づいたが、どういうわけかメニューに味噌おでんはなく、ふつうの「おでん」がラインナップされている。
ありゃ、味噌おでんは?
ありゃ、味噌おでんは?
うーむ、公園のおでんといえば味噌おでんだろう。
そりゃ普通のおでんもいいけれど、やっぱり味噌だれのこんにゃくこそが、公園のおでんじゃないか。
葛西臨海公園にはもう一軒売店がある。
そっちなら、あるだろうか。
もう一軒の方にいっても
もう一軒の方にいっても
普通のおでんのみ…
普通のおでんのみ…

背に腹は替えられぬ

店のおばちゃんに「味噌おでんはやってないんですか?」と聞いてみたが「うちではおいてないんですよ」という悲しい答え。
でも、悲しみにうちひしがれてばかりはいられない。
味噌おでんだって普通のおでんだって、おでんには変わりないではないか。
いざ買ってみたら、これはこれでうまそうだったりする
いざ買ってみたら、これはこれでうまそうだったりする
よし、くうぞ。
風がやや強く、天候は晴れ。
おでんには最高のコンディションだ。
ハウ! うまい
ハウ! うまい

なんだかんだいって、うまいぞ

うん、おでんだ。
紛れもなくおでんである。
僕が求めていたものとは違うが、このおでんも十分に僕を温め、満たしてくれる。
こういうの、味噌おでんじゃ味わえないもんな
こういうの、味噌おでんじゃ味わえないもんな

けれども、やはり

さすがおでん、しっかり温まった。
大根も玉子も、しっかり味が染みていてうまい。
具も多くて食べごたえも十分だ。
ごちそうさま。
いや…でも、やっぱりなにか物足りない。
僕が求めていたのは、これではない。
でもやっぱり、味噌おでんが…
でもやっぱり、味噌おでんが…

夢はかなえるためにある

このまま、普通のおでんで妥協していいのか。
僕が見ていた夢は、これではなかったはずである。
ふと心の迷いから普通のおでんにすがってしまったが、僕が食べたいのは味噌おでんだ。
そう思いなおし、以前味噌おでんを食べたことのある、上野動物園脇の売店へと向かった。
上野公園へ
上野公園へ

休み

しかし、なんとしたことか。
向かった公園の売店はシャッターがおりている。
掲げられた「味噌おでん」のメニューが、僕をあざ笑っているかのようである。
自家製みその文字がむなしい
自家製みその文字がむなしい
これはくやしい。
さっき普通のおでんに心を許した罰だろうか。
こうなったらなんとしてでも味噌おでんを食ってやろうと、動物園に入って売店を探したが、味噌おでんはない。
動物園の中にも
動物園の中にも
味噌おでんはありませんでした
味噌おでんはありませんでした

水元公園へ

どうしよう。
僕はただ味噌おでんが食べたいだけなのに、つらい仕打ちだ。
このままアメ横で寿司でも食って帰ろうかとも思ったが、ここであきらめてしまったら、今後の人生なにがあっても同じようにあきらめてしまうだろう。
もう一度チャレンジだ。
立ち上がれ、ニッポン。
味噌おでんを求めて葛飾区の水元公園へ
味噌おでんを求めて葛飾区の水元公園へ
この公園でも味噌おでんを食べたことがある。
さっき売店に電話して、売店の営業も確認済みだ。
こんどこそ、味噌おでんにたどり着くことができるはずである。
水辺の公園。味噌おでんには池がとてもよく似合うと思うのだ
水辺の公園。味噌おでんには池がとてもよく似合うと思うのだ

み、み、味噌おでんください!

売店の営業時間は17時まで。
なんとかぎりぎり間に合ったが、お店は閉店の準備をし始めている。
営業時間ぎりぎり滑り込みセーフ
営業時間ぎりぎり滑り込みセーフ
店内のメニューには、はっきりと「みそおでん」の文字が確認できる。
やっと、ついに、味噌おでんと対面できるのだ。
思えば長い道のりだった
思えば長い道のりだった

夢の味噌おでん ついに

凍える手で代金150円を渡し、ほかほかの味噌おでんを手にした。
このぬくもり、僕が探していたものだ。
これまでの苦労も、このぬくもりをより深く感じるための試練だったのかもしれない。
MI SO O DE N !!
MI SO O DE N !!

黄金に輝く味噌おでん

傾きはじめた日差しをあびて、僕の味噌おでんは光り輝いている。
しっとりとした味噌が、黄金のようだ。
うん、これを待っていたのだ
うん、これを待っていたのだ
その美しさに興奮して、何枚も写真を撮ってしまった。
こんにゃくって、こんなにきれいだったのか。
食べるのがもったいないほどの美しさ
食べるのがもったいないほどの美しさ
食べるのがもったいないほどの美しさ
いつまでも見つめていたい

探し求めていた味

味噌おでんは、ずっと見守っていたいほどの輝きだが、しかしこれは食べて味わってこその魅力である。
何度もくじけそうになりながらここまで探し求めた僕には、食べる資格があるはずである。
そしてこの味噌おでんも、それを望んでいるだろう。
食べちゃうぞ
食べちゃうぞ
ぴゅー
ぴゅー
がー
がー

ありがとう、味噌おでん

味噌おでんは、ほんとうに優しい食べものだ。
温かくて甘辛くて、歯ごたえさえも心地いい。
冷えた体に、じんわりと染みこむ。
ああ、ありがたい。

もう少しすると、冬が終わり暖かくなって、味噌おでんのことなんかみんな忘れてしまう。
けれどもまた秋が来たら、きっと味噌おでんは僕たちの元に帰ってきてくれるはずだ。
よく考えたら今日はおでんしか食べておらず、なんかほかに食べようかと思ったらもう売店は閉まっていた。でも、味噌おでんを食べたから満足である
よく考えたら今日はおでんしか食べておらず、なんかほかに食べようかと思ったらもう売店は閉まっていた。でも、味噌おでんを食べたから満足である
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